問題夫婦達の戦録   作:ボールペン

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ども〜


ではよろしくお願いしま〜す!


第3話【槍の刺青をした男】

私の家が燃えて早1週間。私はフェイトちゃんのお言葉に甘えて、彼女とハルキさんの家に居候させて貰っている。当然落ち着くまでの間だが、それだけでも十分助かった。

 

少し日にちは経ってしまったが、この件は殺人事件として捜査される運びとなった。フェイトちゃんや他の執務官の捜査により、事件の状況が少しながら明らかのなったのだ。まず、事故という線。これは全否定される形でなくなった。第1に火災が魔法によるものであった事。第2にトモ君の唯一残された左手が刃物による切断面だった事。そして第3……トモ君の遺体が跡形もなくなくなっている事。

 

フェイトちゃん達が言うには左手が外へ出てきたのは爆発による衝撃ではなく、トモ君が伝えようとしたダイイングメッセージである可能性が高いとの事だった。左手を落とされ、殺される直前、少しでも何かを残す為にそれを外へ投げた。遺体がないのは犯人が持ち去ったか、跡形もなく焼き払った為らしい。

だがいずれにしても、私が抱いているこの感情は今まで全くと言っていいほど感じたことのないものだった。おそらくこれが復讐心と呼ばれるものなのだろう。事故でトモ君が死んでしまったのなら悲しいだけで済む。受け入れたくはないが、吹っ切れる。

 

しかしトモ君が誰かに殺されたのだとすれば、私はどうしても許すことができない。そこにあった光を。私の何よりも大事だった太陽を奪った犯人が。だけどフェイトちゃんや他の友人、そして何より……トモ君が最後にくれたこのネックレス。もう形見の品になってしまったが、これが私にそんな気を起こさせないでいた。誰も喜ばない。犯人を見つけて同じようにしてやりたいが、そんな事をしてもトモ君は生き返らない。代わりに周りの友人が悲しくなるだけ。勿論天国のトモ君もだ。

 

だから私は復讐は考えない。犯人を捕まえるのはフェイトちゃん達に全て任せるつもりだ。

 

「なのはちゃん! その……なんて言ったらええのか……本当にお悔やみ申しますぅ」

 

「うん……ありがとうはやてちゃん。みんな。トモ君の為に来てくれて。きっと喜んでるよトモ君」

 

今日はトモ君のお葬式。私の同僚や友達。色々な人が来てくれた。

 

でも……

 

違和感がある。私の知り合いはたくさん来ている。けどトモ君の知り合いが来ていない。正確にはトモ君に知り合いだと言って来てる人がいない。トモ君だけが知っていて私が知らない人が来ていないのだ。違和感がある。ただひたすらにこれだ。

 

今思えばトモ君の親はもうすでになくなっていて、私はあったことすらない。だから来ないのは当然。だが、友達も私は紹介どころか話を聞いたこともない。単純に人望が少なかったと言うにはあまりにも少なすぎるレベル。まるで存在そのものがなかったかのような感じだ。

 

あの人柄でここまで人望がないものだろうか。当たり前だが、トモ君の会社の同僚は来ている。それは私も知っているし、よく挨拶もする人達だ。

 

「なぁ、なのはちゃん? ちょっとこんな時に言い出しにくいんや。でもなのはちゃんの耳には入れとかなあかん思って」

 

「え? 」

 

「実はなのはちゃんの家が焼けてまう前の日の事なんやけど。たまたまヴィータがな、見たらしんよ。トモさんの事」

 

「どこで? その日普通に会社に行ってた筈だけど。通勤中とかじゃないの? 」

 

ひそひそ話しのレベルだが、前日のトモ君の行動。トモ君は会社行っていたはずだ。しかしはやてちゃんの話では……違った。

 

「それが……第36区間の入り口にいたらしんや」

 

「え……そこって侵入禁止区間じゃ!? 」

「シーッ! なのはちゃんシーッ! 」

 

あまりの事に私は思わず大きな声を上げてしまった。第36区間。そこは管理局が指定している数少ない入ってはいけない場所。かつてロストロギアの実験をしていた無法組織の研究所跡。解析も終わらず、手をつけずに封鎖している場所だからだ。

だからトモ君がそこにいたなど考えられない。そこは入っただけでも罪になる。厳重封鎖の場所だ。

 

「それで」

 

「入ったかどうかはわからんて。ただ青髪の男と一緒にいたらしんや。右肩に槍の刺青した」

 

「槍の刺青? トモ君の知り合いにそんな人いたっけ? う〜ん」

「なのはちゃん。来週36区間の調査っていう名目でそこに入れるよう許可取る。だから一緒に行こ? トモさんの事何かわかるかも知れへんし」

 

「はやてちゃん……うん! 行く」

 

それからはやてちゃんの言う日時に36区間の禁は破られた。当初、はやてちゃんと2人と言う話になっていたのだが、私が心配との事でヴィータちゃんも一緒に来てくれる事になった。

相変わらず心配性な所はトモ君とそっくりで、よくトモ君二号なんて言ってからかっていた事もあった。でもその度にヴィータちゃんに怒られ、トモ君がヴィータちゃんを止める構図がお決まりのパターン。それがもう無いと思うと本当に寂しい。

 

「なのは、本当に大丈夫なんだろうな? 」

 

「うん。ありがとうヴィータちゃん。私は大丈夫。本当にヴィータちゃんはトモ君に似てる。トモ君二号だよ」

「なんっ!? ……はぁ……それで怒らねーよもう。あいつ……逝っちまったし」

 

「にゃはは、そっか。……あれ? っ!? 」

 

「なのはちゃんどうかしたんか? ちょっ!? なのはちゃん!? 」

「おいなのは!? 」

 

私は研究所跡に入ってからしばらくたった時、そこに落ちていたある物を見つけた。見つけた瞬間、全速力で走った。見間違うことはない。他のものであるはずもない。私が見つけたもの。それはトモ君にあげた手作りのハンカチ。この世に一つしかない物だ。恥ずかしいが、私とトモ君の名前をハートの中に入れている絵が入っている。

 

「いた……トモ君ここに入ったんだ」

 

「あいつがか? 信じられねーよ。あの堅物が」

 

「そ、そうやな。ハッ!? 2人とも、伏せっ……な…………」

 

「え…………」

「はや……て? ……はやて!? 」

 

刹那。はやてちゃんが揺らめき、スローモーションのようにその場に倒れ込んだ。ヴィータちゃんの叫び声がその跡すぐ聞こえ、私は我に帰る。見ればはやてちゃんの肩からは血が出ており、まるで何かで貫かれたようなそんな傷跡だった。

 

ヴィータちゃんはすぐにはやてちゃんに駆け寄り、私は周りを警戒しながらバリアジャケットを装着した。幸い、致命傷ではない。意識はないが一時の事だろう。だがそれよりも姿が見えない敵の方が気がかりだった。ここには何かがある。そう確信した時……一瞬だけ、風を切るようなそんな感覚が背後からあった。

 

《プロテクション》

「ぐっ!? 」

 

「へぇ〜」

 

「っ!? いない? ……どこなの」

 

奇襲を防御魔法でなんとか防いだ私だが、声が一瞬聞こえただけで、敵の姿は確認できていない。速いのか、瞬間に姿を見せているかはわからないが、いずれにしても面倒な事に変わりはなかった。

敵がいるのに確認できない。それは相手に対して絶大なアドバンテージを与えてしまっている。一瞬でも気を抜けば、やられるのはこっちだ。ヴィータちゃんもはやてちゃんの側から離れることはできない。つまり、私がやるしかない。

 

私は目を閉じて視覚に頼るのをやめた。感覚的にはさっきのイメージだ。風を乱す流れを感じる。空気の揺れるその一瞬を。

 

「目を閉じるとかテレビじゃあるまいし馬鹿なの? はは! これで終わっ!? ……なっ!? 」

 

「バインド……」

 

「よし! やったぜなのは! 」

 

敵が背後を取ることはわかっていた。後は風の切れるその一瞬。私は視覚以外の感覚全てを使い、その瞬間だけを狙って集中していた。狙えないはずはない。私が捕まえられたのは運でもなんでもないのだ。

 

そして空中で固定した敵を私は確認する。驚いた事に、袖なしの青いジャケットを着用した男は、その右肩にそれを刻み付けていた。

 

黄色い……槍の刺青を。

 

「貴方一体何者なの? はやてちゃんにこんな事までして、それにその刺青。話してもらうよ? トモ君の事。一体何があったのか! 」

 

「は? 誰の事だ? そんな奴知らねーよ」

「とぼけんな! 私はお前とトモの奴がここの入り口で一緒にいる所を見たんだ! あいつを殺したのはお前じゃねーのか! ただの一般人を……なんとか言いやがれ!!! 」

 

私が言いたいことはヴィータちゃんが全て言ってくれた。だからこれ以上私が言いたいことはない。それよりも気になるのは、この男がどうしてこんなにも余裕なのかということだ。諦めてるにしては目が死んでいない。それに私は感じる他の犯罪者とは違う危険な香りを。

 

「ぷっ! ハハ、クハハハ! なんだあいつの事言ってるのか? と言うか一般人? プクク……マジかよ傑作だぜ。スゲーなあいつ。よく溶け込んでたな? ククク」

 

「何がおかしいの! いい加減にして、トモ君はただのサラリーマンで、私の大事な夫だよ! あの人の事は誰よりも知って」

「夫?夫!? アッハハ!? もうおかしくて腹がよじれそうだ!? あいつが結婚とか。ぷふふ、てか……誰よりも? そりゃー嘘だな」

 

「え…………」

 

嘘……その言葉は私の心を動揺させるのに十分だった。レイジングハートを持つ手が震え、一体何が嘘なのかと次の言葉が怖くて仕方がない。まるで私の心を見透かされているかのような私を見る目。油断一つで私を殺そうという笑みは段々と大きくなっていた。

 

「お前……あいつの事知らねーよ。何一つとしてな」

「なのは!? 」

 

「っ!? しまっ!? 」

 

何も知らない。最愛の人の事を何も知らない。そんな事を言われて動揺しないわけはない。ましてや私はトモ君を亡くした後だ。震える手がさらに酷くなり、私はスキを生み出してしまった。

初めから何事もなかったかのように、バインドを破壊し、青い槍が男の手に出現した瞬間、私は死んだと思った。この動揺は少しで治るものではない。どこまでも心の奥深くを侵食し、埋め尽くす。止まらない震えと共に、全てを鈍らせる毒だ。

 

ゆっくりと槍が私の胸を射抜こうと近く。まるで走馬灯のようにトモ君との日々が頭の中をよぎり、もうダメだと私を諦めさせる。全ては弱い自分の所為。結果何も知ることができずに、何も守れない。

 

情けなさが私を覆い、私は愛する人がいなくなっただけでこんなにも弱かったのだと改めて感じさせられた。

 

 

「はい終了。御愁傷さまぁ〜……あ゛? 」

 

「え…………」

 

「なん……だ? 」

 

私は生きている。槍は私を貫かなかった。一体何が起きているのか。最初は当然そんな事を考えた。だがよく見ればそれは目の前の事を見ればすぐわかる事だった。私と槍の間が湾曲している。空間がねじれているかのごとく、それは手のひらサイズの小さな歪み。でも確実に槍を防いでいた。

私はとっさに周りを確認した。ヴィータちゃんは驚いている。つまりヴィータちゃんではない。はやてちゃんでもない。敵は論外だし、では誰が……そんな事を思っていると敵がさらに槍を振り回し、私を横からなぎ払おうとする。

しかしその攻撃も私の横で空間が湾曲しそれ以上先に進まない。もはや誰かが私を守っている事は確実だった。

 

「ちっ、一体誰が……ハッ!? ……なん……だとっ……ぐっ、てんっめぇぇぇえええええ!!! この死に損ないがぁぁぁぁあああああああああああ、待ちやがれぇぇぇええええええええ!!! 」

 

「きゃっ!? 」

 

敵の叫び声と共に激しい突風が吹き荒れる。あまりの衝撃に視界が奪われ、私は目を瞑った。私が再び目を開けた時、敵の姿は跡形もなく、気配も全て消えていた。

やっと見つけた手がかりは消え、残されたのは敵の言ったあの言葉。

 

 

【お前……あいつの事知らねーよ。何一つとしてな】

 

私が知らない何かがトモ君にはあった。つまり私にも秘密があったように、トモ君にもあったらしい。今までそんなそぶり一度もなかった為、私は信じられなかったが、敵の感じからヤバイ案件なのは疑いようがない。

 

「はやてちゃん!? 」

 

「大丈夫や、大丈夫。それよりなのはちゃん大丈夫なんか? 怪我とか」

 

「うん、私は平気。それよりも帰って報告した方がいい。この案件私達が思ってるより多分……」

 

「そうやな」

「ああ、普通じゃねーよ」

 

誰が助けてくれたかはわからない。何がおきているかも、敵の正体も、何もかもわからない。ただ、今日起きた事が普通では片付けられない異常な事だという事は理解した。私達は何かとんでもない事に巻き込まれた。それは間違いない。

はやてちゃんを抱え、ヴィータちゃんとそこを後にした私は後ろに広がる研究所があったであろう場所。最後の一瞬で何もかも無くなりクレーターとなったその場所を見て……

 

そう……思うのだった。

 

 




次回もよろしくお願いします。
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