問題夫婦達の戦録   作:ボールペン

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ども〜

ではよろしくお願いします。


第4話【激突】

トモ君が亡くなって、あの出来事があり一年余りが過ぎた。晴れる事のない気分の時は多い。けど、トモ君がくれたネックレスのおかげで、私は今日も元気に教導ができる。

 

「トモ君行ってきます! 」

 

私とトモ君が写った写真。そこへ挨拶をして出かけるのが今の私の日課だ。現在、住む場所のなくなってしまった私は丁度配属される予定だった新部隊。はやてちゃんを部隊長とした機動六課。そこに用意された部屋でフェイトちゃんと一緒に暮らしている。

フェイトちゃんといえば、しばらくハルキさんを残していかなければならず落ち込んでいたが、ハルキさんの後押しもあり機動六課に在中する事になった。別に通いでもよかったのだろうが、六課の性質上この方が都合がいいのは確か。

 

私が教えるフォワード4人は中々の原石で、とても育て甲斐がある。これから丁寧に丁寧に磨き美しい宝石に仕上がるまで。私は全力を尽くす。それが私の仕事だ。

 

 

 

しかしそう思っていた矢先、早速出動のアラート。フォワード陣には初めての任務になるが、はやてちゃん所のリインもついているし、この子達なら問題はないだろう。

 

だから私はフォワード達とは別行動を取るために先に出動のヘリから飛び降りた。

 

「レイジングハート! セ〜ット、アップ! 」

《オーライ、マイマスター! set up! 》

 

フォワード達の負担を少しでも減らすため、空の敵は私と途中で合流したフェイトちゃんで片付ける。当初はその予定だった。だが、ここで思わぬ邪魔が入ってしまった。それは丁度一年前に現れたあの男。肩に刺青をし、青い槍を持ったトモ君に関係のあるあの男だ。

 

「なのは、ここは私が引き付ける。なのははガジェットを」

 

「……うん! 」

 

フェイトちゃんとの役割分担。こと接近戦闘において、フェイトちゃんが遅れをとる事は考えられなかったが、それは愚かな考えだった。何故ならあの男の強さは人間が持つそれを軽く凌駕していたからだ。フェイトちゃんのバルディッシュによる振り下ろしを下から振り上げ、一撃でバルディッシュを粉砕し、フェイトちゃんの体勢を崩す。

 

たった一撃、それだけで簡単にあのフェイトちゃんがスキを作らされた。

 

「なっ!? 」

 

「弱いよ。管理局の魔導師如き、俺の敵じゃない。クク、死ね! 」

 

「あ……」

「フェイトちゃん!? 」

 

無理だ。あの体勢では躱す事はできない。槍による高速の振り下ろし。しかしそれをフェイトちゃんが防ぐ為とっさにシールドをはるや、無理やり軌道修正し、横からのなぎ払い。人間の反応速度ではない。つまりフェイトちゃんが人間である限りあれを躱す事は不可能だ。

 

「くっ、ダメ……ごめん、ハルキ」

 

「ふぬっん!! 」

「ちっ、また邪魔が! 」

 

フェイトちゃんは槍が当たる瞬間死を覚悟しただろう。勿論私もその経験はある。でも私の時と同じように、そうはならなかった。

 

「え、誰? 2つ眼の……仮面? 」

 

フェイトちゃんを助けたのは2つの眼が書かれただけのシンプルな白い仮面をした赤い髪の見える男。体つき、細身ながらもしっかりした肉体。その程度で男だと確信できる。

さらに敵の槍を刀型のデバイスであろうそれで受け止め、それ以上ピクリとも動かす事を許していない。

 

「その仮面……は、プハハ! お前……シークレットファイブか? そういやぁ〜2人しか出てこなかったけかぁ? 他の2人はどうしたのか、なんて思ってたのに……しかも俺の槍を受け止めたところを見ると……期待していいんだよな? お前は」

 

「フ、なるほど。お前が何故組織を壊滅させたのか、なんとなくわかったよ。この戦闘狂が、と言うよりシークレットファイブは5人だ。お前が相手をしていないのは3人の間違いだぞ? 2人倒したくらいで調子にのるな! それから……お前を殺す前に1つ聞かせろ。最後の確認だ。高町トモを殺したのはお前か? 」

 

「「え……」」

 

不意に名も知らない。誰ともわからない男から出たトモ君の名前に私達は驚いた。この人は誰で、何故そんな事を聞くのか。聞きたい事は山ほどある。しかしそんな質問をする時間はこの場には残されていないようだ。

 

「またあいつの事か? あんな雑魚になんの価値があるよ。丁度一年前か、あの時は俺の勘違いだったみたいだし、そもそもあれで生きてるわけないしな。へはは! そうだよ。あの男を殺したのは俺だ! 簡単だったぜぇ〜? 左手切り飛ばして心臓貫いて……あの家で跡形たもなく燃えてなくなったんだからなぁ〜? ひははは! 」

 

「やっぱりあ、貴方がトモ君を ……よくも……よくぅ……もぉぉ…………」

 

「傑作だった。最後まで誰のプレゼントなのか小さな箱守っててよ? でも結婚してたんだっけ? それじゃぁ〜そこの白い彼女の為だったのかなぁ? 」

 

「このっ! 」

「言いたい事は……それだけか…………」

 

確実な挑発。そうとしか思えない言動だった。けどそれを我慢できるほど、私が冷静ではない。最愛人を殺し、それでは飽き足らず、私の前でその人を愚弄した。許さない。許すべきじゃない。私は完全に頭に血が上っていた。でも仮面の男の人が口を開いた瞬間、動きを止められ、私は途端に冷静さを取り戻した。

 

「なっ!? この風は」

「魔力変換……【雅】」

 

「これは……」

 

「こ、これって魔力変換資質? いや、ありえない。魔力を属性に変換して攻撃するならわかる。でも……溢れ出る魔力全てが風に変わるなんて…………」

 

属性変換による魔力変換資質は人によって個人差がある。だがこの人の変換資質は本来確認されている【風】ではない。出力が違いすぎる。魔力を変換し始めたと同時に周りにこれ程影響を及ぼす事は本来できない。

恐らく【風】とは全く違う物なのだろう。周りにいる人間が突風で動けなくなるほどなのだから。

 

「ちっ、流石は『5つの特殊な魔力変換資質』を持つザ・シークレットファイブの二番手様だ。この間殺った2人は大した事なかったが、お前はレベルが違うな? 噂以上だよ。ナンバー2! 」

 

「お前は手を出す相手を間違えた。……エメラルドエッジ! 」

《御意。ダウンバースト》

 

「だが…………」

 

仮面の人のデバイスが竜巻を帯び、その刀身を小さくも激しく回転し始める。音は周りを侵食し、それだけで威力がおかしいのは言うまでもない。でもそれを放とうと動き出した仮面の人は次の瞬間、大きく後ろに吹き飛ばされた。

 

「俺程じゃない」

 

「なにっ、がっ!? ……ぐっ、ば、馬鹿な……魔力を放出しただけで僕の技を吹き飛ばしやがった……なんて馬鹿げた魔力量なんだ」

 

「ふは。そんなに褒めるなよ。お前もなかなかだったぜ? と言うかさぁ〜誰か知らない? もっと強い奴。お前じゃ足りないんだ」

 

「やはりただの戦闘狂か。僕で満足できなきゃナンバー1でも探すんだな? もっとも、お前では歯が立たないと思うが」

 

「そう! そいつだよそいつ! 俺はそいつと戦いたいんだ! ちぇっ、と言うかなんだよ。お前も知らないのか? 残念だなぁ〜少し期待したのに。どうして誰も知らないんだ? この間殺したその女の男も知らないと言ってとぼけてたしよ? 」

 

またトモ君の話題が出た。私は意味がわからない。関係ない。トモ君は何の関係もないはずだ。この人達が何者であれただのサラリーマンには無縁の事。私は槍の男が無理矢理トモ君を巻き込んだと思っている。トモ君はただの被害者。被害者だとそれを信じて疑わない。だって私はトモ君を誰よりも信じているのだから。

 

「貴方はトモ君を勝手に巻き込んで、勝手に殺して、ただ戦うことだけが目的なの! そんな事のために、そんな事の為にどうして何の罪もないトモ君が」

「罪がないだと? 笑わせるな」

 

「え…………」

 

「1ついい事を教えてやろう。お前らがさっきから馬鹿の一つ覚えみたいに言ってる男は、表の人間じゃない。俺は裏に身預けてる身だ。だからあいつの存在が善か悪かはすぐわかる。どんなに上手くごまかしても、あいつからは血の匂いは取れない。それに俺はあいつを戦場で見た事があってな? あいつは……紛れもなく人殺しだ」

 

「ぃ……いやぁ……違う……トモ君は……そ、そんな人じゃ…………」

 

一度そうなってしまったらもう止まらない。私は一年前と何1つ変わってなどいない。何も吹っ切れてなどいないのだ。レイジングハートを持つ手が震え、呼吸も大きく苦しくなっていく。

 

「なのは落ち着いて!? そんな奴の言葉信じちゃダメだ! 」

 

何も聞こえず、何も信じられない。深く暗い、疑心暗鬼の沼に私は堕ちていった。

 

「このクソ野郎!! 」

「ひはは! シークレットファイブともあろうものが何感情曝け出してんだ、よ! あ゛あ゛んっ!! 雑魚じゃ話になんねぇんだ!! 」

 

「ぐあっ!? あ゛……ぐっ」

 

強さは圧倒的、いつの間にか仮面の人にフェイトちゃんも混ざり、完全に2体1の状態でも全く歯が立っていない。ここで私も参加しなければ、しかし私は動けなかった。頭でどんなに動けと命令してもても、指一本動かせない。私の心は、闇に、トラウマに支配されていた。

 

「違う……違う違う!? ト、トモ君は人殺しなんかじゃない……違うのぉ……違う……違う……トモ君優しくてそれで……人なんて殺せる人じゃ……いやぁ……ぁ…ぃ……ゃ……違う!? 違う違う!? 違う違う違う!? ……ぅ……ぃゃ……ぃゃぃゃ……っあ゛あ゛あ゛っ!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっ、い゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!? 」

 

頭が割れそうな程痛くなり、自分でも何を考えているのかわからなくなる。とにかく現実を直視したくなくて、叫び、何も信じたくない。もう限界だった。この一年我慢に我慢を重ね、表に出さないでいた私の闇がここへきて、こんな時に決壊してしまった。こうなると私は私を止められない。

 

「ふへへ、見ろよお二人さん〜? あいつもう壊れそうだぜぇ? 笑えるよな? 人が狂う瞬間ってのはよぉ〜」

 

「クソ! もういい、なのちゃんの所へ戻れ! 」

 

「え……なのちゃんって……」

「しまっ!? ……ああもう!? いいからは、早くしろ!! あのままにしたら精神的にイカれるぞ! 」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「なのは!? なのは! しっかりして!? 」

 

「もうやだぁ!? いやぁ!? 何も信じたくない!? ……死にたい。殺して……誰かぁ……」

「なのは……ぐっ、しっかりしろ、高町なのは!!! 」

 

取り乱し、私が両肩に手を置くとなのはは狂ったように暴れ出した。この兆候は精神が壊れる一歩手前だ。言葉じゃ何も伝わらない。だから私は右手を振り上げ、なのはの頬を思いっきり引っ叩いた。

 

それで何をされたのかわかっていないなのはは痛みを感じているであろう頬に手を添えるとその目に光が戻る。驚きと動揺を隠せない瞳が私を見ていた。

 

「っ!? ……ふぇ、フェイトちゃ」

「私の知ってるなのはは、こんな事で負けたりしない! 私の知ってるなのははどんなに絶望的な状況でも諦めない。昔私を闇から救い上げてくれたなのはは……とっても強い人だ!!! はぁ……はぁ、はぁ…………」

 

「ごめっ、ごめん……ごめんな゛ざい゛、フェイトちゃん……ありが……とぅ…………」

 

「なのは……良かった……本当に…………」

 

 

 

なのははあと一歩の所で引き返した。私の喝と言葉だけで引き返せるのだからやはりなのはは強い。普通ならトモさんを失った時点で壊れてしまってもおかしくないにも関わらず、こうして強い目を取り戻せる。私は本当に誇りに思える親友を持った。

 

でも喜んではいられない。私達の代わりに戦っている仮面の男。実はさっきので思いたくなくてもある人の顔が浮かんでしまった。だがそれを確かめるのは後でいい。今はこの状況を切り抜ける。流石に3人で相手をすればなんとかなる。いくら何でもそれで歯が立たないことはない。私は確信しながらなのはにその有無を伝え、急いで仮面の男の側へ飛んだ。敵との間に割り込むような形で、敵と彼の距離を離す。

 

「トモ君が繋ぎ止めてくれた。フェイトちゃんが引き戻してくれた。だからもう……迷わない!! レイジングハート、いくよ! 私には守るべきみんながいるから」

 

《ディバインバスター》

 

「ちっ、ちょこまかとウザイ連中だ! っ!? ……あ゛? 」

「ディバインィィィィン、バスタぁぁぁあああああああ!!! 」

 

「しまっ!? 」

 

陽動によるなのはの砲撃。それは間違いなく直撃した。いかに相手が硬かろうと、なのはの砲撃を受けてタダで済むわけはない。

 

しかし敵はそこに…………

 

 

 

無傷でいた。

 

 

「そ、そんな……馬鹿な…………」

「わ、私の砲撃が……聞いてない」

 

驚く。それ以外にない。防御できるタイミングじゃなかったはずなのだ。でも現に敵はかすり傷1つ負っていない。私の頭に全滅しかねないと言う不安がよぎり始める。ここはこちらが撤退するしかない。そんな事まで考え始めた。

 

「ぷっ……ククク。痒い痒い〜。はぁ……ガッカリだ。それにお前らさぁ〜? 俺が1人だと思ってるなら大間違いだぞ? 今頃列車は大変な事になってるんじゃないかなぁ〜? クハハハ。お前らはやるみたいだが……あそこでガジェットと遊んでる5人はどうなんだろうな? 悪いがチェックメイトだ。お前ら以外……全員死んだも同然。はは、ひはははは!! 」

 

「嘘………くっ、ロングアーチ!? ロングアーチ!? こちらスターズ1、列車の状況を! ロングアーチ!! 」

 

私は思わず唖然となってしまった。この男のそれはハッタリではない。そんな事をするメリットがないからだ。さらに、何があったのかロングアーチも誰も声をあげず、しばらく無音が続く。

 

「列車は……ティアナ達は……まさか本当に」

「ちょっと待て」

 

「え? 」

 

仮面の男は不安になる私達に待つよう言いだすとどこかへ通信を開き始めた。するとそこに、彼とは目の数が2つ多い仮面を被った人がモニターに現れる。

 

「ダスト、お前に任せてある列車はどうなっている。そこにいる管理局員の安否は? ……おい、どうしたんだ!? なんか言」

【信じられねぇ……】

 

「は? 何がだ? いい加減にしろ! 状況を」

 

 

 

【ロ、ロングアーチより……隊長各員へ……】

 

「はい、こちらスターズ1。一体何があったの!? どうして何も言わな」

【未確認魔導師3人出現。フォワードメンバーが交戦するも……は、歯が立たず】

 

それを聞き、なのはは大きく目を見開いた。勿論気持ちは私も同じだ。もしフォワード達を襲ったのが目の前の敵と同格なのだとすれば、フォワード達の手に負える相手ではない。それどころか確実に殺されている。私はそう思うと途端に冷や汗が止まらなくなった。

 

「そ、それで……フォワード達は? リイン曹長も同行している筈だし、全員撤退して」

【いえ、フェイト隊長。この状況では撤退は不可能です。現状……見ているしかありません】

 

「そんなっ!? すぐに救援を! このままじゃフォワード達の命に関わります、すぐに救援要請を! 私達とフェイト隊長は強敵と交戦中で救援不能。お願い」

 

【そ、それが…………】

 

 

 

「おい、ダスト!? いい加減説明しろ! 」

 

【い、いや……それがだな…………】

 

 

現場が混乱する中、2つの通信から聞こえた言葉で、この場にいる私達は、敵も含めてまるで時間が止まったかのように固まった。

 

【フォワード陣は無事です。それよりもガジェットを含めて敵が一瞬で壊滅。わ、私達も……状況が呑み込めません…………】

 

「え……なに……それ…………」

「は? 全滅って……ダスト、どういう事だ!? 一体誰がやったんだ!? 」

 

 

 

 

私達は今日この瞬間…………

 

 

 

 

【こ、こんな馬鹿げた事できる奴……あ、あいつ以外いるわけねーだろうが!? なんであいつがこんな所にいやがるんだ!? ザ・シークレットファイブ最強の殺し屋……ナンバー1の奴がよぉ!? 】

 

 

 

 

 

人間とは思えない化け物が2人もいる事を知った。

 

 

 




次回もよろしくお願いします。
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