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切嗣side
ある男がいた、誰よりも優しく、誰よりも正義感に溢れていた男が…
だがその男が年齢を重ねていくにつれて気づいてしった、幸福と絶望は天秤に乗っーいると…普通ならばそこで諦めるところだがその男は違った、全てをーえないのであれば自分は命を計り、より多い方を救おうと…愛も友情も関係なく、等しく公平に尊ぼうと
だが男は優しすぎた、人の感謝は彼を喜ばせ、人の怒りは彼を苛んだ。
その男は今、凍てつくような吹雪が吹き荒れる極寒の大地にそびえ立つ古城の一室、暖炉の火の温もりの中でひたすらにうなだれていた
「アナタ…どうかしたの?」
磨き抜かれた宝石を思わせる美女が心配そうに問い掛ける、そのお腹は膨らんでおり、彼女が臨月間近の妊婦であることを示していた
「僕は理想のために君を…」
「それはもう了解していることです」
時は聖杯戦争より8年前、8年の後に美女、アイリスフィール・フォン・アインツベルンの心臓は聖杯となる。
自分の妻の命と、これから産まれてくる娘の涙を犠牲に男の願いは成就する、だが男はここにきて苦悩している、果たして妻を犠牲にしてまで願いを叶えるべきかと、今までの流してきた血を全て無にしてでも妻と娘を守るべきではないのかと…
だが男にはそれはできない、彼は量り違うことのない天秤であり、誰か1人を尊ぶことは許されない…いや、彼自身が許しはしないだろう
2人の間に沈黙が流れる、自分はそんな風にいってもらえる人間ではない、この手は血にまみれこんなにも汚れているというのに、彼女は自分に絶対の信頼を寄せてくれる…
殺人が許されざる罪であるのならば、この凍てつくような吹雪こそが自分にはお似合いだと、男はわきまえていた。
「フフッ…」
そんな切嗣の葛藤を知りながらもアイリは夫を見て微笑みを浮かべる、恋をして、結ばれて、子を成す、自分というホムンクルスに幸福を教えてくれた
「アイリ、僕は…理想を捨てるべきなのかな」
ただ、これはzero(はじまり)に至る物語ではない
「アナタ…?」
アイリが心配そうに呟く
「アイリ、僕は…君とイリヤの正義の味方になるよ」
この世に絶対はない、どんなに同じような道を歩こうともif(間違い)はどこにでも転がっている、湯川幹谷という規格外のイレギュラーを受け入れ、全く違う方向に進み始めた物語は、どこまでも歪んだ結末へと動き始める
この物語がどのような結末を迎えるのかは、規格外たる湯川幹谷も含め、誰も知らない
どうでしたでしょうか?
ある意味茨の道を突き進む切嗣
頑張ってほしいです