プロローグ 異世界降誕
犬夜叉達一行が永き四魂の玉の因縁を終わらせてから数十年……この物語はその犬夜叉の息子、
「あちち!」
ボコボコと溶岩が溢れる……そんな普通の人間ならまず来ることはないだろう場所にその男はいた……白い髪を腰まで伸ばし、頭には赤いバンダナを巻いている。爪は鋭く口から覗かせる牙は明らかに人間の物ではない。父の血の影響だ。だが同時に母から受け継いだ黒い瞳は人間のようであり雰囲気も人間臭さが混じっている……そんな不思議な少年であった。
そして青年の身なりはパーカーにジーンズと現代的……と言えば格好良いが今の時代には似つかわしくないものだ。何故なら今風に言うならこの青年がいるのは戦国時代……と呼ばれる時代。明らかに浮いた格好だが本人は気にしていない。そんな青年は巨大な骨で出来た穴蔵の前にたつ……そしてその中を覗きながら入ると、
「あ、刀々斎の爺さん出来ました?」
「ん?ああ闘夜か、出来てるぞ」
穴蔵のなかには髭を生やしたしわくちゃの老人がいた……名を刀々斎……刀鍛冶を営む妖怪で恐らく戦国一の刀鍛冶と言っても差し支えのないだろう。だが同時に気に入った相手にしか刀を打たないらしい。
闘夜にとって父方の祖父からの付き合いで父の刀である妖刀・鉄砕牙を打ったのもこの人であり、闘夜も刀を打って貰ったので受け取りに来たのだ。
「ホラよ」
そう言って鞘に入った刀を闘夜に投げてきた……
「銘は鉄閃牙……お前の親父の犬夜叉の鉄砕牙の欠片を採取してそれを一部に使って作った刀だ。大事に使えよ」
「それは良いんだけどさ……」
と、闘夜は刀を少し抜きながら言う。
「ただの錆び刀なんですけど……これ」
「鉄砕牙と同じなんだよ。お前が鉄閃牙から認められれば真の姿になる。ようはまだお前は認められてねぇのさ」
「成程……」
刀を戻しつつ闘夜が答えると首筋にチクリとした痛みが走った……その為無意識にバチン!っと叩くと……
「なんだ、冥加爺さんか……」
「お久し振りです闘夜様」
ペラリ……と平べったくなったのは蚤妖怪の冥加……彼も祖父の代からの知り合いである。父曰く危険から逃げる能力だけは最強……とのことだが……
「まぁ刀はありがとうございました。大切に扱いたいと思います」
ペコリ……と闘夜は頭を下げると刀々斎は半眼になった。
「ほんとおめぇ犬夜叉の息子かって思うときがあんな……」
「一重にかごめの教育の賜物じゃな」
確かに……父とは見た目以外余り似てない……と言われるときが良くあった。確かに父は結構子供っぽいと言うか……口より先に手が出る。昔は良く殴られたもんだと狐妖怪の七宝兄さんが言ってたものだ。そのあと殴られてたけど……
「じゃあ俺もう行きますね」
「その格好ということはかごめの世界に行くのじゃな」
「はい」
闘夜は刀を刺しながら冥加に答えるともう一度頭を下げて出ていった……
闘夜が住む村には骨喰いの井戸……と言うのがある。何でもその井戸に亡骸を捨てておくといつの間にかそれが消失しているのが由来らしい……だがこの井戸は父の犬夜叉……母のかごめ……そして闘夜だけは違う意味合いがある。なんとこの井戸……時を越える力があるらしい。闘夜が生まれる前は父と母以外は通れなかったが新たに闘夜を交えて三人は時代を越えて二つの世界を行き来して生活していた。
そしてこの世界には……
「今年で十五……そこで闘夜にプレゼントじゃ」
そう言って木箱を渡してきたのは母方の曾祖父……随分年を召したものの未だに元気な爺さんの誕生日プレゼントである。
「ありがとう、爺ちゃん」
そう言って闘夜が開けると……中にあったのは……干物?
「これはな闘夜よ……由緒正しい河童の手のミイラじゃ。昔お前の母にもあげたんじゃが……」
「食べるか?ブヨ」
「こ、こりゃ!猫に食わせようとするんじゃない!」
母から昔からこの爺さんは良くわかんない胡散臭い物をプレゼントしてくると聞いていたが確かにそうである……なのでこの干物は飼い猫のブヨ(2代目)にでもあげておくとしよう。
「おじいちゃんもいい加減に普通のをあげたらどうですか?」
そう言って来たのは母の母……つまり祖母である女性だ。
「でも早いものね……闘夜が生まれたのなんて昨日のよう……」
「あはは……」
闘夜は照れ臭そうに笑う。成長速度自体は人間の血の方が濃い影響か速い……まぁ老化はどうか分からないが……
何てどうでも良い話をしていると時間も丁度良い。
「じゃあ俺ももう帰るな」
「あら、ご飯食べていけば良いのに」
婆ちゃんにそう言われるが闘夜は首を横に降る。
「今日は早く帰るって父さんにもいっちゃったしさ。帰るよ」
そう言ってスニーカーを履く。戦国時代に帰れば和服などの戦国時代の服はあるがこっちの世界の服装の方が暖かいし動きやすい……あっちの世界じゃこっちの世界の服装は珍しいので浮くのだが機動性と快適性を重視だ。母のかごめだって昔学校の制服を着て活動していたので気にしなきゃ気にならずに済むのだ。目立つだけである。
そう言って闘夜は外に出ると裏手にある社のなかに入る……そこにはこっちの世界の骨喰いの井戸がありこの中に飛び込むと戦国時代の骨喰いの井戸に行けるのだ。もちろんもう闘夜は慣れた感じでその井戸に飛び込んだ……瞬間……
「え?」
突如現れた光の鏡のようなものに飲み込まれたのだった……
所変わってここは大勢の人間が集まっていた。いや、人間と言うのは正しくない、そこには他にも土竜だったりネズミだったり梟だったりはたまたドラゴンだったり……多種多様の人外がいた……そんな中一人の少女が周りからの嘲笑を浴びつつ杖を構える……
だが彼女はその嘲笑を無視している……というかしていないとやっていられないからだ。彼女の手に掛かれば後ろでニヤついてる少し太った男のフクフクと膨らんだ頬を今の五倍にしてやることくらい十秒で済むが今彼女は進級を掛けた【使い魔召喚の儀式】を行っていたのだ。
彼女はとある理由で落ちこぼれと呼ばれている。故にこれに全てを懸けていると言っても過言じゃない覚悟があった。何せ使い魔の質が主の実力とまで言われる言葉もあるくらいである。トンでもない使い魔を呼んで見せればこの場の連中だけじゃない……今まで自分をバカにしてきた者達も見返せるはずだ……そう言って彼女は目を閉じた……
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
一言一言に意味を込めて……不思議とその言葉に彼女は……いや、ルイズは落ち着きを覚えた。今までになかったものがはまっていく感覚……今までに無かったものが出来上がっていく感覚……イケる!そう思った。
「五つの力を司るペンタゴン……」
トクン……っと胸が跳ねる……強い力の本流をルイズはその体に感じた。
「我の定めに導かれし……」
そしてルイズは溜めに溜めた力を爆発させた。
「使い魔を召喚せよ!」
そういった次の瞬間閃光、爆発、轟音……周りの者達は生理的な現象として瞳を閉じ悲鳴をあげるものもいた……ルイズも咄嗟に目を閉じた……だが同時に会心の出来だと確信した……ルイズの中にあるなにかがいつものとは違う……そう伝えたのだ……しかしその中心にいたのは、
「げほ!げほ!」
「……へ?」
ルイズはポカンとその人物を見た。年の功は自分と変わりはしないだろう。だがその格好……頭に赤いバンダナを巻き服装はパーカーにジーンズ……しかしこの服装を彼女は知らなかったためどこか珍妙に見えた。そして背丈は170前後が精々だろう。大柄と言うわけでもない。同時にたっぷりとした白髪は何処か人間離れした綺麗さがあった……ってそこじゃない!
「あ、あんただれ……」
「お、お前こそ誰だ……」
闘夜はそう返すのがやっとだった。闘夜としてはいつも通り骨喰いの井戸を通って井戸を上がれば見慣れた光景が広がるはずだったのだ。なのに突然光の鏡みたいなのに呑み込まれ次の瞬間閃光と爆発と轟音である……困惑を通り越して思考を放棄しそうだった。妖怪が普通にいる戦国時代の生まれだとしてもこのような自体は流石に予想外すぎた。
「な、名前を聞くときは自分からでしょ!」
「それをそのまま返すよ!」
ルイズは闘夜に向かって叫んだ……そして闘夜もそのまま返した……ルイズも言われてみればそうなのでひとつ咳をしてから口を開く。
「私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……で?あんたは誰なの……」
自分の名前を復唱することで少し冷静さを取り戻したルイズは再度問う。しっかし長ったるいなまえだ……戦国と現代二つの世界を行き来している影響で横文字もそこそこ行けるがそれでも苦手であるのには代わりない闘夜は取り敢えずルイズと言う部分が名前だろうと言うのは頑張って脳に刻んだ。それから、
「闘夜だ……名字はない」
無理してつければ母方の日暮……と言うのがあるがまぁ戦国時代の方では名字持ちの方が珍しいので闘夜も名前の部分しか使っていない。すると次の瞬間……
「おい!ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
と誰かが言う……そして爆笑が起きた。だが闘夜はそれより……
(ルイズってこのチンチクリンだよな……と言うとゼロってなんだ?そもそも平民……?まぁ確かに俺って武士とかとか言う家系じゃねぇしなぁ……あ、でもなんか冥加爺さんから何か父さんの方の母親が没落だけど貴族だったとか言ってたような……)
何て別のことを考えていてルイズが憤慨してなにかを叫んでいたのを全く聞いていなかった。するとそこに……太陽、じゃない……生え際が後退した男が出てきた。
「静粛にしなさい!まだ儀式の途中です!」
そう言って一括すると外野の連中も静かになった。
「さぁ、ミス・ヴァリエール……儀式を続けなさい」
そう男が言った瞬間ルイズがビシッと言う効果音が付きそうな感じで固まった。
「ま、待ってください!こ、こいつは平民です!召喚をやり直させてください!」
「それはできません。ルールですから……」
ルイズがギシギシ音を立ててきそうな動きでこっちを見た。まるで親の敵でも見るような瞳に闘夜は後ずさりそうになった……自分よりチビの少女だがその背後には鉄砕牙だろうが噛み砕きそうな鬼がたっているような気がした……そしてルイズはズンズンと闘夜の前に来る。
「泣いて喜びなさい。平民のあんたには一生縁の無い事なんだからね!」
そういったルイズは杖をもってなにか呟くと……
『……………………』
(え?)
今度は闘夜がビシッと言う効果音が付きそうな感じで固まる番だった……そりゃそうであろう……何せ……いきなりの……
(接吻……)
口づけ……あとはキスと言う言い方もあるが闘夜は接吻の方が馴染み深いのでそっちの方を脳裏に浮かべた。すると今度は左手に走る鋭い焼けるような痛みに闘夜は顔を顰めた。
「な、なんだこれ」
「騒がないの、使い魔のルーンが刻まれてるのよ」
「つかいま?るーん?なんじゃそりゃ」
闘夜は四分の一妖怪の血を引いている……しかもその妖怪の血は並の物ではない。西国を支配した大妖怪の血であり父の犬夜叉はその強さの余り危機に陥ると妖怪化して暴走することもあったらしい……人間の血の方が濃くなった闘夜にその危険は殆ど無いが……だがそれでも人間より遥かに闘夜は頑丈だし治癒能力も生命力も高い。更に痛みにも強い。だがそれでも痛みに快感を覚える訳じゃないので痛いのは嫌なものだ。
しかもつかいま?るーん?なんだそれはと闘夜はチンプンカンプンである。いや、確か使い魔って妖怪とかを術を用いて契約したのをそう呼ぶと母から聞いたような気がしたがそんな冷静さは闘夜にはない。
「ふむ……コントラクト・サーヴァントも行えたようだ……」
と、禿げ眼鏡は闘夜の左手を見ながら言う。そして、
「これにより使い魔召喚の義式は終了です!各自戻りなさい!」
その言葉に外野達は各々の方向に散っていく……だがその前に、
「おいルイズ!ちゃんと歩いてこいよ!」
「っ!」
ルイズはコメカミに青筋を走らせたがなにも言わなかった……そして闘夜は、
(あいつら……人間だよな?)
と、
だがアイツらは人間のはずだ。妖気も感じないし父親譲りの嗅覚で感じた匂いも別段変じゃない……
(ここもしかしてあっちの世界じゃないんじゃないか?)
時空を越える井戸を通るのだ。もしかしたら変な場所に出てしまったのかもしれない……そんな風に思う。もしくは……何か変な術に化かされてるのか?それにしては妙にリアルである……とはいえだ。ルイズ……なんちゃらという名前も聞いたことがない。そう考えれば戦国ではないのは間違いなかった。狸だってもうちっと分かりやすい名前を使うだろう。となると……ここホントにどこなんだ?
「ほら、行くわよ」
ルイズはそう言って歩き出そうとする……だが闘夜が、
「飛んでいかないのか?」
何気なく聞いたその言葉にルイズはプルプル震えながら答える。
「ウゴクノヲサボルトフトルカラヨ……」
こいつの場合はもっと色々肉を付けた方が良い気もするが……それは薮蛇だと闘夜は黙ってついていった……
これが後にゼロと呼ばれた魔法使いと……その使い魔……通称・ゼロの使い魔と呼ばれた男の出会いであった……
闘夜の服は全部現代でかごめの方の母親から貰ってます。着心地もいいため闘夜は戦国時代でも愛用してます。因みに闘夜の赤いバンダナは犬夜叉の着物を少し拝借して作ってると言う裏設定を考えてたり……