異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

14 / 81
第三章 浮遊大陸・アルビオン
レコン・キスタ


「しかし世間を騒がせた土くれのフーケがこんな女だったとはなぁ……」

 

と、男は隣に立つ同僚にそう言った。

 

ここはチェルノボークの監獄と言う場所の中だ。そこにはミス・ロングビルことフーケが収監されていた。杖は取り上げられ食器も全て木製……杖がなければ魔法も使えない。そんな状態で彼女は入れられていた。

 

もう逃げ場はなくこのまま死刑が妥当なところだろう……そう思いフーケは壁に背を着けた。そんなときに思い出すのは闘夜のことだ。

 

あの鞘から抜いた瞬間に姿を変える魔剣……しかも香水の匂いで居場所を探り当てる?まるで犬かなんかのような嗅覚だ。 そもそもそんなに匂うほど着けては居ない筈だ……あくまでもお洒落の一貫である。こんな因果な商売をしていても女性なのを忘れないためだ。

 

何て考えていたときだ。

 

(ん?)

 

フーケは声を出さずに回りを見渡す。するとどうだろう……つい先程まで自分をじろじろ見ていた看守が眠りこけていた。一人だけならまだしも二人ともだ。と言うか殆ど糸が切れたマリオネットのようだった……つまりこれは、

(魔法か……)

 

フーケは目を細めて闇の中にいる一人の人物を見つけた。仮面を着けているため顔はわからないが体格を考えるに男だろう。

 

「土くれのフーケだな?」

 

声も低い……まぁ魔法で変えられるが今重要なのは性別じゃない。

 

「申し訳ありませんわ。残念なことに客人をもてなす準備はありませんの」

 

大方自分を殺そうとどこかの貴族が雇ったのだろうとフーケは踏んだ。今まで盗んだものの中には世間に公にされるわけにはいかないだろうと思われるものも結構あった。口封じを画策されるのも当たり前だろう。

 

だが相手の言葉は予想に反したものだった。

 

「余計な気遣いは要らない。フーケ……いや、マチルダ・オブ・サウスゴータ」

「っ!」

 

フーケの顔から余裕が消えた……この名前は自分が捨てた名前……まだ自分が貴族だった頃の名前だ。だがなぜこいつが知っているのだ?

 

「その名前をどこで……」

「少しコネがあってな」

 

そういう仮面の男にフーケは不気味なオーラを感じた……だが、

 

「まぁそんなことはいいだろう。こっちの用事が先だ」

「ふふん。一体何の用かしら?」

 

フーケは極めて冷静であろうとした。勘だがこの男の背後にはとんでもないものが潜んでいる……そう思った。少なくともとっくに捨てた自分の名を掘り起こせるくらいには危険だ。

 

そんな中仮面の男は口を開く。

 

「我らの同士となれ。フーケ」

「同士だって?」

 

フーケは一瞬意味がわからなかった……だがだんだん理解していく。これは勧誘されているのだ。

 

「なんだい?同士?なんだそりゃ……革命でも起こそうって言うのかい?」

「ふふ、我らが直接手を下さずとももうじき一つの国が消える……」

「…………それはどこなんだい?」

 

フーケはとにかく話を伸ばす……少しでもこの男から情報を得ようとした。それに対し男は普通に答える。フーケの思惑に気づいていない訳じゃない。だがそれでも答えた。ここでならバレても構わないからだ。

 

「アルビオンさ」

 

フーケは苦虫をかみつぶしたような顔になった。彼女にとってその国は色々思うところがある場所だった……しかし先程いっていた直接手を下さずともと言うことは間接的には手を下していると言うことだ……

 

「それで?なにか他に聞きたいことはあるか?無ければ俺と来い」

「ただし断れば殺す……って続くんだろう?」

 

ここまでしゃべると言うことは……ここでなら喋っても始末をつけやすいからだ。

 

それに対して相手も鼻で笑うだけ……否定しないと言うことはそういうことだろう……つまりフーケには選択肢はない。勝手にやって来て説明してその挙げ句言うことを聞かなきゃ殺すとは……ろくな男ではないだろう。

 

しかしここで殺されるのは真っ平ごめんである。ならば、

 

「組織の名前を教えなよ。これから入る組織の名前も知らないんじゃね」

 

そういうフーケに仮面の男は答えた。

 

「組織の名は《レコン・キスタ》……国境を超え、真にハルケギニアの未来を憂う者たちの集まりだ」

 

新たな悪意が……動き出したのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことも知らずルイズは夢を見ていた。昔の夢である。まだラ・ヴァリエールの領地に住んでいた幼き頃……今もだが昔も魔法が使えずその度に怒られていた。悔しくて悲しくて……怒られては逃げ出していた。

 

そんなときは中庭にある池の小さな船に身を隠す。一人でこっそり涙を流していればそのうち落ち着いてくるのだ。すると、

 

「また泣いているのかい?小さなルイズ」

 

穏やかな声だった……ふと顔をあげるとそこには逞しい体つきと帽子に隠された整った顔立ち……年は自分より十才前後上だろう……小さなルイズは知っていた。最近領地を継いだ憧れの男性……

 

「し、子爵様……」

 

ルイズは頬を染め顔を隠す……憧れの男性に泣き顔は見られたくなかった。そんな彼女の様子に男性は愛おしそうに優しく声をかける。

 

「今日は君のお父上に呼ばれてね……君との結婚の話だ」

「ぁ……」

 

ルイズはますます頬を赤くした……照れ臭さと実感のなさで頭が一杯だった……だが男性は気にせず続ける。

 

「どうしたんだいルイズ……僕のことが嫌いかい?」

 

ルイズはその問いに対して首を横に振って否定した……ただ、

 

「まだ私にはわかりません……」

 

幼き心では分からない……彼が好きなのか、そもそもこれは憧れなだけなんじゃないのか……そもそも今のルイズは未だに恋心をわかっていない……そのためどうすればいいのか分からない……そう言うと男性は優しげな笑みを浮かべる。

 

「なら構わない。ゆっくりわかっていけばいい。とりあえず屋敷に戻ろう。僕が君のお父上に取り計らうよ」

 

そう言ってルイズの手を取る。すると突然の突風が吹き帽子が吹っ飛んだ……そして次の瞬間、

 

「へ?」

 

ルイズは唖然とした……なんとその帽子の下にあったのは……

 

「トーヤ……何であんたが……」

 

ルイズはパクパクしながら目の前にあるその顔に向かって言う。

 

「何いってんだよ。これからお前の父さんに結婚の許しをもらうんだろ?」

「は、はぁ!?結婚!?私とあんたが!?て言うか敬語は!」

「お前こそ何いってんだよ……これから夫婦(めおと)になるのに敬語じゃ変だろ……」

 

そう言ってルイズを抱き上げた闘夜……見てみればルイズもさっきまでの小さな体から成長し今の体にまでなっていた……

 

「さ、行こうぜ」

「ちょ、ちょっと!」

 

ルイズはあたふたするが闘夜は離さない……そしてそっと耳打ちした。

 

「愛してるよ……ルイズ」

「~~っ!」

 

ルイズはボフン!っと顔を真っ赤にし爆発させた……おとなしくなったルイズを闘夜は運ぶ……

 

その後どのような展開になったのか……それはルイズは墓場にまで持っていかなくてはならないのだがそれは余談として……その後、

 

「はっ!」

 

ガバッとルイズは体を起こした……動悸が激しい……今のが夢?そうだ……夢だとルイズは自分に言い聞かせる。事実そうなのだから問題はない……

 

「ん……ルイズ様どうしたんですか?」

 

すると藁を敷いて寝ていた闘夜は目を覚ました……そりゃいきなり隣に寝ていたやつが起き上がったかと思えば息を荒くしていれば目を覚ますと言うものだった……

 

だがこの場合失敗だったと言うべきだったかもしれない。

 

「……こ、ここ……」

「コケコッコ?」

 

闘夜はルイズの顔がミルミル赤くなっていきプルプル震えていくのを見ていた……

 

「こんの!エロ犬!」

「ぶげっ!」

 

突然の蹴りだった……そのため闘夜は反応が遅れ顔面に蹴りを喰らい後ろに倒れた……闘夜は鼻を擦りながらいきなりなんですかと抗議する。すると、

 

「あ、ああああんたね!いい、一体何回すれば気がすむのよ!幾ら犬でも限度ってもんがあるでしょうが!あと結婚しても三ヶ月はダメなのよ!」

「は、はぁ?」

 

闘夜はいきなり何の話なのかわからず首をかしげる……そしてその後よくわからん説教を日が上るまでされるのだった……

 

因みにこれも余談だが……その後正気に戻ったルイズは闘夜の顔を一時的に見れなくなると言う状況に陥ったがこれも闘夜には全く理解できなかったのは……まぁ仕方ない話だ。

 

勿論闘夜は今回悪いことはしてない……敢えて言えば……()()()()()()、のである

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。