「いつつ……」
ワルドとの模擬戦の後……闘夜は宿屋のバルコニーにて顔を顰めていた……ワルドに吹っ飛ばされたときに筋を痛めたらしい。相変わらず脆い体だ。
「何してんのよ」
「あ……」
するとそこに声をかけられ振り替えるとため息をつくルイズがいた。闘夜は困ったような表情を浮かべる。
「あ、いや……ちょっと色々……」
闘夜がそういうとルイズは肩を竦めた。
「別に負けたって仕方ないでしょ?なにせワルドは魔法衛視隊の隊長なのよ?」
「あはは……まあせめて妖力さえ戻ってれば……」
そう……人間でなかったら……まだ行けたはずだ。人間の体だとすぐ痛みで動けなくなるしダメージもうける……妖力があれば耐えられる事もないとできない……
「どちらにしたって元気だしなさいよ。ったく……」
「……もしかして元気付けてくれてます?」
闘夜はボソッとそう言った次の瞬間ルイズの顔がボフン!っと真っ赤になった。
「あ、当たり前でしょ!あんたは私の使い魔!なら何時までもメソメソしない!」
そういうルイズに闘夜は思わず笑いそうになったがここで笑えばひどい目に遭うのは確実だったので黙って頷きだけを返した。
「ほら、部屋に戻る……わ……よ?」
部屋に戻ろうと言言い掛けたルイズの顔面が蒼白になりワナワナと闘夜の背後を指差す。
「ん?」
闘夜はそれにつられるように後ろを見た闘夜の視線の先には……巨大な土の巨人がいた!
「なっ!」
その巨人は声を発することもなく巨大な拳を闘夜とルイズに向けて降り下ろす。
「ルイズ様!」
「きゃ!」
咄嗟に闘夜はルイズを抱えあげるとバルコニーから飛び降りた……屋内に戻る暇はないとの判断だったが今回は正解だっただろう。もし強引に屋内に戻ってもこの巨人のパンチは屋内にまでめり込んで闘夜たちを圧死させかねない。ただ一つ間違いがあったとすれば……バルコニーから飛び降りるにはあまりにも闘夜の体が……いや、人間の体が脆かったと言うところだ。
「ぐぁ……」
「闘夜!」
咄嗟にルイズをかばったため肩から落ちて変な着地の仕方をした闘夜の肩がゴキリ……と嫌な音を鳴らす……
「ぐ……ぐぐ……」
だが闘夜は強引に力業で脱臼した肩を嵌め直した。他人の目から見ても激痛なのはわかるがこのまま放っておくわけにも行かない。妖力があればこんな程度……思わなくもないが悪態をつく暇はない。
急いでそのまま立ち上がると闘夜とルイズは巨人を見据えた……しかし……
「何であんたがここにいるんだ!?」
闘夜は視線の視線の先にいる人物……いや、土くれのフーケに向かって叫んだ。
「お前たちに復讐してやろうと思ってねぇ!」
そう言いながら土の巨人を闘夜たちに向かせるフーケ……そして、
「ほら!うまく逃げなよ!あんまりあっさりやられたんじゃ面白くないからね!」
「くっ!」
闘夜はルイズの手を取ると走り出す。
「ちょ、ちょっと!」
「いいからこっちです!」
闘夜は気づいていないが……ルイズの顔は真っ赤だ。まあそんなことをしている暇もなく二人は縦横無尽に逃げ回ってフーケが作った土の巨人の拳を避け回る。
「二人とも!こっちだ!!」
そこに突然声が響いた……既に聞きなれたその声の主の名はギーシュ。彼は宿屋の中から声を張っていた。それを見た闘夜とルイズは全速力で走る。背後からは巨人の拳が迫る……そして!
「あっぶねぇ!」
二人は宿屋に飛び込み奥の厨房まで下がる……そこにはギーシュだけではなく既にキュルケやタバサにワルドまでいた……
「なんなんだよもう……」
闘夜はひとまず息を整える……疲れた。
「とは言え何時までもゆっくりしてられないわよ」
そういうキュルケ……確かに既にフーケが巨人を操り宿屋に拳を叩きつけた……
「うぉ!」
ずぅん!と言う音と共に屋根が軋む……かなり頑丈に作られたらしいが後二発ももらったら確実に崩れるな……
「仕方ない……二つに別れよう」
「え?」
ワルドの言葉に闘夜は視線を向けた。
「ここに残って囮になる役と裏口を抜けてこの密書をアルビオンに届ける役とだ」
「見殺しにするってことですか?」
闘夜は幾分眼が据わる……だがワルドには効果はない。
「ここで全滅するわけには行かない。私たちの仕事はこの任務を成功させることだ」
「っ!」
闘夜は思わずワルドの胸ぐらをつかもうとする……だがその前にキュルケが声を発した。
「じゃあ私とタバサと……ギーシュでいいわね。この三人で囮になるわ」
「え?」
闘夜は唖然とした……ルイズやギーシュもだ。いや、ギーシュの場合は自分が指定されたことに対する驚きの方が強そうだが……
「だからダーリンたちは行ってちょうだい」
「で、ですけど……」
すると闘夜の唇にキュルケの指が当てられる……シィーっと言う形になりキュルケは笑う。
「大丈夫よ。ね?タバサ、ギーシュ」
キュルケがそういうとタバサは今まで読んでいた本を閉じる。
「問題ない」
そう短く答えたタバサを見てギーシュも腹を決めたらしい。
「ま、ままままままままままかせたまえ!」
全身が震えているが……まあ多分大丈夫だと思いたい。
「ほら、行くわよ」
そう声を発したのはルイズで闘夜を引っ張って立たせる。闘夜も一瞬目を閉じ……信じることにした。
「よし、こっちだ」
そうワルドが言うと二人は続いて走り出したのだった……
「このまま走るぞ!」
裏口を飛び出し走る三人……取り合えずまずはアルビオン行きの飛行船の発着場にいかねばならないらしい。そう言うわけで三人は走る。
先ほど脱臼した肩が痛むが歯を噛んで闘夜は耐える……その時である。
「っ!なんだ!」
闘夜たちの目の前に魔法が飛んできた……咄嗟に止まって避けたが地面がえぐれてることを考えるに相当強力な魔法だ……
「あれは?」
そこに現れたのは仮面とフード付きのマントを羽織った比較的がっしりした体格を考えるに恐らく男と思われる怪しげな人物だった……
そしてそいつは何か言葉を発することなくいきなりこちらに杖を向ける。
「くっ!」
闘夜は咄嗟に背中のデルフリンガーを抜くとルイズの前に庇うように立った……だが次の瞬間相手の杖の先から雷が放たれデルフリンガーを通電していき闘夜の体を焼く。
「か……はぁ……」
闘夜は口から血を吐く……だが半ば気迫でそれに耐えた。そしてそのままルーンを輝かせ思いきり踏み込み相手に向かって飛びかかる……
「るぁ!」
ザン!っと相手をデルフリンガーで一刀両断……しかし相手はローブだけを残しその場にはなかった……切った感触からして……まるで最初からローブの中にはなにもなかったように感じた……
すると、
「トーヤ大丈夫!?」
「立てるかい?」
ルイズとワルドが闘夜のもとに来た……闘夜は大丈夫だと答え踏ん張って立ち上がる……身体中が軋むように痛むが何とか行けそうだ。
「では行こう」
ワルドがそういうと二人も頷き先を急いだのだった……