「ここが何処かですって!?」
ルイズと歩いて来た闘夜が部屋についたタイミングで問うとルイズは「はぁ?」っと声を出しながらそう答えた。
「いや……どうも俺この風景見たこと無いんだよ……」
「あんたどんな田舎から来たのよ……まぁ良いわ、ここはトリステイン魔法学校……そしてあんたは私に召喚されたの、使い魔としてね」
「そもそも召喚とか使い魔ってなんだよ……」
「あんたどんだけ田舎から来たのよ……使い魔って言うのは主人の目となり耳となる……つまりあんたは私の下僕としてここに呼ばれたの」
「あぁー成程……って下僕だと!?俺が?いきなり変なとこに出されて下僕にされたのか!?」
「まぁそうなるわね」
闘夜は膝を折った……いろんな意味でぶっとんだ状況におかれてることを今理解したのだ。
(くそ……何てことだよ……と言うかそもそも魔法学校ってなんだよ……学校ってのはたしか色んな事を学ぶ場所だって母さんから聞いたことあるけど……魔法ってなんだ?)
「なぁ……魔法ってなんだ?」
「……あんた頭大丈夫?」
「自信ない……」
ルイズからかなり本気の心配をされたがこんな状況だ……全くもって自分の頭に自信はなかった。
「魔法って言うのはメイジが使う力よ」
「妖術とか法力みたいなもんか?」
「なにそれ」
妖術じゃないのか?いやそもそもルイズが妖術と言う言葉を知らない感じだ……ますますわからなくなってきた……すると、
「そろそろこっちからも聞かせて……あんたどこから来たのよ」
「ええと……骨喰いの井戸って言うのがある村なんだけど……」
「なにその不気味な名前の井戸……」
あれ?知らないのか?近隣だったら結構有名な井戸なんだけどな……曰く付きって言う注釈つくけど……
「かごめって言う巫女がいるんだ」
「巫女はわかるわ。でもかごめ……誰それ。適当な名前出してんじゃないでしょうね」
「俺の母親じゃい!」
ええと……ええと……あとなんかないのか……まてよ……ここはもしかして母さんの世界なのか?
そう思ってよく見れば服の素材と言うか見た目が和装とは全然違う……ならば!
「日暮神社……って知ってる?」
「ヒグラシジンジャ……聞いたこともないわね」
闘夜はガックシと肩を落とす。もうなんなんだよこれ……なに言っても言葉がまず伝わってない……会話ができてるのが奇跡なんじゃないかって思う位だ……
「はぁ……もう分かんない……」
「俺もだよ……」
お互いドッとつかれた……するとルイズは闘夜の腰に眼を向けた。
「それなに?」
「え?あぁ……俺の刀だ」
「カタナ?」
鉄閃牙を見るルイズに闘夜は答える。だがまた伝わんない……
「ええとな……斬るための武器だ」
と、伝えるとルイズは成程とうなずいた。
「ようは剣ね」
たぶん間違ってないだろうと闘夜はうなずいて肯定した。
「て言うか平民の癖に武器持ってるの?」
「持ってるやつは持ってるだろ……」
戦国時代では農民だって槍や刀を持ってたりすることがあるのだ。闘夜が持っていたって可笑しいことはないはずだ……
「ちょっと見せなさいよ」
「別に良いけど気を付けろよ」
興味を持ったのかそう言ってきたルイズに闘夜は鉄閃牙を鞘ごと渡す……そして少し抜いたルイズは……眉を寄せた。
「うっわ……ただの錆びた剣じゃない……刃も零れちゃってるし飾りも良いところだわ……つうかこんな細いのすぐ折れちゃうじゃない」
「うん……まぁ……」
人間のルイズでは鉄閃牙の本来の姿になることはない。とは言え闘夜もあれから何度か抜いて振ってみたが結局一度たりとも鉄閃牙が化けることはなかった。どうやったらこの妖刀は化けてくれるんだろうか……
「もういいわ、あんたよく分かんないし」
「俺もお前のことはわからん」
と、闘夜が言った瞬間ルイズの目が細くなった……ギクッと闘夜が尻歩行で後ずさる……
「あんたね……そういえば平民の癖に口の聞き方って言うのがなってないんじゃないの?」
「あ、はい……」
こぇええええ……と闘夜は思わず正座してしまった。
「そもそもあんた幾つよ」
「え?十五だけど……」
そう言うとルイズが勝った……と言う表情を浮かべた。
「私は十六よ、序でに言うと今年で十七になるわ」
「えぇ!年上!?」
闘夜は十五年生きてきた人生の中で最もビックリしたと言っても過言じゃなかった。
てっきり闘夜はルイズを勝手に年下だと思っていた……何せルイズは小さい……しかも胸が──ゲフンゲフン!
とにかく年上の女性と言う気が全くしないのだ。それが今年十五になった闘夜と今年十七になるルイズ……つまり最終的に2つ上の少女と言うわけだ。
「年下で下僕の犬何だから言葉遣い……考えたら?」
「分かりました……ルイズ様……」
こんなもんでいいだろうと闘夜は言う。ほら、年上は敬えって言われて育ったしね……しかし犬扱いですか……いや、犬妖怪の血を引いてるのであながち間違っちゃいないのだが……
「ふふん。さぁ、今日はもう寝ましょう」
「俺はどこで寝れば良いんだ?」
「そこ」
そう言ってルイズは藁の山を指差す……そこで寝ろと……別に良いけどね、どこでも寝れれば良い。野宿よかマシだ……と思ってねぇとやってらんない……
「じゃあおやすみ」
「待ちなさい、私は着替えたいの」
「……じゃあ外でまってる」
「違うわよ。ほら、着替えさせなさい」
「はぁ!?」
闘夜はさっき言われた言葉遣いも吹っ飛んだ。なに言ってんのこの子……着替えくらい自分でやれと言いたい。
「下々のものがいるときに貴族は服を自分では着ないものよ」
「…………随分偉いんだな……」
当然とばかりの顔で言われれば闘夜もムッとするものだ……だが……
「明日からご飯あげないわよ」
「で?どの服を着せれば良いんだ?」
ご飯がないのは勘弁願いたい。4分の1妖怪の血を引いていても空腹は辛い。勿論人間よりは耐えられるが好き好んでご飯抜きにされたくはない。
そもそもご飯をくれる人は偉いのだ。
「なに言ってんのよ。脱がせなさい」
「そこからかい」
闘夜は大きなため息をしながらルイズの服のボタンを一個一個はずしていく……凄く……気まずいです。少なくとも闘夜はそうだった……
ルイズは……完全に闘夜を男と見てないので全く反応はない。さも当然と言わんばかりだ。
(うぅ……不幸だぜ……)
闘夜は口をへの字にしながらルイズを無事着替えさせ終わる。
「それじゃあこっちの洗濯物は明日洗っといてね。あと学校があるから朝起こすこと」
「はい……」
精神的にガリガリ削られた闘夜がうなずいたのを見るとルイズはランプを消してそのままフカフカの布団に入ってしまう……そしてそのままクゥクゥと寝息をたて始めた……
「なんなんだいったい……」
闘夜は本日何度めか数えるのも嫌になる疑問だった……とりあえず外の空気でも少しだけ吸おう……
そう思い闘夜は窓を開けた……そして次の瞬間……
「っ!」
空にあった光景に闘夜は眼を見開く……そこにあったのは……
(月が……ふたつ?)
ポカーンとしてしまった闘夜は……もしかしてここ自分が知ってる国とは遠いとか近いとか……そんな次元じゃないのだと何となく察した……
そんな衝撃から次の日……
「ふむ……」
洗濯籠を持った闘夜は外で立ち尽くしていた……朝起きるのは別に良い……そもそも戦国時代では太陽が上がり始めるのと一緒に活動を始め、太陽が沈むのと一緒に本日の活動を終わらせる。あとは夕食を食べたら寝るだけだ。まぁ母の世界だと夜でも明るいので別だが闘夜は早寝早起きはそんなに苦ではない。だが……
「ここどこだ……」
洗濯しとけ……そう言われたのは良いもののルイズが起きる前に片付けようとした結果まず洗い場所がわからないと言うことが判明した。
鼻を利かせてもそれっぽい匂いはない……当たり前か……すると、
「あのぉ……どうかされました?」
「え?」
闘夜が声の方を向くとそこには黒髪の素朴そうな感じの少女がいた……何だろう、どこか懐かしい感じがする子だ。
「あ、いや……怪しいもんじゃなくてだな……」
余計に怪しい……だが少女は何か納得したような表情を浮かべた。
「あ!もしかしてミス・ヴァリエールに召喚された使い魔の方ではないですか?」
「みす・ばりえーる?あ、ルイズ……様のことか」
様付けは実際慣れてない……だが下手な呼び方をするのは相手の怒りを買うと言うのは闘夜何となく理解していた。
「はい、私たちメイドの間でも有名なんですよ?平民が貴族に召喚されたって」
「そうか……」
貴族はわかる……そして多分平民って言うのは貴族以外の奴を言えば良いんだろうと勝手な解釈をしていた。まぁ、あながち間違ってはいない。
「それで何をされてたんですか?」
「あぁ……洗濯をしに来たんだがどこで洗えば良いのかわかんなくて」
「でしたら一緒にいきましょう。ちょうど私も洗濯をしに来たんです」
そう言って彼女は洗濯籠一杯の洗濯物を見せてきた。
「すまん……助かったよ」
そう言って闘夜は彼女に……いや、
「あ、私はシエスタです」
「闘夜だ」
「トーヤさんですね」
そう言って笑うシエスタ……あぁ、突然ワケわかんない世界に出された心の傷を治してくれそうだ……
「あ、ここです」
「随分凝って作られてんな……」
と、闘夜は言う。たしかにこの水汲み場……闘夜の生まれた世界にあった井戸とかにはない細かい装飾が掘ってあった……こういったセンスには疎いと言うか欠けてると言っても良い闘夜でも中々だと思った。
とは言えいつまでも見入ってる訳にも行かないので二人は洗濯を開始した……だが、
「《ビリ!》……あ~」
「ダメですよそんな力をいれちゃ」
と、ルイズの下着を洗ってる最中に千切ってしまった……洗濯板で洗うと言うのは慣れているものの如何せん布地が柔らかすぎるのだ。つまり……ゴシゴシと普段のつもり洗っており、更に闘夜は4分の1とは言え妖怪の血を引いている。なので普通の人間を遥かに上回る膂力を持っているのだ。
そんなバカ力でやればシルクの脆い布地なんぞあっという間にぼろ雑巾である。
「……布がおかしい……」
「トーヤさんが力を入れすぎなんですよ……」
シエスタは呆れ半分……だが同時にどこか楽しそうだ。
「何かおかしいか?」
「いえ、急に使い魔にされたのに闘夜さんは全然辛そうじゃないので凄いなぁって」
「そうか?」
「はい、だって貴族様の使い魔ですよ?私だったら怖くて……」
「まぁ確かにルイズ様のあのオーラは怖いな……」
「そこじゃないんですけどね……」
「え?」
「貴族の方は……と言うかメイジの方は魔法を使います。私たちでは到底太刀打ちできません……なので怒りを買わないように必死です」
闘夜は首をかしげる。まぁ人間が妖怪怖がるようなもんか?よくその辺がわからない。何せ闘夜の周りは妖怪より妖怪じみた人間も居たりするし……楓婆さんとか……あの人って男とか女とかとは別の生き物だよね?
「毎日必死だね」
「何かトーヤさん凄い他人事ですね……まるで貴族の方を知らないみたい……」
まぁそんなわけないですけどねと笑うシエスタに闘夜は苦笑いを返す。下手するとシエスタの言う通りかもしれない……戦国時代にも身分制度はあったが小さな田舎の村であるため特に誰が偉いとかなく育ってる。なのでその辺にシエスタたちに比べ意識が向かない傾向があるのかもしれない。と言うか……
「ムカつくならこう……ぶん殴っちゃえば?」
「デデデデキルワケナイジャナイデスカ!」
シエスタは仰天しすぎて言葉がおかしくなっていた。
「魔法を使われるんですよ!私なんて片手で殺されます……」
そんなもんか……と、魔法を未だに完全に理解してない闘夜はぼんやりと思う。大変なもんだな。それでも、
「こんなもんだな」
二人とも洗濯を終える。後はこれからルイズを起こしにいかなきゃならんしな。
「じゃあなシエスタ」
「はい」
そう言って二人は別れたのだった……
だがこのときは思いもしなかった……シエスタとは……これからも長い付き合いになると言うことを……そんなことを露にも思わない闘夜は洗濯物を片手に鼻唄をしながら部屋に戻っていったのだった……
闘夜は一応年上ならばその相手には敬語を使います。その辺りは周りの人たちにしつけられた……と言う感じです。