異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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裏切り

「これより……式を執り行う」

 

そう言うウェールズの言葉をルイズはぼんやりと聞いていた。

 

闘夜と昨晩のやり取りを経た次の日、ワルドにつれてこられたのはこの礼拝堂だった。成程……昨晩闘夜がいっていたのはこの事かと思いつつも特に抵抗はせずワルドと並んで入りウェールズの言葉を受ける。

 

「新郎、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド殿……汝はこの者を愛し、敬い、妻とすることを誓いますか?」

「誓います」

 

妻とする……そうか、自分はこれからこの人と結婚するのか……そう気の抜けた感情が湧いていた……

 

「新婦・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールも、彼を愛し、敬い、夫とする事を誓いますか?」

「あ……」

 

それを聞いてルイズは正気に戻されたような気になった。

 

結婚……この人と?とルイズはワルドを横目でみた。顔立ちは良い……体も鍛えられているし腕っぷしも申し分ない。家柄も良いし文句のつけるところ何てない……筈だ。

 

なのに何故か脳裏には闘夜が出てくる。笑った顔……困った顔……怒った顔……真剣な顔……喜怒哀楽豊かな表情……

 

確かにずば抜けたイケメンと言うわけではない。いや、別に醜男と言うわけでは勿論無い。よく見れば整った容姿はしているのだが如何せんまだ子供ぽいと言うかあどけなさが抜けきっていない顔立ち……腕っぷしは強いが家柄は低いとかどうとか以前の平民で、チビとか貧相と言うわけではないが長身でもがっしりしていると言うわけでもない体つきにどっかズレてるしガキっぽいし……

 

「新婦?」

「多分緊張してるのでしょう……そうだろう?ルイズ」

 

でも……闘夜は何時だって助けてくれた。何時も自分の味方だったし笑ってくれた……

 

(そうか……)

 

とルイズはストンと何かが胸に落ちたような気がした。

 

そうなのかと……自分は一番近くにいてほしいのはこの人じゃない……一番近くにいてほしいのは……

 

「ごめんなさい……ワルド様。私はあなたと結婚できないわ」

「……え?」

明らかにワルドは狼狽した表情を浮かべた。

 

「ど、どう言うことだ……ルイズ」

「ごめんなさい……でもね、私はあなたとは結婚できない!昔は憧れたかもしれないけど……今は違うの……きゃ!」

 

突然だった。ルイズがそう言うが早いがワルドがルイズの肩を掴んだのだ。

 

「待ってくれルイズ!僕は君が……君の力が必要なんだ!」

そう言って声を荒らげるワルドの眼は何処か不気味で……狂気を孕んだものだった。それを見てウェールズが止めに入る。

 

「ワルド殿……君は振られたんだ。男なら潔く身を引かなければ」

「………………」

 

ウェールズがルイズとワルドの間に割って入り諭す……するとワルドが静かになり……

 

「そうか……ならば悲しいが……計画変更だな……」

「っ!」

 

ワルドがそう呟いた瞬間、ウェールズは無意識に杖を引き抜いていた……本能がワルドを攻撃しようとした……瞬間的にワルドが発した殺気がウェールズをそうさせた……だが……

 

「遅いよ」

「……かは……」

 

ウェールズの胸に深々と突き刺さるワルドのレイピア型の杖……その切っ先はウェールズの背後にいたルイズにも見えていた……

 

「え?」

 

ルイズは理解ができなかった……いや、拒否したのかもそれない……だがそれでもだんだん頭が追い付いてくる……ワルドがウェールズの胸を刺し貫いたのだと……

 

「何で……」

「僕の目的は三つだ……まずはルイズ、君の身柄……次に君が預かったアンリエッタ姫の手紙……そして」

 

懐から出した布で杖に着いた血を拭いながらワルドは言う。

 

「ウェールズ皇太子の命だ」

「まさかあなた……裏切ったの!」

「裏切るもなにも僕は前からレコンキスタと言う真にこのハルキゲニアを愁い、立ち上がった貴族たちが集まる組織の一員さ……」

 

最初から君達の味方じゃないんだよ……とワルドは言いながら杖をルイズに向ける。

 

「レコンキスタ……ですって?」

「あぁ……悲しいよルイズ。君にも是非僕と一緒にレコンキスタの悲願達成を見届けてほしかった」

 

そう言ってワルドは笑う。

 

「い、いや……」

 

恐怖のあまりルイズは腰を抜かしてしまい尻もちをついてそのまま動けなくなってしまう。

 

「助けを呼ぶかい?だが無駄だよ……君を助けるものなんていない。ガンダールヴだってとっくにアルビオンを抜けただろうしね」

 

ではルイズ……とワルドは言い残すようにルイズに語りかける。

 

「さよなら……だ」

「助けて……」

 

ルイズはギュッと眼を瞑った……

 

分かってる……別れを告げたのだって自分だ……来ないのだって……いないのだって分かってる。

 

それでもルイズは叫んだ。自分の……使い魔の名を!

 

「トーヤ!」

「ルイズ様!」

 

ほぼ同時だった……ルイズの声と礼拝堂のステンドグラスをぶち破りながら突入してきた闘夜がデルフリンガーをワルドに向けて降り下ろしたのは!

 

「くっ!」

 

ほぼ反射的にワルドは後ろに跳んだ……そこの入れ替わるように先程までいた場所にデルフリンガーの切っ先が突き刺さる……

 

「ちぃ!」

 

闘夜はデルフリンガーを引き抜きながらワルドを睨み付けた。

 

「テメェ……」

「トーヤ……」

 

ルイズがそう呼び掛けるとワルドから一旦視線をはずし闘夜がルイズをみた。

 

「怪我はありませんか?」

「私は大丈夫だけど……ウェールズ様が!」

「わかってます」

 

全部見えてました……闘夜はそう言うとワルドを再度睨み付けた。

 

「おいテメェ……良くも……その人を……」

 

闘夜は歯が軋む程強く噛み締めた……今まで怒ったこと無い仏のような人生を歩んできたとは勿論言わない……だがそれでも……

 

「ぜってぇ……許さねぇ!」

 

デルフリンガーを構え直すと闘夜は地を蹴る。

 

「テメェは俺がぶったぎる!」

「良いだろうガンダールヴ……まずは貴様だ!」

 

そうワルドが言うと素早く横に跳び避けると呪文を詠唱……

 

「教えてやろう……四大系統の中でも風は最強と呼ばれている……その理由はな……」

 

ユビキタス・デル・ウィンデ……とワルドが唱えた次の瞬間!

 

「なに!」

 

なんとワルドが四体に分身したのだ。

 

「さぁ……どれくらい耐えられるかな?ガンダールヴ……」

 

そういい襲いかかる四体のワルド……闘夜はデルフリンガーを構えて迎え撃つ。

 

「うーん……なーんか忘れてんだよなぁ…」

 

そんなデルフリンガーの呟きは勿論二人に聞こえるはずもない。

「くっ!」

 

四方から襲いかかる魔法に闘夜は防戦一方……ガンダールヴの力で何とかなっているが流石にキツい……

 

「くく!どうしたガンダールヴ!逃げ足だけか!?一人前なのは!」

「ちぃ!」

 

飛んでくる魔法を避けながら闘夜はワルドの隙を探す。

 

「うーん……」

 

その中デルフリンガーはまだ何か悩んでいる……そして、

 

「おい!何さっきから唸ってるんだよ!」

「いや、なーんか忘れてるんだよなぁ……」

 

そう言ってデルフリンガーはまた唸る……そこに、

 

「隙あり……だぞ?ガンダールヴ!」

「しまった!」

 

デルフリンガーに気を取られたところに放たれるワルドの魔法……その次の瞬間こんはデルフリンガーが叫んだ。

 

「あぁ!思い出した!そうだよガンダールヴだ……すっかり忘れてた。いやぁ、年はとりたくねぇもんだ」

「はぁ!?」

 

デルフリンガーが意味のわからないことを言う。すると、

 

「わりぃな相棒!俺もそろそろ本気で行くぜ!」

 

魔法が迫るその時!突如デルフリンガーの錆がとれ、なんと新品同様の剣に変わる。

 

更に、

 

「なに!」

 

ワルドが驚愕するのも無理はない。何故なら分身と共に放った魔法をデルフリンガーが吸収したのだ。

 

「安心しな相棒!あんなちゃちな魔法全部吸い込んでやるさ!」

「お前こんなこと出来るなら最初からやれよ!」

「忘れてたんだよ……」

 

それあったら手を怪我することなかったじゃねぇかと闘夜が言うがデルフリンガーはどこ吹く風である。

 

「ちぃ……インテリジェンスソードの能力を調べておくべきだったか……ならば……」

 

ワルドは小さくなにかを呟くと跳躍……闘夜はそれをデルフリンガーでとめるが……

 

「残念だがこのエアニードルは杖を中心に持続的に発動する魔法だ……さっきのようには吸い込めんぞ!」

「くそ!」

 

ギィン!とデルフリンガーでレイピアを弾いて直撃は避けるが四体同時に襲いかかるワルドの攻撃は闘夜の頬や腕に少しずつ傷を負わせていく。そこに、

 

「相棒!後ろだ!」

「っ!」

「エアハンマー!」

正面から来たワルドの一体のレイピアをデルフリンガーで受けた一瞬の硬直に合わせて放たれたエアハンマーに闘夜はデルフリンガーで防ぐことは出来ず直撃しそのまま吹っ飛び壁に叩きつけられる。

 

「げほ……」

 

胸……と言うか胴体と言うべきか……その辺りに走る痛みから察するに恐らく肋骨が折れたのだろうと理解する。

 

「大丈夫か相棒?」

「あぁ……」

 

口に広がる血の味に不快感を覚えた。それを見てワルドは笑う。

 

「どうしたガンダールヴ……ずいぶん動きが悪いじゃないか……前の方が良かったぞ」

「くっ……」

 

確かに、何か動きが悪い気がする……と言うかなにかが引っ掛かって思ったように動けない感じと言うべきか……

 

「おいデルフ……なんかこう……まとめて吹っ飛ばせるような技はないのか?」

「なにね」

 

魔法を吸い込むだけかよ……と闘夜が呆れた……

 

すると、ドクン!と体が脈を打つ感覚が襲いかかる。この感覚は……まさか!

 

その時、

 

「ファイヤーボール!」

 

ボン!っと爆発音と共にワルドの分身がいったい消し飛ぶ。

 

「や、やった!」

 

ルイズの声が響いた次の瞬間起きた失敗魔法の爆発とはいえ相当な破壊力をもつ。それでワルドの分身を一体でも破壊できたことにルイズは歓喜した。

 

だが、ちっ!……っとワルドは舌打ちをすると杖を一振りし、

 

「きゃあ!」

 

闘夜に放たれたものより威力はないがルイズを後方に吹き飛ばし意識を奪うには十分すぎるものだった。

 

「全く……大人しくしてれば良いものを……」

 

そうワルドは吐き捨てた次の瞬間!

 

「っ!」

 

ゾクリ……と背中に走る悪寒。魔法衛視隊として様々な任務に当たってきたからこその歴戦の戦士としての勘のようなものがワルドに危険信号を発した。

 

「おい……テメェの相手は……俺だろ?」

「っ!」

 

声の方向を……闘夜をみたワルドは自分の眼を疑った。

 

何故なら闘夜の変化である。突如闘夜の爪と牙が伸び、鋭くなっていく……更に、先程まで真っ黒な髪は一気に白髪へと変わる。恐らく今バンダナで隠しているがその下はルイズの大好きな犬耳が生えているだろう。どれも父親から受け継いだ特徴……そう、

 

「忘れてたよ……妖力を失うときは突然だけど戻る直前ってちょっと不調になるんだって……」

 

そう言って闘夜はデルフリンガーを左手に持ち変え鉄閃牙の鍔に手をかける。

 

(こいつをぶっ倒すため……ルイズ様を守るため……力貸せ!)

 

ギャン!っと一気に鉄閃牙を鞘から解放……闘夜の想いに応え真の力へと変化した鉄閃牙とデルフリンガーを交差させ妖力を取り戻した闘夜はワルドを睨み付けた。

 

「さぁ!今度は全開で行くぜ!」

 

そう叫ぶと闘夜は鉄閃牙を振り上げワルドに向け駆け出した……

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