異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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失われた系統

「ルイズ!」

「姫様!」

 

ヒシッと抱き合うルイズとアンリエッタ……それを遠目に見つめる闘夜の三人が城にある謁見室にいた。

 

「よく無事に帰ってきてくれたわね……ルイズ、それに使い魔殿……ってあら?使い魔殿髪が……」

「え?あぁ……ちょっと色々ありまして……」

 

あははははと闘夜は苦笑いしルイズも冷や汗を垂らす。だがアンリエッタも深く追求することはしなかった。

 

さて、アルビオンを脱出した闘夜たちだったが勿論そのまま学園に帰るわけにはいかない。アンリエッタに今回の事についての報告がある……と言うわけでまずはトリスティンのアンリエッタがいる城にタバサの使い魔でやって来たのだ。やって来たさいにも一悶着あったのだが……まあそれは割愛しよう。

 

とは言えだ。全員でぞろぞろ行くわけにもいかないしキュルケとタバサは実際に何を目的にしていったのか秘密なままなのだ。まあ言うわけにもいかないしそう言ったことに敏感なキュルケに言うわけにいかない……

 

と言うわけで前述の二人以外は外で待機しルイズと闘夜だけで報告に来たのだ。

 

まあ闘夜に報告する話術は持ち合わせていないのでその辺は全てルイズが担当する……しかしこの人ずっと気を失っていたはずなのに城に到着した途端目を覚ました……もしかして起きていたのか?いや、だとしたら普通に起き上がるだろうし……

 

等と闘夜は考えていた中報告は行われる。勿論手紙を回収したと言う話だけではない。ウェールズが死んだこと……そしてワルドが裏切り者だったことを話す。

 

それを聞いたアンリエッタの動揺は闘夜の目で見ても明らかだった。

 

「そんな……まさか魔法衛士隊に裏切り者が……」

 

裏切り者なんて居ないだろう……何処かでそう思ってしまった自分がいた。信用できる者が居ないと言いつつも……いや、居なかったからこそ思ってしまった。誰かを信じたいと言う想い……

 

当たり前だろう。彼女はまだ17の少女だ。人生の酸いも甘いも知らぬ……男にその柔肌を預けたこともない少女だ。そんな少女に裏も裏まで見抜く目や全てを疑って掛かり、的確な指示を出す精神力を求めるのは余りにも酷だ。

 

だがそれでも自分を責めた……ウェールズを殺したのは自分だと……それをルイズは黙ってみているしかなかった……その時である。

 

「あの、姫様……」

「?」

 

闘夜に声をかけられアンリエッタは顔を向けた。その目は悲しみで赤くなっている。

 

「トーヤ?」

 

ルイズも何事かと言う目で見てくるなか闘夜はポケットから一つの指輪を取り出す。それを見てアンリエッタとルイズは驚愕した。

 

「風のルビー……」

「えぇ……なんか形見くらいあった方がいいかなって……」

 

普通こういう場合はもっとその人物らしい物を持ってくるものだ。だがこれはあくまでアルビオン王家に伝わる宝ではあってもウェールズを表すものではない……だが闘夜なりの気遣いにアンリエッタは頬笑む。

 

「あと、ウェールズ様は姫様のことを大切に思ってました……」

「え?」

 

闘夜からの言葉に再度アンリエッタは驚く。

 

「生きててほしいって……それだけが望みだって……」

 

その言葉にアンリエッタは視線を揺らし……それから気丈に笑って見せた。

 

「ありがとうございます。使い魔殿」

 

そう言って風のルビーを指にはめつつアンリエッタは表情を引き締める。

 

「ならば……生きねばなりませんね……」

 

そういうアンリエッタの顔は……何処か儚げで、悲しげで……何処か感情を必死に殺すような……そんな表情だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん……名城と言われたニューカッスル城もこうなっちゃただの瓦礫の山だね」

 

闘夜達が無事にアルビオンを脱出してアンリエッタに報告を終えてから一週間ほど経った地でそう言って息をつくのはフーケだった。

 

「なにか思い入れでも?」

「別に?」

 

かけられた声にそう短く答えつつ声の方を見ると彼はいた……全身を包帯でグルグル巻きにし、杖を突いて歩く男……ワルドである。

 

闘夜の風の傷を食らったワルドはどうにか生き延びたもののその後意識を失い全身には大勢の水のメイジと多くの秘薬を使ってもなおまだ傷が残っている……そもそも目が覚めたのだって昨日今日の話だ。

 

それでいて杖を必要とするとはいえ立って歩いてここまでくるのだからたいした生命力である。と言うかここまでくると執念……いや、こいつの場合怨念に近いなにかを感じざるを得なかった。

 

片腕を失い……瀕死の重傷を負い……それでもなおこの男を動かすのはなんなのだろうか……自分には想像もつかないなにかがこの男にはあるのだろうとは思うがそれは分からない。

 

まあそれよりもだ……

 

「この辺りかい?」

「あぁ」

 

フーケとワルドは別になんの用事もなくここに来た訳じゃない。ここに来たのはウェールズ達の遺体を探しに来たのだ。

 

いや、それだと正しくない。正確にはウェールズ達の遺体が持っているはずの件の手紙を探しに来たのだ。

 

ワルドにしてみればこの手紙さえ回収できれば目的の達成としては十分なのである。まあこれだけの攻撃を受けたのだ。ワルドとしては闘夜もルイズも生きてるはずはないと思ってここにいた。

 

「しかし仮にも婚約者だったんだろ?いいのかい?心は痛まないのかい?」

「そんな心は忘れたよ」

 

魔法で瓦礫を退けながら言うフーケにワルドはそう短く答えた。その目に感情はない……ただ淡々とそれを見ていた……だが、

 

「穴……だと……」

「穴だね」

 

瓦礫を避ける最中にウェールズの遺体は見つけた。だがなぜか闘夜とルイズの遺体がないと思っていた矢先……これである。

 

「この穴から逃げたようだね」

「くそ!」

 

ワルドは杖を突きながら穴に近づく……穴に近づくと分かるが風が抜けている。恐らくこの穴はアルビオンの裏側……つまり空に繋がっているのだろう。

 

「意外と激情家だね」

「からかうな……」

 

フーケがククク笑うとワルドが睨み付けてくる。おぉ、コワイコワイ何て言っていると……

 

「見つかったかね?ワルド君」

 

突然かけられた声にフーケが眉を寄せながら振り返る。

 

「閣下……」

 

そう言ってワルドが膝をつこうとするのをいきなりやって来た男は制する。

 

「傷に障る。そのままで構わないよ」

 

見た目は……若くもないがそこまで老け込んだ感じもない普通の司祭だ。だがワルドの反応を見るにワルドの上司……いや、閣下と呼んでいたと言うことは此度の反乱で勝利を納めた貴族派トップか?

 

「私はオリヴァー・クロムウェル……貴族派であるレコン・キスタの総司令官を担っている。よろしく頼むよ、ミス・サウスゴータ」

「よくご存じですこと」

 

そうフーケがまだ貴族だった頃の呼び名で呼ばれるとクロムウェルと名乗った男は頬を上げる。

 

「私の知らぬアルビオンの貴族はおらんよ」

 

そう豪語するクロムウェル……そんな男のフーケの第一印象は、【信用ならない】であった。だがワルドはそんなフーケを他所に報告を行う。

 

「申し訳ありません。手紙を奪うことは叶いませんでした……」

 

だがクロムウェルはにこにこと笑ったままだ。

 

「構わぬよ、まだ策はある」

 

そう言ってクロムウェルは今は遺体となったウェールズの元に寄る。

 

「ふむ……生前の彼からは嫌われていた……だがこうなってしまうと愛着のようなものすら感じるよ」

 

そんなことをいうクロムウェルにフーケは気持ち悪さのようなものを催した。そんなときだ。クロムウェルはなにかを思い付いた表情を浮かべる。

 

「そうだな、やはり彼がいないのは寂しい……」

 

そう言ってクロムウェルは腕を伸ばす。その手につけられた指輪が光を反射する。

 

「何を……」

 

フーケが怪訝な目で見るとクロムウェルはフーケを見た。

 

「ミス・サウスゴータ……魔法の系統は言えるかね?」

 

そんな言葉にますますフーケ怪訝な目を向けた。メイジとして知らぬはずがなかろうと……

 

「火、水、土、風……あとはまあ失われた虚無の五つだろ?」

「そう……だがひとつ違う。虚無は失われてなどいない」

「はぁ?」

 

フーケはポカンとした……虚無は失われた系統である。それはメイジであれば……いや、メイジでなくとも多少でも魔法について知識があれば知っている極々普通な常識である。それを真っ向から否定するとは……

 

「驚いているね……だが仕方ないことだ。私とてこの力を知ったのは極々最近だ……だが私は確かに授かったのだよ。始祖ブリミルより授かりし伝説の魔法……《虚無》をね!」

 

その時だった。その時指輪がカッと輝きその眩しさにフーケは目を細め……そして次の瞬間我が目を疑った。何故なら、

 

「久しいな……司教殿……」

「久し振りだねウェールズ君。だが今はレコンキスタの総司令官で新生アルビオンの皇帝となったのだよ」

「それは失礼した……陛下」

 

フーケはその光景を信じることができなかった。一瞬幻術かなにかにかけられた気分だった……何と突然さっきまで死んでいたはずのウェールズが目を開け起き上がったあげくに流暢に会話を始めたのだ。魔法で遠隔操作をしているのとは訳が違う。会話を行うなど……まるで生き返ったかのようではないか。

 

「これが虚無だよ」

 

そう言って笑うクロムウェルにフーケは不気味さしかなかった。

 

「さぁ、行こうか……新生アルビオンの誕生祝いをしにね」

 

そう言ってクロムウェルはウェールズを引き連れ歩き出す。それをフーケとワルドは後ろから見る。

 

「あれが……虚無なの?」

「多分な……元々虚無は生命に関与する魔法だと言われている。その気になれば死人に命を吹き込むなど造作もないことか……」

 

ワルドはそう言って頬尻をあげた。

 

「もしかしたら……俺達も虚無の魔法によって動かされているだけの存在なのかもな」

「やめてよ。冗談じゃないわ」

 

フーケはそう返しつつワルドに問う。

 

「ねぇ……あの男は一体何が目的なの?」

 

そう聞くフーケにワルドは歩き出しながら答える。

 

「聖地の奪還さ……」

「聖地って……あのエルフが守ってるやつかい?」

「あぁ、貴族同士が団結し聖地を奪還する……それがあの方の願いだ」

 

ワルドにそうかえされフーケは成程と頷いた。

 

別段フーケはそこまで根強い信者ではないので興味はないが聖地とはブリミルを進行するものにとって重要な場所なのだ。それを取り返したいと思うのは……まぁあるのかもしれない。

 

「あんたもその口かい?」

 

ワルドにフーケがそう言うとワルドは一瞬思案し……そして、

 

「わからん」

 

と、言った。フーケが首をかしげるとワルドは続けて、

 

「ただ、聖地には俺が探し求めた答えがあるかもしれない……それだけだよ」

 

そう言ってワルドは完全に黙り混むとそのまま歩きだしてしまう。

 

(あんたの執念の正体……ってやつかい?)

 

フーケはそんなことを内心呟くと、黙ってワルドに着いていく……

 

新たな悪意は……着々と闘夜たちの元に忍び寄っていた……

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