異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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竜の羽衣

「見えてきましたよ!」

 

シエスタがそう叫ぶと闘夜、ギーシュ、タバサ、キュルケが顔をあげた……

 

現在このメンバーはとある村を目指しタバサの使い魔の背の上にのって移動している。

 

しかし何故お宝探しにシエスタまで同行しているのかと言うとだ……

 

まあざっくり説明すれば昨晩の貴族になれと言うキュルケに猛反対をしたのをきっかけに口論が勃発。その様を途中まで男性陣+タバサは静かに見守っていたが、闘夜としては何故ここまで反対するのかは終始分からなかったものの実際問題お金がないためこのままシエスタに食事をいただくヒモ生活を送るのはどうかと思うので金が入るなら欲しいと言うとキュルケが「勝った……」と言わんばかりの表情を浮かべたが、シエスタはそこで諦めなかった。

 

ならば自分もついていく!と言って来たのだ。休みくらいマルトーさんに頼めばいくらでも融通してくれると、更に聞けばこの地図に記される場所……何とシエスタの実家らしい。しかもお宝もよく知っていて(と言うかお宝の現所有者がシエスタのお父さんだと言うから驚きだ)自分を通せば譲ってもらうことも可能だと言うことだ。勿論これには全員(話し合いに参加しないタバサは除く)が最初は待て待てと待ったをかけた。外には危険が多い。勿論移動はタバサの使い魔で移動するもののそれでも危険は伴う。自衛の手段がある自分達は良いが何の戦闘手段もない彼女を連れていくのは言うまでもなく危険を伴う。だがシエスタはそれでも諦めなかった。自分が一緒なら実家に泊まらせてもらえるように掛け合える。幾ら貴族でも突然行って泊まらせてもらえる場所はないと……

 

確かにそうなると自然に野宿になってしまう。闘夜は平気なものの流石に野宿は……となってしまうのがキュルケと特にギーシュである。

 

ならば仕方あるまい。と言った形でシエスタの同行が許されたのだった……因みに、

 

「そういやギーシュ様も行くんですね」

「面白そうだからね」

 

何て会話もされたとかされてないとか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ……まあ構わんよ。村の中にはありがたがって拝むものもいるがそんなもんでもないしな……」

 

そうシエスタと話す黒髪の男性……彼がお宝の現所有者でありシエスタの父親である。

 

さて、シエスタの故郷に無事到着し 、シエスタの案内のもとやって来た。内心幾ら娘からの頼みとは言え譲ってもらうことが本当にできるのか心配だったものの実際はお宝と言ってもシエスタのお父さんにとっては邪魔になってるだけのようだった。

 

と言うわけでその後お父さんから案内を言い渡されたシエスタの案内のもと歩いていく。

 

タルブと言うらしい、のどかなこの村を歩いていると穏やかな気分になった。心が洗われるようだ。そうしているとシエスタが、あそこだと言う。それを闘夜が見てみると……

 

「え?」

 

闘夜は呆然とその先を見た……そこにあったのは朱色に塗られた鳥居である。母方の実家でいやと言うほど見たそれはこっちに来てから全く見ていない。

 

そんな闘夜の驚きを余所にキュルケたちは会話をしている。

 

「そもそもなんであなたの家が宝物を持ってたの?」

そう聞くキュルケにシエスタは苦笑いを浮かべた。

 

「本当は私の曾お祖父ちゃんの持ち物なんです」

 

何でもシエスタが言うには昔そのお宝に乗って現れたのが曾お祖父ちゃんらしい。彼は自分は空からそのお宝に乗ってやって来たと言ったが相手にされず空も飛べなくなったそのお宝と共にこのタルブの村に住み着いたらしい。その後シエスタの曾お祖母ちゃんと結婚し……今に至る。

 

「空を飛べるマジックアイテム……ってことね。面白そうじゃない」

 

そうキュルケが笑うがシエスタは苦笑いから申し訳ない顔になる。

 

「いえ……それが飛べないんです」

「は?」

 

キュルケはポカンとする……シエスタはそれを見ながら言葉を続けた。

 

「曾お祖父ちゃんは真面目な方だったんですけどそのお宝に関してだけはボケていたんだろうと言われてます」

 

そう言いながら着いた寺院につくとシエスタは持ってきた鍵で扉を開ける。

 

「どうぞ、これがお宝の……【竜の羽衣】です」

『……………………』

 

全員がポカンと口を開けて固まった。なにせこの形状……鉄の塊に翼をくっつけたような形状は明らかに飛ぶ形ではない……

 

「確かに……悪いけどあなたの曾お祖父さんは少なくともこの一点だけは……ホラを吹いたようね」

 

キュルケがやられたわ……と頭を掻く……他の面子も似たようなものだ。いや、一人違う反応したものがいた。それは……

 

「たしかこれって……」

 

闘夜である……何故驚くのか?それは闘夜はこれを見たことがあった。前にテレビと言うやつでやってた特番みたいなもので見たのだ。

 

闘夜は【竜の羽衣】の近づく。それからゆっくりと触れてみると左手のルーンが輝き脳内にこれについての情報が入ってくる。やっぱりだ……間違いない。

 

「これ……多分本当に飛びますよ」

『え?』

 

闘夜の言葉に皆がポカンとする。

 

「燃料切れを起こしてるのか……そりゃ飛ばないわな……」

 

闘夜は一人で納得し他の皆はこいつ何をいってるんだ?みたいな目で見るが気づかない……目の前にある物に闘夜は目を奪われる。

 

これはこの世界のものじゃない。闘夜にとって2度目の出会い……とは言え前の出会いでは闘夜は理解していなかったがこれは違う。理解した上で……これを見ている。

 

何故こんなものがここに……と、闘夜は【竜の羽衣】……いや、【ゼロ戦】を見ながら呟いたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海軍少尉……佐々木武雄……異界ニ眠ル……か」

 

闘夜は一人呟く……その目の前には日本式のお墓が置いてあった。更にそこには今闘夜が読んだ日本語が刻まれている。こっちに来て初めての日本語だった……

 

「はぁ……」

 

まさかの展開だと闘夜は頬を掻く……生まれてはじめてこっちで自分が住んでいた場所と同じ人間がいたと思えばもう亡くなっていたとは……しかもここで自分の人生まで全うして。

 

これではまるで帰ることはできないと言われているようで嫌になる。

 

さて、今何故闘夜がさっきの場所とは違うところにいるのかと言うとゼロ戦を見た後他に曾祖父に関するものはないか聞くとここを教えてくれた。日記をつけるような人でもなく彼に関する物はこれくらいらしい……その際に今と同じように他の面子が読めなかった文字をスラスラ読んで驚かれたが闘夜の心境はそれどころじゃなかった……

 

(帰れない……訳じゃないんだよな?)

 

闘夜の胸に不安が押し寄せてくる……ずっとどうにか帰れるもんだと信じて疑ったことはない。きっとこの人はこの世界が気に入ってしまい住み着いただけなんだ……そう闘夜は自分に言い聞かせた。

 

「トーヤさん……」

「シエスタ?」

 

文字は読めないしお宝も肩透かしを喰らってしまったため闘夜以外の面子はシエスタの案内の元シエスタの実家に戻っていた。闘夜だけはもう少しここにいたいと言って残ったが、シエスタが戻ってきたらしい。

 

「お父さんから伝言があって……」

「伝言?」

 

闘夜が首をかしげるとシエスタは口を開いた。

 

「はい、もしこのお墓の文字が読める人がいたらその人に譲って欲しいと言うことと……それを陛下に返して欲しい……そう言い残したそうです」

「そうか……」

 

まあ元々もらう予定だったが闘夜以外は興味がなくなったようだし偶然にも闘夜に所有権が回ったらしい。しかし陛下って誰だ?

 

何て闘夜は首をかしげた。そこにシエスタが……

 

「曾お祖父ちゃんは自分のことを話しませんでした……小さい頃に遊んでもらった記憶がうっすらあるんですけど……顔ももう覚えてません。ただ……優しい人だったのだけは覚えてるんです」

 

闘夜は静かにその言葉を聞き……口を開く。

 

「多分……シエスタの曾祖父さんは……俺と同じ国の人だ」

「え?」

 

闘夜の言葉にシエスタは目を見開く。

 

「この文字も知ってる。あの竜の羽衣もテレビで見た……間違いないと思う」

「そんな……」

 

闘夜はここで合点がいった。シエスタがいると何か落ち着いたり懐かしさを覚えたのは……彼女は自分と同じ国の血を引くものだったからか……

 

「何か……運命を感じちゃいますね」

 

シエスタの言葉に闘夜は少し笑う。運命か……

 

「だけど……何かこういうの見ちゃったらちゃんと帰れるのか……心配になってきたよ」

「ならここに居ませんか?」

 

闘夜の呟きにシエスタは素早く返す……その素早さに闘夜はポカンとしてしまった……

 

「え?」

「トーヤさんがよかったら……ここに住みませんか?ここなら平和ですし……もうミス・ヴァリエールの使い魔をクビになっちゃったんですよね?でしたら……問題ないと思うんです」

 

その言葉に闘夜は口をパクつかせることしかできなかった……でも確かに学校に戻ってもテントで暮らすしかなく、居場所なんかない……確実性のない帰る方法を探すよりここでゆっくりとするのも選択肢なのかと闘夜は思った。だが……

 

「でもごめん……やっぱまだ……」

「そう……ですか……」

 

まだ諦めたくない……暗にそういうとシエスタも何となくわかっていたような顔をした。

 

「でもありがとな……やっぱシエスタは優しいわ」

 

そう笑う闘夜にシエスタも目を細めて笑う。

 

「トーヤさんだけにですよ。ここまで面倒みたくなっちゃうのは」

「俺だけ?」

 

闘夜は驚いたような顔をするとシエスタはゆっくり頷く。

 

「本当はですね。私はトーヤさんにここにと言うか……私と一緒にいて欲しいんです」

「……………………え?」

 

闘夜はシエスタの言葉が理解できなかった……一緒に自分と?どう言うことだ?そんな風に慌てる闘夜にシエスタはクスリと笑う。

 

「私トーヤさんが好きです。勿論、一人の異性として」

 

そこまで言われ闘夜はやっと理解した。自分は今、シエスタから告白されてるのだと……

 

「だから改めて言います。トーヤさん……私と一緒にここに住みませんか?」

「それ……何かあれだな……ええと……」

 

混乱のせいでこの場に適した言葉があったはずなのにでなくなったが シエスタが「プロポーズだと取って良いですよ?」と言い、そうそうプロポーズだと合点する。そしていや合点してる場合じゃねぇと正気に戻った。

 

どうすれば良い?勿論シエスタは嫌いじゃない、だが……

 

「その……ごめん……俺シエスタをそういう風には見てなかったから……」

「えぇ、だから言ったんです」

 

シエスタにまた素早く返されてしまう……ええと、

 

「お、俺年下だし……」

「気にしません」

 

うぅ、また返される。でもだ、ちゃんとここは言っておかないと……

 

「その……きっと俺よりシエスタにはいい人が現れるよ……だからさ」

 

闘夜がそこまで言うとシエスタがピシャリと声を出す。

 

「私は!トーヤさんが!好きなんです!」

「っ!」

「今の私はトーヤさんが好きなんです!そんな来るか来ないかも分からない未来より!今出会って今話して……そうやって惹かれた貴方が良いんです!」

 

闘夜はグッと口を噛む……とりあえずシエスタを怒らせてしまったのはわかった。でも……

 

「でも俺は……やめたほうがいいよ」

 

闘夜はそう言って頭のバンダナに手をかけ……そして一気に引っ張って外す。

 

「え?」

 

シエスタはその下にあったものに目を奪われた……頭からピコピコと動くそれは犬耳。普通の人間では生えない物にシエスタは驚きを隠せなかった。だが、

 

「触って……良いですか?」

「あ、うん……」

 

ソッと触れられた感触が妙に気持ちよく闘夜は目を細めた。

 

「俺は人間じゃない……人間と半妖の間に生まれたクォーターってやつなんだ」

「そうなんですか……」

 

シエスタは手を離し、そして笑う。

 

「それがどうかしましたか?」

「っ!」

 

闘夜は目が点になった……それを見てシエスタは優しげな目になる。

 

「ハンヨウ?と言う言葉はわかりませんが関係ありません。私は貴方が好きです」

 

ただ、それだけ言う。闘夜を見つめてそう言う。シエスタの目には嘘偽りはなかった……

 

「でも……」

 

そこまで言った闘夜の唇をシエスタは自分の人差し指で抑えた。

 

「でも……とか、だけど……は欲しくありません。トーヤさんはどうなんですか?」

「俺は……」

 

シエスタの声と吐息はクラクラするほど甘く、切ない。

 

と言うかである。ここまで言わせて良いのだろうか、と思う。ここまで言わせて……振って良いのか?と思う。

 

いや、帰らなきゃいけない身空である。答えていいわけがない……でも、ここまで自分を思ってくれる女の子がいた。ある意味運命に導かれた出会いじゃないだろうか?ならその運命に乗ると言うのもあるのかもしれない。なら……

 

《トーヤ!》

「っ!」

 

そうどこかで思ったときだった……闘夜の脳裏にフラッシュバックしたのは桃色の髪を優雅に揺らし自分を呼ぶルイズの姿……

 

(ダメだ……違うだろ……)

 

闘夜は自覚ないままそう内心で呟き……そして、

 

「ごめん……やっぱり俺は帰らなきゃいけないから……親もいるし」

「…………わかりました、ごめんなさい。こっちも強引に言っちゃって」

 

そうすれば心変わりしてくれるかもしれないって思ったら欲が出ちゃいました……そう困ったような顔をするシエスタの笑みに闘夜も釣られる。だが、

 

「でも……本心は違いますよね?」

「え?」

 

シエスタの言葉に闘夜は何故か分からないがギクリとした。別にやましい事はないはずなのに……しかしそれを見たシエスタはため息をひとつ吐いた。呆れ……とは違う。これはなにかを悔しがってる?

 

「そっか……まあ……ね。でも……」

「シエスタ?」

 

シエスタがぶつぶつなにかいってるため闘夜が近づくとシエスタは慌てたような様子だ。

 

「あ!何でもないです。ただ……トーヤさんは気づいてないみたいだからまだ勝ち目あるなぁって」

「勝ち目?なんの話だ?」

 

闘夜が首をかしげるとシエスタは悪戯っぽい笑みを浮かべ、

 

「秘密です。私は敵に塩を送るほど優しくないので」

「え?え?え?」

 

闘夜はますます分からない、といった風に首をかしげた。するとシエスタは遠くの彼方を指差す。

 

「そういえばトーヤさん。アレ何かわかりますか?」

「どれ?」

 

闘夜はシエスタの指差す方に顔を向けた……次の瞬間!

 

《チュッ》

「……はい?」

 

闘夜の頬に柔らかいものが当たった。一瞬過ぎて反応が遅れたが、今のって……

 

「もし……本当にトーヤさんが帰るなら……私はそれについて行きます」

 

いつのまにか闘夜の目の前にはシエスタの顔があった。

 

「トーヤさんが嫌じゃないなら……ですけど……何処まででも付いていきます」

 

ギュッと闘夜の腕をシエスタは握る。

 

「私……諦めませんよ?」

 

これでもけっこう惚れたら一途なんです……そう言って頬笑むシエスタ。

 

「うん……」

 

闘夜はその笑顔をまっすぐとは見れず、目を逸らしながらそう答えたのだった……

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