異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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授業と爆発は付き物

と……言うわけで闘夜とルイズは現在教室にいた……闘夜は知らないのだがそこは現代で言うなら大学と言われる場所に似た作りの教室で大勢の男女が座って予習していたり友人と雑談に興じたりしていた……今朝会ったキュルケも大勢の男に囲まれている。モテモテなことだ。すると目が合いこっちに片目をパチンっと瞑って合図を送ってきた。闘夜も手を振って返すとルイズに足を踏んづけられて飛び上がる……ほんとに口より先に手が……いや、足が出る人だ。

 

さて……とはいえそこには人間以外のものも多数いる。梟やらネズミやら見たことない妖怪みたいなやつ等々……外にもこの部屋に入れないだけでたくさん同じようなのがいそうだ。無論……闘夜みたいなのは居ないが……

 

「妖怪多いんですね……」

「溶解?何を溶かすの?」

 

ルイズにこっそり言うと闘夜はずっこけそうになった。

 

「そっちじゃなくてだな……ええと……人間じゃないのが多いんですね」

「そもそも人間はあんただけでしょ」

 

ルイズは大きなため息を吐いた……なんだってその例外が自分なのかと……

 

だが闘夜は当たり前だが人間ではない。なのでルイズの指摘が外れているが態々指摘するのもなぁ……闘夜には一発で自分が人間じゃないと言うことを教えることができる特徴があるのだが……あんまりそういうのはしたくない。人間と思われているならそのままでいて貰いたい。

 

闘夜が住んでる村は妖怪も居たり父の例もあるためあまり闘夜は差別されなかった……だが隣の村の人間やその他の者達から歓迎されていたわけでもない。四分の一とは言え妖怪の血を引き一見人間にも見えるが一部が半化けと呼ばれる状態の姿……奇異の眼を向けられなかったと言ったら嘘になる。だからこそなのか……闘夜にはルイズと言う少女が自分と同じく差別されていると言うのを敏感に感じていた……

 

するとそこに少し太った女性が入ってきた……

 

「どうも新二年生の皆さん。私はミス・シュヴルーズです。皆さん其々使い魔を召喚できて良かったと思います……一人ばかり個性的な使い魔がいらっしゃいますが……」

 

そう女性が言う……長年勤めているが平民を召喚すると言う事案は初めてだった。無論召喚が成功しているので進級はしたが教員の中でもトップクラスの話題となっていた。

 

すると、クラスがドッと沸く。

 

「おい()()()()()()!召喚できなかったからって平民やとってんじゃないぞ!」

「はぁ⁉ちゃんと召喚したわよ!」

 

仮にもやっと召喚したのだ。自分の魔法の成功例とも呼べるものをバカにされればルイズはブチッとキレる。そもそもルイズはそこまで気の長い性格ではない。姉たちや母に父といろんな人物に指摘され続けたが治らなかったこの短気さはバカにしてきた小肥りの男に今にも掴み掛かろうかとした。無論その前に闘夜が慌ててストップをかけたが……

 

「離しなさいトーヤ!この風邪っぴき男には体に教えたるわ!」

「誰が風邪っぴきだ!僕は風のマルコルヌだ!」

 

そう言って一触即発の空気になった瞬間……

 

「おやめなさい!それ以上騒がしくするならその下品な言葉を出す口に粘土を突っ込みますよ!」

 

そう女が言った瞬間シン……っとその場が静かになった。

 

「ゴホン、それでは授業を始めます、魔法には【火】【水】【風】【土】に失われた系統である【虚無】を含め5つあるのは皆さんも既にわかっていることでしょう」

 

へぇ~魔法って種類があるのかと闘夜は感心する。闘夜は結構父に似て珍しい物や初めて見るものには結構興味津々なのだ。

 

「特に土は私達の生活に身近な存在と言えるでしょう。あ、私が土系統のトライアングルメイジだからと言うわけではありませんよ?」

 

そう言って女は机の上に石を出した。

 

「土の魔法に置いてもっとも基本的且つ象徴的な魔法はやはり【錬金】でしょう」

 

そう言ってなにかぶつぶつ呟くと次の瞬間闘夜は眼を見開いた……何せ一瞬石が発光したかと思うと瞬きほどの一瞬の間にその石は姿を変えていたのだから……

 

(七宝兄さんが使うような幻術か?)

 

と、闘夜が首をかしげるとキュルケが立ち上がった。

 

「も、もしかしてゴールドですか!?」

「違いますよ、これは銅と亜鉛の合金……真鍮です」

 

そう返されるとキュルケは詰まんなそうに座った。それを見届けながら先生は講義を続ける。

 

「ゴールドを錬金するにはスクウェアクラスのメイジでなくてはなりません。私はトライアングルなので真鍮ですね」

 

闘夜はそっとルイズに声をかける。

 

「ルイズ様、さっきからあの人がいってる【すくえあ】とか【とらいあんぐる】ってなんですか?」

「【スクウェア】と【トライアングル】よ馬鹿。メイジはね、実力によってはいくつかの系統を累乗させたり合わせたり出来るの。例えば一つしか使えないなら【ドット】、二つなら【ライン】ってね」

 

よ、良くわからなかったがとにかく魔法が上手な人なんだと闘夜は納得することにした。いやはや中々難しい……そこでふと闘夜は思った。

 

「ルイズ様は何個合わせられるんですか?」

 

そう聞くとルイズの表情が固まった……その上眉もひくひく動く……眼のハイライトは消え闘夜を見据えて離さない……眼も幾分細くなった……

 

(ヤバイ……)

 

闘夜は本能的に悟った……今自分は超が百個くらい付きそうな位強力な地雷を思い切り踏んづけたと言うことを……完全に話題の選択をミスったのだと……

 

殺される……そう咄嗟に思った。だがそこに、

 

「オホン!」

『あ……』

 

女がこっちをみて咳をひとつするとルイズと闘夜はハッとして前を向き直したが遅かった……

 

「講義中に使い魔とお話とは随分余裕ですね……ミス・ヴァリエール」

「す、すいません」

 

ルイズは慌てて頭を下げると周りからクスクスと笑いが生まれる……だがその表情は次の瞬間絶望に変わった。

 

「そうですね、前で誰かに実演してもらいたいと思っていました。あなたにやってもらいましょう」

『ゲッ!』

 

その教室にいた人間全員の言葉だった。次の瞬間慌ててキュルケは再度立ち上がって抗議する。

 

「ま、まってください先生!彼女の話は他の先生から聞いてないんですか!?」

「聞いていますよ?大変素晴らしい成績を修めていると」

 

座学はね……とキュルケの頬が引き攣った……だがそんなのはお構いなしに、

 

「さぁ前に来なさいミス・ヴァリエール」

「……分かりました」

 

ルイズは決心した顔になると前に向かう……すると突然ガタガタ音をたて他の生徒が席の下に隠れ始めたのだ……闘夜は何事かと周りを見渡す……すると、

 

「こっちに隠れなさい」

「あ……」

 

あっという間に机のなかに引っ張り込まれた。引っ張りこんだのはキュルケである。

 

「あの……何があるんですか?」

「まぁ見てなさい。しっかしこれで今日の授業の休講は決定したわね」

「え?」

 

闘夜が首を傾げるとキュルケがこっちを見る。

 

「貴方……何でゼロってあの子が呼ばれるか分かる?」

「さ、さぁ……」

「あの子はね……勉強は出来るのよ。だから試験なんかいつも一番……並の努力じゃないでしょうね……でも残念……あの子には重要なのが欠けてた」

「?」

 

闘夜がますます首をかしげるとキュルケの隣にいた少女が口を開いた……

 

「そろそろ……」

「え?」

 

澄んだ青い髪……背丈は低く眼鏡をかけた奥のその瞳からは表情はうかがえない……

 

()()のようだ……闘夜はそう思った……そんなことを考えた次の瞬間!

 

「え?」

 

爆音と衝撃波が襲いかかる……窓は割れ……使い魔たちが興奮して暴れだす……まさしく一瞬の出来事だった……さっきまで塵一つないきれいな教室は一瞬で埃と塵と机だった残骸が散らばる場所へと変わったのだ……そしてその爆心地には……

 

「けほ!」

「………………」

 

咳き込むルイズと眼を回して気絶している先生……そしてルイズは一言……

 

「少し……失敗したわね」

『何が少しだゼロのルイズ!』

 

ルイズの一言にぶちギレる生徒たち……呆然とそれを見る闘夜の肩をポンっとキュルケは叩いた。

 

「分かったでしょ?どういうことか……魔法に関する知識はある。でも実技となるとなんの系統もダメ。なにやらせても爆発するのよ。んで、成功確率はゼロ……付いたあだ名はゼロのルイズよ」

 

闘夜は首を縦に降るしかできなかった……そして思った……さっき怒らせたときにこの爆発をされなくて良かった……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっこいしょ!」

 

ルイズが教室を爆撃してから一時間……闘夜は壊れた机を撤去し壊れてない机を元の場所におき床を磨き割れた窓を取り外して新しいものと取り替える……

 

その間ルイズは無表情だった……壊したのはあんたなんだから手伝えと言いたい気持ちもあったがそれをいったらひどい目に遭いそうだったのでやめておく。そして大体片付けが終わると……

 

「笑いたきゃ笑いなさいよ」

「はい?」

 

突然の言動に闘夜は困惑した……だがルイズは闘夜を睨み付けてきた……

 

「そうよ……昔からよ……何度やっても爆発するだけ……お姉さまたちやお母様にお父様……そしてご先祖様たち……皆優秀なメイジだったわ。なのに私だけ……色んな家庭教師をつけたけどダメだったわ……魔法の知識が足りないのかと勉強したわ……でも結局いつもこれ!……いつまでも私はゼロのルイズよ!」

「………………」

 

闘夜はどう言えばいいのか分からずなんとも言えない表情を浮かべた。

 

「だからね……使い魔くらいスッゴいのを期待したわ!何せメイジの実力を図るなら使い魔を見ろって言われるくらいなんだからね!なのに平民!?何であんたなのよ!平民召喚するくらいなら鼠とかの方がマシだったわ!」

 

ルイズも気づいていた……これは情けない自分へのやり場のない怒りを偶々そこにいた使い魔へ八つ当たりをしているだけなのだと……闘夜に非がないのくらいわかっている……だが一度口を開くと止まらなかった……幾らでも八つ当たりの言葉が出てくる……幾らでも闘夜に浴びせる罵詈雑言が浮かんでしまう……

 

すると闘夜はルイズに近づく……自分より背が高い闘夜が目の前にたつとギクッと固まった……

 

「な、何よ……」

 

闘夜は両手をあげる……そして次の瞬間、

 

「は?」

 

ルイズはポカーンとしてしまった……そりゃそうだろう……闘夜は突然の自分の頬を両手で挟んだ……所謂アッチョンブリケと言うやつである……

 

「……あれ?面白くありません?」

「………………怒りなら沸いたわ……」

 

ゴゴゴゴゴとルイズは闘気を発しだし闘夜は慌てて安全圏へと下がった。

 

「す、すいませんお命だけは勘弁してください!」

 

と、闘夜は頭を低くした……それをみてルイズはため息をつく……ホントなんだってこんな情けない使い魔なんだろうと……だがそんなルイズとの思いは反対に闘夜は口を開いた。

 

「思ったんですけどねルイズ様」

「何よ」

「別に魔法なんか使えなくたって良いんじゃないですか?」

「……………………は?」

 

ルイズは本日2度目の唖然だった……何をいっているんだ?この平民はと……

 

「魔法が使えなくたってルイズ様はルイズ様でしょう?言わせたいやつに言わせとけばいいんですよ。魔法が使えないからってなんですか?人格に関係するんですか?」

 

ニヘラ……っとなんとも言えない表情を浮かべつつ闘夜は言い、ルイズは呆然として聞いた。

 

「別に死ぬわけじゃありませんよね?魔法使えなくたって……だったら別の才能探すのだって良いんじゃないですか?魔法ってのは良くわかりませんし今日の授業聞いててすごいんだなぁってしか思わないけど……それで人生を決定するだけの力は感じませんでしたよ?」

「っ!」

 

ルイズは闘夜の言葉を聞き……歯を噛み締め手を強く握る……

 

「だから……「あんたに何がわかんのよ」……え?」

 

闘夜の目の前に魔王・ルイズが降臨していた……あまりの迫力に闘夜は更に後ずさる……

 

「あんたに何がわかんのよ……貴族にとって魔法がどれだけ重要なのかもわからないくせに……頑張っても結果にならなくて……どれだけ辛いかもわからないくせに……適当なこと言ってんじゃ……」

 

ルイズは近くに物を手に取った……

 

「無いわよ!」

「うぉ!」

 

闘夜は慌ててそれを回避した……だがルイズは構わず次々投げてきた。

 

「もうどっか行きなさい!そしてその顔私に見せんな!」

「申し訳ございませんでしたぁああああああああ!」

 

闘夜は慌てて教室から飛び出した……

 

「フー!フー!」

 

とルイズは鼻息を荒くする……

 

「ふざけんじゃないわよ……あれ?」

 

ルイズはポトッとなにかが落ちたおとがしてなにかと下を見た……すると、

 

「あれ?あれ?……何で……」

 

ルイズの目から涙が溢れる……なぜ?決まっていた。

 

ルイズだって人間だ。何時も張り詰めていた……どんなに頑張っても無駄なのか?そう思ったこともある。だがそんなものは周りが許さないだろう。自分も許さないだろう。

 

貴族は魔法を使えるものである……強迫観念のようにルイズにあった言葉だ。だが闘夜は魔法なんかなくたって良いと言った。そんなのがなくたってルイズはルイズだと……魔法が使えないからって自分を否定することはないと……ルイズにとってそれを受け入れれば自分の今までの人生その物の否定だった。それ故に受け入れるのは到底不可能だった。だが同時にそれはルイズの肩の荷を確かに軽くした。

 

「何なのよぉ……あの馬鹿……」

 

誰かに言って欲しかったのかもしれない……高々魔法なんか使えなくたって良いんだよと……実家の姉の一人のように……魔法が使えないなんて言うのを無視して……自分をみて欲しかったのかもしれない……ただそれだけだった……彼女自身気づかない、弱さであり脆さだった……

 

それに本人は気づいてはいない……だが闘夜の言葉に助けられていたのは間違いなかった。そんな彼女は……たった一人の教室で涙を流していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでもない……か」

 

その頃今朝闘夜のルーンをスケッチして帰ったコルベールは図書室で本を漁っていた。無論……闘夜のルーンを調べていたのだ。

 

彼は研究者だ。火のトライアングルメイジでありそれを用いた研究に没頭する毎日だ。それ故に本も良く読む。その際に何処かで闘夜のルーンを見た気がしたのだ。

 

「うーむ……これでもないな……」

 

コルベールは本をしまう……すると、

 

「これは……」

 

一冊の本に目が止まった……パラパラとその本を捲った……次の瞬間、

 

「こ、これは!」

 

コルベールは眼を見開き声を荒くした……周りの視線がいたくなったが関係ない……

 

(すぐに学園長に報告しなくては!)

 

コルベールはその本を持って駆け出したのだった……

 

因みに闘夜はそんなことになってるとは知らず……

 

「腹へった……」

 

と、外で空腹で眼を回していたのだがそれは余談だろう……




闘夜の魔法の認識は弥勒が使う法力や母が使う霊力をイメージしてます……なので別に使えなくたって生きてる人沢山いるんだし大丈夫じゃね?とか考えたりしてます。

まぁ実際この世界で魔法が使えない貴族と言うのがどれだけ変に見えるかはわからないから言える部分もありますわな……でも闘夜なりに気遣った台詞と言う場面でした。この辺けっこう悩みましたね……ほら、あんまり大人びたこと言わせられる年じゃないし適度に世間知らずで適度に無知と言うか空気読めない感じで言わせたかったものですしおすし……こんな感じかなって感じでしたね。
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