異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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あんたがいうな!

「女王陛下が消えた!?」

「はっ!」

 

キュルケの言葉により城まで文字通り飛んできた闘夜たちだったが既に城は大混乱……話を聞くだけでも一苦労で前にルイズが貰った女王陛下直属の女官だと言う書類を見せると責任者にやっと会わせてもらい現在の状況を聞いていた。

 

「馬の蹄の跡等からラ・ロシュール方面に向かった思われすぐに別動隊に行かせましたが発見したと言う報告は受けておりません……」

「分かったわ。タバサ!」

「ん……」

 

聞き終えたルイズは素早く振り替えるとタバサに今度はそれを追うように頼もうとすると、言い終わる前に既に準備をしてくれた。

 

意外と良いやつなのか?等とこんなときになんだがルイズはそう思ってしまう。

 

「行くわよ!」

「っ!あんたが仕切るんじゃないわよ!」

 

だがキュルケとそんなやり取りをしてすぐに気を引き締め直すとタバサの使い魔はアンリエッタのいったと思われる方向に向けて飛び立つ。

 

風の系統を得意とするタバサの使い魔らしく風のように空を飛んでいく。これならすぐに追い付けるはずだ……そう思っていたルイズの隣にいた闘夜は、ウッと声を漏らし眉を寄せた。

 

「トーヤ?」

「血の臭いです……」

 

え?と闘夜以外の三人が顔を見てくるが闘夜はそれどころではなかった。ただ血を流しただけじゃない。内臓まで飛び散った際の独特の生臭さに、腸の中にあっただろう汚物……様々な臭いが混ざり合いルイズたちにはまだ感じとれずとも闘夜は頭がいたくなりそうだ。

 

だがそんな中ルイズたちの眼にも見えてきた。森の中の一点に明らかに戦闘行為があったと思われる一角……

 

「降りましょう」

 

キュルケは闘夜の言葉をあわせて何か覚悟を決めたように言葉を発し、ルイズもそれに関しては素直にうなずくと、タバサが使い魔に降りるように指示を出す。そして、

 

「う……」

 

思わずルイズは胃の中から何かが競り上がってくる感覚……だがそれを必死に耐えた。キュルケも顔色はよくなく、闘夜も表情は暗い。平気なのはタバサくらいである。

 

「何が起きたの……?」

 

恐る恐る足を進めるルイズの周りには顔が識別できないほどグチャグチャにされた遺体、臓物を撒き散らした遺体、全身バラバラの芋虫みたいな遺体と他にも数えきれないほどある。

 

「わかりませんけど……探してた人は居ましたよ」

「え?」

 

ルイズが闘夜の呟きを聞き振り替えると闘夜は別の方向を見た……そして、

 

「居るんでしょ? 隠れてたって俺の鼻からは隠れられませんよ」

 

そう言うと木の影から出てきた二人組……その姿にルイズは目を見開いた。何故ならどちらもよく知った顔だったからだ。

 

「姫様……それにウェールズ皇太子?」

 

ルイズは自分の目が信じられない。何故ならウェールズ皇太子は死んだはずだとずっと信じて疑わなかった。だが彼は目の前にこうして立っている。

 

「これはあんたがやったのか?」

 

そう闘夜は聞いた。内心では動揺している。だがここで動揺を表に出すのは危険だと本能的に察した。

 

そんな闘夜の内心はお見通しなのかウェールズ?は小さく笑うと頷いた。

 

「あぁ、僕とアンリエッタの邪魔をしたからね。勿論説得しようとしたんだが聞いてもらえず襲いかかってきたから仕方なく応戦したのさ」

「そうかよ……」

 

バキッ!っと指を鳴らし闘夜は飛び掛かるべく腰を落し……

 

「散魂鉄爪!」

 

腕を振り上げウェールズ?に飛び掛かる。だが、

 

「っ!」

「トーヤ!」

 

頬に走った鋭い痛みに闘夜は攻撃を中止し思わず地面を転がった。ドロリと頬から流れるのは血だ……一瞬何が起きたのかわからない。だがすぐに誰がやったのかわかった。

 

使われた魔法は【ウォーターウィップ】と言う。水により作られた鞭を作ると言う魔法なのだが、魔法でできてる以上それは使い手の意思によって時に剣にもなる。しかも伸縮自在の……と言う注釈付きでだ。勿論相応の技量を必要とするが、放った相手はそれを十分に満たしていた。

 

「姫様……?」

 

ルイズは何が起きたのかわからないと言う顔だ。しかしそんな中闘夜は次の行動に移る。

 

まず頬の傷口に自分の指を付け、爪に血を染み込ませるようにする。そしてその血に妖力を込めて腕を降り下ろした!

 

「飛刃血爪!」

 

父から受け継いだ第二の技。妖力を込めた血を飛ばし相手を切り裂く遠距離用の技である【飛刃血爪】はウェールズ?に向かって飛ぶ。

 

妖力を込めた血はまるで手裏剣のようで、完全に相手の隙をつく形で飛び、ウェールズの体を切り裂く!

 

通常の人間ならこれで動けないはずだ。そう、普通なら……

 

『なっ!』

 

だがその場の全員が……あのアンリエッタですら驚愕で目を見開いた。何故か?それは闘夜の飛刃血爪によって体を切られたウェールズ?だったがその傷は目に見えて治癒していき、それはあっと言う間に無くなってしまった。

 

「嘘……だろ……」

 

流石に闘夜もこれには驚愕した。こいつは不死身なのか?だがこれではっきりしたことはあった。

 

「姫様!今見られたでしょう!それはウェールズ皇太子ではありません!偽物です!」

「…………」

 

だがアンリエッタは動こうとしなかった。寧ろその瞳には拒絶の意志が見てとれる。

 

何で!っとルイズが目で訴えるとアンリエッタはやっと口を開いた。

 

「知ってるわ……偽物なくらい。でもね、それでも良いの。もう会えないと思ってた。でもこうして目の前にいる。それだけで良いの。貴女も誰かを本気で愛したらわかるわ。もう会えないと思っていた相手が偽物でも会えたら全て捨ててでもついていきたいって思う。一緒に居れればそれだけで良いの。満足なの。だから……」

 

そこを通しなさい。ルイズ……そうアンリエッタは杖をルイズに向けた。彼女の目は本気だった。

 

愚かなまでに真っ直ぐ……これぞ愚直なまでの愛。それほどまでにウェールズを愛していたことを今知った。何処かでルイズは過去の恋愛だったとケリを付けてると思っていた。だがそんなことはなく、寧ろ強くなっていた。

 

彼女を止める言葉を……ルイズは持ち合わせていない。

 

「……」

 

スッとルイズは横にずれて道を開ける。キュルケとタバサも同様だった。まぁ彼女たちの場合……得たいのしれない今のウェールズとの戦いを避ける気持ちもあったかもしれないが。

だがどちらにせよアンリエッタはホッと胸を撫で下ろしウェールズを連れてその場を行こうとし……

 

「ダメだろ……そんなの……」

 

闘夜が進行方向を塞いだ。

 

「トーヤ?」

 

ルイズが驚く中、アンリエッタは歯を噛む。

 

「退きなさい!これは命令よ!」

「退かねぇよ!」

 

ハッキリとした拒絶にアンリエッタは一瞬怯むがすぐに持ち直す。

 

「お願いですから……貴女にはわからないかもしれませんが……」

 

もう一度説得を試みる。だが、

 

「あぁ!わかんねぇよ!誰かを好きになったことなんかないし?ましてや好きな人が死んだことなんかねぇよ!なくしたことなんかねぇよ!きっと悲しいだろうとかそんなもんだよ!」

 

誰かを愛したことなんかない……誰かを愛おしいと思ったことがない。そんな闘夜ではアンリエッタの選択が正しいのか間違っているのか選択のしようがない。だが……

 

「ウェールズ様はいってた……一緒にいられなくても良い、例え別の人を愛しても良い……ただ生きてほしいって」

「だからこの人といきたいっているじゃないですか!」

「そんなの生きてるって言わねぇよ!」

 

難しいことはわからない。世の中のことなんかわからない。10と5年しか生きていない闘夜ではそんなものを言えるわけがない。だが分かることもある。

 

「そんな濁った目でよぉ……自棄っぱちになった表情でよぉ……あんたはウェールズ様に胸はって生きてるって言えるのかよ!」

「っ!」

 

闘夜の叫びにアンリエッタは驚きではなく体を震わせる。

 

「あんたのためにあの人は覚悟決めてた!俺は今でも納得してないけど、それでもあんたがウェールズ様の思いを裏切ったらダメだろ!」

 

闘夜の言葉に目を伏せるアンリエッタ……そしてその前にウェールズ?が立った。

 

「あまり彼女を困らせないでくれないか?確かに君の言う通りだったかもしれない。だが君もいっていたじゃないか一緒にいれる方がいいって。僕もそう思っただけだよ」

「……」

 

闘夜は何も言わず腰の鉄閃牙に手を掛けた。

 

「黙れよ……偽物野郎!」

 

ギャン!っと鉄閃牙を一気に抜ききった闘夜はウェールズ?は真の姿となった鉄閃牙を向ける。

 

「ウェールズ様はそんなやつじゃねぇ。絶対にそんなことは言わねぇんだよ!」

 

そう言って鉄閃牙を手に再度ウェールズ?に飛びかかった……だが!

 

「なっ!」

 

ウェールズ?にその刃が届く前に水の壁が鉄閃牙を止める。

 

【ウォーターシールド】と呼ばれる防御魔法で、勿論魔法を発動させたのは言うまでもなくアンリエッタである。

 

「がっ!」

 

そして次の瞬間闘夜の腹に風の塊がめり込む……

 

「ごほっ!ごほっ!」

 

転がりながら咳き込む闘夜……それを見ながらウェールズ?は杖を向ける。すると!

 

「エクスプロージョン!」

「っ!」

 

ドン!っとウェールズが爆発を受けた。そして魔法を発動させた当人は……

 

「最悪だわ。王族に杖を向けるだなんて」

「ルイズ……何で!」

 

アンリエッタはルイズに叫ぶ。だがルイズも叫び返して応戦する。

 

「トーヤは私の使い魔です!彼に危害を加えるなら……私は貴女であっても杖を向けねばなりません!」

 

ピッ!と杖を今度はアンリエッタに向けるルイズ。だがそれを見てもルイズの魔法のダメージも既に回復したウェールズは不適な笑みを失わない。

 

「成程……君も僕たちの邪魔をすると言うわけか。ならしかたない。死んでもらうよ」

 

そう言ったウェールズは次の瞬間パチン!っと指をならす。すると、

 

「なんだ!?」

 

闘夜が驚くのも無理はない。何故なら突然闘夜たちの周りに転がっていた死体が急に立ち上がり、傷が修復されていく。

 

あっという間に元通りになり、その死体たちのうち一人は闘夜に飛びかかってきた。

 

「ちっ!」

 

闘夜はそれを鉄閃牙の横凪ぎで斬る。だが、

 

「っ!」

 

闘夜は目を見開き慌ててルイズを引っ張って下がって間合いをとった。

 

「あれは……」

 

一瞬我が目を疑いつつもルイズも見たのは、闘夜に斬られた元死体は動きこそ止めたものの傷口は瞬時に回復し、何事もないかのように立つ。

 

「冗談だろ……」

 

これはヤバイな……そう闘夜がそうぼやくとそこに、突如氷の槍が降り注ぐ!

 

勿論そんなことができるのはこの場において一人。

 

更にそこにオマケとばかりに、業火が舞い上がった!

 

「成程……燃やせば良いみたいね」

 

そう杖を構えキュルケとタバサも前に出る。

 

「全く……こんな得体のしれない相手と戦うなんて頭おかしいわよ」

「じゃあなんで出てきたのよ!」

 

そうルイズが言うとキュルケはニヤリと笑みを浮かべ答える。

 

「ダーリンが戦うからよ。私、王子さまの後ろで大人しく震えているほどおしとやかじゃないのよ。あなたいつもいってるじゃない。()()()()()()()()()ってね」

「……」

 

そう言うキュルケのとなりで杖を相手に向けるタバサもキュルケが出るならと言わんばかりだ。

 

「っ!」

 

そんなタバサの動きを合図に周りの元死体達が飛びかかってくる!

 

「行くわよ!」

「だからあんたが仕切んじゃないっての!」

 

そんないつも通りのキュルケとルイズの言い合いを皮切りに四人も戦闘体制にはいったのだった……

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