異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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ヤケ酒

「旅行って良いですよね」

「そ、そだねー……」

 

エレオノールに連れられて学園を出て暫く……現在闘夜はルイズとは違う馬車でシエスタと共に乗っていた。いや何故シエスタが?と思われるかもしれないが、それは学園からでる際に闘夜一人では格好がつかないという話になり、偶々洗濯物を干していたシエスタを見つけたエレオノールがこれで良いと言って半ば強引に連れてきたのだ。

だが勿論貴族であるルイズやエレオノールと同じ馬車に乗れるわけがなく、間に合わせの別の馬車で二人きり……これを逃すシエスタではなかった。

 

二人になった途端腕を絡ませ闘夜にベッタリ……素朴で穏やかそうな彼女だが、一度惚れれば相手が本気でいやがるなら別だが、少しでもまんざらでなければ押せ押せタイプなのだ。

 

そんな彼女に闘夜はどうすれば良いのかわからず、苦笑いを浮かべながらも嫌ではないのでされるがままにしていると、

 

「なに盛っとんじゃぁああああああ!」

 

ドゴォオオオオオン!という爆音と共に馬車が爆発……天井が吹っ飛び素敵なオープントップの馬車へと早変わりしてしまう。だが、

 

「まだ話は途中よチビルイズゥウウウウウウウウ!」

「いふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」

 

そんな爆発音よりデカイ声と悲鳴が空に木霊したのだが……ケホッと煙を吐きながら二人仲良く気絶した闘夜とシエスタには聞こえなかったのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで学園を出て二日後……闘夜とシエスタはポカーンと口を開けて唖然としていた。

 

なぜなら屋敷の庭に入って更に半日掛かって漸く見えてきた(この時点で大分おかしいのだが)屋敷のでかさである。

 

いや単純にデカイのもあるのだが、外壁にも手が加えられており、見た目だけなら城でも十分通用するレベル。

 

「流石トリステインでも三本の指に入る大貴族のヴァリエール家ですね……」

 

そんなに有名だったんだ……と闘夜は思いつついると、突然屋敷の扉が開かれた。

 

そこから出てきたのは、ルイズと同じピンクのブロンドに、豊かな胸と優しそうな眼差し……エレオノールをルイズのキツい部分を凝縮したような存在であるとすればルイズの優しい部分を凝縮したような存在だ。色々とルイズと比べて大きいが……

 

そんな彼女はニコニコ笑いながら馬車から降りてきたエレオノールとルイズの元に駆け寄り、

 

「お帰りなさい。ルイズ」

「ちい姉様!」

 

するとルイズも駆け出し、ちい姉様と呼びながらその女性に飛び付いた。

 

「カトレア。貴女も帰ってきてたの?」

 

エレオノールの言葉から聞くに、カトレアと言うのだろう。それにルイズが姉様と言うことは二人いる姉のうちの一人と言うことか。

 

「偶々よ。そしたら今日ルイズを連れてくるって聞いたから待ってたの」

 

そう言って抱きつきながらゴロゴロ喉でも鳴らしそうなルイズの頭を撫でていたカトレアは闘夜を見つける。

 

「彼は……」

「ルイズの使い魔ですってよ」

 

最初こそルイズが昼間から連れ込んでた男と思われてたものの、二日かけて説得を行い(エレオノールの方も時間をおくことで多少冷静に見れるようになったのもあり)無事使い魔認定はしてもらったのだが、

 

「あら、てっきり彼氏かと……」

「ち、違うわ!」

 

コロコロと笑うカトレアと顔を真っ赤にして否定するルイズ……それにアハハと苦笑いする闘夜に冷ややかに見るシエスタ。そして、

 

「何してるのよ。さっさとはいるわよ」

 

と、一人ドアを開けて入っていくエレオノール。どうもあまり共通点がなさそうに見えるが、この三姉妹。非常にマイペースと言う点においては似ているのかもしれない。今でこそ振り回されてるが、ルイズも結構マイペースだし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

胃に穴が開きそうだ。と言う言葉があるが、まさにこの場がそうだった。

 

現在闘夜は、ルイズたち三姉妹と、待っていたその母親の食事風景を見ている。これがまた居心地が悪い。そしてルイズの母親がおっかない。髪色こそカトレアやルイズと同じだが、エレオノールのキツさをじっくりと更に煮詰めたような人で、鋭い眼光は見られただけで謝ってしまいそうな感じの人だ。因みにルイズのお父さんは現在不在らしい。明日帰ってくるそうだが……

 

そんな中、緊張した面持ちで食事を行っていたルイズは口を開く。

 

「あ、あの……母様」

 

だが、それはエレオノールによって打ち消された。

 

「母様からも言ってあげて!この子ったら戦争に行くなんてバカなこといってるのよ!」

「陛下の軍隊に志願することのどこがバカなことなのよ!」

 

ここに来るまでエレオノールにいじめられ放題だったルイズもここは引くわけに行かないと噛みつくとエレオノールはギロっとルイズを見る。

 

「あんた戦争ってどういうとこだかわかってるわけ!?少なくとも女子供が行くようなとこじゃないわよ!特に《ゼロ》のあんたわね!」

「っ!」

 

ルイズは思わず虚無の事を口走りそうになったが、それを慌てて閉じて黙る。虚無の事は例え家族であっても話すことはできない。

 

そんな中エレオノールが言葉を続けようとすると、

 

「食事中ですよ」

 

その場の空気がピンッと張り詰めたようになり、エレオノールはグッと言葉をつまらせた。

 

この場であっても凛と響く声の主はルイズの母である。

 

「この話は明日お父様が帰ってきてからにします。良いですね?ルイズ」

 

そう言われ……ルイズは黙って頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

食事の後、闘夜が案内されたのは物置部屋(物置用とは思えないほど広いが)に藁を置いてシーツを敷いて寝ていた。寝ていると言っても意識はしっかりあるので目をつぶって転がってるだけなのだが……

 

だがこうしているとルイズは本来なら住む世界が違う人間なのだと理解してしまう。

 

そう思うとなんかこうムカムカしてくるのだから不思議だ。なんでだろう。凄く納得がいかないし、ここ二日ルイズと全く話すことができず(主にエレオノールに睨まれてたから)モヤモヤすると言うかなんか無償にルイズに会いたい。

 

ここ最近ずっと同じ部屋で一緒のベットでそしてくっついて寝ていたからだろうか……一人で寝ると言う行為が非常に落ち着かない。

 

とは言え幾らなんでもルイズの部屋に行くのが問題なのくらいは分かってるので我慢しようとしていると突然部屋がノックされた。何者かと思いつつ起き上がったが、誰なのかはすぐわかった。

 

「ん?シエスタ?」

「えへへ……遊びに来ちゃいました」

 

そう言ってドアを開けつつシエスタが頬を赤くしながら入ってきた。ドア越しでも闘夜の鼻を持ってすれば相手が誰なのかくらいが匂いの主が分かっていればすぐにわかるのだ。

 

だがそんなことは気にもとめず部屋に入ってくるとシエスタは隣に座ってくる。

 

「ホントに広いお屋敷ですよね……ここに来るまで迷っちゃいました」

 

そう言って笑うシエスタに闘夜もたしかにねと笑う。こんなに大きかったら厠に行くのにすら苦労しそうだ。

 

何て言ってると、シエスタは少し伏し目がちに言う。

 

「羨ましいな。ミス・ヴァリエールは……」

「え?」

 

シエスタの言葉に闘夜は首をかしげる。

 

「だって爵位もあってこんな大きいお屋敷もあってきれいな服着て財産もあって顔もかわいくて……何よりトーヤさんがいて」

「俺?」

 

はい。と言うシエスタは闘夜の顔を覗き込む。

「でも私……諦めませんから」

「シ、シエスタ?」

 

鼻先がくっつきそうなほど顔を近づけてくる彼女に闘夜はタジタジになりながらあることに気づいた。シエスタの呼気が……酒臭い?すると、シエスタは裾から一本の瓶を出した。

 

「それは……」

「夕食に一本ついたんだ。お前も飲め」

「え?」

 

突然シエスタの声音が低くなったかと思うとグイッと更に瓶を見せつけてくる。

 

「どうしたのそれ?」

「だから夕食の時に一本ついて、飲み足りないから倉庫から貰ってきたんだよヒック」

 

 

どうやら酒癖がよろしくない彼女は、しゃっくりしながら倉庫から一本くすねてきたらしい酒瓶を一緒に持ってきたグラスに並々と注ぎ闘夜に渡す。

 

「ほら、飲め」

「……んぐっ!」

 

それを一気に飲み干すと、お酒独特の喉を焼くような不思議な感覚と共にさっきまで感じていたモヤモヤが少し薄れた気がした。

 

やはり美味しいとは思わない……でもモヤモヤと言うかイライラが少しでも薄れるなら酒も悪いものではないのか?

 

「良い飲みっぷりですね~」

 

と、自分もクビクビ呑みながらシエスタは闘夜のグラスに更に注いでくる。それを更に一息で飲み干しまた注いで貰ってまた飲み干す。それを繰り返しながら眉を寄せているが、飲むペースに変化はなく、かなり急ピッチでグラスを開けているが殆ど問題はないらしい。

「どんどんいくぞー!」

 

こうして、上機嫌なシエスタと共に二人だけの酒宴が開かれたのだった……

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