「ハグハグ!ムグムグ!ゴクゴク!」
「良く食べますねぇ」
シエスタは闘夜の食欲に感嘆していた……現在闘夜は室内にいる……何故なのかと言うとルイズに追い出しを喰らい外で空腹で蹲っていた闘夜はシエスタに発見されたのだ、そして事情を説明すると……
「でしたら厨房に来ませんか?」
と言うお誘いを受け今ここにいる……そこではシチューを山盛りでもらいパンをかじりまたシチューを飲む……昨夜からろくになにも食べてないのだ。腹が減って仕方ない。厨房にいたマルトーと言う料理長や他のコックたちも感心してみていた。
「ん?」
闘夜は首をかしげる。それを見るとマルトーはスマンスマンと頭を下げた。
「気持ちいい位良い食いっぷりだからよ。感心しちまったぜ」
「だってうまいですよ?」
そう言ってパンに手を伸ばす。こんなうまいのが毎日食えるなんてホントここの人たちは羨ましい限りだ。だが、
「くぅ~……うれしいこと言ってくれるぜ」
「はい?」
マルトーの言葉に闘夜は再度首をかしげた。
「貴族の連中は何をつくって出してもさも当然と言わんばかりだ。なのにお前は旨そうに食ってくれる……それだけで俺達は嬉しいんだ」
そこまで言われると照れ臭いと言うかこんなうまいものを楽しめないなんて貴族と言うのは損する生き物なんだなぁっと闘夜はぼんやり考えていた。そして、
「ごちそうさまでした」
パン!っと手を合わせ食事を終えた挨拶をする。母からその辺の礼儀はやらされていたからね。
「はい、お粗末様です」
そう言ってシエスタは闘夜が使っていた食器を流しに片付ける。それから、
「それじゃマルトーさん、これからデザートを貴族の方に配りに行きますね」
「デザート?」
闘夜の鼻がピクッと動いた……確かにシチューの香りに紛れて甘い香りがする。因みにデザートと言う言葉は知っている。食事の後に出す甘いお菓子と言うやつだ。
まぁそれは横においておこう。闘夜の反応を見たシエスタはにっこり笑いつつ、
「はい、貴族の方にお出しするんです」
そう言って蓋を少し開けて見せてくれた。
中には黄色い三角形のお菓子だった……後で知ったがチーズケーキと呼ばれるケーキであり闘夜はそれ見た瞬間涎が止まらなくなった……
「うまそうだ……」
「だ、ダメですよこれは!貴族の方にお出しするので……」
「そ、そっか……」
しょぼん……っと頭を垂れる闘夜……例えるなら犬が落ち込んで尻尾も耳も垂れてしまってるようだ……シエスタだけじゃない……その場の全員が罪悪感を感じた……
「だ、だが余ったら食っても良いんじゃないか?」
「そ、そうですよね?トーヤさん、配り終わった後に余りましたら食べてもい良いですよ?」
「良いの!?」
闘夜は眼を開きシエスタに詰め寄る……
「え、ええ……」
シエスタが頷くと闘夜はお菓子の入ってる箱を持つ。
「じゃあ配るの手伝うよ。さっさと配り終えちゃおう!」
まるでごほうびを目の前にされた犬の如くであった……その行動に思わずその場に笑いが生まれ闘夜は首をかしげる。
「分かりました。急いで配り終えましょうね」
「おう!」
そう言ってシエスタは闘夜を引き連れお菓子を配りに厨房を出た……それを見たコックの一人が言う……
「餌付けが成功した動物みたいな奴だ」
思わず皆うなずいてしまったのは余談だろう……
「はぁ……」
一方その頃ルイズは大きなため息をついていた……無論先ほどの一件である。流石に顔を見せるなとは言いすぎたか……と冷静になって思い始めたのだ。ルイズは素直じゃないし短気なところはあるが基本的に善人である。故に無意味な八つ当たりを行ったことに良心の呵責を覚えていた。さてどうしたものか……そんなことを考えていると、
「どうぞ、デザートのケーキです」
そう言ってケーキを差し出したのはシエスタである。闘夜は運良く手分けして配っているためにこの辺り一体の配膳はシエスタに任せ別エリアの配膳に向かっていた。
「あらありがと」
大好きなクックベリーパイではなかったがルイズの年頃の女の子……基本的に甘いものなら何でも来いである。無論カロリーの心配はするが……
「それでは失礼します」
そう言ってシエスタはルイズのもとを離れる……すると、
「おいギーシュ、結局誰と付き合ってんだよ。モンモランシーか?それとも一年の子か?」
「君たちはわかってないね。バラと言うのは皆を楽しませるために咲くんだよ」
と言う話がされていた。見てみれば貴族の少年たちが一人の男を詰問していた。
細身の癖っ毛のそこそこ整った顔立ちの少年……名は【ギーシュ・ド・グラモン】……陸軍元帥の三男でありもちろんメイジ……突き飛ばせば折れそうな位ヒョロイが魔法を使えると言うだけでシエスタにとって雲の上の存在であり畏怖の対象である。それ故にこの配膳は何時も気を張っている……闘夜じゃないがさっさと終わらせようとケーキはいるか聞きに行く……するとギーシュの懐から小瓶のようなものが落ちた……
「あの、落ちましたよ?」
「………………………………」
シエスタがそういって小瓶を拾い上げギーシュに声をかけた。だが……
「なんだいそれは……知らないな」
「え?今確かに懐から……」
「あぁ!」
シエスタが意味が分からずいるとギーシュを詰問していた男の一人が声を出した。
「それはモンモランシーのオリジナル香水!つまりギーシュ……お前はモンモランシーと付き合っていたんだな!」
「ま、待ちたまえよ……この香水があったからってそうだとは……ん?」
ギーシュは背後から何者かの気配を感じ振り替える……そこにいたのは一人の少女だった……茶色いマントの裾を握りギーシュを見つめた……
「け、ケティ……」
「やはりそうだったんですね……」
ま、待ってくれとギーシュは慌てて弁解の言葉を述べようとしたが今度は反対方向から気配……そっちも見ると、
「も、モンモランシー!」
「へぇ……やっぱりそういうことね……」
目の前にいるモンモランシーは水魔法の使い手である……だがそれなのに体から炎が立ち上っていた……
「いや……あのね……」
「失礼します!」
そう言ってケティと呼ばれた少女は走り去った……ギーシュの言い訳を聞く気はなかったし何よりモンモランシーが純粋に恐ろしかった……
「あの……ね……モンモランシー……」
モンモランシーは必死に言い訳を考えるギーシュを見ながら手を広げ……
「さよう……なら!」
「あべし!」
フルスイングビンタであった……手首のスナップまで効かせたそれはギーシュの頬をバチーンっと辺り一体に響くほど大きな音を立てた……そしてモンモランシーはフン!っと鼻を鳴らすと背を向けその場を去っていった……だがギーシュは……
「全く……彼女たちはバラの存在意義を分かっていないね……」
そういった後ギーシュはジロリとシエスタを見た……
「それで平民……この責任をどうとるつもりだい?」
「……え?」
シエスタは一瞬理解できなかった……だがだんだん理解できてくる……この男は……自分を八つ当たりの対象に選んだと言うことだ。
「僕はあのとき知らないと言った……なら君はそれの意味を感じ取ってすぐにその瓶をもって去るべきだったんじゃないのかね?」
「それは……その……」
暴論も良いところだった……論理もなにもあったもんじゃない。それをこのギーシュと言う男は言っていた……だがそれを指摘できない。貴族にとって平民とは炉端に落ちてる石ころのような存在であり殺されても文句言えないのだ。つまり……シエスタの命などギーシュの杖の一振りで簡単に散らせるものだった……
「全く使えない平民だね……そんなんで良くここで働けたものだ」
シエスタの歯がガチガチ鳴る……何を言っても殺されかねない……無論……ギーシュは鬱憤さえ晴らせれば良いのだからとにかく言いたいことを言わせて今この時を過ぎるのを待つ……それで良いはずだ。
どんな不条理さえも貴族は許され平民は不平不満を言うことも感じることも許されない……それがこの世界の理だった……だが、
「シエスタ!」
『え?』
バビュン!っと砂塵をあげてなにかが走ってきた……その物体はシエスタの目の前で止まった……だが今シエスタの前にはギーシュがいる……つまり、
「おい……」
ギーシュとシエスタの間に割り込む感じになってしまった……だがその物体……と言うか闘夜は気づかずにシエスタにケーキを運ぶために使っていた箱のふたを開けて見せる。
「三つも余った。これ食っても良いんだよな!?」
「おい!」
ん?と闘夜は声の方を向いた……そして、
「シエスタ知り合い?」
シエスタは首を横に振った……それを聞いたギーシュも鼻で笑う。
「僕のような男がこんな平民と知り合いな訳ないだろう」
そう言われると闘夜はポン!っと手を叩いた。
「あぁ、あんた貴族か。いやぁ、なんか偉そうだしそのヒラヒラした布肩にかけてるしそうですよね?」
「……そうだね……」
ギーシュの眉がヒクヒク動く……闘夜自身意識しない嫌味に琴線が少しだけ触れたのだ。
「それでなんか用ですか?」
「僕が用があるのは君じゃない。その後ろにいる女だよ」
「後ろ?シエスタですか?」
闘夜は振り返り直してシエスタをみる……顔色は悪く……震えている……闘夜の眼がスッと細くなった。この男がシエスタに何かしらの嫌がらせをしていたのは明白だった。
「あの……シエスタが何かしたんですか?」
「彼女のせいで二人の女性が傷ついたんだよ」
そういったギーシュは事の粗筋をとうとうと語ってくれた……シエスタのせいで香水がバレたとかまあ色々……それを聞いた闘夜は口を開く……
「つまり自業自得って奴じゃないんですか?」
ピシッと空気が凍った……闘夜は思ったことを口にしただけなので気づいてはいないしそのまま続けた。
「要するに二人の女の子に手を出したらどっちにもバレて嫌われたって奴ですよね?シエスタ関係ないんじゃないですか?」
「いや君聞いていたかい?彼女が香水を……」
「そもそも最初っからどっちかに絞んないからそういう事態になったんでしょ?」
ズバリと言い切られた……全くもってその通りである。いや、闘夜が住んでいた戦国時代では妾だのなんだのと言うのはあったので別段二股をどうこういうつもりはなかった。ただ隠れてこそこそやってその結果バレて嫌われたとは……妾だの何だのは当人たちの了解の上でなりたつものなのでその辺しっかりしとかないからだと言う感覚だ。そしてとどめに……
「シエスタを責める前に謝った方がいいですよ?女って怒らすとホントおっかないですし」
と、母や珊瑚おばさんが父や弥勒おやじを睨み付けるときの光景を思いだし少し背筋を冷たくしつつ気を使っていった。すると、
「アハハ!全くもってその通りだなギーシュ!」
と、大爆笑……ギーシュは羞恥心で歯を噛み締めた……
一応いっておくが闘夜的には全く悪意はなかった。ただ単にさっさと頭を下げるのが筋だろうと言っただけだ。
それに……
「じゃあ俺余ったデザート食べたいんで行きますね。ほらシエスタも行こうぜ」
そう言って シエスタを引っ張って行こうとする。闘夜はこのケーキと言うお菓子自体は何度か食べたことがある。戦国時代では余り食べられない甘味と言う味を闘夜は大好きであった。故にこんな無意味な言い合いはごめん被りたかったのだ。だが……
「待ちたまえ!」
「まだなにか?」
闘夜は流石に不満そうな顔になった……幾らなんでもしつこいぞこいつ……
「君には貴族に対する礼儀と言うのがなっていないんじゃないかな?」
「はぁ?」
なんだこいつはと闘夜は首をかしげた。敬語……使ってたよな?乱暴な物言い……してないよな?何が不満なんだ?
闘夜には全くわからなかった。
「君たち平民は黙って頭を下げてれば良いんだよ!それはあぁだこうだと言って……不愉快だね」
「何でなにもしてないのに頭下げなきゃなん無いんですかね……あぁ」
闘夜はなにか思い至った表情になった……
「貴族って自分達がやった間違いを平民に押し付けて逃れられるんですか?そんな制度があったんですか?いやぁ……それだったら俺も貴族やってみてぇなぁ~、な?シエスタ?」
『ブフッ!』
ギーシュの顔が更に羞恥によって赤くなり周りが少し吹いた……闘夜は気づいていないが盛大な皮肉になっていたことは言うまでもない。
「ん?」
言った当人は首をかしげるだけだった……自分が言った言葉がギーシュの無駄に高いプライドを傷つけた。するとそこに、
「なにやってんのよ!」
「あ!ルイズ様」
闘夜はギクッと体をこわばらせた……また怒られる?そう思ったがそういう訳じゃないらしい。
「で?トーヤ……これはなんの騒ぎ?」
「いやですね……」
闘夜は説明しようとした……しかしそこにギーシュが割り込んだ。
「そうか
「なんですって!」
ルイズは眼を見開いてギーシュを睨み付けた……だがギーシュには良くわからない自信があった。
「流石
「っ!」
今度はルイズが顔を赤くする番だった……悔しい……だがギーシュの言葉になにも言えなかった……事実であったし……
「うーん……」
すると急に闘夜がツカツカとギーシュに詰め寄った。
「一応加減はします……」
と、闘夜は一言言った。ギーシュは言葉の意味がわからず首をかしげた……だが次の瞬間!
「はぁ?何を言ってベブッシ!」
『え?』
闘夜が一言言うとギーシュは首をかしげ……次の瞬間の光景にその場の全員が唖然とした……何をされたかって?簡単である……
「え?え?」
殴られた……そう理解するのにギーシュは少しの時間が必要だった……
「は……い?」
ぶん殴った……そう理解するのにルイズは反応が遅れた……
「う……そ?」
闘夜がやった……シエスタは理解する前にその現実を受け入れるのに時間が必要だった……
『…………………………………………』
その場にいたギャラリーや遠くで見ていた者達も呆然としたり食べていたケーキを落としたりしていた……
「あんた……すっげぇ腹立つ奴だな」
闘夜の言葉に全員が現実に帰りそして……
『へ、平民がギーシュを殴ったぁアアアアアアアア!?』
全員が驚愕した。ルイズも呆然としシエスタは顔面蒼白なんて生易しい表現に感じるほどの表情だった……そしてギーシュは立ち上がると……
「貴様……わかってるんだろ……」
「てめぇこそ人の主人バカにしてただですむと思ってんのかぁ!?あぁ!?」
普段でこそ年上で立場が上の相手には敬語を使うようにしている闘夜だが今回ばかりは怒りの方が強かった。キレたときの気性は完全に父親の血を引いているのだ。
だがそんなのは今は関係なかった。それよりルイズである。確かにルイズは魔法を使えないのかもしれない……だがそれでも……
「確かに魔法使えねぇかもなぁ!だがてめぇ何ざとは比べんのもおこがましいほどの素晴らしい女だよ!うちの主人はなぁ!」
「なんだと……」
ギーシュは歯が軋むほど噛み締めた……だが闘夜は関係ない。
「んなに俺の主人をバカにしたいんならなぁ……俺にいえ!そしたらきっちり
パシッと自分の拳を叩いて言う闘夜にはギーシュは更に苛立ちを募らせた……
「良いだろう……ならば決闘だ!」
「っ!待ちなさいよ!」
それを聞いたルイズは慌ててギーシュを止めた。
「決闘は禁止されてるわ!」
「それは貴族同士だ……平民相手には通用しないよ……」
そう言ってギーシュは背を向けた。
「こい!ここを平民の汚ならしい血で汚すわけには行かない……」
「上等だ……」
闘夜はケーキをガシッと三つ纏めて掴むとガフガフと口に突っ込んだ。
「最後の晩餐か?」
「腹が減っては戦はできねぇってな……」
ギーシュの嫌みも闘夜はほとんど聞いてない……
こうして
「どうぞ学園長。本日の爆発による教室の修理費です」
「あちゃ~見たくないのう……」
食堂でのいざこざを知らず白髪と長い髭を待つ老人は秘書と思われる女性から書類を受け取っていた……
「またヴァリエール家の娘か……また援助金を出してもらわんとなぁ……あいたたた!」
「学園長……悲しむ振りをしながら手を私の腰に持っていかないでください。そろそろ王宮に報告いたしますよ」
「お、王宮は待ってくれ……」
学園長・オールド オスマンは慌ててつねられた手を離した。
「全くケチじゃのう……そんなんじゃからいきおくれるんじゃ」
「あぁ?」
オスマン学園長はしまったと顔を青くした。
「もういっぺん言ってみろクソジジイ……」
「いや……あのぅ……」
オスマン学園長は顔を真っ青にして弁解の言葉を考える……するとそこに救世主が現れた。
「学園長!お知らせしたいことが!」
コルベールだった……オスマン学園長はこれ幸いとばかりにそ知らぬ顔に戻り秘書の女性はこっそり舌打ちした。
「それでなんのようじゃ?ええと……ミスタ……ええと……」
「コルベールです……」
コルベールは少し額をヒクヒクさせつつオスマン学園長に自分の探した本を渡す。
「何々……始祖・ブリミルの使い魔たち?また古いものを……」
「次にこのルーンを……」
そう言ってコルベールが闘夜の左手のルーンを見せる……それをみた瞬間オスマン学園長の眼が真剣そのものとなった。
「ミス・ロングビル……少し席をはずしてもらえるかの」
「分かりました」
そう言って秘書の女性は部屋からでる……それからオスマン学園長はコルベールの顔をみた。
「間違いないのかね?」
「恐らくは……」
オスマン学園長は未だに信じられなかった……
「あのヴァリエール家の娘が召喚したのが……伝説の使い魔じゃと?」
すると扉が乱暴に開けられた。
「何事じゃ!」
「大変です!ミス・ヴァリエールの使い魔とギーシュ・ド・グラモンが決闘を!」
『んな!』
オスマン学園長とコルベールは眼を見合わせた。
「教師たちから眠りの鐘の使用許可をいただきたいと言う声が上がっていますが……」
「高々子供の喧嘩じゃぞ……放っておきなさい」
分かりました……と連絡に来たものを追い返す……その者の気配がなくなるとオスマン学園長は杖を振った……するとなんと近くにおいてあった鏡に闘夜とギーシュ……更にギャラリー達が写ったのだった……
「ちょっとトーヤ!やめなさいよ!」
「そ、そうですよ!」
その頃闘夜はルイズとシエスタに手を引かれていた。
「ちょっと喧嘩するだけですよ。なんてこと無いですって」
「あるわよ!ギーシュはたしかにドットだけどメイジなのよ!?」
「そうです!トーヤさんは魔法使えるんですか?無理ですよね?」
二人が心の底から心配しているのが分かる……だけど闘夜は首を横に振った。
「ぜぇったい嫌です」
それを聞いたルイズは闘夜の胸ぐらをつかみにかかった。
「あんたね!意地張るのもいい加減にしなさい!なんでそこまでやんのよ!」
「だってあなたは俺の主人でしょ?主人をバカにされたら怒るもんじゃないんですか?それにあいつ気にくわないんですよ……」
「はぁ?」
闘夜はルイズの手を外しながら言う……
「あいつ魔法が使えるからって目茶苦茶偉そうです……魔法が使えんのがそんなに偉いんですか?魔法使えて貴族ならなに言っても良いんですか?俺はそんな風に思えません……それに魔法なんでどうせ妖術とか法力みたいなもんでしょ?大したことないですよ」
『………………………………』
ルイズとシエスタは闘夜を呆然とみた……なにいっているんだこいつはと……メイジの恐ろしさや魔法の怖さを知らないのかと……そのため二人には酷く不気味にも見えた……しかし、
「それにルイズ様、言ってましたよね?メイジの力量は使い魔で分かるって……だったらここで俺がアイツをボコボコにすれば誰ももうあんたを笑うやつなんかいなくなりますよ」
そういった闘夜はニッと笑ってギーシュの前にたつ。するとギーシュは不適な笑みを浮かべた。
「今だったら見逃してやるぞ?土下座の一つでもすればな」
「要らんお世話だ」
そう言って指をボキボキ鳴らすとギーシュを見据えた……
「そうか……なら行くぞ!」
そういったギーシュは薔薇で装飾を施した杖を振るった。
「ワルキューレ!」
それと共に土が盛り上がり同時に青銅で出来た鎧が現れた……
「
「勝手にしろよ……」
闘夜は獰猛な笑みを浮かべ姿勢を低くする……例えるなら肉食獣が獲物に飛びかかる前の準備のようだ。
「いけ!」
「っ!」
ギーシュの命令と共にワルキューレが突進……意外と速かったため闘夜は反応が遅れたモロ顔面にワルキューレの拳を受けてしまった……
「トーヤ!」
ルイズが悲鳴をあげシエスタに至っては意識を保っているのがやっとのようだ……だが……
「効くかよ……」
「え?」
闘夜は自分の顔面に叩きつけられたワルキューレの拳をしっかり掴むと反対の手をしっかりと握った……
「ひとつ教えてやるよ貴族様……」
俺はなぁ……っと闘夜の眼が鋭くなり双眼がギーシュを捉えるとメキメキとワルキューレの拳が闘夜に握りつぶされていく……
「こんな傀儡のよわっちぃ拳でやられるほどなぁ……」
闘夜は拳を振りかぶった……
「柔な体じゃないんだよ!」
ドゴン!っと言う音が辺りに響いた……たったそれだけ……たった一撃の拳だった……それはワルキューレの胸を陥没させ遥か後方まで吹っ飛ばした……
『へ?』
それを見ていた者はそれしかでなかった……幾らギーシュがドットのメイジで鋼とかにはほど遠い強度である青銅しか作れないとはいえ金属をぶん殴る……何て言うのは想定外である。しかも殴られたワルキューレは胸の部分が大きく凹み他の部分も破損していた……しかも殴った方の闘夜は……
「少し固かったかなぁ……」
と手を少し振るだけだ……ギーシュはまるで化け物を見るかのような眼を闘夜に向ける……
「君はなんなんだ……」
「あんたがバカにする平民だよ」
そう言われるとギーシュは杖を振ると今度は三体作り出した。一体では厳しいと判断したんだろう。その判断は間違ってはいなかった。だが……
「散魂……」
闘夜はバキッと指を鳴らすとギーシュが作り出したワルキューレに突っ込み腕を大きく振り上げ……
「鉄爪!!!!」
父より受け継いだ爪による爪撃技……【散魂鉄爪】……その一撃はワルキューレを一体撃破し、そのまま闘夜は両腕を大きく振り上げ残り2体も爪で引き裂いた……
「そんな……」
ギーシュもギャラリーも異様な感情に包まれた……なんなんだこいつはと……爪で引き裂く?確かに爪が長いと思ってはいたがそう言う使用の仕方をするとは誰が思うだろう……しかも突進してきたときの速さが明らかに常人離れしていた……膂力も速さも何もかもが人間とは思えない……
「そ、そうか君は……」
ギーシュは口を開いた……
「実はメイジだったんだな!なるほど……それなら説明がつくよ」
「魔法なんてもんはつかえねぇよ……俺のは生まれつきだ」
ギーシュが言った言葉に闘夜は首を振った……実際メイジではないのだから本当だ……だがギーシュは信じなかった。もちろん平民でもないのだが……
「ならこれでどうだ!」
今度のワルキューレは七体……しかもただのワルキューレじゃない……今度は武装していた。槍と斧を合体させたような形状のハルバートと呼ばれる形状の武器を持っていた。それをみてルイズは叫ぶ。
「ギーシュ!武器まで引っ張り出すなんてやり過ぎよ!」
「煩い!こいつも力を隠してたんだ……僕も遠慮はやめるだけだ!」
ギーシュの中にあったのは恐怖……メイジと言ったものの実際ギーシュはそれとは実際には違うものも感じていた……正面にたって戦うからこそこの男の中にある得たいの知れない何かを感じていた……例えるなら……獣のオーラ……
人間が武器を持っていたとしても野生の獣に襲われれば恐れる……それに似た感情を感じた……だが闘夜はまっすぐギーシュをみた……敵に背は向けない……そう言う思いをもって闘夜はここにいた……ただ自分の意地だけじゃない……
ルイズをバカにした……闘夜は聞いた……誰よりもルイズが努力したこと……それゆえに思うのだ。何故努力したものが笑われるのかと……結果がすべて?そうかもしれない……だが闘夜は結果ではすべては探れないと思う。きっとルイズにも彼女にしかできないことがあるはずだと思う。何せ闘夜がいた戦国時代でだって法力や妖術が使えなくたって生きている人たちは大勢いるのだ。だから魔法が使えない位で落ち込む必要はないと闘夜は思った。
無論世界が違い……文化が違うこの世界で闘夜の考えは少々ズレている部分もある……貴族であれば魔法が使えると言う世界において魔法が使えないと言うのは致命的だ……だが闘夜は関係ないし気づいていない……ズレているならズレているなりに闘夜は考えて思った心である。
だから……戦う。ギーシュのちっぽけなプライドと闘夜自身が思い……感じた心…… どちらも己の感情を守りたいのだ……己の思いを……意地を守りたいのだ……だがひとつ違いをあげるとすれば……
ギーシュは
「いけ!」
そのプライドをのせたワルキューレは七体同時に闘夜に突進する……対する闘夜も身構えた……武器がある……流石に武器で斬られると痛い……どうするか考えながらとりあえず避ける……今度は油断しない……上、下、横と繰り出される武器の攻撃を闘夜は避ける……ギーシュは焦る……
武器ゆえに当てれば勝てる……その考えは間違っていない。だが武器と言うものを手にしたがゆえに動きが雑で大降りなのもまた事実だった。それであれば闘夜も躱しやすい……だが武器持ち七人というのは数が如何せん多い……そのため攻勢に出る隙が少ない……
「トーヤ!」
ルイズが叫ぶ……それを聞いて闘夜は笑った……大丈夫だと……もう少し待っててくれと……負けないから……あんたのバカにされたぶんもきっちり返すから……主人だから?それもあるだろう。仮にも一宿一飯の恩義がある。だがそれだけじゃない。先程追い出されたとき闘夜は無意識に感じていた……ルイズが必死に戦っていたことを……だから思ったのかもしれない……そんな女の子の背負ってるものの少し位は変わってやりたいと……この子のために戦いたいと……
闘夜の眼に意思が灯る……こいつをぶん殴りたい……こいつに目にものを見せたい……なんのために?ルイズのために!
《ドクン!》
っとその時一応腰に着けていた鉄閃牙が脈を打った……闘夜は眼を見開く……理由はわからない……だが闘夜はまるで鉄閃牙が自分を使えといってるように感じた……
闘夜は鉄閃牙の柄を握る……しっかりと……放さぬように……そして一気に引き抜いた!
「鉄閃牙!」
ギャン!っと言う音がしたかと思うと次の瞬間……
『え?』
その場の皆がまた驚愕した……そりゃそうだろう……突然闘夜が腰に着けていた物を引き抜いた瞬間現れたもの……
鍔元にはフサフサの白い毛……そして何よりも眼を引いたのはその刀身の大きさだった。身の丈ほどの巨大な刀身…バスターソードとこの世界では呼ばれる剣に似ていた……だが同時にこうも思った……まるで牙だ。巨大な牙である。
これこそ鉄閃牙の真の姿……祖父と父と闘夜の牙を併せ作り出した刀……父の妖刀・鉄砕牙の破片を混ぜ込み作り出した妖刀・鉄閃牙。鉄砕牙より一回りほど小降りになっているがそれでもでかいことにはかわりない。そして、
「これが鉄閃牙の真の姿か……」
闘夜は一人でそう呟く……そして胴体を纏めてまっぷたつにされ、残り四体まで減ったワルキューレとギーシュを見た……
「さぁ!決着つけようぜ!」
そう叫ぶと今度は闘夜が走り出した……
鉄閃牙も一部に鉄砕牙の破片を使っているので持ち主の思いによって化けます。序でに鉄砕牙の技も一応使用可能です。ただその辺は闘夜の実力の向上やその他諸々で徐々に解除されていきます。その辺のは刀々斎が頑張ったと言うことで……
一応少し鉄砕牙より小降りになってますが……