異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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告白

「ん……」

 

小窓から入ってくる朝日に思わず目を強く瞑る……だが、廊下をなにか慌てたようにバタバタと走る音にルイズの意識は完全に覚醒した。

 

「なんの騒ぎかしら?」

 

そう呟き体を起こそうとするが、

 

「ん?」

 

体を起こそうとしても起きない……どう言うことかと冷静に周りを見渡すと、

 

「っ!?」

 

よくよく見てみると自分は闘夜にしっかり抱き締められて寝ているではないか。しかもルイズの方も、しっかり闘夜の首に腕を回してガッチリロックしている。

 

それと共に、昨晩の出来事が鮮明に思い出されてきた。何がそっち行っても良い?だ!あんなにベタベタくっついてアホか自分は!と、思いもするがあれは酒の席での醜態だと言い聞かせ闘夜に声を掛ける。さっきからどうやっても自力では抜け出せないのでこいつを起こすしかないのだ。

 

「ちょっと、闘夜!起きなさいよ!」

「んにゃ……」

 

幸運にも闘夜は一回声を掛けると起きる。そして目の前のルイズを黙視すると、

 

「おはようございます……ルイズ様」

「はいおはよう。と言うわけで離して貰って良いかしら?」

 

むにゃむにゃと挨拶をする闘夜に、ルイズはルイズで律儀に挨拶を返してから解放するように言って解放してもらう。

 

『ふわぁ……』

 

それから二人で身体を起こし、まだどこか寝ぼけた頭を動かしながらいると、丁度ドアが開かれた。

 

「はいはいどいてね~……って!ルイズ様!?何故ここに!?」

「ちょっとね。で?朝早くからどうしたの?」

 

何事もなかったように澄ました顔でルイズが聞くと、入ってきたメイドも背筋を伸ばして言う。

 

「旦那様が到着されたので大急ぎでお掃除をしようと」

『っ!』

 

そのメイドの言葉にルイズと闘夜は驚きながら顔を見合わせたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く!急に王室まで儂を呼びつけたかと思えばあの鳥の骨めが!」

 

そう声を荒げたのはエレオノールと同じ色の髪と立派な髭を生やし、鋭い眼光を持つ50代の男である。

 

彼こそルイズの父親にして、ヴァリエール家の当主……そんな彼は現在妻と子供たちと共に庭に作られた椅子に腰掛け、テーブルに並べられた朝食を食べていた。

 

彼が怒っているのは、今回のアルビオンとの戦争のために軍を編成せよとの命令についてである。今回は免除費を払うことで免れたが、元々この戦には反対派であるためか彼は憤慨している。

 

そんな姿を見て、

 

「あのお父様。伺いたいことが……」

 

ルイズは声を掛ける。彼女にはわからないのだ。今国は一丸となってアルビオンとの戦いに望もうとしている。

 

それに何故反対するのだろうか……

 

「良いともルイズ。だがその前に久し振りに父に接吻してくれないか?」

 

ルイズはその言葉に従い父の横に向かうと頬にキスをする。それから父を見て、

 

「何故戦いに反対なのですか?」

「この戦いが間違っているからだ」

 

ルイズの問いに、父はキッパリと答える。

 

「良いかねルイズ?アルビオンを迎え撃つと言っているがこちらから攻め込むことは迎え撃つとは言わないのだよ。そして攻め込む側は守る側のおよそ三倍の数があってはじめて確実に勝てると言われるいる」

 

ルイズは父が言わんとしていることを理解した。

 

確かにこちらの軍勢はゲルマニアと合わせて六万。対するアルビオンは五万……数だけならこっちが有利だが父の言葉が本当なら厳しい戦いだろう。

 

「だからこそルイズ。お前を戦争に出すわけにはいかん。行きたいそうだが絶対に許さん」

「でも陛下は私を必要だといってくださったわ!」

 

ルイズの言葉に父だけではなく、母やエレオノールも息を飲む。昔であればルイズは父にこうして反論することなんてできやしなかった。

 

そんなルイズの姿に父はまっすぐと目を覗き込む。

 

「お前は自分の系統に目覚めたのかね?」

「……はい、火の系統です」

 

虚無のことを話すわけにはいかない。それは絶対だ。だから嘘を吐くしかない。仕方ないことと割りきっても嘘を吐くことに胸が痛むがそれを飲み込んでいると、

 

「そうか、お前のお爺様と同じ系統だ。戦いに惹かれる罪深き系統。だがそれでもお前をいかせられない。陛下には儂から話しておく。暫くは領地からでるのも許さん」

「そんな!」

 

ルイズはそれでも抗議に出ようとするが、ならんものはならん!と言われ、言葉を詰まらせると父は息を吐いてから、

 

「丁度良い。ルイズ、お前は婿をとれ」

「……はい?」

 

と、ルイズは一度思考が完全に停止してしまい、何て言いました?と父を見る。

 

「お前も婿をとれば少し落ち着くだろう。違えることは許さんからな」

 

そう言って父はツカツカと執事をつれて部屋に戻ってしまう。

 

「ちょっとお父様!」

「待ちなさいルイズ」

 

結婚なんてトンでもないとルイズは言おうとするが、それを母に止められてしまう。

 

「お母様……」

「この話はもう終わりよ。私もこれを機に結婚すると良いと思うわ。昔から何かあると無茶して心配かけて……」

 

うっ……とルイズは視線を逸らして遠い目をする。その事に関してはなにも言えない。

 

エレオノールやカトレアと言った姉二人はおとなしかったらしいが、自分はと言うとお転婆なんてもんじゃない程で、かなりキツく叱られたのは記憶にしっかり残っている。

 

「で、でも結婚なんて!」

 

そう言って抵抗するルイズに母は首をかしげ、

 

「貴女恋人でもいるの?」

「にゃっ!いいいませんよ!?」

 

 

顔や耳どころか首まで真っ赤にして明らかに狼狽するルイズに母だけではなくエレオノールもピンと来る。

 

「想い人はいるみたいね」

「だだだだから!ちち違いますすすすす!」

 

成程、ここまで否定することは……と母とエレオノールは、

 

「大方身分の低い下級貴族に恋したんだわ」

「まさか騎士(シュヴァリエ)何て言う訳じゃないでしょうねぇ?」

 

母は頭を抱え、エレオノールには詰め寄られる。

 

だが言えるわけがない。貴族としては最下級の騎士(シュヴァリエ)所かただの平民……しかもここから遠い国の人間で頭から犬の耳が生えた学園に入学もできない年齢の年下の男だなんて……ってだから!

 

(何であんたが出てくんのよ!)

 

ん?と言いながら振り替える姿が脳裏に浮かんだ闘夜を脳内で蹴り飛ばして退場させながらルイズは両足に力込め……

 

「違いますからぁああああああ!」

『あっ!』

 

脱兎のごとく逃走。この足の早さは正しくウサギのごとくで、もし魔法ではなく、走る速さを競う競技があったら確実に一位になれるであろう速さがあった。

 

「こら待ちなさいルイズ!」

 

と、母は言うが言い終わる頃には既に豆粒……本当に身体能力だけなら何気に高いルイズである。

 

すると、そんなルイズを見ながらカトレアは一人席を立ち、静かにどこかに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハックション!あぁ!」

 

一方その頃一人物置小屋で置いてあった薪を積み木のように積み上げて暇を潰していた闘夜は大きなくしゃみをして、せっかく積み上げた木を倒してしまっていた。

 

「折角記録更新できそうだったんだけどなぁ……」

 

現在闘夜一人しかいない。シエスタは手伝いにいってしまったしルイズは父親が帰ってくるらしいので居ない……

 

そうして一人でいるとソワソワして落ちつかなく、しかたないのでベット代わりの藁の上にシーツをおいただけの物に身体を預けて息を思いっきり吸い込む。

 

そうするとルイズの匂いがして落ち着くのだ。

 

「ルイズ様まだ帰ってこねぇのかな……」

 

そう呟いた次の瞬間!

 

「そうね、このままだと帰ってこれなくなるわね」

「っ!」

 

背後から聞こえてきた声に闘夜は驚愕しながら跳ね起きて声の方向を振り替える。そこにいたのは……

「ルイズ様のお姉さん?」

「カトレアよ。昨日ぶりね」

 

お座りになったら?と言われベット擬きに腰を掛けると、カトレアも隣に座る。

 

まさにルイズを大きくして穏やかにした姿をしている彼女を見ていると、何故かこちらまでドキドキしてしまうのは気のせいだろうか?

 

等と思っているとカトレアがクスリと笑った。

 

「ふふ、ルイズはもっと素敵な女性になるわよ」

「うぇ!?」

 

いや確かにルイズ様に似てるなぁ……とは思ったが何故それがバレたのだ?と闘夜が目をパチクリさせているとまたカトレアは笑う。

 

「可愛い子ね。ルイズが大切にする理由が分かるわ」

「は、はぁ……」

 

大切に?いや大分ぞんざいに扱われてる気がするがと闘夜は首を捻った。そんな姿も可愛かったのかまたクスクスとカトレアに笑われてしまう。

 

「凄く大事に思ってるわよ?あの子も成長したなって思わされたわ」

「うぅん……」

 

そうかなぁ……とまた頭を捻ると、カトレアは真剣な目付きになった。

 

「ルイズが陛下に戦争で必要とされてるらしいわね」

「あ、はい……」

 

その空気に闘夜も表情を引き締め、言葉を発する。

 

「やっぱり、反対ですか?」

「正直に言えばね?だって戦争だもの……危険は付き物だし大切な妹が行くなんて反対。でもあの子は本気だったわ。その意思は尊重したいとも思うの。難しいわね」

 

そう言って複雑そうな表情を浮かべるカトレアを見て、闘夜も少し悩み……そして、

 

「俺も戦争は嫌です。ルイズ様に危ない目には会って欲しくないです。でもあの人一度言い出すと聞きませんし……」

 

そうね、頑固なところがあるからと少し笑うカトレアを見て、闘夜はハッキリと言う。

 

「だから、俺が守ります。誰が相手でも全員ぶっ倒してルイズ様を危険な目には遭わせません。そうすればあの人がどこに行こうと安全ですから」

 

そんな闘夜を少し驚いた顔でカトレアは見ると、優しげに微笑みながら口を開いた。

 

「そう。やっぱり貴方もルイズが好きなのね?」

「え?そりゃまあ」

 

何をいってるんだ?と闘夜はポカンとする。だって嫌いだったら一緒にいませんよ?と思っているとカトレアはまた笑った。

 

「違うわ。貴方の好きは今思ってる好きじゃない。貴方はルイズに恋してるのね」

「……へ?」

 

たっぷり時間をかけて目をパチクリさせながら言葉を絞り出す。

 

「こ……い?」

「えぇ、恋よ。貴方はルイズを一人の女の子として愛してるのよ」

 

カトレアに言われ、闘夜は首をブンブン横に振った。

 

「ま、待ってください!ルイズ様を好き!?何いってんですか!?いやいやいや!ルイズ様は俺の主人だし貴族だし身分違いますしそもそも俺誰かを好きになったことなんて……」

 

そんな風に慌てる闘夜にカトレアは微笑みながら闘夜が言葉を止め、ゼイゼイと息をするまで待ってから、

 

「確かにルイズは貴方の主人で貴族よ?でもそれは好きにならない理由じゃないわ。勿論、貴方が誰かを好きになったことがないのもね?」

「っ!」

 

うっ!と闘夜は息を呑む。するとソッとカトレアは闘夜の頬を両手で包み込んでくる。

 

「よく考えて。ルイズと一緒にいるときどうだった?」

「それは……」

 

最初に思ったのはルイズがいると、胸が痛くなること。でも同時に嬉しくなって、そんな一緒にいる時間がずっと続けば良いと思うこと……

 

次に離れると心に穴が空いたみたいになって、追い付かなくなること。

 

そしてくっついていると、胸をかきむしりたくなるような……落ち着かないとも違う今までにない感情を感じること……

 

それを全てカトレアに伝えると、カトレアは頷いて口を開く。

 

「それが愛おしいって言うことよ」

「愛おしい?」

 

闘夜がポカンと呟くと、カトレアは言葉を続ける。

 

「誰かを好きになると言うことよ。この人のことを大事にしたい。この人と一緒にずっといたい……それはとても素晴らしくて大切なものよ」

 

そういったカトレアは最後に、

 

「ルイズはね?このままだと婿を取らされるの」

「そんな!」

 

婿を取らされると言うのが何を意味するのか闘夜にもわかる。そんなの納得できないと闘夜が言うと、カトレアは闘夜に伝える。

 

「ルイズはね屋敷近くの湖にいるわ。昔から怒られるとあそこにあるボートにある布を被って隠れるの。だから彼処に行って逃げなさい」

「良いんですか?」

 

闘夜がそう聞くと、カトレアは頷いて答える。

 

「貴方になら託せるわ」

 

そう言ってチュッと闘夜の額にキスをして、

 

「大事な妹を頼みますね?ルイズの騎士殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズは一人泣いていた。湖のボートにのって布を被る。これなら遠目には誰もいないように見える。

 

何故わかってくれないのだとルイズは歯を噛む。自分は必要とされている。今までずっとゼロだと言われてきた自分が初めて認められたのだ。それなのになんで許してくれないのかと……

 

すると、

 

「あ、ホントにいた」

「え?」

 

ギシっと言う音と共にボートが揺れ聞き覚えのある声が聞こえてきた。なので顔をあげてみれば……

 

「ルイズ様。迎えに来ましたよ」

「トーヤ……」

 

闘夜の顔に、ホッとしたがプイッとソッポを向いてしまう。

 

「どこに行くのよ。お父様には許されんかったし……ってまさかお父様のところに!?」

「んなわけないでしょ。普通に学園に帰りましょって話ですよ」

 

ならいいけど……いやよくないけど!っとルイズは百面相をしているが闘夜はルイズの手を引こうとする。

 

「ほら帰りますよ。さっさと行かないと結婚させられるんでしょう?」

「別にそんなのあんたに関係ないでしょ!?」

 

なんで知ってるのかも気になったが取り合えずルイズは闘夜の手を払い除ける。すると、

 

「いや、関係あります」

「なんでよ!理由を簡潔に述べなさいよ!」

 

別に使い魔のこいつには自分が誰と結婚しようが関係ないはずだ。なのに関係あるだぁ?理由を申してみろと叫ぶ。

 

そんなルイズに闘夜は顔色ひとつ変えずに、

 

「だって俺ルイズ様のことが好きみたいで気に喰わないんですもん」

「あぁそう!私のことが好きなのね!そりゃ大層な事情……」

 

段々語尾が消えていくのと同時にビキビキ音をたて体が固まっていく感覚と共にルイズは自分の頬が硬直するのを感じた。

 

「え?」

「いやぁ、俺もさっき知ったんですけどね?俺ルイズ様のこと好きなんですよ」

 

アッハッハと言う闘夜にルイズは、

 

「はぁ?」

 

全身の力が抜け、膝をついてしまう。今自分は告白されたのか?

 

ルイズだって年頃の女である。バラを百本とか画面一杯にキラキラ星とは言わないがこうもっとこう胸がときめくような情緒あるのを想像していた。

 

だがなんだこいつは……アッハッハと笑いながら言うべきことなのかこれが!?なに?こいつはまさかふざけて……

 

「あ……」

「あ?」

「アホかあんたはぁ!」

 

全身を震わせてルイズはガァ!っと口を開けて怒声を発する。

 

「なにあっけらかんと笑いながら言っとんじゃおどれは!普通こう言うのはもっと情緒と言うか雰囲気と言うかムードが大事でしょ!?そもそも私はもっと大人で落ち着いてる人が好みなの!お分かり?あんたは対象外よ!」

 

と、ここまで言ってルイズは、待て落ち着けと言い聞かせる。

 

冷静に考えてこいつがこう言うふざけ方をするだろうか……考えれば考えるほど、柄じゃないなと思う。

 

こいつはそういう冗談を言えるやつではない。つまりそれが導きだす答えは……

 

(本気でいってる?)

 

そう結論が出るとカァッとルイズは自分の頬が熱くなるのを感じた。

 

闘夜が自分にマジで告白した?つまり闘夜は自分が好きなのか?

 

ニヘラァ……っとルイズはあまり人には見せられないほど頬が緩んでいるが自覚はなく、いやいや私は年上がとかブツブツ言っている。ぶっちゃけ今更言い訳感しかないのだが、ルイズは認めない。

 

すると、そう言えば随分闘夜が静かだと言うことに気づく。どうしたのだろう?そう思いながら見てみると、

 

「……」

「あ……」

 

ズゥンと言う効果音が付きそうな闘夜がそこにはいた。

 

そりゃまあ好きな女の子からボロクソ言われた上に対象外と言われて元気なやつがいる訳がない。

 

それはもういつもの闘夜からは考えられないほど暗いオーラにルイズは後ずさりそうになるが小舟の上にそんな逃げ場はない。

 

「あ、あの……トーヤ?」

「い、いやぁ……あはは!すいません変なこといっちゃって……忘れてください」

 

と、明らかに気まずそうに視線を逸らして来る闘夜に、ルイズは待て待てと両肩を掴んでこっちに向かせる。

 

「あ、あのね?ちょっと勘違いがあったと言うか誤解があったと言うか……いやそのなんというか、あのぉ」

 

じゃあ好き?いやいや別に好きな訳じゃないのよと悪あがきにもほどがある言い訳を自分にして続きの言葉が紡げずにいると……

 

「何を……しておるのかね?」

『え?』

 

突如掛けられた声に、闘夜とルイズは振り返る。そこにいたのは、

 

「お父……様?」

 

勿論その周りには母や姉に使用人たちもいる。そしてその全員が目を真ん丸に見開いてこちらを見ていた。

 

「え、えぇと……」

 

さて状況を整理してみよう。今自分と闘夜は同じ小舟にいる。うん、これはおかしくない。

 

次に自分は闘夜の両肩を掴んでる。これはまあセーフだろう。

 

そして自分の顔は闘夜の顔の鼻と鼻がくっつきそうなほどの距離にある。これは……えぇと、

 

(うん。端からみたらアウトだわ)

 

端から見れば完全にルイズが闘夜に迫っている図である。いやまあ強ち外れてもいないのだが……

 

さらにルイズは気づいてないがなんとも言えない甘酸っぱい雰囲気がその場に流れており、それを感じ取ったルイズの父の顔は苦虫を一万匹噛んでるような顔をしてから、

 

「ジェローム。ルイズを塔に監禁するから鍵を丈夫なやつに変えておきなさい。一年は出さん」

「はい」

「それからそうだな……娘をタブらかした糞ガキは晒し首だな。台を作っておきなさい」

「はい」

『……』

 

サァーっと血の気が引いていくのはルイズと闘夜である。

 

闘夜もタブらかすと言うのがなんの話なのか分からないが取り合えず今自分の命が脅かされているというのはわかった。

 

「えぇとルイズ様?」

「えぇ、そうね」

 

そう二人が目で合図をした次の瞬間、バッとルイズは闘夜の背中におぶさり闘夜は足に力を込めると……

 

『にげろぉおおおおおお!』

 

ドンッと一気に飛び上がると、人垣を一足で飛び越えてそのまま走り出す。

 

『なっ!?』

 

その跳躍力は完全に予想外だったらしく、ルイズの家族や使用人達は目を見開いて見た。

 

「ほら闘夜!もっと早く走りなさい!」

「そ、そう言ってもどこに向かうんですか!?」

 

そう言ってあっちこっち逃げ回るが相手も一筋縄では行かない。速度では闘夜の方が上でも上手くこちらの逃げる方に回り込み捕まえようとワラワラとやって来る。今この瞬間にも目の前にやってきて……

 

「こうなったら……」

 

バキッと指を鳴らしたた闘夜は目の前に道を塞ぐように飛び出してきた使用人に向かって手を振り上げようとした瞬間!

 

「バカ!」

 

ゴチン!っとルイズにぶん殴られて止められた。

 

「怪我させたらどうすんの!すぐ手が出るのどうにかしなさい!」

「すぐ手が出るのに関してはルイズ様には言われたくないですよ!」

 

と言いつつも方向を変えて逃げ道を探す……すると、

 

「トーヤさん!ミスヴァリエール!」

 

そこに現れたのはシエスタだ。いきなり現れた彼女に闘夜とルイズは顔を見合わせると、シエスタがこっちですと案内してくれた。

 

「どこに行くのよ?」

「カトレア様に言われまして」

 

そういったシエスタの案内に従い、着いていくとそこには、馬車とそれを牽引する馬がいる。

 

「二人とも乗ってください!私が出しますから!」

 

シエスタがそう叫ぶと闘夜とルイズは馬車に乗り込み、シエスタが馬車を走らせる。後ろから叫ぶ声が聞こえるが聞こえない振りをして、二人でやれやれと一息吐きつつそのまま走っていくと、

 

「きゃあ!」

「うぉ!」

 

ドカンと馬車の壁に穴が開きルイズが飛び上がった。

 

「まぁあああああてぇえええええ!」

 

地獄の底から這い出てきたような声で叫びながら後ろから馬に乗って追いかけてくるのはルイズの父……50を越えた男性とは思えないバイタリティで馬を駆って馬車に追い縋ってくるその姿はとても人間とは思えない。

 

「にがさぬぞぉおおおお!」

 

そう叫んだルイズの父はトォ!っと馬からジャンプして馬車の壁に飛び付くと開けた穴から進入しようと身体を捻る。

 

「お、お父様!?」

「ルイズぅうううう!わしはそんなガキとなんて許さんぞぉおおおおお!」

 

そう叫びながら中に入ろうとする父をルイズは咄嗟に顔を押して追い出そうとする。

 

「こ、こらルイズ!何をする!」

「トーヤ!力貸しなさい」

「はい!」

 

そう言ってルイズと闘夜がグイグイとルイズの父を押し出しにかかる。

 

「や、やめんか!こら!お、落ちる!」

 

幾らルイズの父が必死に耐えたところで二人掛りでしかも闘夜の馬鹿力に対抗できるわけもなく……

 

「あ……」

 

ベキベキと必死に掴んで抵抗していた壁の一部を持ったままゆっくりと馬車と自分の体の距離が出来ていくのをルイズの父は見ながらそのまま地面に落下……

 

「良かったんですか?」

 

その様子を見ながら闘夜はルイズに聞くと、

 

「良いわけないでしょう。でも捕まるよかマシよ……」

 

やってしまったと言う顔をしつつルイズは言うがすぐに気を取り直し、

 

「とにかくもうこうなったら許可なんてなしで行くわよ!」

 

そうルイズが闘夜に言うと闘夜も頷きを返すが、

 

(俺の意思はないのか……)

 

と、内心少し思ったのだが……それは口には出さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ここにはアルビオンの重鎮と、クロムウェル及びその後ろにはワルドとフーケが控え、軍議が行われていた。

 

「いったいどうされるのですか!」

 

その中の一人がクロムウェルに叫ぶ。

 

タルブでの敗北に続きアンリエッタの誘拐失敗、スパイの捕縛の報告……アルビオン王家には勝ったがそれ以降敗けが続いている。

 

更に今回のトリステインとゲルマニアの連合軍結成。これでこちらとの数の差は殆どない。これは厳しい戦いになるだろう。

 

だがクロムウェル当人は至って涼しい顔で聞いている。

 

「聞いておりますか!」

「聞いている。なぁに、トリステインの連中には今のうちに勝利の美酒を味わわせてやればよいのだ」

 

その言葉に、何か策があるのですか?と誰かが聞き、クロムウェルはニヤリと笑う。

 

「別に大したものではない。ただあやつらは少々背中を疎かにしている。内側にも……外側にもな」

 

クロムウェルの言葉に重鎮達はハッとする。トリステインの背後にある国と言えば一つ。ガリアだけだ。つまりクロムウェルの声音から察するにガリアと何かしらの密約を躱したのだろうか……

 

「安心したまえ。トリステインが幾ら有利になろうとも、我には逆転の策がある」

 

そうクロムウェルは言ってから部屋を退出するとそれにワルドとフーケも続く。

 

「しかし中立を宣言したガリアがこちらに合わせてくれるのでしょうか?」

「なあに。別にガリアだけが策でもない」

 

そんなクロムウェルの言葉にフーケは眉を寄せる。

 

「どう言うことだい?」

「言っただろう?トリステインは内側も疎かにしているとな。例えば今襲われたらどうするのだろうな……貴族が集まる学園とかをな」

「っ!」

 

クロムウェルの言葉でフーケの脳裏に浮かんだのは、自分が捕まる前最後に忍び込んだ場所……トリステイン魔法学園だ。と言うか貴族は集まると言う時点でそこしかないのだが。

 

「だがそんな簡単に上手く行くのかい?」

「なに、プロに依頼している」

 

プロ?とフーケが首をかしげるとクロムウェルは頷く。

 

「白炎のメンヌヴィル……君も名前くらいは聞いたことがあるだろう?」

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