異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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穢れなき眼

「ハハハハハハ!懐かしいじゃないか隊長!この温度は忘れないよ!俺の目を焼いてくれた隊長だ!」

 

頬を上げながらゲラゲラ笑っているメンヌヴィルとは対象的にいつもの穏やかな表情が微塵も感じられないコルベールが口を開く。

 

「変わらないな君は……」

「いや変わったよ……あんたを今度こそ殺すためになぁ!」

 

そういうと同時にメンヌヴィルは杖を振り炎を生み出すとコルベールに放つ。

 

「っ!」

 

だがコルベールも杖を振り炎を出すとメンヌヴィルの炎を相殺してみせる。それを見たメンヌヴィルは嬉しそうに目を更に笑った。

 

「うれしいよ。魔法研究所(アカデミー)実験小隊時代から腕は鈍ってないみたいだな」

 

そんなメンヌヴィルを無視し、コルベールはキュルケとタバサの前に来ると守るように立つ。

 

「先生……」

「安心しなさい。生徒には手は出させない」

 

そうして、コルベールが優しい声音でそう言ったのを合図とばかりにメンヌヴィルは再度炎を出した。

 

「さぁ!隊長!楽しもうじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法研究所(アカデミー)実験小隊……隊長?」

 

キュルケ達とは少し外れて乱入したアニエスは、人質となった生徒達を囲んでいたメンヌヴィルの部下と自分の部下と共に戦っていたのだが、鋭い眼光を更に鋭くしてメンヌヴィルとコルベールの戦いを見ていた。

 

「隊長?」

 

それを隣から覗き込んできた部下に目もくれずアニエスが見ている中、

 

「どうした隊長!そんな程度では俺を倒せんぞ!」

火を撒き散らしコルベールに迫るメンヌヴィルを捌きながら後ろへの気配りも怠らない。

後ろにはキュルケとタバサがいる。この男は遠慮なく炎を撃ってくる。今動けば間違いなく巻き込んでしまう。どうにか隙をつかなければ……と思っていると、

 

「死ねやぁあああ!」

 

とそう叫びながらアニエス達と戦っていたメンヌヴィルの部下の一人がコルベールに飛びかかってくる。

 

「っ!」

 

だがそれをコルベールは慣れた様子で防いだ瞬間、

 

「たいちょおおおおお!」

「っ!」

 

そこに迷うことなくメンヌヴィルは炎を打ち込んだ……が、

 

「むっ!」

 

炎の中から飛び出したのはコルベール……メンヌヴィルの部下を咄嗟に突き飛ばした彼は半ば強引に火の中を駆け抜けメンヌヴィルとの距離を詰める。

 

「やはり君は変わらないよ。傲慢で自信過剰……そしてすぐに油断する辺りがね」

「っ!」

 

ゴッ!っとコルベールはメンヌヴィルの喉を杖で突き、怯ませると詠唱を完了させた。

 

「ゴホッ!」

「終わりだ」

 

コルベールはそう呟くと杖を振り、同時に炎で作られた蛇がメンヌヴィルに絡み付き体を焼いていく。

 

「がぁあああああ!」

「……」

 

体を焼かれ、床を転がって苦しむメンヌヴィルをコルベール見下ろし、杖を振って火を解除する。メンヌヴィルは死んではいないが虫の息状態だ。

 

「もう殺しはしないと決めているものでね」

 

そう言い残しコルベールはキュルケのところに戻っていく。そんな後ろ姿をメンヌヴィルは見つめていた。

 

こんなところで負けるのか?そんなのは認めないとメンヌヴィルは歯を噛み締める。

 

この男を焼くために自分は腕を磨いたのだ。今度はやれる……そう自信を持っていた。

 

「っ!」

 

もう魔法で人を殺さない……そう心に誓った。誓ってしまった。それ故に止めをさせなかったコルベールの油断である。だが普通の人間なら……いや、普通の人間じゃなかったとしてもここまでの火傷を負った人間がまだ動くなど誰も思わない。

 

「がっ!」

 

しかも更に魔法まで撃つなど誰も予想しない。その予想外をメンヌヴィルはやってのけた。コルベールは咄嗟に防御するが焼け石に水だ。だがそれでもキュルケとタバサだけは守ってみせる。

 

「先生!」

「ぐぅ……」

 

だがコルベールは膝を付き苦悶の表情を浮かべる。そんなコルベールの様子にメンヌヴィルは全身を震わせ恍惚の表情を浮かべていた。

 

「あぁ、これだよこれだ!生きた肉を焼くにおい……しかも待ちに待った隊長のだ!」

 

そう叫ぶメンヌヴィルはまさに狂人である。

 

「ちっ!」

 

だがその瞬間の隙を付いたコルベールの火がメンヌヴィルの顔を焼く。今度は加減なしの炎で、メンヌヴィルの顔の半分を炭にするほどだ。

 

「ハハハハハハ!」

『っ!』

 

だが止まらない。顔の半分をが炭になり、骨が見えているのにメンヌヴィルの足は止まらない。

 

「あん?」

 

するとそこに背後から忍び寄った影がメンヌヴィルに剣を突き刺す!

 

「隊長殿!?」

 

ぐりっと剣を差し込みメンヌヴィルを見据えているのはアニエスであった。が、

 

「邪魔をするなぁ!」

「っ!」

 

メンヌヴィルは大木のような腕でアニエスの首を掴むと持ち上げ床に叩き付ける!

 

「ごはっ!」

 

肺にあった空気を吐き出しながら転がるアニエスを尻目にメンヌヴィルはコルベールの元に行こうと再度歩みを始めた。

 

「くっ!」

 

痛む体に鞭を打ち、杖を構えるコルベールにメンヌヴィルは頬尻を上げながら杖を振り上げた次の瞬間!

 

「うぉおおりゃあああああ!」

『っ!』

 

突如メンヌヴィルは横から別のだれかが襲ってきたのを見抜き、咄嗟に後ろに飛んで躱す。

 

「誰だ?」

 

とメンヌヴィルが警戒する中コルベールは目を見開いてその人物の名前を口にした。

 

「闘夜君……」

「大丈夫ですか!?」

 

闘夜が鉄閃牙を構え直しながらコルベールの身を心配していると、

 

「先生!」

 

と、ルイズと何故かフライパンを片手に持ったシエスタも入ってきた。

 

「二人まで……なんでこんな夜中に?」

 

そうキュルケが聞くとルイズは頬を掻きながら視線をそらす。

 

「仕方ないでしょ……馬車に置いてあった地図は微妙に古くて道がなかったりあってもオークの住みかになってたりして時間がかかって……」

「挙げ句学園は見たことない怪しい人たちに囲まれてましたし……」

 

とシエスタが更にフォローを入れて説明してくれた。

 

「だから仕方なく全員叩きのめしながらここまでやって来たのよ。しかしあんたもフライパンで殴打って何気に容赦ないわよね」

 

とジト目でルイズはシエスタを見ながら言うと彼女にはオホホと笑ってごまかす。何て言うやり取りをしていると、

 

「どけぇ!」

 

とメンヌヴィルが突っ込んできたため闘夜が鉄閃牙で止める。

 

「ちぃ!」

 

最初メンヌヴィルは力で押しきろうとしたが、自分より遥かに小柄なはずの闘夜を押しきれず内心驚愕しつつも一度後方に飛んで素早く魔法を放ち闘夜を焼く。

 

「なにっ!」

「アチチチチチチ!」

 

が、その炎の中を突っ切って闘夜はメンヌヴィルとの距離を詰め、鉄閃牙を振り下ろした。

 

 

「ちぃ!」

 

メンヌヴィルは横に避け、更に魔法を放つ。

 

「っ!」

 

闘夜はそれを背中から抜いたデルフリンガーで防ぎ、鉄閃牙を振り直す。

 

「めんどくせぇガキだな!」

 

と、メンヌヴィルは言うと後ろに飛んで回避しながら魔法を撃ちまくる。それを闘夜は上手く隙間をすり抜けるように走りぬけていき、鉄閃牙とデルフリンガーを振るう。

 

(行ける!)

 

そんな中、そう闘夜は思っていた。こいつがただ者じゃないのはわかる。と言うかこんなボロボロなのになんで動けてるのか分からないが、それでも動きが慣れている。前に戦ったワルドに近い。だがそれに闘夜はあのときとは違いきっちり対応していた。

 

勿論メンヌヴィルも相当消耗している。だがそれ以上に今までの戦闘経験は闘夜が自分が思う以上に成長を促しているのに本人は気づいていない。だが、

 

「なめるなぁ!」

 

メンヌヴィルは杖から炎を撒き散らし闘夜を襲う。

 

「この!」

 

それを上体を逸らして避け、更に追撃をバク転で後ろに飛んで距離を取り回避すると、一気に間合いを詰め直して相手に突っ込む。

 

「うぉおおっ!」

 

鉄閃牙を横に凪ぎ、それを躱されるとデルフリンガーで更に追い詰めながら、飛び上がるとメンヌヴィルの横顔に蹴りを叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

ガスッと言う音と共にメンヌヴィルは後ずさったが、素早く体制を立て直すと最大火力を叩き込もうとスペルを唱える。

 

「俺の……邪魔をするな小僧ぉおおおおおおおお!!!!」

 

叫びながらメンヌヴィルは巨大な炎の球体を作り出すと、それを闘夜に向けて発射する。近くにいなくてもその熱風は感じれるほどの強さに闘夜は覚悟を決めて鉄閃牙を振り上げながら突っ込み……

 

「風の傷!」

 

鉄閃牙の刀身を地面に叩き付けると同時に衝撃波が生まれメンヌヴィルの炎とぶつかり爆発音が辺りに響き渡る。

 

「なっ!」

 

その直後にメンヌヴィルは驚愕する。それはそうだろう。なにせ自分が撃った渾身の魔法が相手の撃った謎の衝撃波とぶつかったかと思えばあっという間に炎を掻き消されその衝撃波が自分の眼前に迫ってきたのだ。

 

「っ!」

 

そして闘夜の放った風の傷はそのままメンヌヴィルを呑みこみ、辺りを瓦礫に変えながら広がっていき、それがやむと土煙が舞い上がっている。

 

「どうだ?」

 

鉄閃牙の柄から手を離さないようにしながら見ていると、

 

「ひゅー……ひゅー……」

 

全身がボロボロになり、右腕と左足が千切れ、顎が無くなっている。だがそれでもメンヌヴィルは進もうとする。

 

「だ……ぢょ……」

 

コルベールを焼くこと以外既に意識はないのか更に進もうと足を踏み出そうとした次の瞬間空気を叩いたような音がその場に響いた。

 

「がひゅっ!」

 

その音と同時にメンヌヴィルは全身を痙攣させると、ようやく前に倒れ込み動かなくなる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

メンヌヴィルが倒れたその背後にいたのはアニエスだった。彼女は肩で息をしながらも、メンヌヴィルに投げられたダメージは命に関わるほどではなかったらしい。銃を仕舞いながらしっかりとした足取りだ。だが、

 

「なにしてんだ!」

 

闘夜が叫ぶのを尻目に突如アニエスは剣を手に取るとコルベールに向かって走りだす!

 

「ちっ!」

 

それを咄嗟に闘夜は割って入り、デルフリンガーで受け止めた。

 

「どけ!この男には用がある!」

「そんな剣を振り回しながらする用ってなんだよ!」

 

そう鍔迫り合いをしながら言うと、アニエスは更に叫ぶ。

 

「私はダングルテールの生き残りだ!忘れたとは言わせんぞ!」

「っ!」

 

ダングルテール……その名を聞いた瞬間コルベールの表情は凍りつき、そして口を開いた。

 

「トーヤ君。彼女を通してあげなさい」

「え!?」

 

闘夜は驚きながらも、グン!っと思いっきり押し返してからコルベールを見た。

 

「先生?」

 

勿論コルベールを見たのは闘夜だけではなく、キュルケ達生徒もだ。その視線の中、コルベールは口を開く。

 

「昔私は罪を犯した。私は昔魔法研究所(アカデミー)実験小隊と言う部隊にいてね。そこでは隊長だったんだ。そしてそこで死んでいるメンヌヴィル君は副隊長。そんなある日だ。突然国から命令が来てね。疫病が発生しそれを食い止めるため一人残らず焼けと言われた。後で知ったんだがね?これは新興宗教を潰すための方便だった。後でそれを知ったとき呆然としたよ。そして後悔した。なぜ気づけなかったのかってね。だからもう火を破壊のためだけの道具にしないと決めた。今度は誰かの役に立つ使い方をしようとね。だが驚いたよ。まさか生き残りがいたとは……」

 

そう言いながら、コルベールは両腕を広げて更に言葉を続ける。

 

「でも君なら権利がある。私を殺す権利がね。だから君の好きにするといい」

「そうか……なら!」

お前も殺してやる!そう言うようにアニエスが距離を詰めようとするが、

 

「トーヤ君?」

 

コルベールが驚きに表情を見せる中、アニエスの前に立ち塞がったのは闘夜だ。

 

「どけ……」

「嫌だ」

 

闘夜がそう返すとアニエスは闘夜の胸ぐらをつかみ顔を寄せる

 

「邪魔をするな!」

そう言って横に突き飛ばそうとするが闘夜は踏ん張って耐える。

「貴様!どけと言っている!」

「嫌だ!」

 

闘夜がそう叫ぶと、アニエスが詰め寄ってきた!

 

「お前も聞いただろう!こいつは私の故郷を焼いた!ずっと探し続けていた!何年もだ!そしてようやく見つけたんだ……なぜ邪魔をする!?」

 

そう声を荒げて叫ぶと、その問いに闘夜も声をあげる。

 

()()()()()()()!」

「……は?」

 

闘夜の言葉にアニエスは少しポカンとしながら命令が見てきた。それにたいして闘夜はしっかりと見返しながら、

 

「確かにこの人は話長いしなんか夢中になると話聞いてねぇし良く分かんない話するけど燃料作ってくれたし俺に優しくしてくれた人だ!だから絶対殺させない。だから邪魔する!」

 

そう一気に捲し立てた闘夜はアニエスに顔を寄せ睨み付ける。

 

「だからこの人に何かしてみろ……俺は絶対許さない!」

 

ギッ!と闘夜はアニエスを睨み付けると、彼女は唇を噛む。すると、

 

「……」

「え?」

 

コルベールが驚く中、なんとアニエスは剣を納めながら背を向けて歩いていく。

 

「アニエス君?」

「黙れ!」

 

ギロッと背筋が凍りつくほど冷酷な目と声を発しながらアニエスは一瞬振り返ったが、すぐにその場をあとにしてしまう。

 

それを見送りながらいると、

 

「どうしたんでしょうね?」

 

と、闘夜は困惑しながら口を開いた。

 

「詳しくは分からないが……恐らくは」

 

そうコルベールが闘夜の目をみながら言う。

 

「君のその目かもしれないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

先程の場所から少し離れたアニエスはガン!と壁を殴っていた。

 

今更殺しに罪悪感?断じてそんな物じゃない。全てはあの時の闘夜の眼だ。

 

穢れのない純粋な眼だった。等の昔に自分は捨てた。棄てて代わりに力を得た。殺しても動じぬ修羅の道に堕ちることを代償に……

 

だが闘夜にはそれがない。いい意味でも悪い意味でも世の中を知らないからこその眼にアニエスの心がざらつく。苛立ちとも羨望とも勿論嫉妬でもない。こうなったことに後悔はない。

 

だがそれでもあの眼に復讐を遮られたことは確かで、それが無性に彼女を苛立たせていた。そして、

 

「くそぉおおおおおお!」

 

彼女の様々な感情の入り交じった怒号は、月が輝く夜空に吸い込まれていったのだった。

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