異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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いざ戦場へ

先日の学園襲撃から次の日、闘夜はゼロ戦に荷物を運び込んでいた。

 

勿論ルイズもいるのだが彼女はこれから戦場に向かうためか緊張しており表情は固い。

 

まあそんなわけなので闘夜は一人でガチャガチャと荷物を積む。

 

服、ペン、紙にルイズは向こうでも暇があれば勉強するらしいので教科書とシエスタが作ってくれたお弁当も積んでとやっていると、そこにコルベールがやって来た。

 

「行くのかい?」

「あ、はい」

 

闘夜はそう頷くと、彼は一冊の本を渡してくる。

 

「ゼロセン?といったかなこれは。素晴らしいものだ。ただ素晴らしすぎて現在のハルキゲニアの技術ではこれに搭載されていた銃弾と同じものが出来そうになくてね。だから代わりに私の発明を取り付けた。必要なときはミス・ヴァリエールに読んでもらいなさい」

「ありがとうございます」

 

そう言って本を受け取ったあと、コルベールは少し口を結び、

 

「暫く私は学園を休む事になった」

「え?」

 

コルベールの言葉に闘夜はポカンと口を開けて見返した。

 

「と言うかまず学園自体おやすみでね。まああんな事が起こった後じゃ当然なんだが……」

 

と頭を掻きつつコルベールは苦笑いを浮かべ、

 

「それに私の過去もある」

「でも今は別に関係……」

 

あるんだよ。とコルベールは言葉を続ける。

 

「良いかいトーヤ君。過去は消えない。ずっと付いてくる。自分がしたことと言うのは一生付き合っていかなければならない。今回の一件で改めて確認したよ」

「先生……」

 

そう言ったコルベールはソッと闘夜の頭に手を乗せ、

 

「これから向かうのは戦争の場だ。色々言っているが所詮は殺し合いの場だよ。もしかしたら君も誰かを殺さねばならないかもしれない」

 

そんなことはしない。と闘夜は言うがコルベールは首を横に降る。

 

「勿論それが良い。だが戦争と言うのは思い通りには行かないものだ。時には昨日まで一緒に笑った相手を見捨てなければならないときもある。さっき言ったようの死なないため……もしくは大切な人を守るために敵を殺さねばならないときもある。それが戦場だ」

「……」

 

闘夜はコルベールの言葉を黙って聞いていると、コルベールは表情を引き締めた。

 

「だからトーヤ君。これだけは覚えていてくれ。殺すこと、殺されることに慣れるな。だがそれを引きずるな。少なくとも戦いの最中はね」

「え?」

 

闘夜は随分正反対のことを言われたな……とコルベールを見ると、今度は少し表情を緩ませてくれる。

 

「死に慣れてはいけない。その心はとても大切で尊く、かけがえのない物だ。だが戦場でそれを引きずり続ければ大切な場面で冷静な判断を行えない。 すごく難しいことだ。私にはできなかった。でも君なら出来る筈だ。そう信じてる」

 

そう言い残し、コルベールは最後に笑みを見せてそのまま背中を向けて歩いていく姿を闘夜は黙って今の言葉を反芻しながら見送った。

 

それから、

 

「ルイズ様!荷物全部積んだんで行きますよ!」

「……え!?あ!うん!」

 

闘夜が叫ぶと少し反応が遅れていたが、ルイズは慌てて顔をあげると、闘夜のもとに駆け寄ってくる。

 

「じゃあ行きましょうか」

 

そう言って闘夜が言うと、二人はそのままゼロ戦に乗り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズはイライラしていた。

 

理由は言うまでもなく闘夜である。どうもここ最近こいつがおかしい。いや、ここ最近と言うのも可笑しいか?なにせこいつが告白して来たあとからなのだから……

 

別に無視する訳じゃない。別に避けられたりもしない。ただどうも告白前と比べると態度がそっけない。今呼びにくるときだって前なら自分の方まで駆け寄ってきていた筈だ。

 

それを態々遠くから呼びつけるとは……主にたいしてなんだと少し思うがそれ以上にムカムカする理由はお前は私が好きなんじゃないかと言うことだ。いやまぁ確かにフったがそれはちょっとした行き違いがあったと言うか、まあとにかく好きならほら、一回くらいフラレたくらいでへこたれずもっと来れば良いだろう。ある意味それは闘夜への好意を示しているようなものなのだが、ルイズは決して認めない。

 

だが闘夜だってルイズを怒らせたかった訳じゃない。でも気まずいものは気まずいのだ。あんだけぼろ糞に言われて流石に今までのようには行かない。

 

それでもルイズについて行くのは一重に例えあれだけボロクソに言われても好きなものは好きだからである。正直自覚してからヤバイのだ。今までなんとも思ってなかったときは平気だった顔をみると言う行為すら照れ臭い。それに加えて気まずい……闘夜的には普通に呼んで話し掛けてるだけでも頑張ってる方なのだ。

 

(はぁ……)

 

と、二人は内心重いため息を吐きつつ、戦場に向けて飛び立ったのだった……


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