異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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第十一章 もう一人の担い手
出会い


「ふ~ふふ~ん」

 

川で水を浴びながら鼻唄を歌っている影がある。

 

一糸纏わず、その肌は透けそうなほど白く、目鼻立ちの整ったその顔は、怖くなるほど美しかった。

 

そんな彼女が水浴びをしていると、

 

「ん?」

 

ガサガサと草むらが動き、少女はビクッと振り替える。

 

どんどん音が大きくなる中、少女は恐怖から動けなくなった。そして、

 

「ひっ!」

 

ガサァ!っと草むらから出てきたのは、全身が真っ赤な何かで、

 

「キャアアアアア!」

 

悲鳴と共にその場で尻餅をついて倒れてしまう。

 

「こ、来ないで!来ないで!」

 

逃げようとするが、混乱のせいで上手く立ち上がれずにもがくだけ。しかし、

 

「え?」

 

するとそれはそのまま前のめりに倒れ、水に一回沈み、そのまま浮力で浮かぶと、そのままプカプカと流れて行ってしまう。

 

「ええと……」

 

良く見てみると、何かのモンスターかと思ったが、人のシルエットだった。

 

「も、もしもーし」

 

彼女は落ち着きを取り戻したお陰で立ち上がると、流れていくそれを追い掛けながら声を掛ける。

 

「う、うぅ……」

 

ピクピクと動くそれを、彼女は勇気を振り絞って掴んで止めると、顔がグルン!と振り返り、目と目が合う。

 

突然振り返ったせいで彼女はビクッと震えたが、

 

「……った」

「え?」

 

小さく唇が動き、何か囁いたようだが、良く聞こえずもう一度聞き直すと、

 

「お腹、減った」

「……えぇと、うちにくる?」

 

それと共にお腹からグゥ~っと大きな音がし、彼女は冷や汗を垂らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走さまでした!」

 

闘夜は山盛りのシチューを5杯も平らげ、大きく息をつく。

 

「お腹空いてたんだね」

「もう一週間近く水と木の実位しか食ってなくて」

 

やっとちゃんとした物が食えたとひと安心しつつ、

 

「俺は闘夜です。えぇと、助けてくれてありがとうございます」

「あ、私がティファニア。長いからテファで良いよ。こういうときはお互い助け合いだから気にしないで」

 

そう言いつつ、テファと名乗った少女が皿を下げる姿を見る。先程出会ったこの少女に拾われ、血だらけの体を貰った濡れタオルで拭き、服を洗って貰いながら闘夜は彼女のご飯を頂いていた。

 

学園の物とは全く違うが、それでもとても美味しいシチューに、闘夜は満足していた。

 

するとティファニアは席に戻り、

 

「君はどこから来たの?全身血だらけで……でも怪我はないみたいで安心した」

「えぇとあっちかな」

 

問い掛けに闘夜はどう答えたものかとなりつつ、取り敢えず方角を指差す。

 

「そう言えば何か騒ぎがあったみたいだけど……何かあったの?」

「大きな戦いがあったんです。それでちょっと巻き込まれちゃって」

 

と、闘夜が言うとティファニアは眼を見開き、

 

「大変だったね」

 

そう言って頭を撫でてきた。闘夜は少しくすぐったそうに眼を細めつつも、

 

「こ、子供扱いしないでください」

「あ、ごめんね。嫌だった?」

 

嫌じゃないが何かモヤモヤする。と闘夜はそっぽを向く。そんな行動が逆に可愛く見えたのか、ティファニアはコロコロと笑った。

 

「俺は一応15歳ですからね!あいや、こっちの風習だと12歳位らしいですけど……」

「そうなんだ。じゃあもうお兄ちゃんだね」

 

闘夜の必死の訴えも、ティファニアから見ると背伸びしているようにしか見えないらしい。

 

そしてそんなティファニアの対応に、闘夜は余計に必死になっていた。しかし、背後の扉から気になる匂いと音がする。

 

「それよりテファさん。誰かが来てるみたいなんだけど……」

 

と言った瞬間、扉が開かれ子供達がワラワラと入ってきた。

 

「ねぇねぇねぇ!お兄ちゃん外から来たんでしょ!?」

「外ってどんな食いもんがあるんだ!?」

「外の世界って貴族がいるんでしょ!?どんな人なの?」

「魔法って見たことあるのか!?空とぶんだろ!?」

「兄ちゃん剣もってんだろ!?強いのか!?」

 

続々と集まってくる子供達に、闘夜は何事かと見て見ると、

 

「こら!皆だめだよ?お兄ちゃん疲れてるんだから」

 

ティファニアに叱られ、子供達が一度闘夜から離れると、

 

「えぇと……この子達は?」

「皆孤児でね。この村で一緒に暮らしてるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後ティファニアに聞いた話では、子供達は両親を戦争等で失い、今はこのウェストウッド村でティファニアが面倒を見ながら暮らしているらしい。

 

そんなわけで、この村に闘夜がやって来て一週間。

 

子供達に遊ばれ……もとい、子供達と遊んだりティファニアの手伝いをしつつ過ごしていた。

 

「よっ!」

 

スパン!と木をデルフリンガーで切って一息。薪はこれくらい集めればいいだろうと、切った木を集めて紐で結ぶと、担ぎ上げて運ぶ。

 

「んで相棒。これからどうすんだ?」

「ん?あぁ~」

 

怪我はもう治っている。体力的にも全快した闘夜は、これからどうするべきか考えていた。

 

「嬢ちゃんのところに戻るってのはどうだ?」

「いやそれは……」

 

気まずいし、殴ってしまったので怒ってると闘夜は言うと、デルフリンガーは少し息を吐き、

 

「あのな相棒。嬢ちゃんは……」

「待てデルフリンガー!なにか来てる」

 

なに?とデルフリンガーが言う中、当夜の嗅覚は、何かを捉えた。

 

嫌な予感がして闘夜は走る。そして木々を抜けると、広場にはティファニアや子供達に、見知らぬ男達が立っている。

 

「な、何のようなの?」

「へへ、俺たちは傭兵何だけどよ、ほんと今回の仕事は憑いてなかったぜ。こっちは七万で余裕かと思えばよ、トリステインの奴とんでもねぇかくし球持ってやがった。お陰で俺たちは敗走。挙げ句に雇い主が消し飛んじまって、商売上がったりだ。でもアンタみたいな可愛い女に出会えたんだからラッキーだ。子供たちもいる。たっぷり楽しませてもらった後に売れば良い金にはなるだろ」

 

下品な笑みを浮かべ、ティファニアや子供達に詰め寄る男達に、子供達はティファニアに抱きつき、ティファニアは子供達を守るように男達の前に立つ。すると、

 

「やめろ!」

『っ!』

 

男達の頭上を飛び越え、間に入ると闘夜は正面の男の顔面をぶん殴った。

 

「トーヤ!?」

「テファさん!皆!大丈夫!?」

 

闘夜は皆が無傷なのを確認し、相手を睨み付ける。すると、

 

「アイツ……まさかあの時の!」

「?」

 

傭兵の一人が闘夜を見て目を見開くと、他の面々も驚愕する。闘夜は首を傾げてるが。

 

「あの時の化け物だ!」

「こんなガキだったのか……」

「何でこんな所に!?」

 

口々に何か言っている。するとその一人が、

 

「おい!驚いてる場合か!どっちにせよ俺たちはここで金を作らなきゃ大損なんだ。だったらコイツを殺してあの女とガキで金を作るしかねぇんだよ!」

『っ!』

 

他の面々もハッとなり、それぞれ武器を構える。闘夜もデルフリンガーを抜き、

 

(小さい子供いるし斬るのは不味いか)

 

と思い、峰の方を相手に向けた。

 

「行くぞ!」

『おう!』

 

傭兵達は次々と闘夜に襲い掛かるが、闘夜は足に力を込めると、相手の剣を次々弾きながら返しに相手の脇腹に一撃を叩き込んでいく。

 

「あがっ!」

「がはっ!」

「ぐへっ!」

 

瞬時に叩きのめされ、男達は次々倒れる中、闘夜は首をかしげた。

 

「ん?」

 

体は軽い。だがそれでもあの時感じた軽さた高揚感はない。あのときに感じた、相手の感情すら匂いで分かった時とは違い、今は何も分からない。

 

(アルビオン軍との戦いの時にはあったあの感覚がない?)

 

何でだ?と困惑したその時、

 

「相棒!気を抜くな!」

「っ!」

 

闘夜が驚いたときにはもう遅い。

 

「きゃあ!」

「お姉ちゃん!」

 

背後に回った一人が、子供達を突き飛ばすとティファニアを奪い、人質に取ったのだ。

 

「へへ、甘いな化け物!幾ら強くたってこの女が大事なのはすぐに分かったぜ!おら!武器を捨てろ!言葉が通じねぇ訳じゃねぇだろ!」

「くそっ」

 

闘夜は悪態を吐きつつも、デルフリンガーを投げ捨てる。

 

「そうだ。それで良い。おらお前ら!なぶり殺しちまいな!」

『おう!』

 

生き生きとしながら、闘夜に峰打ちされたやつも含めて立ち上がると、此方に詰め寄ってくる。

 

(少し不味いな)

 

闘夜は爪に力を込め、いつでも相手を引き裂く準備をする。デルフリンガーがなくてもこの爪もあるし、腰にはまだ鉄閃牙がある。これがあれば、なんとかなる。そう思っていたとき、

 

「ナウシド・イサ・エイワーズ・ハガラズ・ユル・ベオグ」

「あん?お前なにいって、って!?お前は!」

「ニード・イス・アルジーズ」

 

男は何かブツブツ呟くティファニアに、眉を寄せて前を覗き込むと、ティファニアの手には一本の杖が握られていた。

 

その声を聞くと、不思議と勇気が出てくるような気がする。ルイズの詠唱を聞いているときと同じだ。

 

「ベルカナ・マン・ラグー……」

「このアマ!メイジか!」

 

しかしそんな事を考えてる暇はなく、男は手にしたナイフをティファニアに突き立てようとするが、

 

「させるか!」

 

闘夜は咄嗟に足元の石を拾い投げると、相手の鼻柱に直撃し、怯んで後ずさる。

 

そして呪文をティファニアは唱え終わると、

 

「忘却」

 

ガクン!と傭兵達の力が抜け、

 

「あれ?俺は何でここに……」

 

キョロキョロと周りを見る傭兵達に、ティファニアは、

 

「貴方達は道に迷ってここにたどり着いてしまったの。この道をまっすぐ進めば森を出られるから」

「あぁ、そうだった」

 

傭兵達は、そうかそうかと頷きながら、ティファニアの言われた道を歩いていってしまった。

 

「な、何が起きたんだ?」

 

闘夜は意味がわからずポカンとしていると、ティファニアはこちらを見て、

 

「ちょっと記憶を消させてもらったの」

「記憶を?」

 

闘夜はデルフリンガーを拾いながら、ティファニアを見た。するとデルフリンガーが、

 

「成程な」

「どうしたんだ?デルフリンガー?」

 

何か納得したようなデルフリンガーに、闘夜はティファニアからデルフリンガーに視線を移すと、

 

「この嬢ちゃんが今使った魔法。虚無の系統の一つだ」

「え?じゃあテファさんって……」

 

あぁ、とデルフリンガーは同意を返しながら、

 

「嬢ちゃんと同じ、虚無の担い手だな」

「テファさんが……ルイズ様と同じ?」

 

闘夜は呆然としつつ、改めてティファニアを見るのだった。




~NGシーン~

デルフリンガー「嬢ちゃんと同じ、虚無の担い手だな」
闘夜「テファさんが……ルイズ様と同じ?」
デルフリンガー「おっぱいは全然違うがな」
闘夜「ぶふっ!」
ルイズ「おい」

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