異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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エルフ

「はぁ」

「どうした相棒」

 

皆が寝静まった夜。闘夜が大きなため息を吐くと、デルフリンガーがどうしたのか聞いてくる。

 

「いや、アルビオンの大群と戦ったときの力が出せないんだ」

 

あの時感じた高揚感。そして全身に力が満ちて来る感覚。あれは普通じゃない。

 

しかし、あの時以来全く同じ状態になれないのだ。

 

「まぁ確かにあん時の相棒は普通じゃなかったな。でも何でなりたいんだ?」

「いや、ヤバいやつと出会ったときに使えるかなって」

 

色々ポーズを取ってみたり気合を入れてみるものの全く兆候はなく、闘夜は諦めてベットに戻ろうとした。しかし、

 

「ん?」

 

どこからか歌が聞こえ、闘夜はデルフリンガーと鉄閃牙を手に外に出て音の出どころに向かう。するとそこには、

 

「テファさん?」

「え?」

 

そこにいたのは、寝間着姿のティファニアだ。手にはハープを持ち、いつも着けている帽子もない。そしてそこから見える耳は、

 

「いや!」

「え?」

 

ティファニアは耳を咄嗟に隠し、そのまましゃがみ込む。闘夜は意味が分からなかった。

 

別に隠すようなことはなかったはずだ。

 

「なんだ嬢ちゃん。お前さんエルフだったのか」

「えるふ?」

 

何だそれは。と闘夜は首を傾げるとデルフリンガーが、

 

「あの嬢ちゃんの耳を見ただろ?」

「うん。ちょっと長かったな」

「それがエルフの特徴さ。トリステインは勿論。ハルキゲニアの国々と敵対関係にあるんだが、敵意はなさそうだな」

 

当たり前だろ。と闘夜は返しつつ、

 

「テファさん。大丈夫ですか?」

「君は怖くないの?」

 

なぜ怖いんだ?と闘夜は益々困惑する。

 

「えぇと、別にエルフだからってテファさんを怖がったりしませんよ?テファさんが何者でも俺にとっては恩人ですから」

 

それに、と言って闘夜はバンダナを外すと、

 

「え?」

「変わった耳って言うなら俺もたいがいですしね」

 

ティファニアは驚きつつ、闘夜の犬耳をそっと触れる。

 

「本物なの?」

「勿論」

 

そう言いながら、闘夜は自分で犬耳を動かして見せた。

 

「でももしかしてテファさんがこの村にいるのってエルフなのが関係してるんですか?」

「う、うん」

 

そう言って、ティファニアはゆっくりと自分の生い立ちを話し始める。

 

「そもそも私は純粋なエルフじゃなくて、人間とエルフの間に生まれたハーフエルフ。母がエルフで父が人間。そして父はアルビオンの先代に王様だったらしいの」

「成程」

 

闘夜でも、それはかなり不味いのはわかった。一国の王様と敵対関係にあるエルフの恋。それは大問題だろう。と言うのは理解できた。それは案の定だったようで、

 

「でもある日それがバレて、兵士達が雪崩込んできた。兵士達から聞こえてきた声で分かったんだけど、父はエルフの先住魔法によって、既に正気を失ってるから殺すしかないってなってて、父と母は殺された」

 

だがティファニアは、昼間に使った忘却の魔法を使うことで難を逃れたらしい。

 

「でもよく魔法唱えれましたね」

「昔から聞いてたの」

 

ティファニアが言うには、父の持っていた道具にオルゴールがあり、それをよく聞いていたらしい。

 

「今思うと不思議だったかな。だって指輪をつけてないと音が聞こえないオルゴールだったんだもの」

「……」

 

闘夜は息を呑む。指輪をつけていないと聞こえない。それはまるでルイズの祈祷書と同じだ。あれも指輪をつけていないと読むことができない。

 

「他にもこんな歌があってね」

 

そう言ってティファニアはハープを持つと音を紡ぎ、

 

「神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる」

「っ!」

 

ティファニアの歌に、闘夜は驚く。その中歌は続き、

 

「神の右手はヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す」

 

そして最後に音楽は悲しげなものに変わり、

 

「そして最後にもう一人。記すことさえはばかれる……」

「なぁデルフリンガー」

 

何だ?と闘夜はソっと話し掛けるとデルフリンガーは答える。

 

「俺以外にも虚無の使い魔っているのか?」

「あぁ。まぁ、召喚されているかは別だけどな」

「そんでもってテファさんもルイズ様と同じく虚無の担い手なんだよな?」

「おう」

「つまり、使い魔が四人なら担い手もあと二人いるのか?」

「それはわかんね」

 

わかんねぇのかよ。と闘夜はズッコケながらいると、ティファニアがこっちを見て、

 

「どうしたの?」

「あぁいやなんでもないです。しかし呪文知ってるとはいえここに来るまで大変だったでしょう?」

 

そんなことないよ。とティファニアは笑みを浮かべ、

 

「知り合いに助けて貰ったからね」

 

と言った。襲われた一方、ティファニアを助けてくれる人もいたらしい。

 

「ふふ。でもまさかトーヤにここまで話しちゃうとは思わなかった。皆この耳を見たら怖がっちゃうから。子供達は何も知らないから平気だけどね」

「さっきも言いましたけど、テファさんは恩人なんだからなんとも思いませんよ。そもそもエルフっていうのもよくわからないですし」

 

分かってるのはテファさんは帽子ないほうがキレイだなってくらいです。と闘夜は言う。するとティファニアはポカンとして、

 

「キレイって誰が?」

「テファさんがって言ってるじゃないですか」

 

暫しその場静寂が支配し、ティファニアの顔がボンっと言う効果音でも付きそうな勢いで赤くなる。

 

「き、キレイって私が?そ、そんなわけ無いじゃない」

「いやメッチャテファさんが美人だと思いますよ?」

 

美人という意味で言えばルイズやアンリエッタにシエスタを筆頭に様々なタイプを見ているが、美人度合いでいったら多分トップクラスだろう。そう闘夜は思う。

 

実際闘夜の目は間違っておらず、それぞれの良さはあれど他の女性と比べてティファニアは、細く長い手足に括れた腰。豊満な胸に小さな顔。そして月明かりに反射する金髪。顔立ちも神様がふざけたのかと思うほど完璧なバランスで成り立っており、美の化身と言っても差し支えない見た目だった。

 

だがこの森の中で世間と関わらずに生きてきたティファニアにとって、それがどれだけ凄いことなのかと知る機会はなく、ましてや異性から容姿について褒められたことはない。子供達に言われても受け流していたが、正面から真面目な顔で、しかも子供達よりは年上で自分に比較的年代の近い異性に褒められるという経験は、初めてのことだった。

 

まぁ実際闘夜は早熟な見た目なので、年は子供達程じゃないにせよ離れているが。

 

「も、もう!そんな冗談言ったらだめだよ?」

「冗談じゃないです!」

 

闘夜はティファニアに詰め寄り、顔を近づけた。

 

「テファさんは滅茶苦茶美人です!」

「あ、うん。ありがとう」

 

耳まで真っ赤にし、ティファニアは狼狽する。

 

(トーヤってこういう顔もするんだ)

 

それはずっと子供というか、年下の男の子だと思っていた相手の、男の顔を見てしまったせいだろう。

 

「?」

 

しかしそんなティファニアの心中がわからず、闘夜は首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから更に一週間。傷もすっかり癒え、闘夜は日課の薪割りをこなしつつティファニア達の住むウッドデッキに戻る。

 

「あ、トーヤおかえり」

「ただいま戻りました」

 

すると途中で木の実や魚の収穫を終えたティファニアと合流した。それから少し歩くと、

 

「ねぇトーヤ」

「はい?」

 

急に話し掛けられ、闘夜は振り返るとティファニアが、

 

「闘夜はこれからどうするの?」

 

確かにもう三週間以上ここにいる。いつまでもここで世話になるわけにもいかないし、ここを旅立って日本に帰る方法を探しに出ても良いかもしれない。そう思い、

 

「そうですね。そろそろ旅に出ようかなとは思います。俺ここから遠い国から来たんですけど、そこに帰る方法を探してもいいですしね」

「そ、そうなんだ」

 

ティファニアは明らかにショボンとしながら肩を落とす。

 

「どうかしました?」

「う、ううん何でもないよ」

 

とティファニアが言った次の瞬間。

 

『っ!』

 

突然ガサガサと草むらが動き、何が近づいてくる。

 

「テファさん!」

 

獣か人間か分からないが、とにかく危険だと判断し、デルフリンガーに手を掛けながら闘夜はティファニアの前に立つ。

 

しかしふと匂いを嗅ぎ取ったとき、

 

(この匂い。いや、そんなまさか)

 

闘夜が困惑する中、草むらがさらに激しく動き、

 

「ぷはぁ!やっと道に出れたわ」

「もう!だから行ったじゃないですかルイズさん!あそこの道は左だって」

「はぁ!?アンタだって何だかんだ了承してたじゃない!」

 

ピンクブロンドの髪を揺らす人物と黒いショートカットの髪を揺らす人物は喧嘩しつつも体についた葉っぱやゴミを払う。その二人を見た闘夜は、

 

「ルイズ様?シエスタ?」

『え?』

 

二人は闘夜の呟きを聞き、こっちを見ると固まって、

 

「トーヤさん!」

 

シエスタは駆け出し、闘夜に勢いよく飛びつく。

 

「トーヤさん。良かった。ちゃんと生きてて」

「シエスタ。何で?」

「トーヤさんが死ぬわけ無いって思って来ちゃいました。大変だったんですよ?アルビオン入るのも戦争が終わった直後で混乱してるから入れないし」

 

戦争が終わった?どう言うことだろう。そう思いつつも、闘夜はもう一人の人物に視線を向ける。

 

「ひ、久し振りトーヤ」

「お、お久し振りです」

 

ぎこち無い挨拶を交わす二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ルイズとシエスタがここに来るに至ったのにはまず二週間前までに遡る。

 

その頃のルイズは、

 

「……」

 

ベットの上で生きる屍と化していたのだった。




あけましておめでとうございます。無事なんとか更新です。昨年八月が最終更新だったので、凡そ五ヶ月ぶり。ちょっと空きすぎましたね。どんどんこっちも更新していきたい所存です。最終回はもう考えてるのですが、まだまだ遠い。もっとペースあげないとなぁ。

あともうちょっとだけルイズと闘夜はすれ違ってますが、それを乗り越えれば沢山イチャイチャさせる予定ですので、今年も異世界御伽草子 ゼロの使い魔!をよろしくおねがいします。
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