来訪者
「穏やかですねぇ」
シエスタがのんびりと空を見ながら、そんな事を呟く。
今、皆で青空の下でピクニックに来ていた。平和である。
パンを食べながらお茶を飲む。そんな時間が何とも愛おしい。そこに、
「何を、している?」
『ん?』
突然掛けられた声に、闘夜達が振り返ると、そこにいたのは、
「確かエルメスさん!?」
「アニエスだ」
そこに立っていたのは、アンリエッタの腹心。アニエスだった。
「つまり、貴方も陛下の命で闘夜を探してここに?」
「えぇ、ミス・ヴァリエール。戦争が終わり、生き残った者たちから聞いた話に、一人の白髪の少年に滅ぼされた、という話がありましてね。生きていると踏んだ陛下が、私をこの地に派遣したのですよ。まさか先を越されていたのは驚きでしたが」
成程。と闘夜達が頷くと、
「え?戦争終わってたんですか!?」
「うむ。まだ一月も経っていないがな」
闘夜が驚きの目で見ると、アニエスはなんてことないように言い、
「戦争中であれば、私が陛下のそばを離れるわけがないだろう。彼女達も、ここに来れるわけがあるまい」
「そういえばいってなかったわね」
ルイズとシエスタは遠い目をしつつ、アニエスは続ける。
「この戦争の首謀者である、クロムウェルは、ガリアの手によって倒された。砲撃で拠点を破壊され、死体も残らなく、呆気ない結末だ」
「がりあ?」
アニエスの説明に、闘夜は首を傾げると、
「大陸でも最大級の軍事国家よ。まぁでも、今の王様は無能王なんて呼ばれてるらしいけどね」
「そんなにヤバいんですか?」
「何でも、当時跡目争いをした弟を謀殺し、その地位を得たって言われてるわね」
「跡目争いってどこの世界もあるんですねぇ」
戦国時代でも良く聞く事なので、闘夜も何となくそれは分かる。
「まぁ一先ずだ。王宮に連絡して使いを寄越させる。そしたら早急にお前には帰ってきてもらう。構わないな?」
「ま、まぁルイズ様もいつまでも学校休ませるわけにいかないので」
学校サボってきてたのか……とアニエスの冷ややかな目線を、ルイズは目を逸らしてかわしつついると、
「そ、そっか。トーヤ帰っちゃうんだ」
と、テファが口を零した。その時、
「あぁ!テファおいていくわけに行かないじゃん!」
『はい?』
急に叫ぶので、皆がポカンとすると、
「だってルイズ様!テファも虚無の担い手なんですよ!」
「ば、馬鹿!ここで担い手の話は……ってティファニアも!?」
ルイズは思わずビックリ眼。テファはそれを見て困った顔をする。
「成程。ミス・ヴァリエールと同じか」
そんな中、アニエスは至って冷静だ。
「知ってたの?」
「陛下から一応な。だが他にもいたのか」
「多分まだいます」
何?と闘夜の言葉に、アニエスが眉を寄せると、
「実は……」
と、先日襲われた件を話すと、アニエスはますます顔を顰めた。
「それは早急に陛下に伝えなければならないな。分かった。彼女も連れて行こう」
「ま、待ってください。子ども達は……」
「それなら心配ない。国が管理する孤児院がある。先日の戦争の後、陛下が設立したものでな。人員を増員させているから、ここにいる子供達が増えた所で問題はない」
何より、このままここに残るほうが子供たちまで危険だ。というアニエスに、ではそれならと頷いた。テファも、争いが得意な訳では無いし、使い魔がいるわけでもない。
「あ、それとテファも使い魔呼んだほうがいいんじゃないかな?いざって時に守ってもらえるように!」
「え?あ、あぁうん。でも呼んだ人が怖かったら嫌だから、今はいいかな。呼び方もわからないし……」
そう言って困った顔をするテファに闘夜は、
「じゃあいざって時は俺が守りますね!」
「う、うんよろしくね」
はにかみながら笑うテファに、ルイズとシエスタの勘が警鐘を鳴らす。
「駄目よ」
「え?」
「駄目ったら駄目です」
ルイズとシエスタにそう言われ、テファは再び困った顔をするのだった。