異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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騎士(シュヴァリエ)

「トーヤ殿。よくぞご無事で」

 

アニエスの手配から一週間経ち、闘夜ルイズとティファニアは、城にてアンリエッタに謁見していた。因みにシエスタは、先に学園に戻っている。

 

「それにまさか、モード大公に隠し子が居たとは……当時の国王に反旗を翻し、粛清されたとしか聞いていなかったので」

 

ティファニアの身の上の説明し、虚無の担い手である話もしていた。だがティファニアは少し気まずそうに、

 

「ごめんなさい」

「いえ良いんですよ。寧ろこうして、生きていたことを喜びましょう」

 

ハーフエルフだということを知っても、アンリエッタはティファニアに優しかった。

 

彼女いわく、何者であっても闘夜の命の恩人であり、国を救った英雄の闘夜の恩人ならば、自分にとって恩人であることと同義らしい。

 

「勿論、貴方が面倒を見ていた子どもたちの居場所もご用意します。貴方もそこに住むと良いでしょう」

「あ、ありがとうございます!」

 

良いのですよ。アンリエッタはそう言い、人を呼ぶと、

 

「彼女を孤児院に案内してあげてください」

「畏まりました」

 

呼ばれた衛兵にティファニアは連れて行かれる。

 

「さて、次はトーヤ殿についてです」

「自分ですか?」

 

まぁ一応。自分はこの国の英雄と言う立ち位置らしい。正直、必死に戦いすぎて良く覚えてないのだが。

 

「改めて、貴方はトリステインを……そして私の親友の命を救ってくれた恩人です。ありがとうございます」

「へ、陛下!」

 

ルイズが慌てるのも最もだ。なんと彼女は、深々と頭を下げた。

 

勿論平民である闘夜に頭を下げるなど、あってはならないものである。だが彼女は気にせず、

 

「トーヤ殿には返しきれない恩義ができました」

「いやぁ、自分はルイズ様死なせたくなくて必死で」

「それでもです。それで今回の褒章なのですが」

 

それに思わず、闘夜とルイズは顔を見合わせた。まぁ纏まったお金が貰えるとか、そういう話だろう。なんて思っていると、

 

「トーヤ殿。貴方に騎士(シュヴァリエ)の称号を与えます」

「はい!?」

 

思わず声を出したのはルイズだ。闘夜はよく意味がわかっていない。

 

「ど、どういうことです?」

騎士(シュヴァリエ)って言うのは、まぁわかりやすく言うなら、貴族の称号。そして平民であるアンタに授与されるっていうのは、ようはアンタを貴族にしますってことよ」

「うぇ!?」

 

コトの重大さに気付いた闘夜も、思わずアンリエッタを見た。

 

「えぇ、トーヤ殿の功績としては、寧ろ少ないくらいかもしれませんが」

「いやいやいや!そんなコトして良いんですか?」

「構いません。寧ろ、これからは功績を上げれば出世できる。貴族であれ平民であれ。そういう国にして行こうと考えています。トーヤ殿のはその一歩です」

 

闘夜は思わず考える。戦国時代でも、農民が戦に出て武名を上げ、褒章を貰うなんて言うのはたまに聞くが、身分まで貰うのは聞いたことがない。いや、確かこっちに来る前にいたかもしれない。織田信長のところの……何だっけ?ってくらいだが。

 

「どうでしょうか?」

「うぅん。正直、自分が貴族って言われてもそんな性格してないというか」

「構いませんよ。貴方の思うようにすれば良いのです。これで貴方を縛ろうとは考えていません。貴方がこれからなにか目的を見つけ、その際の手助けになるもの、と考えていただければ」

 

その言葉に、闘夜は成程と頷き、暫し考えると、

 

「分かりました。受けます」

「ちょっと闘夜」

 

ルイズが口を挟もうとするが、闘夜は大丈夫といい、

 

「分かりました。それでは簡易式ではありますが、授与式を行わせていただきます」

 

そう言われ、闘夜は促されるままに膝をつくと、

 

「えぇと……トーヤ殿は平民でしたから姓は持っておりませんよね?」

「一応母方で良ければ、日暮と言う名字はありますが」

「でしたらそれを採用しましょう」

 

アンリエッタはそのまま宝杖を闘夜の肩に当てると、

 

「トーヤ・ヒグラシ殿。貴殿に今より、アンリエッタ・ド・トリステインの名の下にシュヴァリエの称号を与える」

 

その宣言と同時に、闘夜は異世界で貴族となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で怒ってるんですか?」

「怒ってないわよ」

 

城を出て城下町を歩いていた闘夜とルイズだが、ルイズはずっと渋い顔をしていた。それの意味が分からず、闘夜は困惑していると、

 

「あんた良かったの?貴族になっちゃって。元の世界に帰る方法探さないといけないのに」

「うぅん。貴族になれば、そのへん探すのにもいいかなって」

 

まぁ、貴族になれば、地位と身分は保証されるし、活動の幅も大きくなる。だがそれでも、まだ幼い闘夜に身分を与え、この世界に地盤を作ってしまっていいのだろうか。そう思う自分が、ルイズに中にはあった。

 

いや、断じて帰ってほしいわけではない。何なら、このままこの世界にいてほしいと思っている。だがそれは言ってはいけない。というのも分かっていた。だからどういうスタンスでいれば良いのか、未だに悩んでいる。すると闘夜は、

 

「それにほら、貴族になれば、ルイズ様と一緒に居てもかっこつくかなって」

「あのねぇ。騎士(シュヴァリエ)って貴族って言っても一番下だし、歴史と伝統の長いヴァリエール家と並ぶわけないでしょ。ドラゴンとトカゲ位違いがあるわ」

 

そう言いながら、ルイズは闘夜を見ると、闘夜はしょんぼりしており、ヤバっとルイズは頬を引きつらせた。そもそも、そんな事を言いたいわけじゃないのだし。

 

「あ、あのねトーヤ。何か勘違いしてるようだから一応言っとくわね?アタシは今更身分違いとどうでもいいのよ。アンタが何者であっても、あなたのことが好きで、全部受け入れるってあの晩決めたんだし。でも私のことを考えてくれたのは素直に嬉しいわ。ありがとう」

「えへへ」

 

危ない危ない。また誤解して拗れる所だった。そうルイズは額の汗を拭う。

 

(そもそも、12歳の子に手を出した時点で、どうでもいいことよ)

 

世間にバレたら確実に死ぬのは自分だ。だが今更何を恐れるものぞ。闘夜と拗れて失うくらいなら、そんな秘密の一つや二つ抱えてやろうではないか。

 

ルイズは遠い空の果てを見ながら、改めて腹を括る。

 

そもそもだ。帰るかどうかは闘夜が決めること。いつかその時が来たら、闘夜がこっちの世界を選ぶようにすれば良い。

 

そのためには、もっと闘夜が自分を好きになれば良いのだと、さっきまでの悩みはエクスプロージョンしたのか、ルイズは至って前向きになっていた。

 

「取り敢えず、帰りましょうか」

 

ルイズはそう言って闘夜の手を取る。

 

「そうですね」

 

闘夜もそっと手を握り返しながら、二人で歩きだすのだった。




甘いお話を頑張るのじゃよ……
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