異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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夜の密会

「さて」

 

ルイズは寮の空き部屋にいた。

 

生徒の数も多いため、学園の寮は部屋数が多い。だが、多い反面全てが埋まることはなく、ルイズはその中でも奥にある空き部屋に来ていた。

 

生徒達で付き合うことも多いが、その場合は大体お互いの部屋で密会している。もしくは外だ。だが自分は余り表立って外でイチャイチャ出来ない。

 

年齢差とか主と使い魔の関係とか色々ある。ルイズ自身はそれを言い訳にしないと決めているが、周りから見られていいものではない。

 

とは言え自室はシエスタがいる。本来なら二人きりでイチャイチャし放題かと思えば、闘夜付きのメイドとなったシエスタが部屋にいる。

 

流石にシエスタの隣でイチャイチャは出来ない。そこで考えたのが、トイレに行くふりをしてルイズが部屋を出て、少し後で闘夜が出る。完璧な策であった。

 

ソワソワとしながら空き部屋で待つ。

 

空き部屋なので、基本的に何も無いのだが、机や椅子など色々な学校用具の置き場になっていて、物はある。

 

そんな中、扉が軽くノック。コンココンコン。二人で決めたリズムだ。

 

軽い足取りで扉の鍵を開けると、そこには闘夜が立っている。

 

中に入って鍵をかけ、闘夜が机に腰掛けると、ルイズが膝の上に座った。

 

腰に腕を回し、闘夜はルイズを優しく後ろから抱き締めると、ルイズは闘夜に体を預ける。

 

「トーヤ温かい」

「ルイズ様も」

 

そう言いながら、どちらからともなく、キスをする。

 

最初は互いの唇と啄むように、そこからゆっくりと舌を絡ませた。

 

「プハッ」

 

一度互いに顔を離し、呼吸を整えると、

 

「ルイズ様」

 

闘夜がソっと、ルイズを押し倒す。だが、

 

「待ってトーヤ」

 

ルイズからストップが入る。

 

「二人きりの時は、ルイズって呼んで」

「う、うん。ルイズ」

 

照れくさそうに、闘夜がそう呼ぶと、ルイズも嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「好きだよ。ルイズ」

「うん。私もよ。トーヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルイズさん。物申したいことがあります」

「な、何よ急に」

 

そんなある日、中庭でニット帽を編んでいたルイズに、シエスタがジト目で見てくる。

 

「流石にですね。毎晩はやり過ぎじゃないですか?」

「な、なんのことかしら?」

 

ギクッと体を強張らせ、遠い目をするルイズに、シエスタは詰め寄る。

 

「毎晩毎晩出ていって、気づかないと思ってるんですか?いやまぁちょっと夜にお散歩位なら良いんですよ。別々に出ていって、明らかに事後の雰囲気で二人で帰ってきて」

「う……」

「どういう顔しておけば良いのかちょっと悩んだんですからね?」

「ごめん」

 

悪いとは思ってはいるが、改めるつもりはない。しょうがないじゃないか。

 

等と思っていると、シエスタは隣りに座ってきて、

 

「因みに、どうなんですか?」

「どうって?」

「相性的な?」

 

ブワッとルイズの顔が真っ赤になる。

 

「な、何言ってんのよ」

「良いじゃないですか。この際だから」

「い、嫌よ」

 

と言いながらも、ルイズはシエスタを見ると、

 

「基本的に優しいし無茶はしないし。でも凄く求めてくれて私も求めちゃう……みたいな?」

「キャー」

 

文句は言いながらも、お年頃なのかシエスタは興味津々だ。

 

「そうかぁ。楽しみだなぁ」

「何が?」

「私の番が」

「そんなものはない」

「あ!ズルい!」

「ズルくはないでしょ!」

 

ルイズは反論しつつ、シエスタの胸元を見る。こんな物を使われたら……

 

それを見たシエスタは、

 

「フッ」

「あんたねぇええええ!」

 

勝ち誇った笑みを浮かべ、胸を持ち上げて見せる。思わず掴みかかるルイズを、闘夜は遠目に何してるのかと見ながら、

 

「大丈夫ですか?」

「オロロロロロロ!」

 

ゲロを吐くギーシュに声を掛けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オンディーヌ騎士隊は設立されたばかりで、学園に属する貴族。つまり学生で構成される部隊だ。それ故に、剣もろくに振ったことのない者が多く(そもそもメイジならば、召使い等の下僕に剣を持たせるのが普通だ)、訓練も見様見真似で剣を振っていた。

 

だが、それでは何もならない。と闘夜は感じ、ギーシュにも話した所、同じことを感じていたらしい。そこで、なにか良い講師を呼べないか?ということで、闘夜が思い至ったのが、アニエスだった。平民から剣一本で成り上がり、自身も隊を率いる彼女なら、良い講師になるのでは?と、闘夜は部屋を飛び出し、城に向かった。

 

彼女にそんな暇はない。と言って止めようとしたが、間に合わずギーシュは、どうせ無理だろうし別の手を、と考えてた一方、闘夜が城下町まで来た所、カフェでお茶をしていたアニエスと遭遇。

 

何でも彼女、復讐も一段落し、戦争も終わり闘夜捜索の任務も思った以上に早く終わったため、暫く暇を貰ったらしいのだが、今まで復讐と剣に生きてきた彼女は暇つぶしのやり方を知らず、取り敢えず部下の女性達が話していた話題のパンケーキを食べていたらしい。

 

そんな彼女に話をして、お願い出来ないかと言った所、

 

「どうせやることもないし、お前たちを育てれば結果的に陛下の為になるのだから良かろう」

 

と、割と快く受けてくれた。そして早速次の日から来てくれているのだが、

 

「休んでいる暇があったら立てぇ!」

「はひぃいいい!」

「ゲロを吐きながらでも剣は振れる!休むなぁ!」

「げぴぃいいい!」

「手が痛い?生きてる証拠だ!喜びながら剣を振れぇ!」

「ぎゃああああ!」

「腕が動かない?腰を使ってない証拠だ!剣を振れぇ!」

「ぎえぴぃいい!」

「貴様らは満足に剣も振れない生ゴミだ!今の貴様らでは陛下の肉壁にすらなれん!一端に人間扱いし、休みがほしいならばせめてちゃんと振れるようになるんだな!」

『イエッサー!』

 

アニエスは来て早々、訓練の様子を見て絶句。想定していた以上に、素人の集まりだった。

 

そこで、

 

「ふたりとも」

 

ギーシュと闘夜を呼び、

 

「本気と程々、どっちが良い?」

 

アニエスの突然の問いに、何のことかと一瞬考えたが、訓練内容かと思い至ると、

 

『本気で』

 

折角アニエスを呼んだのだ。何かものにしなければならない。こうしてあっさり呼べたのだが、アニエスはアンリエッタの腹心であり、直属の部隊の隊長。正規のルートで呼ぶとしたら、現在のオンディーヌ騎士隊では不可能だ。

 

その答えに、アニエスは分かったと笑みを浮かべ、

 

「訓練内容への口出しは厳禁だ。良いな?」

 

ギーシュと闘夜は頷きを返す。そしてアニエスはオンディーヌ騎士隊の面々の前に行くと、

 

「整列しろ!生ゴミども!」

 

空気がビリつくほどの声に、呼び方を気にする暇もなく面々は並ぶ。

 

「今日から貴様らを人間にする為に来た。アニエスだ。良いか生ゴミども!」

「お、俺は生ゴミじゃぶべぇ!」

 

一人が反論しようとした瞬間、平手打ちで黙らされる。

 

「いいか生ゴミども!私が教えるからには貴族も平民もない。等しく役に立たないゴミだ。いや、肥料となり、色を育み人々のためになるのだから、生ゴミ未満だ!生ゴミ程度にはしてやっているのは恩情だ!分かったか!」

 

困惑し、隣の者の顔を見ていると、

 

「返事!」

『は、はい』

「声が小さい!」

『は、はい!』

 

こうして、アニエスのシゴキというか、地獄の訓練が始まった。

 

基礎体力からということで、吐くまで走らされ、筋トレを行い、両腕が動かなくなるまで素振りをする。その間僅かでも怠けたりサボろうとすれば、アニエスに徹底的に怒られる。

 

訓練がどれほどしんどいかと言うと、闘夜でもかなり限界まで追いつけられるほどだ。貴族のお坊ちゃま達にとって、地獄すら生ぬるい程辛い。ゲロを吐きながら続け、途中の休憩で屍のように横になって休み、そしてまたゲロを吐く。

 

そんな訓練の中、勿論アニエスに反抗する者たちもいたが、訓練の中で木剣を用いた模擬戦を行い、アニエスにボコボコにされると大人しくなった。

 

単純な剣技では、勝ち目はない。そこで今度は不意打ちで魔法を放とうとしたものもいたが、野生の勘で察知し返り討ちにあう者も。

 

アニエス曰く、上位のメイジならともかく、未熟なメイジの魔法なら発動前に分かるとのこと。

 

「余裕そうだな」

「いっ!」

 

ルイズとシエスタを見ていた闘夜の背後に、アニエスは立っており、

 

「さぁ行くぞ!」

「はいいいい!」

 

ボコボコにされながら、ちょっとアニエスに頼んだのは失敗だったかなぁ。そう思ってしまったのは余談である。

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