異世界御伽草子 ゼロの使い魔!   作:ユウジン

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第ニ章 土くれのフーケ
使い魔の日常


使い魔の朝は早い……何せまず日が上ったら起きて井戸まで水を汲みに行く……それから主人であるルイズを起こし、それから顔を洗ってやり服と下着(ほんと下着だけは自分でやってほしいのだが……)を着替えさせ朝食を食べる……いつも通り黒パンと肉の少ないスープである。

 

そしたらここで別れ闘夜はルイズの服や下着を洗濯するのだ。無論暖かい水は出るわけがないので冷たい水でゴシゴシ洗う……それから干して厨房だ……朝御飯があれだけで足りるわけもなくあれ以来毎日厨房から食べ物をいただくのだ。そこではマルトー料理長を筆頭に「我らの剣」と呼んで歓迎してくれる。そんなときの事だった。

 

「おう!我らの剣!来たんだな!」

「今日もごちそうになります」

 

そう言って闘夜がはいると厨房の皆も出迎えてくれた。ここの皆は優しいんだ。

 

「ホラよ、シチューだ」

「いただきます!」

 

そう言って闘夜はマルトーから受け取ったシチューをがっつく……本当にうまい。だがなんかいつもと違う……いや、不味いんじゃない……寧ろうまい。

 

「いつもと違うだろ?」

 

そういうマルトーに闘夜は口が一杯なので頷きで返した。それにマルトーは満足そうな顔になる。

 

「当たり前だぜ。そいつは貴族に出す方だからな」

「今までのも十分うまかったですけどね」

 

と、飲み込んだ闘夜が言うとマルトーは照れくさそうな笑みを浮かべた。

 

「本当にお前は良い奴だよ……なのに貴族と来たら……」

「でもこんなに美味しいのに感動できないって損ですよねぇ」

 

闘夜がそういうとマルトーだけではなく厨房が笑いに包まれた。闘夜が首をかしげると、

 

「いや、お前って結構言うとき言うよなって思ってよ」

「そんなもんですかね」

 

と闘夜は言いながらシチューを口に運ぶ。

 

「それにしたってその腰の剣で貴族を倒したんだろ?すげぇじゃねぇか。貴族の魔法も素手で殴り飛ばしたって言うしどこで習ったんだ?」

「いや、もう生まれつきって言うか……」

 

鉄閃牙は違うが……まぁそこは割愛で、

 

「そこのシエスタがもう興奮しててな。この間からその話ばっかしやがる」

「そ、それは内緒に……」

 

と、シエスタは頬を染めながらマルトーに抗議する……

 

「まるでイーヴァルディー勇者みたいだって言ってたじゃねぇか」

「いーばるでぃーの勇者?」

 

初めて聞く言葉に闘夜が問うとマルトーは頷く。

 

「まぁようは伝記物だよ。イーヴァルディーって言う名前の男の冒険譚さ。子供なんかに良く好かれるな」

「へぇ~」

 

闘夜はどんな話なのか勝手に想像する……だがダメだ……思い付かん。 どうしても桃太郎とかそっちの方にいってしまう。

 

「ほらシエスタ、いつまでもプリプリしてねぇで勇者様に高級ワインでも注いでやれって」

「うぅ……」

 

シエスタは顔を真っ赤にしながら瓶を持ってくる。

 

「どうぞ」

「何これ……」

「ワインですよ」

 

ワイン……確か葡萄っていう果実で作る酒だよな?母方の実家で見たテレビと言う箱みたいなやつで見たことがある。

 

「ありがと」

 

そう言えば酒なんて初めてだ……弥勒親父や父が二人で並んで呑んでるのを何度か見たことがあるが……とりあえず少し舐めてみる……するとワイン独特の渋みみたいなものが口に広がった……思わず闘夜は顔をしかめた……

 

「不味かったか?」

「…………大人の味ですね」

 

と、闘夜が言うと厨房がドッと沸いた……

 

「そうかそうか!まだお前さんには早かったか!アハハハハハ!」

 

と笑う料理長……それに闘夜は口をへの字にしてしまった。

 

「ダメですよ料理長……あんまりトーヤさんをからかっては……」

 

そう言って今度はシエスタの方がマルトーを諫めた。

 

「悪かったって、まるで弟守る姉だな……」

「アハハ……」

 

それに闘夜は苦笑いを返した……そもそも兄弟が自分には居なかったためそう言われてもピンと来ない……あぁでも兄貴分なら居たけどね……七宝兄さんとか……

 

「そう言えばトーヤさんって何歳なんですか?何となく同い年くらいに思てましたけど……」

「そう言えば俺も……あ、一応今年で十五になったよ」

『えぇ⁉シエスタより年下!?』

「え?」

 

闘夜が自分の年齢を言った瞬間その場が騒然……

 

「え?もしかしてシエスタ俺より年上?」

「一応私今17です……誕生日が来たら18ですけど……」

「あ……ごめん……じゃなくてすいません……年上だったとは……」

「いいえ、良いですよ……なんかいきなり敬語にされたらなんか寂しいです」

「どう言うこと?」

 

シエスタの照れくさそうな笑みに闘夜は首をかしげる……それを見たマルトーと他の料理人やメイドたちは、

 

『青い春だなぁ~』

「?????」

 

闘夜はますます首をかしげる……だが少なくとも闘夜の十五年の人生経験ではその答えを導き出すことは到底不可能であったのだった……

 

そしてその騒ぎのために誰も気付かなかった……闘夜たちを見る影が窓から見えていたことに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……」

 

シエスタたちとの楽しい昼食も終わり闘夜は洗濯物を取り込んでからルイズの部屋に戻ろうと廊下を歩いていた……今日も働いたなぁ……と思いつつ部屋の前に行くと……

 

「お?」

 

部屋の前には尻尾の先に火が灯ったデカイ蜥蜴の妖怪……確かキュルケの使い魔だ。名前はフレイムだっけ?

 

「どうしたんだ?お前も自分の主人のもとに帰った方がいいんじゃいないのか?因みに部屋はあそこだぞ?」

 

と、斜め前の部屋を指すとフレイムがトコトコこっちに来ていきなり闘夜の裾を引っ張りだした。

 

「うぉ!何だよ!わかった!ついてくから引っ張んなって!」

闘夜は一張羅が伸びてしまうと思い慌ててフレイムについていくからと言うと通じたのかフレイムは口を裾から離し自分の主人の部屋の前に立った……

 

「ここに入れば良いのか?」

 

そう問うとフレイムは肯定するように一鳴きした。だが闘夜としては?マークが頭で一杯だった……なぜフレイムは自分をここに?と言う感情だった……もしかしてキュルケか?彼女が使い魔に命じて自分を呼んだのだろうか?

 

いやそうすると何でキュルケは自分を?

 

闘夜は必死に頭を回転させるが全く理解できなかった……まぁ、とりあえず部屋に入ってみよう。

 

「失礼します……」

 

もしかしてフレイムに誂われたと言う可能性もあったのでそぉっと扉を開けてみる……すると、

 

「ドア……閉めてくださる?」

「あ、はい……」

 

入るのは同意の上だったらしい……なので闘夜は扉を閉めながら眉を寄せた……この部屋……凄く香水臭い……いや多分普通の人間の嗅覚なら情熱的とか女性的とか色々言い方があると思うが闘夜にとっては息苦しいだけの匂いだった……なまじ鼻が利くと本当に辛い……だがここでくじけてはいけない。なぜここに自分を呼んだのか聞かねばならない。

 

「あの……何かご用ですか?」

 

そう言いながら部屋の奥に向かう……すると突然蝋燭に火が灯された……恐らく魔法の一種なのだろうが闘夜にはそれ以上の驚愕があった……そう……目の前にいたのはキュルケ……だがそれならまだ良かった。そのキュルケの姿が問題なのだ。

なんとキュルケの格好……薄手の生地で出来たネグリジェと言うその格好は下着が透けてる……

 

一応闘夜も年頃の男の子なのでそう言ったものを見てなにも感じないわけではない……そもそも妖怪なので食欲睡眠欲に続き性欲も人間よりある方だ。その分自制心も人間の比じゃないだけ……だがそれでも闘夜にしてみれば刺激が強すぎるその格好は思わず視線を逸らしてしまった……

 

その態度にキュルケはからかうような笑みを浮かべる……

 

「あ、あのですね……妙齢の女がそんな肌を露出するような服着ない方がいいですよ……」

 

と、視線を逸らしながら言う闘夜……だが、

 

「あら、男女が夜に密会するのだから相応の格好をするものでしょう?」

 

それが相応の格好なのか……流石に文化が違うだけのことはあると闘夜は現実逃避に走った……

 

「あの……それでなんのようですかね……」

 

闘夜が改めて問うとベットをキュルケはポンポンと叩く……隣に来いと言っているのはさすがの闘夜でも理解できた。

 

「少しお話ししましょう」

「いや……少しの話ならここで……」

「こ・こ・よ……」

 

妖艶な笑み……と言うやつなのだろうか……残念だが女性的な経験は無いと言っても過言じゃない闘夜には逆らえない何かがあった……とは言え少し隙間を開けるが……

 

「それで……なんのよ……」

 

うですか?と言う前に闘夜の体が固まった……何せ行きなりキュルケが自分に体を預けてきたのだ……

 

「決闘見たわ……ギーシュのワルキューレ素手で破壊しその腰の剣を抜いての大立ち回り……まるでイーヴァルディーの勇者のよう」

「そ、そっすか……」

 

シエスタも言っていたらしいよなぁ……っと必死に現実逃避……だがキュルケが放った次の言葉に闘夜は現実に引き戻された。

 

「惚れたわ」

「へ?」

「恋したのよ……貴方に」

「…………え?」

 

こい……鯉?故意?己斐?濃い?違う……この流れなら恋だろう……恋って……好いた惚れたの恋だよな……?いやぁ……こういう風に言われたのはなぁ……初めてだ……と闘夜は考えた……そもそも誰かに惚れられたと言う経験自体が初だった。

 

いや、実際は闘夜は見てくれも整っているので密かに想われたりはしていたが本人がこれっぽちも気付いていないのと本人自体が誰かを好きになったことがないのだ。

 

恋ってなんぞ?と素で未だに思っているのがこの男であった……いや、多分すごく素敵なことなんだろう……両親や周りを見たってそう思う……だが自分が恋……となると全く想像がつかない。誰かを好きになると言うことがわからない……なので、

 

「ごめんなさい……」

「………………」

 

キュルケは驚いたような顔をした…………

 

「俺誰か好きになったことないんですよ……だから……あなたの気持ちには答えられないです……すいません……」

 

そう言って早々に立ち上がると闘夜は洗濯物を手にした……

 

「きっと俺より素敵な人見つかりますよ……それじゃ」

 

そう言って闘夜はキュルケの部屋を出た……実際匂いでクラクラしてきていたのもあるが好きだと言われても良い返しかたを闘夜は知らなかった……故にごめんなさいをして早々に立ち去るしか出来なかった……

 

だがある意味これは失敗と言えただろう……何せ、

 

「ふぅん……面白いじゃない」

 

と、キュルケの目は燃えていたのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

闘夜は急いでルイズの部屋に飛び込んだ……こっちの部屋はいい……キュルケの甘ったるいような匂いはない……落ち着く匂いだ。すると教科書を読んでいたルイズが顔をあげた……

 

「あら、遅かったわね」

「すいません……ちょっとキュルケ様に呼ばれて……」

 

闘夜は洗濯物を置きながらそういう……するとルイズは眉を寄せた。

「で、告白されたと言うわけね」

「まあ……断りましたけど」

「それでいいわ。あいつの……いや、ツェルプストーの男癖の悪さは有名よ……」

「……何か恨みでもあるんですか?」

 

そう聞くとルイズは目を見開いた……こ、恐い……

 

「そうよ!あいつの一族と私の一族は戦争ではずっと殺しあってきたわ!それだけじゃない!私の先祖の恋人を寝取られたことだってあるのよ!」

「わ、わかりました……」

 

一気に捲し立てるルイズに闘夜は落ち着けとやりながら首を縦に降った……つまりルイズとキュルケは先祖代々の敵というやつなわけである……

 

「全く……トーヤにまで手を出すとかほんと見境ないんだから……」

「まぁ断ってますしもう大丈夫ですって」

「断ってすむなら私の先祖は恋人をとられなかったでしょうね」

 

それに……とルイズは続けた。

 

「キュルケに目をつけられたとなったら男子が黙ってないわよ」

「え?何でですか?」

 

闘夜がそう問うとルイズはため息をついた。

 

「あいつは男子に人気なの……そのキュルケに目をつけられた挙げ句振った何て嫉妬されるに決まってんでしょ……」

 

成程……と闘夜は頷いた……だが並みの相手なら平気だと言う旨を伝えると、

 

「あのね……複数で襲われたらどうすんの?しかもその腰のテッセンガ?それまた錆びたままになったんでしょ?」

 

闘夜は確かに項垂れた……ギーシュ戦で一度真の姿になった鉄閃牙であるがあれ以来何度抜いてもまた錆び刀のままなのだ……

 

「いざって時に使えなさそうなそんな剣じゃどうしようもないわね……分かったわ」

 

ルイズはなにかを考えたような顔になりそして、

 

「トーヤ、明日は学校休みだから町まで行って剣を買うわよ」

「え?鉄閃牙あるから別に……」

「錆びたままで戦えるの?」

「いえ……」

 

闘夜が横に首を降る。

 

「ならもう少しましな剣を買ってあげるわ。普段使いできるようなやつをね」

 

そう言ってルイズはもう寝るから服を脱がせと言う。闘夜はわかりましたと言いながらルイズを着替えさせ始めたのだった……




鉄閃牙はまだ闘夜を完全には主として認めていません。

そこはやはり闘夜がまだ守りたいと言う感情を自覚していないからですね。そういった感情の自覚や恋心を学んでいかせていければいいなぁ……

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