「まさかエルフが……」
「だから言ったろ!」
屋根を駆けながら、闘夜とシェフィールドは切り結ぶ。
鉄閃牙をぶつけ、弾かれる。それを幾度となく繰り返し、未だに対抗策は見つからない。
「まぁ良いわ。その分私が働けばいいだけだからね」
シェフィールドはそう言って、ナイフを投げる。
一本だけ投げられたそれは、何十本にも分身し、闘夜に襲いかかった。
「なっ!」
「分裂し、数を増やせるナイフよ。面白いでしょ?」
闘夜は鉄閃牙で弾くが、弾き切れず体に刺さる。
「うぉおお!」
だが強引に前に出ると、鉄閃牙を再度叩きつける。だがシェフィールドの反射は破れず、弾き返された。
(風の傷でも破れない。寧ろ弾かれた。だったら!)
「風の傷!」
再び風の傷を放つ。しかしシェフィールドは笑みを浮かべ、
「無意味だったのを忘れたのかしら?」
シェフィールドに当たった風の傷が、闘夜に向かって跳ね返る。すると、
「ただの風の傷じゃな。だがこれはどうだ!」
風の傷に渦巻く力の奔流に鉄閃牙を通して回転。
「なんですって?」
「爆流破!」
風の傷を爆流破で返せば、単純計算でも風の傷を更に上乗せできる。そのまま竜巻はシェフィールドに襲い掛かり、呑み込んでいくが、
「驚いたわ」
シェフィールドは少しは驚いたらしいものの、なんてことないように立っていた。
跳ね返って来ることはなかったが、反射を破るのは出来なかったらしい。
(爆流破でもダメなのかっ!)
闘夜は舌打ちをしているが、シェフィールドはその間にも駆け寄り、ナイフで襲いかかる。
「おぉ!」
闘夜は鉄閃牙で迎えうち、シェフィールドの連続攻撃を受けた。
だがその速さは闘夜を上回り、闘夜の肌を切り裂く。
更に、
「っ!」
別方向から、もう一人のシェフィールドが現れ、闘夜の顔を爪で切り裂く。
「ぐっ!」
しかし闘夜は怯まず、分身との距離を詰めると、空いた手をバキッと鳴らし、シェフィールドの胸を貫いた。
「がはっ!……なーんてね」
「っ!」
分身は貫かれた胸を見ながらニヤリと笑い、闘夜の腕を掴むと、本体のシェフィールドが闘夜の背中をナイフで切り裂く。
「っ!」
闘夜は痛みに顔を歪めつつ、地面に向けて風の傷を放つ。
分身はそれでバラバラに砕けるが、反射を持つ本体には効かず、闘夜に跳ね返り、
「はぁ、はぁ」
威力は加減して撃ったため、立ってはいるが、全身血だらけ状態の闘夜は、それでも鉄閃牙を構えてシェフィールドを見る。
「酷い事するわ。あの魔法具、本体と変わらない性能をもたせることができる代わりに、ものすごくレアで手に入りにくいのだけど」
「成程。お前はそっちタイプの妖怪か」
妖怪は、大きく分けて2つに分かれる。
一つは、身体能力が異常に高いタイプ。もう一つが、生命力が異常に高いタイプだ。
闘夜は、どちらかと言うと前者。パワーや頑丈さが高い。だがシェフィールドは、生命力が異常に高いタイプだ
勿論、人間と比べれば身体能力も高いが、それは闘夜も人間と比べれば生命力が高い。妖怪基準で考えれば、劣るだけだ。
こういうタイプは、なにが厄介と言うと、今のように全身バラバラにしないと死ににくいのだ。
無論、半妖と言うことであれば、純粋な妖怪には劣るだろうが。
とは言え、死ににくい上に、反射がついているとは、厄介なことこの上ない。
するとシェフィールドは、
「もうボロボロね。諦めて帰ったらどうかしら?今なら見逃してあげるわよ?」
「タバサ様とお母さんを連れて行っていいならな」
それはダメね。とシェフィールドは首を振る。
「我が主からの命令だからね。今度こそ完遂させてもらうわ」
「そんなに大事なのかよ。タバサ様を苦しめることが!」
当然。とシェフィールドは頷く。
「貴方だって、主のためなら何でもするでしょう?」
「うちの主は、そんなクソみたいなことしないでね」
闘夜は呼吸を整え、シェフィールドを見つめる。だがシェフィールドは、
「別にいいじゃない。あんな何を考えてるか良くわからない小娘がどうなろうがね」
「あ?」
ビキリ、と闘夜の中で何かが切れる音がした気がした。
「あの子は人形。何も感じやしないし考える必要も無い。主が遊ぶために使ってただけよ。そして使い道がなくなったら処分する。簡単でしょ?」
「人形だと?」
「えぇ」
あっけらかんとそういうシェフィールドに、闘夜の怒りの炎が舞い上がる。
「漸く分かった。俺が戦うべきものがな」
「何を言っているのかしら?今私と戦っているでしょう?」
違う、と闘夜はシェフィールドを否定する。
「タバサ様を苦しめた元凶はお前の主だ。タバサ様の人生を滅茶苦茶にしたのもお前の主だ。だから、お前の主をぶっ倒してやる!」
闘夜はそう言い、鉄閃牙を構える。
「主を倒す?私に勝てない貴方が何を言っているのかしら?」
「勝つさ。お前にも、主にも!」
タバサを苦しめる悪意。そして降りかかる闇と、闘夜は戦う事を決めた。
だから、頭上に掛かる暗雲を!
その覚悟に応えるように、鉄閃牙もも脈を打つ。俺を振れと。きっとこいつも鬱憤が溜まっているはずだ。ずっと弾かれていたのだから。
闘夜も応え、鉄閃牙を振り上げると、
「貫け!鉄閃牙ぁああああああ!」
振り上げられた鉄閃牙の刀身が、金剛石のような物に変化し、振り落とすと同時に、金剛石の槍がシェフィールドに向かって飛んでいく。
「っ!?」
シェフィールドは驚愕しつつも、反射があるため大丈夫だろうと考えた。だが同時に、金剛石の槍は反射ごとシェフィールドの体を貫いた!
「あがっ!」
腹を貫かれ、腕が千切れ飛ぶ。
「あ、ぐ」
地面に倒れ、悶えるシェフィールドを見ながら、闘夜は驚く。だが、この技は聞き覚えがあった。
金剛石の槍を飛ばし、相手を貫く技。数ある鉄砕牙の技の中でも、物理的な威力という点で言うなら最強。
それを再び放つため、闘夜は鉄閃牙を振り上げ、
「金剛槍破!」
再び飛んでいく金剛石の槍だが、シェフィールドは同タイミングで、城壁に触れると、それが競り上がり、盾となる。だがそれも軽々と破壊し、シェフィールドに襲いかかった。
「あ、う」
全身に金剛石の槍が突き刺さり、シェフィールドは地面を這いながら移動。
「逃がすかよ!」
闘夜はそれを追いかけようとするが、
シェフィールドは再び別の場所の城壁に触れると、突如城が大きく揺れ出す。
「なんだ!?」
それと同時に城が崩れ始めた。
「まずい!」
闘夜はシェフィールドに背を向け、走り出すと、タバサのいた部屋に飛び込む。
タバサは母を庇うように立っていたが、闘夜の姿を見つけると、安心したような顔をした。
「良く分からないけど、城がまずそうです。すぐに出ましょう!」
「う、うん」
鉄閃牙をしまうと、タバサと母親を脇に抱えて飛び出す闘夜。
夜空の月に反射する白髪を見るタバサの視線に気づき、闘夜はタバサを見ると、
「どうかしました?」
「なんでもない」
自分が思い描いていた、王子様の姿に重なり、タバサは目をそらした。
「?」
理由がわからず、困惑する闘夜だったが、地面に降りると、ルイズたちが駆け寄ってくる。
「大丈夫!?」
ルイズに大丈夫だよと返しつつ、タバサを下ろすと、
「タバサ!」
「っ!」
キュルケはタバサに抱きつき、頭を撫でる。
「良かった。無事で」
「……うん」
だがそんなやり取りも束の間で、
「すぐにここから離れよう。厄介なことになりそうだしね」
コルベールはそう言って、ギーシュを背負うと、皆も頷いて走り出す。
こうして、色々あったものの、タバサ救出作戦は、無事成功するのだった。