「ほんとにいる」
「ほんとね」
「いますね」
学園に帰ってきた日、闘夜とルイズとシエスタは下級生のクラスを覗いていた。
そこにいたのは帽子を深く被って耳を隠すティファニアと、帽子から覗く美貌と、制服では隠しきれない豊満なボディにメロメロの男子生徒達。そしてそれを気に食わなそうに見る女子生徒たちだ。
「まぁこうなるわよねぇ」
「大丈夫でしょうか」
「人気なのは良いことじゃないの?」
闘夜は男子生徒達に囲まれる姿を見て、首を傾げているが、ルイズとシエスタは眉を寄せている。
ルイズとシエスタは知っている。クラスと言う狭いコミュニティに置いて、同性から嫌われるというのが如何に危険かを。
特に女子は群れを成すので、そこからハブられるというのは死に直結する。
シエスタはもとより女社会を生き延びているし、ルイズも我が強いものの、なんだかんだ話せる友人はいる。
だがティファニアはそれがいない。男子生徒達もあれは下心ありきだ。
「問題が起きなきゃ良いけど」
「ですねぇ」
「???」
ルイズとシエスタの意味深な発言に、闘夜は首を傾げるのだった。
「ん?」
ティファニアの一件から一週間経ち、オンディーヌ騎士隊の訓練が終わって帰路についていた闘夜。
彼の鋭い聴覚でなければ聞き逃していたかもしれない。だが聞き覚えがある声が耳に届き覗くと、そこにはティファニアと複数名の女子生徒がいた。
「ねぇ貴女。調子に乗ってるんじゃなくて?」
「そ、そんなことは」
何やらティファニアに詰め寄っている小柄な少女は、睨みつけているがティファニアは困ったような顔をする。
「そもそも貴女、ベアトリス様に対して不敬よ」
「ふ、不敬?」
「そうよ!この方はクルデンホルフ大公国の姫。一国の姫となれば、貴族とは格が違いますのよ。そうだと言うのに帽子を被ったままなんて何を考えているのかしら」
「ご、ごめんなさい。肌が弱くて」
エルフの耳を隠すための帽子だが、表向きは肌が弱く、日光に当たってはならないと言うことになっていた。だが彼女達は気に入らないようで、
「もう夕方だし態々日陰に来たのだから、帽子を取っても良いんじゃないかしら?」
「ええと」
流石にまずいかと闘夜は踏んで、
「おーいテファ」
『え?』
闘夜が声を掛けると、ティファニアだけではなく他の女子生徒たちまでみてくる。
「ご、ごはん行こう!」
「え、あ!」
闘夜は手を引いて、ティファニアをそこから離脱させて走り出した。
だが闘夜は気づいていない。その背中を憎々しげに睨みつける彼女たちの視線を……
「それはマズイかもしれない」
「え?」
そんな事があった2日後、闘夜はテラスでタバサから字を教わりながら、ティファニアにあったことを話していたのだが、タバサがそう呟いた。
因みにルイズは今先生に呼ばれてそっちに行っている。
「いやまぁでもほっとけないし、かといっていきなり間に入って仲裁ってのも」
「そうだけどマズイ」
タバサも話を聞いただけにすぎないが、ティファニアの置かれている状態が相当まずいのは分かる。
闘夜に自覚はないが、闘夜は国を救った英雄だ。その英雄が目をかける存在。となれば余計に嫉妬を生むだろう。その嫉妬が、更なる問題にならなければ良いのだが、とタバサが懸念していたとき、
「大変だトーヤ!」
そう言って飛び込んで来たのはギーシュだ。
「ティファニア嬢が実はバレてそれが大騒ぎでエルフだったんだ」
「すいません一旦落ち着いてもらっていいですか?」
なんかパニクっているのでよくわからないが、闘夜が静止するとギーシュは深呼吸し、
「ティファニア嬢が実はエルフだったんだ。それがバレて今1年のクラスでは大騒ぎだ!」
「な、何だって!?」
それを聞いた闘夜は席を立つと走り出し、教室へ向かうのだった。