孤独を感じて生きてきた。誰も味方はいないと、根拠のない確信を持って今まで過ごしてきた。
元々人見知りの激しい私は誰にも心を開けず、ただ自分の趣味に浸ることだけを生きがいとしていたが、結局は叶わなかった夢を見つめてただけのようにも思う。
そんなある日のこと、私は昼休みに教室で一人でぼーっとしていた。何も考えず、孤独を紛らわすために。
「随分、寂しそうな顔してるけど大丈夫?」
突然、私は声をかけられた。一瞬、何が起きたのか分からなかったが、声をかけられたことに気づくと、私は瞬時に声の主の方を向く。そこには、大きな胸と紫色の髪が特徴の「東條希」がいた。クラスメートの名前なんて全く覚えていないから、不正確ではあるがそうだったように思う。
「何か用?」
出来ることなら、とっとと何処かへ行ってもらいたい。そんな気持ちがあったので、雑な返事を相手に返す。
「少し話したいなーって思って。矢澤さん、どう?」
矢澤さん、私のことだ。「矢澤にこ」、それが私の名前。一時期はキラキラネームだとか、からかわれたこともあったが、私はこの名前が大好きだ。
それはそうとして、私は東條さんの言うことが信じられなかった。私と話したい人がいるなんて。頭おかしいんじゃないのかなんて思ったが、この際そんなことはどうでもいい。とっとと帰ってもらおう。
「アンタと話すことなんてある? 今忙しいんだけど」
「何言ってるん? すごく暇そうやったやん」
そうツッコまれてから、言い訳に不備があったことに気づき、心が折れてしまった。
「……はぁ。仕方ないわね、なにか話でもあるの?」
仕方ないから今だけは東條さんの話し相手にでもなろう。
それから時々、私は東條さんと何気ない会話をした。ただし、それ以上の友好関係はなく、ただの話し相手。それ以上でもそれ以下でもない、妙な関係だった。
あれから何ヶ月経っただろう。私は3年生になった。入学当初から抱いていた「アイドルになる」夢は一度叶いそうで叶わぬまま。私の唯一の居場所である「アイドル研究部」ともあと何ヶ月もしないうちにお別れになるだろう。
もうじき私のいるこの学校は廃校になるらしいし、たとえ今年の一年生が新入部員になったとしても、特に意味はないだろう。
ただ、数週間経って部活勧誘が盛んになった頃、学校に異変が訪れた。「μ's」を名乗るスクールアイドルがこの学校に現れたのだ。
アイドルのアの字も知らないにわかのフヌケがやってるアイドルごっこだと思えた。だから、こんな連中消えてしまえと心から望んでいた。
「にこっち、あのμ'sっていうの、どう思う?」
μ'sを知って2日くらい経った時、東條さん、いや、希は私に問いかけた。私がアイドルが大好きだからこそ聞いたのだろう。もちろん答えは決まっている。
「あんなの、アイドルの風上にもおけないフヌケ集団よ」
希は私がそう返答するのを分かっていたのだろうか。特に驚いた表情もせず、希は口を開いた。
「本当にそう思ってる?」
「なんでそんなこと聞くの」
「いや、何でもないんや。ごめんな」
ちょっとばかり心に引っかかるものがあったが、特に気にすることはないだろう。私たちはその場で別れた。
「全く……誰かさんにそっくりで面倒やね」
希がそんなことを呟いていたことは私は知らない。
それからμ'sはファーストライブを終え、次々と仲間を集めていった。そして、ついに私のところにもやってきた。
「にこ先輩! μ'sに入ってください!」
オレンジの髪の少女「高坂穂乃果」は元気よく私に言葉を投げかける。
こいつらの仲間になるのかと思うと、私は複雑な気分になった。また、かつてのように失敗するのではないか。そんな不安から一度は断った。
でも、本当はやりたかったのだろう。あの時の希との会話が未だに心に引っかかっていた。本当はμ'sをフヌケ集団などと思ってはいなかったはずだ。この時から、数ヶ月たった今なら分かる。心の底ではμ'sに惹かれていたのだと。
結局私はμ'sのメンバーになり、μ'sの皆と高校生活最後の一年を過ごし、沢山の思い出を作った。
希の言葉がなければ、本当にμ'sに心を開けぬまま高校生活を終えていただろう。今の私だから思う。
貴方が居たから、夢を叶えられたのだと。
ありがとう。
読んでいただきありがとうございます。ペンネームは違う名前にしたいHEATです。
今回は、TwitterのSS投稿企画の参加作品として執筆しました。
この手の作品は初めてでしたが、やってみると案外面白いもので、またやりたいと思える感じですね。
では、次回作を乞うご期待!