ラブライブ!ワンライSS劇場ッ!   作:HEAT

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本当の私として(お題【表/裏】:君と見た空/ひび割れた声で)

 私の名前は「南ことり」。音ノ木坂学院に通う高校2年生で、スクールアイドルグループ「μ's」のメンバーだ。

 幼い頃から私はμ'sのリーダーである穂乃果ちゃんと一緒に過ごしてきた。それこそ、穂乃果ちゃんのことならなんでも知っている自信がある。正直、友人として穂乃果ちゃんのことをかなり好いていると思う。

 

 だからこそ、少し嫉妬してしまうことだってある。穂乃果ちゃんが他のμ’sメンバーと楽しそうに話していると、その様子が私と話している時よりも楽しそうに見えて仕方がないのだ。「隣の芝生は青く見える」なんて言葉があるけれど、本当にそのとおりかもしれない。でも、たとえそうだとしても自分の嫉妬は確かなものだ。

 でも最近、その気持ちは薄れて、私の中で穂乃果ちゃんもμ’sも皆同格として受け入れつつある。そのことが不思議でならなかった。

 

 

「ことりちゃん? 大丈夫?」

 穂乃果ちゃんが私に声をかける。学校の昼休みの終盤、私はもの思いにふけっていた。穂乃果ちゃんのことで頭がいっぱいで収拾をつけようと試みたがやはり無理であった。それよりも目の前にいる穂乃果ちゃんが可愛くて仕方がない。

「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん」

 私はなるべく穂乃果ちゃんに心配をかけまいとして、笑顔で答える。

 私の中のルールの一つに「穂乃果ちゃんに心配をかけてはいけない」というものがある。こんな意味の分からないルールが出来たきっかけは簡単だ。数ヶ月前に一度、私は穂乃果ちゃんと揉め事を起こして、心配をかけてしまったことである。あの時の穂乃果ちゃんの辛い顔をもう二度と見たくない。もう二度と、絶対に。

「それならいいけど……また前みたいに悩んでいることがあったら言ってね? 穂乃果が力になるから!」

 その言葉を聞いて、穂乃果の隣に居たもう一人のμ’sメンバー、海未ちゃんは口を開く。

「そうですよ、ことり。穂乃果だけじゃ物足りないなら私も……」

「海未ちゃん! 穂乃果だってちゃんとアドバイスできるんだから!」

 またいつものように穂乃果ちゃんと海未ちゃんが言い合っている。私は、穂乃果ちゃんに意見するようなことは特になく、いつも穂乃果ちゃんの味方として賛成の立場を守っているから、海未ちゃんのようなことはできない。でも、仮に私が海未ちゃんのように出来たとしたら、どんな風になるだろうと思うことがある。

 だが、私は穂乃果ちゃんの味方で居続けたいから、そんなことをする日は二度と来ないのではあるが。

 

 

 その日の帰り道、μ’sとしての活動が休みだったので、私は穂乃果ちゃんと帰ることにした。海未ちゃんは掛け持ちしている弓道部の練習があるので、穂乃果ちゃんと二人きりだ。オレンジ色の夕焼けが綺麗だと穂乃果ちゃんが微笑み、私も夕焼けを見つめる。

「ねぇ、ことりちゃん。ちょっといいかな?」

 穂乃果ちゃんが口を開く。一体どんな言葉が飛び出してくるんだろうとドキドキする。

「ことりちゃん、穂乃果には分かるんだ。また何か悩んでいること、あるでしょ?」

 数ヶ月前の周りの見えない穂乃果ちゃんとは違った。穂乃果ちゃんは私のことも見てくれていた。それだけでも十分嬉しいのだが、それ以上に私の気持ちを見抜かれていたことに驚いた。

「そんなことないよ?」

 でも、私は穂乃果ちゃんに心配をかけるのは嫌だから、とっさに嘘をつく。穂乃果ちゃんに嘘なんてつきたくはないが、仕方ない。

「そんなことないよね、ことりちゃん。私とことりちゃんの仲なんだから、穂乃果としては……素直に言ってほしいいんだけどな」

 もう、嘘をつくことさえ許されないようだ。私は心を決めて、穂乃果ちゃんに全てを打ち明けることにした。

「穂乃果ちゃん、私の悩みを聞いて……嫌いにならないでね」

 

 

 全て話した。私が穂乃果ちゃんを好いていること、それ故に嫉妬の念を抱いていること、更にμ’sも受け入れつつあること、そして未だに例の揉め事の件を引きずっていること。何もかも吐き出すように穂乃果ちゃんに打ち明けた。

 穂乃果ちゃんは一瞬難しい顔をする。ちょっと引かれたんじゃないかと不安な気持ちにもなったが、考えをまとめた穂乃果ちゃんの言葉は予想を裏切るものだった。

「安心して、ことりちゃん。穂乃果はどんなときでもことりちゃんのことを大事に思っているし、忘れたことなんてないし、それに……」

「それに?」

「穂乃果もことりちゃんのこと……大好きだから!」

 穂乃果ちゃんは満面の笑みで語りかける。私はその笑顔に釘付けになった。その笑顔が見たかった。私だけしか知らない、その笑顔が見たかったのだ。

「穂乃果ちゃん……」

 言葉が出ない。ただ、嬉しくて、何も考えられなくて、そうつぶやくことしか出来なかった。

 

 自分の予想では穂乃果ちゃんに引かれて「信じられない」なんて言われて、以後気まずい関係が続くと思っていた。だからこそ、それを覚悟して穂乃果ちゃんに全部打ち明けた。ひび割れそうな声で、涙を流し。

 いつもなら伝えられないことを、穂乃果ちゃんにぶつけた。海未ちゃんほどではないが私らしく、穂乃果ちゃんに意見をぶつけたように思える。

 それが正解だったのだろう。私は自分の殻を破ることで、変なプライドを捨てることで初めて本当の私として穂乃果ちゃんに接することができた。ようやく私は穂乃果ちゃんに受け入れられたのだ。

 

 それから、私たちはお互いの好きを語り合って、家の前まで来るとまた明日と告げて別れた。

「ことりちゃん……今日はありがとう」

 穂乃果ちゃんは照れた顔で話す。いつもは見せない表情が私の心を刺激する。

「うん、穂乃果ちゃん」

 そうして、穂乃果ちゃんは私に背を向け、歩いていった。

 

 私は今日のこの日を忘れないだろう。君と見た空の下、穂乃果ちゃんみたいなオレンジ色に輝く夕焼けとともに。

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