ニシキノ勢力
高坂穂乃果を動かす原動力、高崎翔は落とした。彼がいなくなったことで穂乃果はもう戦う理由もなくなった。
これでまず一つ目の条件はクリアされた。
もう一つは、μ'sコアを全て集めて私の望み…穂乃果と穏やかな日常を過ごすという願いを叶えること。
私と彼女を巻き込んだμ's。
今さら過去は変えられはしない。
でも彼女をこれ以上関わらせないことはできる。
まだこれからのことならやり直せる。
そのためにはなんだってやるって決めた。たった1人の親友のために。
しかし彼女にとって大切な仲間の命を奪った私を許してくれないだろう。
それでも仕方ないと思った。理想の明日がくるのなら。幸せな日々を過ごせるのなら。
そのために私は戦ってきたのだから。
ん?
廊下を歩いているとUSBメモリが落ちていた。
目の前の部屋はニシキノ博士の部屋だった。
これはもしかして博士の…。
私はしゃがんでそれを手に取った。
少し興味があった。
博士をそんなにも必死にさせるμ'sの謎。
その真理・理由がこの中に記されているかもしれない。
真姫「こんなところでなにしてるのよ、海未」
海未「真姫…」
見上げるとそこには西木野真姫がいた。彼女は西木野博士の1人娘で精密射撃、特に狙撃を得意とするμ'sのパイロットだ。
そんな彼女が一体私に何の用なのだろうか。
真姫「ちょうどよかったわ。
パパがあなたのこと呼んでたわ。」
海未「博士が、ですか?」
真姫「そうよ。なんでも見せたいものがあるって。」
海未「見せたいもの?そして私はどちらへ行けばいいのでしょう?」
真姫「それが…嫌な予感しかしないのね。」
真姫「μ's開発研究支部、地下のμ's開発工場よ。」
開発工場とはいえど、ニシキノ勢力の基地は基本的になんでもあるのでμ's開発工場も地下に降りてすぐのところにあった。
そして私たちは室内に入った。
真姫「失礼します。」
博士「真姫か、入りたまえ。」
海未「お久しぶりです、博士。私に何か?」
博士「久々だなぁ園田君。わざわざ来てくれてありがとう。」
博士「話は他でもない。君たちに渡したいものがあってね。」
海未「私たちに?」
博士「そうだ。入ってきた時点でもう薄々気づいているとおもう、というよりもうそちらにばかり目が行って仕方ないだろう。」
ーーパチンッ!!
薄暗かった室内に照明がついた。
ガラス越しに見えたのはなんと2つの巨大人型兵器だった。
一つは真紅に激しく輝いた機体。
もう一つは蒼白に静かに輝く機体。
どちらも神々しくみえた。
真姫「これってまさか…!」
博士「そのまさかだよ。新しいμ'sだ。正確には半壊状態だったローゼルと白夜のコアを抜き取り、新らたに作り上げた後継機だ。」
博士「2機とも最新鋭の技術を導入さた自信作だ。今後この2機が我々の主力となることだろう。どうだろう、気に入ってもらえたかな?」
真姫「ありがとう!パパ!私、頑張るわ!」
博士「ああ、これからも頼むよ、真姫。」
海未「……。」
博士「園田君も……ん?どうしたのかね。浮かない顔をして。不服かな?」
海未「いえ、そうではないです。ですが今の私では…受け取れません。」
真姫「ちょっと海未!パパに向かって…!」
博士「いや、いいんだ真姫。できればその訳を聞かせてほしい。」
海未「はい。戦闘機操縦流儀、園田流は私の家に伝わる流儀であるのはご存知ですよね?」
博士「ああ、もちろん知っているとも。その流儀あるからこそ君を安心して最前線にたたせることができるのだからね。」
海未「はい、それはこれからも誇りを持って守り受け継いでいくつもりです。」
海未「しかしそれとは別の…戦う理由を失ってしまいました。」
博士「高坂穂乃果君、だね?」
海未「はい…。高崎翔がいたから戦えていた彼女も、彼が落ちた今となっては戦意喪失しているに違いありません。」
博士「そう思う根拠はあるのかい?」
海未「はい。偵察班の情報によると、ここ最近彼女とその機体のヘリオスが戦闘に姿を現してこないらしいです。」
博士「ふむ…。それは確かに怪しいな」
海未「彼女のいない戦場にもはや私の戦う理由はありません。そんな今の私では受け取る資格などありません。
ですので、凛あたりにでも渡しておいてください。」
博士「それも考えたが、やはり機体との相性が合わなくてな。それに私は君を高く買っているのだよ。何と言ってもあちらのエースパイロット、高崎翔を討ったのだから。」
海未「あれは戦況が混乱してただけでたまたま紛れて討てただけです。実力ではありません。」
博士「それでも立派な戦果さ。それに君にはまだ戦ってもらいたい。」
海未「…今度は誰を討てと?」
博士「今1番厄介なのは南ことりだ。
彼女の復活によりこちらの戦況がだいぶ不利になっている。
しかし彼女さえ落とせばこちらの勝利は近い。だからお願いがある。彼女を…織姫を撃墜してくれないかね?
この、ヴァルフリードで。
もちろん真姫の新機体、フレアシスもね」
海未「ヴァル…フリード…。」
私はまだ剣を取っていいのでしょうか…?
ーー汝がそれを望むなら、戦えばよい。己の信じるものを見つけるための戦いを、汝がすればよい。
ヴァルフリードがそう言った…ような気がした。いや、そうに違いない。
私の想いがシンパシーのように彼に届いたのかもしれない。
そう思うとμ'sはホントに持っているのかもしれない。人の心をーー。
海未「…わかりました。その任務、お受けしましょう。ただし私が新しい道へ進むべきその時まで。
それまで誓います。あなたの剣となり盾となることを。」
私は覚悟を決めたかのように博士の顔を見上げた。
博士「いい返事だ、君ならそう言ってくれると思ったよ。私も君のその騎士道に乗ろうじゃないか。」
海未「ありがとうございます。我が儘ならこと言って申し訳ありません。」
博士「わかっているよ。ではよろしく頼むよ。」
海未「はい、それでは失礼します。」
私と真姫は部屋を出た。
穂乃果の次はことり…。
幼馴染を討つ。このことに私はなんらかの運命を感じずにはいられない。
そしてこの任務に何の意味があるのかはわからない。しかしわからないからこそ今は確かめるしかない。
私の意志…想いは間違ってはいないと。ただそれだけを信じて。
そして隣にいる西木野真姫はどんなことを考えているのだろうか。
彼女の目的は一体…。
真姫「なにじろじろ見てるのよ。」
真姫がジト目でこちらを見てきた。
海未「あ、いえ…。」
真姫「あなた、いくらなんでもパパと喋り過ぎよ。」
海未「ごめんなさい。そんなつもりはなかったのですが…。嫌でしたか?」
真姫「べっ…!別に嫌とかそんなんじゃないわよっ!!勘違いしないでよね!」
ああ、ツンデレだ…。
私でもわかるほどにバレバレの。
真姫「それと…別に撃つ気がないなら撃たなくていいわ。あなたにばかりいい思いはさせないんだから。」
海未「いえ…そういうわけではありません。ただ…。」
真姫「あんなこと言ってまだ迷いがあるのね。今度はあの希でさえ負かされた相手なのよ。足元掬われたって知らないんだから。」
海未「では聞きますが…私たちは一体、何と戦っているのでしょうか?」
真姫「…ナニソレイミワカンナイ。」
海未「いえ。やはり今のことは忘れてください。」
ヴォーン!!出撃命令が下された。
真姫「話は後よ。出撃、できるわね?」
海未「ふふっ。愚問ですね。」
私たちは新たな機体のコクピットに乗った。
ーーカタカタカタ…。
多少システム改変はしないといけないがそれもすぐに終わった。前以て準備してくれたのだろう。
海未「園田海未、μ'sヴァルフリード、行きます!」
真姫「西木野真姫、μ'sフレアシス、出るわ!」
紅と蒼のμ'sが空を舞う。
海未「先行します、後に続いてください。」
真姫「後ろは任せなさい!」
ーービピピッ!!
織姫とバローニャを視認した。
絵里「新型?!」
ことり「海未ちゃん…?」
にこ「こんな戦力が安定しない状況で新型は反則よぉ!」
海未「ことり、覚悟っ!」
ことり「海未ちゃん!!」
ーーバチィィィ!!
ビームサーベル同士が当たり、衝撃音が響いた。
海未「ことり!なんで今更になって出てきたのです…!」
ことり「海未ちゃん!気づいて!こんな戦いに意味なんてないの!」
海未「私にはあります!あなたを討てという命が!」
ことり「それは海未ちゃんの望んだこと?あなたは一体、何と戦っているの!」
海未「目の前にいるでしょう!それが今私が戦うべき相手です!」
ことり「…わかっているはずなのに、振り向こうとしない。ううん、ホントは向き合いたいんだよね…。」
海未「あなたに何がわかるというのです!ずっとどっかに行ったきりだった癖に今更のこのこと帰ってきて!!」
ことり「ごめん…ごめんね。私ももっと早くみんなに会いたかったの。でもわかるよ。海未ちゃんがこんなに一生懸命になってる時はいつも…、」
織姫が距離を離す。
海未「逃がしません!」
ヴァルフリードも前進して距離を詰めようとする。
ーービシィィ!!
海未「っ!!」
しかし、各部いたるところに網目状に巡らされたビームが当たっていた。
いや、引っかかったという言い方が正しいかもしれない。
ことり「穂乃果ちゃんのためを想ってやってくれてるんだもんね…。」
海未「…あなたにだけは知られなくなかったのに…。全部お見通しというわけですか…。」
ことり「そんなのわかるよ。だって私たち、幼馴染だもの。」
海未「ふふっ、全く。ことりには敵いませんね。」
ことり「海未ちゃん…。」
織姫が手を差し伸べた。
ーーヴォォォン!!
突然ヴァルフリードのコクピットの画面が変わり、奇妙な音を発した。
海未「…ヴァルフリード?!ことり!離れてください!!」
ことり「えっ?!」
海未「制御不能…!ヴァルフリード!なんで私のいうとをきかないのですか!!」
ーーFBS(フルオートバーサークシステム)、起動。
コクピットでそんなボイスが鳴った。
海未「うっ…意識が……。」
ヴァルフリードが勝手に動き、代わりに私の意識が朦朧としてく。
私の操縦技術ではとても真似できないような動きができていた。まるで生きているかのように。
それだけじゃない。性能が桁違いに向上している。スピードやパワーも織姫を上回っているだろう。
ことり「ふ、フェザー・ファンネルッ!!」
視野でも追えない速さでヴァルフリードは難なくファンネルのビームをかわす。
珍しくことりも焦っていた。
そのせいかファンネルのビームやビームライフルの射撃精度も落ちている。
真姫「ちょっと海未!どうしたの?!返事しなさいよ!」
博士「無駄だよ、真姫。今の彼女には声は届かない。」
真姫「なんなのよあれ!」
博士「フルオートバーサークシステム、通称FBSはパイロットにある特定の不利な条件・状況になると、パイロットの意志に反して作動されるシステムだ。
発動後はパイロット側の操作は制御不能になるが、代わりに数カ所のリミッターが解除されてステータスのほとんど…特にスピードやパワーが底上げされる。」
博士「彼女の場合のトリガーは、『信念』と言ったところか。南ことりに吹き付けられた言葉が彼女の心を揺さぶった。それがFBSを発動するトリガーとなったのだろう。」
真姫「止める方法はあるの?」
博士「ない…わけではないが、これにも限界があってね。5分ほどで元に戻るんだ。」
真姫「…なんで海未には言わなかったのよ。」
博士「このことを言ってしまったら彼女は乗ることを躊躇ってしまうからね。それにこれは彼女を試すテストでもあったのさ。」
真姫「…何を試すのよ。」
博士「彼女が裏切るんじゃないかって、私は疑っててね。それを判断する材料だよ。」
真姫「では援護は必要ない?」
博士「いや、何が起こるかわからないからこのまま待機していてくれ。」
真姫「…了解。」
意識を失う刹那、私の脳裏にある出来事が浮かんだ。
それは先日、ある占い師のお告げを聞いたときのこと。
ーー9人の女神と1人の騎士が結束されし時、世界は変わる。
その変革を遂げた世界で騎士は露となり、女神たちは花となるだろう…。
聞いたときはよくわからなかったが、ようやくその意味がわかった。
海未「そうですね…。
私たちは未来の……。」
どうもハイネ1021です。
この17話は前回うpしたものが消えてしまったので、つくり直して再うpしたものになります。
本当にご迷惑をおかけします。