艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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最近知ったんですけど、戦艦ル級の火力ってノーマルだと60しか無いんですね、軽巡の球磨より低いって考えたらなんか大したことなさそうに見えてきて驚いた。

でももっと驚いたのはフラグシップでも90しかないってこと(金剛と同じくらい)、てっきり大和型くらいあると思ってたけどなんか拍子抜けだった。

…でも味方を一撃大破させるくらいのダメージは平気で与えてくるんだよなぁ…


第102話「篝の場合4」

「前世…?」

 

 

聞き慣れない単語に海原と川内は首を傾げる。

 

 

「海原くんは艦娘の素体が人間だっていうのは知ってるね?」

 

 

「はい、人の死体に手を加えて艦娘にしてる…という程度には」

 

 

海原の回答に榊原は大体合ってるね、と言って頷く。

 

 

「それなら話は早い、前世とは素体の人間が生前持っていた記憶の事なんだ」

 

 

「記憶…?」

 

「そう、でも基本的には素体の記憶は建造時に我々が消してしまうから艦娘には引き継がれない、艦娘としての情報を脳に刷り込む時にそれが邪魔になるからね」

 

 

「なるほど、中古のパソコンみたいな感じですね、家電店で中古パソコンを買っても前の持ち主のデータは業者が消去しているから残っていない、それは残っていたら前の持ち主にとって不都合があるから」

 

 

「そう考えてもらって構わないよ」

 

 

 

海原と榊原は何の疑いもなく普通に会話をしていたが、川内だけはふたりの会話を聞いてとてつもないおぞましさを感じていた。

 

 

(…何となく予想はついてたけど、私ってこんな非人道的な方法で生まれてきたんだ…)

 

 

死者にに安らかな眠りを与える事も許さず身体を隅から隅まで弄くりまわし、死ぬ前に持っていた記憶を…思い出を全て消され、挙げ句人間が作り出した偽りの記憶(プログラム)を洗脳のように頭に刷り込まれて艦娘は生まれてくる、まさに悪魔の実験とも言えるような内容ではないか、川内はそう感じていた。

 

 

「川内」

 

「ひゃい!?」

 

 

急に名前を呼ばれて川内は素っ頓狂な声を出す。

 

 

「悪いがこの部屋で見たり聞いたりしたことは全て他言無用でお願いするよ、外部に漏れたら都合の悪いこともあるからね」

 

 

「…死者を冒涜するような方法で艦娘を建造してる事とか?」

 

 

半ば睨むような視線を川内から受け、榊原は両手を上げてやれやれのポーズを取ってため息をつく。

 

 

「軽蔑したければすればいい、俺もそういう事をしてるって自覚はある、でも俺たちは深海棲艦との戦いに何としても勝たなければいけない、そのためなら君たち艦娘からどんな侮蔑の言葉を投げられたって構わないさ、それに俺は君に言ったぞ、不快な思いをするけどその覚悟はあるかって」

 

 

榊原の言葉に川内はたじろぐ、確かに覚悟は決めていたつもりだったが、今の話は川内の予想をはるかに越えていた。

 

 

「それに、覚悟が必要なのは君だけじゃないしね…」

 

 

榊原は川内に聞こえないように言ったのかもしれないが、川内はそれを確かに聞いた、そして察してしまった。

 

 

(所長も覚悟を決めてたんだ…)

 

 

榊原は艦娘の生みの親…言ってしまえば父親のような存在だ、そんな父親が娘から侮蔑の言葉をぶつけられて平気なわけがない、非人道的な事をしている自覚があるのなら尚更だ、榊原にその覚悟が無ければ川内を退室させていただろうが、前世が関わっているのであれば川内自身もその話を聞く必要が出てくる、川内に覚悟を問うたのはそれもあるのだろう、不快感と混乱で激情しないか、それで話を聞かなくなってしまわないかという…。

 

 

 

「……失礼な事言ってごめん、話…続けて」

 

 

それなら自分も最後まで榊原の話を聞く義務がある、彼も覚悟を決めて自分の前でこの話をするのなら、自分もそれを聞かなければ。

 

 

川内の言葉を聞いてふたりは脇道にそれかかった話を戻す。

 

 

「さっきの記憶の話だけど、基本的には艦娘には素体の記憶は残らない、でも稀に素体の記憶が残ったまま建造される艦娘がいる」

 

 

「そんな事があるんですか?」

 

 

「うん、事例が少ないからどういったきっかけでそうなるかははっきりしてないんだけど、心の奥底に深く染み着くような記憶…例えばトラウマなんかがあったりすると前世持ちの艦娘が建造される場合があったりするね」

 

 

榊原の説明を聞いた海原と川内が目を丸くする、艦娘についての知識はある程度持っていると思っていたが、前世までは海原の知識に無かった。

 

 

「つまり、川内の夜戦嫌いはその前世に関係してると…」

 

 

「その可能性は高いと思うよ」

 

 

そう言うと榊原は持っていた書類を海原たちの方に向けてテーブルに置く。

 

 

「これは?」

 

 

「素体のプロフィールだよ、つまり川内が人間だったときの情報」

 

 

海原と川内はプロフィールに目を通す、それは履歴書のようなレイアウトで、左上には川内と顔の似た黒髪の少女の写真が張られている。

 

 

「名前は天使(あまつか)夜衣(やえ)、地元の学校に通う高校二年生の女の子だ」

 

 

「天使夜衣…人間だったときの、もう一人の私…」

 

川内はプロフィールの顔写真をまじまじと見る、見れば見るほど川内にそっくりであった、同一人物なので当然なのだが。

 

 

「この夜衣って子が川内の夜戦嫌いの原因だと?」

 

 

「あくまで可能性だけどね、プロフィールの一番下の欄を見てごらん」

 

 

ふたりは言われたとおりに視線を落とす。

 

 

 

 

 

○死因:殺人

 

 

 

「さ、殺人!?殺されたってのか…?」

 

 

「当時捜査してた警察に話を聞いたんだけど、どうやら夜間の下校中に通り魔殺人にあったみたいなんだ、背後から刃物で背中と喉をやられて」

 

 

「なるほど、だから夜の時間を怖がるのか、殺されたときの記憶がトラウマになってるから…」

 

 

「それもあるんだけど、警察の話では夜衣は即死じゃなかったみたいなんだ、滴るような血痕が30mくらい続いてたって事だから、刺された後も苦しみと恐怖に耐えながら逃げようとしたけど叶わず…ってとこじゃないかな」

 

 

榊原の見解を聞いた川内は物悲しそうに目を伏せる、夜になるといつも感じる不安は、恐怖は、彼女が死ぬ間際に感じていたものなのだろうか、でも彼女が…夜衣が感じていた不安や恐怖は今の川内が感じているものよりもずっと強大なものであっただろう。

 

 

川内は悲しさを覚えると同時に、夜衣に対する怒りも同時に感じていた、同一人物であっても川内に夜衣だったときの記憶は無い、あるのは死ぬ間際の夜に対する前世(トラウマ)だけだ、そして、記憶が無ければ川内にとって夜衣という存在は他人でしかない。

 

 

(何でそんな訳の分からない他人の前世(トラウマ)なんかで私が苦しい思いをしなきゃならないのよ!)

 

 

川内のやり場の無いその怒りは、榊原の話が終わって風音が吹雪たちを連れてくるまで消えることは無かった。




刀剣乱舞でオープニングムービーが出来てて何気に驚いた。

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