艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
そう言えば博麗神社秋季例大祭に行ってきました、太鼓の達人の出典ブースで青い霊夢の着せ替えアイテムをゲット出来る会場限定ガシャがあったんですけど、残念ながらレミリアでした。
「私が、これをですか…?」
「えぇ、受け取ってほしいの、正確には“返す”…の方が正しいかもしれないけど」
川内は髪飾りを見たまま固まってしまう、確かに川内と夜衣は同一人物だ、しかし…
「でも…今の私が持つよりあなた方が持っていた方がいいのでは…?」
今の川内には夜衣の記憶はほとんど残っていないしこの髪飾りにも何の思い入れも無い、そんな人物に返すよりも雪衣たちが持っていた方が余程良いのではないのだろうか?
「…いいえ、これはあなたが持っているべきよ、あなたからはちゃんと夜衣を感じるもの」
「へっ?」
川内はぽかんとした顔で雪衣を見る、一体自分のどこに夜衣を感じたのだろうか?。
「あなたが昨夜歌ってた子守歌、実は私が夜衣に聞かせてたオリジナルの歌なの」
「そうだったんですか!?」
雪衣の告白に川内は驚きを隠せない、実際あの子守歌は“どこで聞いたかは覚えてないけど内容は覚えてる”というレベルで知っていたのだが、まさかそのルーツが夜衣だとは思ってもいなかった。
「あなたがあの歌を覚えるって事は夜衣の心がまだ残ってるって事、あなたにこれを返すには十分な理由よ」
「…本当に受け取ってしまっていいんですか」
「もちろん、それに今回のことでちゃんと分かったから」
「?」
雪衣が言った言葉の意味が分からず川内は頭に疑問符を浮かべる。
「たとえ別人になっても、記憶が無くても、夜衣はやっぱり夜衣なんだって」
「っ!」
雪衣からそれを言われた瞬間、川内の中から何かが込み上げてきた、この感情が何なのかは川内自身にも分からなかったが、まるで自分以外の誰かが心の底から喜んでいるようでもあった。
「今朝高雅とふたりで話し合ったのよ、これをあなたに託すかどうかを、高雅はちょっと迷ったみたいだけど、最終的には認めてくれたわ」
ね?と雪衣は悪戯っぽく高雅を見る、当の本人は恥ずかしそうに顔を背けるが、その顔はどこか嬉しそうだった。
「まぁその…何だ、昨日はあんな事言っちまって悪かったな」
「高雅さん…」
「お前が全くの別人になっちまったのは確かにショックだったけど、それでも夜衣の心がまだお前の中にいてくれたみたいで嬉しかったよ」
高雅は川内の方こそ見なかったが、その顔は確かに笑っていた。
「だから川内、これはあなたが持っていて、これからもあの子と、夜衣と生き続けて」
高雅と雪衣の言葉に、川内は涙を流していた、自分はふたりの事を覚えていないのに、全くの他人のはずなのに、今すぐ泣き叫んでしまいたいくらい嬉しかった、ひょっとしたら夜衣がそう感じているのかもしれない、川内は自然とそう思った。
「…はい、大切に…使わせていただき…ます……」
嗚咽になんとか耐えながらそう言った川内は髪飾りを受け取ると、それを頭の左側に器用に着ける。
「…うん、やっぱり夜衣はこうでなくちゃ」
「似合ってるぞ」
雪衣たちの言葉を受けた川内は目尻に涙を浮かべたまま立ち上がると…
「ありがとうございます!」
とびっきりの笑顔で敬礼をした。
…その後、川内と吹雪は夜衣の様々な思い出話を聞かせてもらいながら楽しく談笑していた、その光景はまさに家族そのものであった。
◇
「もっとゆっくりしてもいいのに…」
「そうしたいのは山々なんですけど、戻って上官に報告しなければならないので…」
その日の夕方、吹雪と川内は天使夫妻を後にするために別れの挨拶をしていた、雪衣は泊まっていってもいいと言ってくれたのだが、本来の目的は篝の艦娘化だ、あまりのんびりしてはいられない。
「今回はご協力ありがとうございました、心から感謝します」
「また来てちょうだいね」
雪衣たちに見送られながら川内と吹雪は夜衣のいた町を後にした。
「仲直り出来てよかったね、川内さん」
「うん」
受け取った髪飾りを弄りながら川内は嬉しそうに言った。
◇
2体が台場鎮守府に戻る頃にはすっかり夜になっていた、吹雪が手をつないでくれたおかげでパニックになることはなかったが、その分女子同士で手を繋いでいるというシチュエーションに対して別の恥ずかしさがこみ上げてくる川内だった。
「ただいま戻りました~」
「あ、お帰りなさい!」
正面玄関をくぐると雪風が出迎えてくれた。
「私たちが出てる間に変わったことはあった?」
「変わったこと、ですか…」
吹雪の質問に雪風は気まずそうに目線をそらす、どうやら何かがあったらしい。
「今、鎮守府に予想外のお客様が見えてます…」
「予想外のお客様…?誰のこと?」
「提督室にいるので、一緒に来てください」
そう言うと雪風は吹雪たちを提督室に案内する。
「おぉ、吹雪に川内、今戻ったのか?」
提督室に入ると海原が書類を書きながら出迎えてくれた、そして雪風の言っていたお客様はソファに腰掛けていた。
「はい、ただいま戻り…まし……た……」
そのお客様とは…
「…篝…?」
深海棲艦となった篝だった。
◇
チェックメイト、そう宣言した私は盤上の駒を進める。
『うわぁ、また負けてしまった…』
そう言うと彼は心底悔しそうに頭を抱える、かれこれもう10連敗目だ。
『本当に●●は強いね、全然敵わないよ』
彼は苦笑しながら言うけれど、彼は戦略というモノがまるで分かっていない、ただ目の前の状況の対処方法しか考えていないから先の手を読めずに詰んでしまう、何度も彼に言っていることなのに全然改善されていない。
『俺はこの手のゲームは苦手でね、特にこのチェスは相手の裏をかいたり先の手を読む必要があるから実に頭を使う、ゆえにとても難しい!』
彼はそう得意げに語るけど、この前ペグ・ソリティアでも同じ事を言ってた辺り先読み自体が苦手なタイプなんだと思う。
そんな事じゃこの世界で生きていくのは厳しいって何度も言ってるけど、彼は人が良いから直すのは時間が掛かるかもね。
まぁ、そんなダメンズ気質の彼をフォローする事に密かな喜びを感じている私も大概だと思うんだけど。
最近「Lostorage incited WIXOSS」というアニメにハマっております、OPが井口裕香さんなんですけど、加賀が歌ってるって妄想をすると中々面白かったり。