艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
・瑞鶴と加賀の休日ショッピング
・島風&仲直りした駆逐艦娘たちとのお出かけ
今のところ上の二つを考えています。
「か、篝…!?ちが…!わたっ!そんなつもり…!ちが…!」
川内は激しく狼狽し、支離滅裂な言葉を吐きながらあちこちに視線を移す。
『川内さん落ち着いてください!私、あなたを責める気は微塵も…!』
なんとか川内に伝えようと篝は川内に近づき言葉を発するが、それが川内に届くことはない。
「ひいぃ!?ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
川内は泣きじゃくりながらひたすらごめんなさいを繰り返し、その場に頭を抱えてうずくまる、ただでさえ川内が嫌っている夜という状況にこの追い討ちが加わり、すでに川内は正常な精神状態を保てなくなっていた。
『川内さん…』
篝は歯がゆい気持ちで一杯になり唇を噛み締める、自分が何を言っても川内には届かない、今の篝に…言葉で伝えることは叶わない。
『………』
気が付けば、篝は身を屈めて川内を抱きしめていた、言葉で伝えられないのなら、行動で伝えればいい。
『私、川内さんの事、恨んでなんて無いですよ?そりゃー川内さんに沈められてこんな姿になったのは悲しかったですけど、それ以上に川内さんを助けたかったんです、川内さんが夜嫌いで苦しんでいたことは知ってたし、沈む直前に見た川内さんのあんなに怯えきった顔が頭にこびり付いて離れなかった、あんな顔見たら恨もうにも恨めませんよ…』
聞こえないと分かっていても、篝は川内に語りかけ続ける、もちろんその間はずっと川内の事を抱きしめていた、想いが伝わると信じて…
『でも川内さんの心の傷は深そうだったから、ちょっと突き放すような言い方をしちゃいました、優しくして甘えさせるより、自分で立ち上がれるようにしなきゃって思ったんですけど、逆効果でしたね、ごめんなさい』
篝は申し訳無さそうに言って謝る、もちろんそれも聞こえていない。
『でも、諦めないでください、今川内さんがどれだけ辛くて苦しいかは私には計り知れません、苦しんでいるのを知っているから“分かる”なんて軽はずみな同情は出来ません、でも諦めてほしくはありません』
そう言うと篝は一度川内から離れると、川内の手を強く握って真正面から語りかける、当人は依然うずくまっているので表情までは窺えない。
『川内さんはいつだって私の目標で、憧れなんです、そんな川内さんが苦しんでいるのなら私は助けたい、出来ることがあるなら何だって協力してあげたい、それだけは私の本心なんです』
ここで川内に変化が起こった、うずくまったままの川内がその顔をゆっくりと上げ、篝の方を向いたのだ、その目は絶望しきったように濁っており、篝は一瞬身を震わせた。
『…川内さん、どうか諦めないでください、あなたは自分の夜嫌いを、トラウマを克服できます、私はそう信じています、好意の押し付けだと思うのならそれで構いません、でも諦めることだけはしないでください、川内さんは自分が思っているよりも、ずっと勇気のある艦娘なんですよ』
篝は川内の目をしっかりと見て言う、聞こえていなくてもいい、でもこの気持ちだけは届いてほしい、そんな矛盾した想いだけが篝を突き動かしていた。
『もしそれでも怖いのなら、私が前みたいにいつまでも手を握っています、私はどんな事があっても川内さんの味方でいます』
『“川内さんが夜を克服出来ますように”、それが私の“未練”ですから…』
篝はそう言うと、川内に笑いかける。
「…篝、ひょっとして、“諦めるな”的な事言ってる?」
『っ!?』
突然川内に自分の胸の内を読まれ、篝はドキッとする。
「ずっと一緒にいたせいかな、あんたの言いたいことが何となくだけど分かるようになったんだ、多分篝は今の私を…何もしないで怯えて腐っている私を許さない、絶対に諦めるなって思ってる、そうでしょ?」
そう言われた篝は少しの沈黙の後、肯定の意を示すためにコクリと頷く。
「…ハハッ、後輩にこんな事思われているようじゃ、教育係としても先輩としても失格かな」
そう言うと川内はおもむろに立ち上がる。
「篝、ありがとね」
川内は雪衣から貰った…いや、返された髪飾りを外すと、両手で包み込むように持つと胸の前に持ってくる。
「…夜衣、あんたの怖いって気持ち、身に染みて感じるよ」
川内はその場にいないもう一人の自分に向かって語りかける、はっきり言って自分は夜が怖い、それは川内自身が感じている事でもあるし、自分の前身である夜衣が感じている事でもあるのだ。
「私も夜が怖いし、正直今すぐにでもここから逃げ出したい、でもいつまでもそれじゃダメなんだよ」
川内は両目を閉じ、写真でしか見たことのない夜衣の姿を目の前に思い浮かべながら言う。
「だからさ、一緒に克服しよう、私も頑張るから、勇気を出すからさ」
夜衣は川内の前身…つまりはもう一人の自分であり、過去の自分だ、夜衣が死んだという過去はどうやっても変えられないし、それで生まれたトラウマも夜衣と共に残り続ける。
しかし、もしもその過去を変えられるとしたら、恐怖に怯える夜衣の手を取って救い上げられるとしたら、それは今の自分である川内だけだ、過去の自分のトラウマを乗り越えられるのは自分自身以外の何者でもない。
「私はずっと夜衣の側にいるし、夜衣の味方でいる、それでも怖いのなら、私の空元気で夜衣の手を引いてあげる、だから夜衣、乗り越えよう、私と一緒に…この夜を越えていこう!」
川内は髪飾りをぎゅっと握り締めると、両目を見開いて宣言する。
「…っ!」
すると、川内の中で変化が訪れた、今まで自分の周りを取り巻いていた恐怖という感情のもやが、霧が晴れるように霧散していく、今まで自分にのし掛かっていた不安が、まるで憑き物が落ちたようにストンと無くなっていく、それこそ、何かが吹っ切れたように…。
「…ありがとう、夜衣」
川内は夜衣に感謝すると、再び髪飾りを着ける、髪飾り自体には魔力的な力は何もないはずなのに、まるで誰かが隣に寄り添ってくれているような安心感があった。
「…やっと、やっとこの時が来た」
自分を遮る恐怖が消え去った今、川内の感覚は最大限に研ぎ澄まされていた、すぐ後ろにいる篝の気配はもちろん、それまでは全く気づかなかった波の音も聞こえる。
…そして、前方から近付いてくる、吹雪たちが取りこぼした深海棲艦の敵意までが全身の皮膚にビリビリと伝わってくる。
元々川内は夜戦に関しては天性の才能があった、夜目は他の艦娘に比べてかなり利く方だったし、周りの敵味方の気配なども敏感に感じ取ることが出来た、しかし、それと同時に受け継がれた過去のトラウマがその才能を潰してしまっていた、奥村も川内の夜戦の才能を見抜いており、何とか克服させようとしていたが、上手くはいかなかった。
「この時をどれだけ待ち望んでた事か…!」
しかし今、川内の夜戦能力を邪魔するモノは何もない、その才能と能力を思う存分に発揮できる、それは川内自身が最も望んでいたことだ、そして自らを縛り付ける鎖が千切られた今…
「待ちに待った…夜戦だああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
彼女は夜の支配者となる。
次回「夜の支配者」
艦これアーケードのイベント海域の攻略を進めています、現在第4ステージを攻略中で泊地棲鬼を一回倒しました、さすが鬼は強いですね、イベント限定艦種だけあります。