艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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戦艦少女で資材稼ぎをやっております、演習や遠征では燃料と弾薬を消費しないのでそこそこ効率がいいです、あと疲労度もないので出撃し放題でレベリングも進みます。

刀剣乱舞も3-4攻略目指して奮戦中。


第115話「大鳳の場合2」

「ったく、何でこんな時に会議に参加しなきゃならないんだよ、めんどくせぇ…ばっくれて帰りてぇ…」

 

 

海原がため息をつきながら渋谷の街中を歩いている、明石が台場にやってきた翌日、海原は臨時司令官会議をやるとの事で大本営から呼び出しを受けていた。

 

 

「ダメですよ司令官さん、司令官会議は大切なイベントなのですから」

 

 

その横から篝が優等生のテンプレみたいな台詞でつっこみを入れる、いつもは秘書艦である吹雪が同行するのだが、ちょうど出撃中で不在だったため篝が同行する事になったのだ。

 

 

「分かってるよ、でも今まで散々放っておいたクセに急に呼び出しを増やすってのもシャクにさわるなぁって思っただけだ」

 

 

「それには同意致しますが…」

 

 

海原が愚痴っている間に台場御一行は大本営に到着、受付を済ませていつもの会議室に足を運ぶ、室内は予想通り戦艦や正規空母の秘書艦が大半を占めていた。

 

 

「相も変わらず大型艦ばっかで窮屈な所だな、そんなに戦力誇示がしたいのかね」

 

 

「それは偏見なのでは?奥村司令官も戦艦の艦娘を連れてましたが、戦力誇示ではなく純粋に仲が良いからという理由でしたよ」

 

 

「そうなのか、ごめんな、お前がいるのに」

 

 

「いっ、いえ!こちらこそ過ぎた言葉でした!すみません!」

 

 

海原が軽く謝ると、篝は少し慌てたように両手を振る、篝は真面目な良い子だが、もう少し砕けた態度で接してもいいんじゃないかと海原は思う、どうせ公私の差などあってないような鎮守府だし、三日月、暁、雪風の狂犬トリオ…ダイバケルベロス(海原命名)に至っては日常的にじゃれ合いという名の殺し合いをしている程だ。

 

 

「そういえばお前の元上司はどこかな…っと」

 

 

海原がキョロキョロと周りを見渡すと、少し離れた斜め右の席に座っていた、隣には秘書艦の艦娘を連れている

 

 

「篝、お前の言ってた仲の良い戦艦って…」

 

 

「はい、金剛型戦艦5番艦“水剱(みつるぎ)”、奥村司令官の秘書艦です」

 

 

海原は奥村の秘書艦…水剱をじっと見つめる、アイスブルーのロングヘアーに紺色の和風甲冑を身に纏った艦娘だ、後ろ姿なので表情は見えない、入ってくるときに見れば良かったな…とちょっぴり後悔する。

 

 

「全員集まっているようだな」

 

 

その時、南雲元帥が相変わらずのムカつく面構えで入ってきた。

 

 

「今回集まってもらったのは、深海棲艦の新種が新たに発見されたからだ」

 

 

南雲の議題に部屋中の提督がざわめきだす。

 

 

「今回発見された新種がコイツだ」

 

 

そう言うと南雲はプロジェクターにパソコンの画像を投影する。

 

 

「…なんだありゃ」

 

 

それを見た海原はとてもシンプルな疑問を口にした、その深海棲艦の外見を一言で言うのなら『鋼の球体にヒトの上半身が生えた生物』というのが一番適当だろうか、ヒトの上半身は頑丈そうな兜のようなモノを被っているため顔は見えない、そして腕はホースのように不自然に太く、背中側で固定されている。

 

 

「この深海棲艦は他の艦に燃料や砲弾などの物資を運搬、補給する輸送艦のような役割を持っているとの報告が入っている、ここに見える腕をホースのように使い燃料などを補給しているようだ、尚攻撃をしてこないので攻撃力は無いと思われる」

 

 

全員が南雲の説明を食い入るように聞いている、チラリと横を見れば篝も手帳を開いて南雲の話を素早くメモしている。

 

 

「我々はこの個体を『輸送棲艦(ゆそうせいかん)』と命名し、新たな敵勢力として認識する」

 

「輸送棲艦か、敵も戦略的になってきやがったな」

 

 

「兵站を強化する敵…ある意味では戦艦棲艦よりも厄介な相手かもしれませんね、艦娘も深海棲艦も資材さえ尽きなければいつまでも戦えますから、疲労や轟沈を考えなければ…の話になりますが」

 

 

篝が悩ましいといった様子で呟く、確かに兵站などの準備を万全にしたものが戦いを制するという話を海原もどこかで聞いたような気がする、敵もそれをやろうとしているのなら確かに厄介だ。

 

 

「この輸送棲艦は電子書庫(データベース)にも追加してあるので確認しておくように」

 

 

その後も諸々の話などがあったが、臨時司令官会議は30分ほどで終了してしまった、これなら資料をメールで送るだけで良かったのではないだろうか?という疑問が湧いた海原だったが、口に出すと面倒くさそうなので言わないでおいた。

 

 

「篝、奥村に挨拶していくか?」

 

 

「…よろしいのですか?」

 

 

「俺より付き合いの長い元上司だろ?ダメだという理由がどこにある」

 

 

海原はそう言うと、手荷物をまとめて帰ろうとしている奥村に近づいて声をかける。

 

 

「よぉ奥村、元気してっか?」

 

 

「何だよ海原…って篝…!?」

 

 

奥村はめんどくさそうにこちらを向くが、篝を見て一気に顔色を変えた、水剱も同様である。

 

 

「…上手くいったんだな」

 

 

「おかげさまでな、お前が篝や川内の情報を事前に吐いてくれたからスムーズに事が運んだぜ、そういや川内はどうしてる?」

 

 

「前よりも断然元気にやってるよ、それと、夜嫌いを克服出来てからは夜戦での戦績がうなぎ登りだ、今じゃ夜戦で川内の右に出る艦娘はいないとまで言われてるぞ」

 

 

「ほぇ~、そりゃスゴいな、良かったな篝、先輩大活躍だってよ」

 

 

「はい、本当に…良かったです」

 

 

篝は心からホッとした様子で息を吐くようにそっと呟いた。

 

 

「…海原、俺は一度お前を蹴落とそうとしてあの時の軍法会議に参加した、俺がこんな事言える立場じゃないってのは分かってるけど、篝の事…よろしく頼む」

 

 

奥村はそう言って海原に頭を下げる、その様子に水剱は驚いたような表情をする。

 

 

「…俺はあの時のことを許した訳じゃない、でも篝の事は何が何でも守ってやる、だから安心して任せろ」

 

 

海原が得意気に言うのを聞いて安心したのか、奥村は小さく“ありがとう”と呟いた。

 

 

「篝、これから色々大変だろうが、海原の所で頑張れよ、川内も応援してたぞ」

 

 

「はい、誠心誠意持って頑張らせていただきます、水剱さんもお元気で」

 

 

「えぇ、たまには連絡してね、私も応援してるから」

 

 

水剱もにこやかに笑ってそう言った。

 

 

それから別れの挨拶を軽く交わすと、お互いにそれぞれの鎮守府へと帰って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい提督!待ってたよ!」

 

 

台場に戻って来るや否や明石が出迎えてくれた、服装はあのプリーストの修道服ではなく、群青色の作業着を着ている、作業中はこちらの方が動きやすいらしい。

 

 

「ん?何か急ぎの用があったのか?」

 

 

「昨日提督に許可を貰って開発してた深海棲器が完成したんだ、お披露目するから工房に来て!」

 

 

「マジか!ずいぶん早いな」

 

 

「これでも艦隊の技術職だからね」

 

 

明石は得意げに胸を張る、張れるだけの胸が少々不足気味な事については言わないでおこう。

 

 

 

 

 

「じゃじゃーん!これが私が新たに開発した深海棲器です!」

 

 

出撃から戻ってきた吹雪たちを含む台場メンバー全員を集めた明石は、新しい深海棲器のお披露目会を開催していた。

 

 

「えっと…」

 

 

「これってまさか…」

 

 

吹雪たちは目の前に鎮座されている深海棲器を見て顔をひきつらせる、120cm程の鉄の筒の中心に鋭い針が通っており、その筒には人の腕を通す隙間とマジックハンドなどでよく見る引き金が付けられている。

 

 

「深海棲器『パイルバンカー』、コードネームは『フレイム・スピアー』だよ」

 

 

その武器は、俗にパイルバンカーと呼ばれているモノであった。

 

 

「それで明石、このパイルバンカーはどうやって使うんだ?」

 

 

パイルバンカーをよく知らない海原が明石に説明を求める。

 

 

「はい、まずはこの隙間に腕を通して…」

 

 

海原に言われたとおり明石はパイルバンカーの使い方を実演する。

 

 

「この引き金を引くと…」

 

 

パイルバンカーを装着した明石がマジックハンドのような引き金を引く。

 

 

「うおぉ!?」

 

 

すると、鉄の筒から顔を覗かせていた槍の穂先のような針がものすごい勢いで飛び出す。

 

 

「こうやって敵を刺突する目的の武器がこのパイルバンカー!、しかもスピアーの部分はドリルみたいに回転するようになってるんだ、先端がヤスリみたいになってるから敵の肉をすりつぶしながら穴を空ける事だって出来るよ」

 

 

「可愛らしい顔してとんでもないモン作りやがったな」

 

 

「というより、今の説明だとコードネームの“フレイム”の要素が無いような…?」

 

 

大鯨が頭に疑問符を浮かべる。

 

 

「あ、それはね、ここのスイッチを入れると…」

 

 

明石が本体に取り付けられているつまみを回す、するとスピアーの先端が赤く染まっていく。

 

 

「スピアーの先端には発熱装置が内蔵されてるの、最高700℃まで上げられるよ」

 

 

「…なんか、これで攻撃される敵を想像すると気の毒になってくるな」

 

 

性能が優秀過ぎて敵に若干同情してしまう。

 

 

「というわけで、このフレイム・スピアーは篝の武器として進呈するよ」

 

 

「えっ!?私ですか!?」

 

 

突然のご指名に篝は驚いた顔をする。

 

 

「作るときに提督から“どうせなら着任したばかりの篝に入隊祝いとして作ってやってほしい”って言われてたから、篝に合いそうな武器にしたの」

 

 

「私のどこを見てコレを作ったのですか!?」

 

 

不服そうに反論する篝だが、自分のために作ってくれたという嬉しさもあり、結局パイルバンカーを受け取ったのだった。

 

 

ちなみに明石も自分の深海棲器をふたつ選んでいた。

 

 

1つ目は『スコップ』

 

軍用に作られたモノであり、白兵戦でも刺突目的で使える片手で使うサイズのモノだ。

 

2つ目は『大太刀』

 

吹雪が使っている太刀よりも刀身が長く、90cm程ある刀だ。

 

 

「大太刀はともかく、スコップなんて何に使うんだよ…」

 

 

「敵の装甲を採取するためだよ、深海棲器の素材に必要だし」

 

 

「スコップじゃ無理じゃね…?」

 

 

あとお前は戦闘参加しないだろ、という突っ込みは言わないでおいた。




次回「装甲空母」

いい加減薙刀の刀剣男士来てください、短刀と脇差と打刀と太刀しかいないので戦術の幅が広がりません。

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