艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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着弾観測射撃の有用性が分からない今日のこの頃。


第12話「暁の場合6」

台場艦隊と敵艦隊の戦闘が開始された、まずは吹雪が旗艦(リーダー)の重巡棲艦に肉薄し、手甲拳(ナックル)の右ストレートをお見舞いする。

 

 

「っ!?」

 

 

予想以上の重い一撃に重巡棲艦は驚いた表情(かお)をして後ろに後ずさる。

 

 

「まだまだァ!」

 

 

続けてもう一撃入れようと拳を振りかぶったが、随伴艦の駆逐棲艦が重巡棲艦を庇うように前へ出てきた。

 

 

「邪魔!」

 

 

しかし、吹雪の放った右ストレートの一撃で駆逐棲艦はあえなく撃沈、まさに一撃必殺だった。

 

 

「はああっ!」

 

 

盾を失った重巡棲艦が吹雪の拳撃を食らって一気に中破まで追い込まれる。

 

 

短期間で大ダメージを食らった重巡棲艦は動きが鈍りはじめ、攻撃動作がおぼつきだした。

 

 

この隙を見て吹雪は一瞬だけハチの方を見やる、すでにハチは駆逐棲艦と軽巡棲艦を1体ずつ撃沈させている、残りの敵兵力は中破の重巡棲艦と小破未満(カスダメ)の軽巡棲艦だ。

 

 

ここで吹雪はハチと合流し、一気に敵艦隊を弱体化させる作戦にでる。

 

 

しかし敵艦もやられっぱなしではない、重巡棲艦と軽巡棲艦が同時に主砲から次々と鉛弾を連射する。

 

 

「くっ…!!」

 

 

「これは…!!」

 

 

吹雪とハチは剣撃で弾丸を斬り落としているが、数の暴力には勝てず少しずつダメージを蓄積させていく。

 

 

「があっ!」

 

 

その時、重巡棲艦の砲撃が吹雪に直撃、小破のダメージを受ける。

 

 

「このっ…!」

 

 

ハチが反撃として拳銃の引き金を引き絞る、銃弾が重巡棲艦に直撃するが大破に追い込むほどのダメージは望めなかった。

 

 

 

 

「…凄いな」

 

 

響たち第6駆逐隊は吹雪たちの戦闘を見て唖然としていた、艦種のセオリーを超える戦闘力もそうだが一番驚いたのは吹雪たちが持っている近接兵装…深海棲器だ。

 

 

「艦娘が白兵戦なんて初めて見るわ…」

 

 

「常識外れなのです…」

 

 

元々艦娘は“軍艦”と例えられる深海棲艦に対抗するために開発されている、そのため艦娘の攻撃方法も砲撃や空撃、雷撃を主として想定されている。

 

 

更に言えば主砲や魚雷、艦載機などは大ざっぱに言ってしまえば“飛び道具”だ、射程距離が長い攻撃方を持つ相手にわざわざ近接戦闘を仕掛けるなどという選択肢はそもそも浮かばない、これが深海棲器が艦娘に定着しなかったもう一つの理由でもある。

 

 

 

 

 

 

「さてと、どうやって突破口を開こう…」

 

 

吹雪はナギナタを構えて眼前の軽巡棲艦から目を離さずに考える、多少苦労はしたが重巡棲艦は撃沈した、あとは撤退するキッカケを作るだけなのだがそれが難しかった。

 

 

軽巡棲艦は損傷も軽微だし残弾数もそれなりにある、下手に背中を見せて撤退などしようものなら格好の的にされるだろう。

 

 

「それなら、これで…!!」

 

 

吹雪はハチに向かってあるハンドサインを送る、それを見たハチは不敵な笑みを浮かべると“了解”の意思を示すハンドサインを返した。

 

 

「「魚雷全弾発射!!!!」」

 

 

吹雪とハチが魚雷を発射し雷撃を行う、しかしその魚雷はふたりを中心に扇状に広がっていき、明らかに軽巡棲艦には当たらない軌跡を描いている。

 

 

「主砲発射!撃てえぇ!」

 

 

続いて吹雪とハチは主砲と拳銃からありったけの銃弾を“自分達が撃った魚雷に向かって”撃ち出した。

 

 

銃弾が魚雷に命中したその瞬間、発射した魚雷が全て同時に爆発、凄まじい轟音と共に水しぶきが吹雪たちと軽巡棲艦との間に発生する。

 

 

「今です!全員撤退!最高速力(フルスロットル)!!!」

 

 

吹雪の合図と共に台場艦隊、舞浜艦隊が回れ右をして全速力で走り出す、水しぶきが目くらましをしている間に逃げ切らなければこの作戦は失敗に終わってしまう。

 

 

水しぶきが止む頃には、軽巡棲艦の眼前にいた艦娘たちはどこにもいなかった。




戦闘シーン難しい…

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