艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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キャラクター人気投票の結果を活動報告に掲載しました、三日月すげぇ。

艦娘がパーソナリティという設定でラジオ(またはドラマCD)をやってみたら面白そうだと思います。

…試しに吹雪と三日月と暁をMCでゲストに摩耶…というシチュエーションで一本短編を書いてみたらエラいことになってしまいました、これはお蔵入りだな…。


第117話「大鳳の場合4」

「会いたい人?誰なんだ?」

 

 

極めてシンプルな内容に多少驚いた海原だが、大鳳に先を促す。

 

 

西村恭吾(にしむらきょうご)、大湊鎮守府の提督です』

 

 

「司令官に会いたいんですか?」

 

 

吹雪がそう尋ねると、大鳳は首を縦に振る。

 

 

『私が轟沈したあの日、大湊鎮守府に敵艦隊の急襲があったんです、主力艦隊は出撃任務で出ていたので、残存戦力の私たちが提督と鎮守府を守るために防衛に出ていたんですけど、敵の猛攻に耐えられず私は轟沈してしまいました…』

 

 

大鳳は落ち込んだ様子で自分の過去を話す。

 

 

「つまり、お前は提督が無事だったかどうかの安否を知りたいって訳だな?」

 

 

海原がそう聞くと、大鳳は頷いて肯定の意を示す。

 

 

「よし、そう言うことなら台場鎮守府は全力で大鳳に協力しよう」

 

 

『っ!?あ、ありがとうございます!』

 

 

大鳳は嬉し泣きの涙を目尻に浮かべ、海原に頭を下げる。

 

 

「まずは大湊の提督の調査だな、名前はなんて言ったっけ?」

 

 

海原は電子書庫(データベース)を起動させ、人事関係のフォルダを呼び出す、海原の記憶では今の大湊の提督は荻波秀典(おぎなみひでのり)だったはずだ、沖ノ鳥島海戦でも作戦に参加していたし、先日の臨時司令官会議にも顔を出していた。

 

 

「西村恭吾って言ってました」

 

 

吹雪の返答を聞いた海原はキーボードを叩く指を止め、不審そうに眉をひそめる。

 

 

「…西村恭吾?それ、大鳳がそう言ったのか?」

 

 

「はい、間違いなくそう言いました」

 

 

「……」

 

 

海原は顎に手を当てて考え始める、現大湊鎮守府の提督は荻波秀典だ、それは今画面に表示されている大湊鎮守府の情報にも書かれている、しかし大鳳は大湊の提督は西村恭吾だと言った、つまり荻波は西村の後に提督として就任したということになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…なら荻波の前任にあたる西村はどうなった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まさか急襲に巻き込まれて死んじまったとかってオチじゃないよな…)

 

 

 

急に不安になった海原は電子書庫(データベース)内の検索エンジンに『西村恭吾』と打ち込む、電子書庫(データベース)は退役や殉職などで海軍を去った人物の情報も閲覧できるため、西村という人間が実在しているのであればヒットするはずだ。

 

 

「…あの、司令官?」

 

 

さっきから難しい顔をしてモニターを見つめている海原を見て、吹雪や大鳳が不安げな様子で声をかける。

 

 

「…大鳳、さい先の悪い情報で申し訳ないが、西村恭吾はすでに海軍にはいない」

 

 

『えっ…!?』

 

 

海原の言葉を聞いた大鳳は絶望的な表情で言葉を失う。

 

 

「じゃあ西村さんは既に…!?」

 

 

「いや、死んだわけじゃない、電子書庫(データベース)の情報では西村恭吾は2047年に“退役”している、大鳳が轟沈したのはその一年前だから、少なくともお前は西村恭吾を守れたんだよ」

 

 

海原はそう言って大鳳の不安を取り除こうとする、それを聞いた大鳳は静かに涙を流し…

 

 

『良かった…本当に良かった…です…』

 

 

心から嬉しそうに、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、西村さんが殉職じゃなく退役だって事は分かったけど、問題はどうやって西村さんに会うか…だな」

 

 

「既に海軍にいないとなれば自宅を訪問するしか方法は無い…んでしょうけど…」

 

 

「住所が分からなけりゃどうしようもない…か」

 

 

海原たちは早速新たな問題にぶつかり頭を悩ませていた、退役した西村と接触するための手段を海原たちは持っていないのだ、電子書庫(データベース)では住所までは分からないし、ダメもとで大本営に問い合わせるにしても3年も前に海軍を去った人間の住所などの情報を保管しているとは思えない。

 

 

「まぁ、これに関しては俺の方で色々模索してみるよ、泥船に乗ったつもりで構えてろ」

 

 

「ひたすらに安心できない泥船ですね」

 

 

「泥船だからな」

 

 

海原と吹雪がそんな冗談のやり取りをしていると、暁率いる遠征部隊が帰投して提督室にやってきた。

 

 

「司令官、遠征部隊帰投よ、これ報告書」

 

 

「おう、お疲れさん」

 

 

海原は暁から受け取った報告書に目を通す。

 

 

「随分獲得資材が多いな、穴場でも見つけたのか?」

 

 

「違うわよ、途中で敵艦隊に遭遇したからぶっ殺して身包み剥いだだけ」

 

 

「お前本当に趣味悪いな」

 

 

「別に普通でしょ、三日月たちも賛成してくれたわよ」

 

 

「私は一応止めたんですけどねぇ…」

 

 

呆れ顔の海原をよそに涼しい顔で暁は返す、ただひとり大鯨だけは控えめに暁に抗議していた。

 

 

「そうだ、お前たちにも言っておくことが…」

 

 

海原は暁たちに大鳳の事を伝え、仲良くしてやれと言って解散させた。

 

 

「さてと、俺は西村さんに会う方法を考えるか、どっかに情報持ってる都合のいい人とかいねぇかな…」

 

 

「世の中そんなに甘くないですよ」

 

 

その後も色々知恵を絞ってみたが、吹雪のつっこみ通り都合よくアイデアは出てくれなかった。

 

 

 

 

 

「…という事があったんですよ」

 

 

『そうか、大鳳に会ったのか、彼女の事は覚えているよ、艦載機の運用能力がとても優れていてね、当時は最高能力の空母…なんて言われてたんだ』

 

 

その日の夜、海原は大鳳の事を報告するために榊原に電話をかけていた、榊原は当時を懐かしむように言い、しみじみとした雰囲気を感じさせていた。

 

 

『それで、大鳳はどんな思い残しを?』

 

 

「大湊鎮守府の前任提督である西村恭吾に会いたいって言ってます、今は彼と接触する方法を探してるんですが、何分既に退役しているので現住所が分からず難航してるんですよ」

 

 

海原は“ははは…”と力無く笑うが、その直後に意外な言葉が返ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『西村さんの住所なら、俺知ってるよ』

 

 

 

「……へ?」

 

 

都合のいい人は、意外と近くにいた。




次回「偽りの恩人」

戦艦少女の攻略が滞り気味、鳥海や青葉なんかの重巡はそろってきたけど、戦艦がいないのが心許ない。

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