艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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大鳳編終了です。

元ブラック鎮守府に着任した提督が艦娘に嫌われつつもなんとかしようと頑張っていく…いわゆる“ブラ鎮復興モノ”が好きでそういう系の話をよく読んでるんですけど、自分もそういうブラ鎮復興モノ書いてみたいという衝動がわいてきた今日のこの頃。


第120話「大鳳の場合7」

「織恵さん…」

 

 

「早速夫の墓参に来てくれたんですね、ありがとうございます」

 

 

織恵はそうにこやかに挨拶をすると海原の隣へやってきた、その手にはバケツが下げられており、中には柄杓や花が入っていた。

 

 

「そちらの子は…艦娘さんですか?」

 

 

「は、はい、ついて来て貰ったんです」

 

 

海原がそう言うと吹雪は軽く会釈をする、大鳳はフードを目深に被り直して海原の後ろに隠れた。

 

 

「すみません、少し人見知りしてしまうやつでして…」

 

 

海原が苦笑して誤魔化すが、織恵は笑ってそれを許してくれた。

 

 

織恵は西村の墓石に向き直ると、バケツの花を手向けて手を合わせる。

 

 

「さてと、水を汲んでこないと…」

 

 

「あ、私が行ってきますよ、確か入り口に水道ありましたよね?」

 

 

「あら、そう?悪いわね…」

 

 

吹雪がバケツを持って水道の方へ向かおうと歩き出したとき…

 

 

「うわっとと…!」

 

 

土が盛り上がって出来た石畳の小さな段差に躓いて転びそうになり、手近にあったモノを無意識に掴む。

 

 

「…あっ」

 

 

そこで吹雪が掴んだモノは、不幸にも大鳳が目深に被っているフードであった。

 

 

「っ!?やば…!」

 

 

それに気付いた海原と大鳳は慌ててフードを被せようとしたが…

 

 

「えっ…!?深海棲艦!?ど、どういうこと!?」

 

 

大鳳の姿を思い切り織恵に見られてしまった。

 

 

(…こりゃ腹割るしかねーな)

 

 

隠しきれない、そう思った海原は全てを打ち明けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そうですか、そんな事情が…」

 

 

海原は織恵にこれまでの経緯を全て話した、もちろん自分が西村とは面識が無く、恩人というのも嘘だという事も含めて全て。

 

 

「申し訳ありませんでした、西村さんの…故人を侮辱するような真似をしてしまい、お詫びのしようもございません」

 

 

海原は織恵に誠心誠意を込めて頭を下げる、いくら大鳳の未練を解くためとはいえ、海原たちがやったことは許されることではない。

 

 

「そんな…顔を上げてください、そんな事情があっては話せないのも無理はありません」

 

 

侮蔑の言葉のひとつやふたつは覚悟していたが、織恵は海原の事を許してくれた、織恵は海原に優しく笑いかけると、大鳳の方へ視線を向ける。

 

 

「あなたが大鳳なのね、あなたの事は夫から聞いたことがあるわ」

 

 

『提督から…ですか?』

 

 

「えぇ、あの人が鎮守府に着任したとき最初に出会った艦娘で、頼りない自分をいつも支えてくれたって話してくれたの」

 

 

『そう…だったんですか』

 

 

大鳳は自分の着任当初の事を思い出す、最初の建造で自分は大湊にやってきた、でもそれで資材のほとんどを使ってしまい、当時は鎮守府運営に本当に苦労したものだった。

 

 

「あの人はあなたの事をとても気に入ってたみたいでね、まるで娘が帰ってきたみたいだって嬉しそうだったの」

 

 

「帰ってきた…?」

 

 

引っかかるような言い回しに海原は首を傾げる。

 

 

「私たちには娘がいたんですけど、15年前に亡くしてしまったんです、だから夫はなおさら嬉しそうに大鳳の事を話していました」

 

 

『提督がそこまで私のことを…』

 

 

大切に思われていたのか、と大鳳は無意識に涙を流していた。

 

 

「夫はお迎えが来る時もあなたのことを話してましたよ、大湊鎮守府急襲事件の時は身を挺して守ってくれて、逃げる時間を稼いでくれてありがとうって、そう言ってたの」

 

 

そう言う意味では、あなたは夫の命の恩人って事になるわね、織恵はそう付け加える。

 

 

「あの人を守ってくれて本当にありがとう、あなたはもう私たちの娘よ」

 

 

そう言うと織恵は大鳳の手を握り、愛娘に向けるような笑顔を大鳳に向けてくれた、それこそ本当の娘のように。

 

 

『………』

 

 

大鳳は目から大粒の涙を流しながら泣いていた、西村提督にそこまで大切に思われていたこと、そしてその妻である織恵から感謝の言葉をかけて貰った事、そのひとつひとつが嬉しくてうれし涙が止まらない。

 

 

『…ありがとう…ございます…!』

 

 

その直後、大鳳の艦娘化(ドロップ)が起こり、かつての装甲空母がその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…提督、ようやくお会いできました」

 

 

 

大鳳の艦娘化(ドロップ)後、改めて墓石に向き直って墓参りの続きを行う。

 

 

「私の事を想ってくれて、本当にありがとうございます、私もあなたと出会えて幸せでした」

 

 

そう言うと大鳳は墓前で手を合わせ、心からの追悼の意を表する。

 

 

「…本当に信頼しあってたのね、なんだか嫉妬しちゃうな~」

 

 

織恵はどこか羨ましそうに大鳳を見る。

 

 

「…もういいのか?」

 

 

追悼を終えて立ち上がるのを見て海原が聞く。

 

 

「はい、二度と来れないというわけではないので、織恵さんもいつでも墓参に来ていいと言ってくださいましたし」

 

 

「もちろんよ、いつでも会いに来てあげてね、あの人寂しがり屋な所あるから」

 

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

それから織恵と海原たちは軽く世間話をした後に別れ、海原たちは台場鎮守府へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大鳳型装甲空母の1番艦『大鳳』です、これからよろしくお願いします」

 

 

台場鎮守府に戻った後、大鳳はDeep Sea Fleetのメンバーに自己紹介をしていた。

 

 

「ついに我が台場鎮守府にも航空戦力が加わりましたね!」

 

 

「これで大演習祭(バトルフェスタ)にも勝機が見えてきました!」

 

 

吹雪たちは台場鎮守府初の空母に喜んでいたが、大鳳はどこが気まずそうな顔をしていた。

 

 

「えーっと、その事なんですけど…今の私、艦上戦闘機しか積んでいないんです…」

 

 

 

 

 

「艦戦しか積んでないってマジですか…?」

 

 

「残念ながらマジです、轟沈したときに攻撃機が外れたみたいで…」

 

 

大鳳はあはは…と苦笑しながら指で顔を掻く。

 

 

「まぁ、モノは考えようさ、艦戦しか積んでないということは敵艦載機の撃墜に専念できる、そうすれば吹雪たちが空撃を気にする必要もなくなるわけだ」

 

 

「なるほど、確かにそれはいいですね!」

 

 

「頼りにしてますね、大鳳さん!」

 

 

「…はい!お任せください!」

 

 

吹雪たちからの期待の視線に、大鳳は嬉しそうに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大鳳の挨拶を終えた後、海原は大鳳を連れて明石の工房へ向かった、最初期組である大鳳の艤装は少し古いタイプだというのを本人から聞いたので、現状の艤装でも戦えるかどうかを明石に聞きに行ったのだ。

 

 

「…なるほど、確かに少し古いタイプだね、でもこれなら改良を加えて強化できそうだよ」

 

 

「なら頼んでもいいか?ついでに深海棲器も見繕ってやってくれ」

 

 

「了解!必ず提督と大鳳さんの期待に応えるよ!」

 

 

それを聞いた海原は大鳳を明石に預けて工房を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、大鳳の艤装の改良が終わったという連絡があったので海原はDeep Sea Fleetを連れて工房へと向かった。

 

 

「じゃじゃーん!Newバージョン大鳳さんの完成~!」

 

 

明石は大鳳の横で膝立ちになって大鳳に両腕を向ける。

 

 

「おぉ!いいんじゃないか?」

 

 

「かっこいいです大鳳さん!」

 

 

Newバージョン大鳳を見た海原たちは口々にそんな感想を言う、今までの赤を基調とした艤装から黒を基調としたデザインに一新されている。

 

 

「艤装や装甲のパーツに深海棲器を組み込んでみたの、装甲空母の持ち味である防御力もグーンとアップ!飛行甲板も深海棲器で強化されてるから簡単には壊れないよ!」

 

 

明石は誇らしげな口調で胸を張る、あの短時間でここまで仕上げる彼女の作業ぶりは流石の一言につきる。

 

 

そして明石が大鳳向けに制作した深海棲器は3つ。

 

 

1つ目は『大盾(タワーシールド)』、深海棲器製の大型の盾で、その防御力は戦艦の砲撃を凌ぐほどだ。

 

 

2つ目は『片手斧(トマホーク)』、片手で持てるサイズの小振りの斧だ、三日月の槍斧(ハルバード)よりも小さく軽いので扱いやすい。

 

 

3つ目は『ボウガン』、大鳳の航空艤装は加賀のような弓道タイプではなく、ボウガンを射出して艦載機を発艦させるタイプなのだが、これは遠距離武器としての普通のボウガンだ、矢尻には炸薬が仕込んであるので目標に命中すると小規模だが爆発が起こるというオマケ付きである。

 

 

「大鳳さんは最大練度(レベル)に達してるから、取り合えずば白兵戦の訓練から始めましょうか」

 

 

「えーと、艦娘に白兵戦は必要なんでしょうか…?」

 

 

「何言ってるんですか!艦娘に白兵戦は今や必須科目なんですよ!」

 

 

「そうなの!?」

 

 

「しれっとデタラメ教えないでよ三日月」

 

 

早速大鳳をからかっている三日月をたしなめつつ、吹雪は大鳳の特訓メニューを考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、みんな集まってくれてありがとう」

 

 

少女は目の前にいるベアトリス、シャーロット、エリザベートを前に言った。

 

 

「あなたたちを呼んだのは、あの計画を最終段階に移すためよ」

 

 

「ということは…」

 

 

「いよいよやるのですね」

 

 

ベアトリスとシャーロットがそう言うと、少女はコクリと頷き、高らかに宣言した。

 

 

「これより、『人類殲滅作戦』ステージ3…『本土急襲攻撃作戦』の準備に入ります!」




次回「大演習祭(バトルフェスタ)開幕式」

空母棲艦赤城のUAが700越えててびっくり。

Deep Sea FleetのUAも50000突破です、ありがとうございます!

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