艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
今年の
「さてと、いよいよ俺たち台場鎮守府の出番だな」
「…なんか急に緊張してきました」
「…私も」
吹雪と暁が身体を強ばらせて弱々しく呟く、この試合の結果で自分の生死が決まるのだから無理もない。
「大丈夫だ、今日のためにみんな訓練を重ねて
「司令官…」
「だからお前たち、全力でやってこい!」
海原からの全幅の信頼と期待が込められた言葉に吹雪たちは目頭を熱くさせる。
「了解しました!台場鎮守府第1艦隊Deep Sea Fleet…行って参ります!」
吹雪たち参加メンバーが一斉に敬礼をすると、海原もそれを返す。
◇
今回の特別試合は通常の演習とは少し違うルールで行う、台場は通常のルール通り任意に選んだ6体の艦娘を参加させるが、相手艦隊は各鎮守府の提督が任意で選んだ艦娘1体…計6体で編成された艦隊となる、今回参加させるのは横須賀、佐世保、室蘭、舞鶴、呉、舞浜である。
「あいつら、意気揚々と行ったはいいけどやっぱ心配になるな…」
「司令官って意外と心配性なんですね、というよりは親馬鹿?」
「からかうな、心配なものは心配なんだよ」
雪風にちゃかされた海原は不機嫌そうに唇を尖らせる、それを見た雪風はペロリと舌を出して可愛く謝った。
「大丈夫ですよ、吹雪たちなら負けません!あの子たちの強さは私たちがよく知ってますから!」
すると後ろの座席に座っている瑞鶴が海原を励ます、いや、瑞鶴だけではない。
加賀、摩耶、ローマ、第六駆逐隊、川内、島風、金剛、etc.今まで台場鎮守府と関わってきた艦娘たちが一緒にDeep Sea Fleetを応援したいとやってきてくれたのだ、その光景を見た海原は涙が出そうなほど嬉しかった。
「さてと、それじゃお前の鎮守府の雑魚艦娘があっさりやられる所をのんびり見させてもらおうか」
そして、呼んでもいないのにいつの間にか佐瀬辺が海原の隣に座っていた、その佐瀬辺の態度に周りの艦娘たちが不快感を露わにしていたが、口には出さなかった。
「残念だが台場の艦娘はそう簡単には負けないぜ、お前らの精鋭を集めた艦隊だろうが余裕で倒してやる」
「ケッ!言ってろ、虚勢を張ったって負けるもんは負けるんだよ」
互いに最悪の空気を遠慮なく出していると、Deep Sea Fleetと特別艦隊が入場してくる。
○特別艦隊
・艦隊名:ユニゾンレイド
・戦艦:武蔵 Lv.156/横須賀鎮守府
・戦艦:神忌 Lv.99/佐世保鎮守府
・戦艦:陸奥 Lv.120/舞鶴鎮守府
・戦艦:ビスマルク Lv.115/室蘭鎮守府
・正規空母:グラーフ・ツェッペリン Lv.126/呉鎮守府
・正規空母:翔鶴 Lv.148/舞浜鎮守府
VS
○台場鎮守府
・艦隊名:Deep Sea Fleet
・駆逐艦:吹雪 Lv.189
・駆逐艦:暁 Lv.188
・駆逐艦:三日月 Lv.185
・駆逐艦:篝 Lv.180
・装甲空母:大鳳 Lv.170
・潜水母艦:大鯨 Lv159
「なっ…!?何だあの
互いの
「別に不思議なことじゃないだろ?この前のケッコンカッコカリ艦娘限定の改装で上限が200まで上がったんだ、それはお前も知ってるはずだぞ?」
「そうじゃねぇ!あんな短期間であそこまで
「それだけ俺たちがこの演習のために全力を注いできたって事だ、お前と一緒にすんじゃねぇ」
声に凄みを利かせて佐瀬辺に迫る海原を見て、佐瀬辺が一筋の冷や汗を流す。
「だ、だが相手は駆逐艦だ、あの装甲空母は多少厄介かもしれないが、我々ユニゾンレイドの相手じゃない!それに戦闘力皆無のゴミみたいな大鯨だって入ってるんだ、勝つのは俺たちだ!」
佐瀬辺は相変わらずの態度で返すが、今の佐瀬辺のある一言が海原の琴線に触れた。
「…じゃあテメェにひとつ言っておいてやるよ」
海原はドスの利いた声で佐瀬辺の胸ぐらを掴むと、顔を佐瀬辺に近づける。
「テメェがゴミだと言っている大鯨がどれだけお前らの艦隊を手こずらせるか、よぉく見ておくんだな」
鬼神の如き形相で迫られ、佐瀬辺は生唾を飲み込む。
「か、勝手に言ってやがれ!」
その空気に耐えられなかった佐瀬辺は海原の手を無理やり振りほどくと、その場から逃げるように立ち去る。
「…ふぅ、邪魔者もいなくなったことだし、ゆっくり試合を見ましょうか」
佐瀬辺がいなくなって心底すっきりとした様子で加賀がそう言うと、全員が頷いて演習場の方を見る。
◇
一方こちらは演習場の艦娘たち、ユニゾンレイド
「お前たち、来る場所を間違えていないか…?」
「いいえ、私たちDeep Sea Fleetがあなたたちユニゾンレイドの相手です」
「ふざけるなっ!」
吹雪の返答に武蔵が激昂する。
「私たちの相手がお前たちのような駆逐艦だと!?悪ふざけも大概にしろ!こっちは戦艦4体に正規空母が2体だ!敵うわけがない!」
このような大火力編成を組まれたからどんな艦娘が相手なのかと見てみれば、ほとんどが駆逐艦ではないか、この編成では相手にならない。
「それは実際に戦ってみれば分かることです、それとも…駆逐艦相手にビビってるんですか?」
吹雪の安い挑発を聞いて武蔵は完全にキレた、単純なやつだと吹雪は思う。
「いいだろう…!駆逐艦風情がこの武蔵にでかい口を叩いたこと、存分に後悔させてやる!」
武蔵は艤装を全力展開、開戦と同時に吹雪たちを潰す気で戦闘準備をする。
その一方で他の一部の艦娘たち…翔鶴と神忌は複雑な表情を浮かべていた、理由は目の前の暁と篝である、轟沈したハズの仲間が生きて目の前にいる、その状況にある種の感動すら覚えるが、相手は完全にこちらのことを“敵”として見ている、その現実に2体はそれぞれ胸を痛めた。
「そう言えば大鯨、自殺したと思っていたが生きていたんだな、自殺なんかしないでそのまま提督の
今の武蔵の発言で吹雪たちはユニゾンレイドを完全に“敵”と認識した、こいつらは絶対に潰す、そのつもりで艤装を展開させる。
「特別艦隊ユニゾンレイド、いざ参らん!」
「台場鎮守府第1艦隊Deep Sea Fleet、抜錨です!」
運命をかけた試合が始まる。
◇
まずは翔鶴とグラーフが艦載機を発艦、それと同時に大鳳も艦上戦闘機を発艦させ、
「…グラーフさん、あの艦戦は何でしょうか?」
「さぁ…?私も見たことが無いな…」
翔鶴とグラーフが互いに首を傾げる、2体が発艦させた艦戦は“烈風改”、現在開発されている艦戦の中で最強と言われている烈風をさらに強化したモノで、つい最近になって登場した最新式の艦上戦闘機だ。
しかし大鳳が発艦させた艦戦は翔鶴もグラーフも見たことのない機体だった、それは観客席にいる他の空母艦娘も同じようで、皆首を傾げていた。
「おそらく相当古い機体だな、性能も低いだろうから恐れる必要はない」
そう言って安心するグラーフだが…
「えっ…?」
「嘘…だろ…!?」
その数十秒後、翔鶴とグラーフは目を剥く事になった、何せ正規空母2体の発艦させた大量の艦載機が、1体の装甲空母の艦戦によって9割が落とされてしまったのだから…。
「こっちは最強の烈風改を積んでるんだぞ!?それに発艦させた数もこちらが多い!」
「何なんですかあの艦戦は…!?」
2体がひたすら驚いていると、大鳳はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「これが私の“旧式”艦上戦闘機…“震電改”の実力です」
次回「最強の旧式」
イベントに向けて電探の開発に勤しんでいます(索敵値的な目的で)。