艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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最近長門の建造に成功しました。

それはいいけど早く比叡来てください(切実)。


第14話「暁の場合8」

 

「そんな…私、どうなるの?」

 

 

暁が縋るような目で海原を見つめる、この状態の暁に事実を告げるのは酷な話だが、ごまかしてどうにかなる問題でもない。

 

 

「…一応舞浜鎮守府に帰ることは不可能ではない、でもその場合はその深海棲艦の“名残”を隠して生きていかなければいけない」

 

 

「…それは…」

 

 

『無理』だと暁は頭の中で断言した、服を着ていればバレずに過ごすことは出来るが修理ドックに入れば必ず服を脱ぐことになるし、戦闘中に被弾して服が破れようモノならそれこそバレる。

 

 

「それともう一つ、お前が吹雪やハチのように混血艦(ハーフ)になったのであれば、今のお前には深海棲艦と会話できる能力があるはずだ」

 

 

「私が、深海棲艦と…!?」

 

 

海原の言葉に暁は目を丸くする。

 

 

「まだ確定した訳じゃない、でももしその状態で深海棲艦化した艦娘にであったら、お前はかつての仲間をもう一度殺す事になる」

 

 

「っ!!」

 

 

暁はビクッと身体を震わせる、深海棲艦となって苦しんでいても、それで助けを求めても誰にも声は届かない、そんな中…自分だけがそれを分かって、でも何も出来ずに轟沈める事しか出来ないとしたら…。

 

 

「あ…あぁ…」

 

 

暁は顔面蒼白になって小刻みに震えていた、もし本当にそんな状況になれば間違いなく自分は発狂してしまうだろう。

 

 

「今俺が言ったことはあくまでも可能性の話だ、もしかしたら普通に艦娘として生活出来るかもしれない、でもぶっちゃけ出たとこ勝負だな」

 

 

海原にそう言われて暁は絶望的な顔をして俯いた、海原の言った可能性は多分的中する、吹雪やハチの例を見ればそれは暁でも分かる、たとえ普通に艦娘として過ごせたとしても深海棲艦の“名残”や一度轟沈んでいるという過去のせいで後ろ指を指されるだろう。

 

 

「…海原司令官、聞いてもいいかい?」

 

 

「何だ?」

 

 

提督室に重苦しい空気が流れ始めた頃、響がそれを破って声を出す。

 

 

「もし私たちが、暁を台場鎮守府(ここ)に置いてほしいって言ったら、どうする?」

 

 

「えっ…?」

 

 

「ちょっ…響!?」

 

 

「何を言うのですか!?」

 

 

電と雷が目を剥いて響に噛みつくが、響はそれを無視して海原を見つめる。

 

 

「もちろんその時は暁を台場鎮守府の一員として歓迎しよう、ここなら混血艦の艦娘でも気兼ねなく過ごせるし、うちでは艦娘の深海棲艦化を調べているから暁のような経験者が力を貸してくれればこちらとしても心強い」

 

 

「ふむ、そうか…」

 

 

「ちょっと…響…?」

 

 

「あんたまさか…暁を見捨てるっていうの?」

 

 

電と雷が響を問い詰めるが、何かを考え込むような顔をしている響はそれ以降一切口を開かなかった。

 

 

「俺はこの件に関しては何も強制はしない、暁を連れて帰るのもここに置くのもお前たち次第だ、だからよく考えて…お前たちが後悔しない選択をしてくれ」

 

 

海原はそう言うと提督室を出て行った。

 

 

「暁、これを…」

 

 

海原が退室すると、吹雪が一枚の書類を暁に手渡す。

 

 

「…これは?」

 

 

「台場鎮守府の着任志願書です、もしここに残るならこれを書いてください、もちろんそのまま捨ててしまっても構いません」

 

 

吹雪は志願書を暁に渡すとハチを連れて提督室を後にする。

 

 

残された第6駆逐隊は、各々の思いを抱えたまま渡された志願書を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「あの言い方はキツかったんじゃないですか?」

 

 

鎮守府の食堂で夕食の準備をしている吹雪が咎めるように言う。

 

 

「…自覚はしているよ」

 

 

海原は机に頬杖をついてため息混じりに答える。

 

 

「でも暁をどうするかは俺が決める事じゃない、そりゃ向こうに戻って辛い目に遭うくらいなら台場に来てもらいたいけど、全員が納得した上で来てもわらなきゃ意味が無いんだ、だからあいつらでよく話し合って決めるべきだ」

 

 

「それを直接言ってあげればいいのに、提督ってば意外と不器用?」

 

 

食事が乗ったトレーを海原のテーブルに運んでいるハチが茶化すように言う。

 

 

「…うっせ」

 

 

海原は恥ずかしそうに顔を背けた。

 

 

 

 

 

「………はぁ」

 

 

暁は響たちにあてがわれた部屋に戻った後、志願書を見つめながら考えにふけっていた、舞浜に戻るか、それとも台場の一員になるか、どうすればいいのかと自問自答を続ける。

 

 

「大丈夫?」

 

 

もう1時間以上考え続けている暁を見て雷は心配になって声をかける。

 

 

「雷、私どうすればいい?」

 

 

頭の中が煮詰まってきた暁は雷に助けを求める。

 

 

「それは暁自身が決めることだよ」

 

 

すると、響がベッドから下りてきて暁に言う。

 

 

「私が…?」

 

 

「うん、本音を言えば私たちは暁には舞浜に来て欲しい、でもそれで暁が辛い思いをするなら私たちは諦める」

 

 

「響…」

 

 

「私も最初は暁には絶対帰ってきてほしかったけど、暁が楽しいって思える方がいいから…」

 

 

「雷…」

 

 

「い、電も…!」

 

 

今度は電がベッドの上段(台場の艦娘部屋は二段ベッド)からひょっこり顔をだす。

 

 

「電も、暁が幸せになるのが一番だと思うのです、二度と会えなくなるわけじゃなくなるし、それなら暁の思うように進んでほしいのです」

 

 

「電…」

 

 

自分の事を思ってくれている妹たちを見て暁は涙を流す。

 

 

「だから暁、自分の信じた選択を、自分の思うように選んで欲しい、私たちは何があっても暁の見方だから」

 

 

 

 

 

「…うん」

 

 

 

 

 

 

響のその言葉を聞き、暁は何かを決意したように頷いた。

 

 

 

 

 

 

「結果は出たかい?」

 

 

場所は変わり提督室、海原は決意を固めた目をしている暁を見てその答えを問う。

 

 

「はい」

 

 

暁は力強く頷くと、ポケットから取り出した紙を海原に差し出す。

 

 

 

「私、駆逐艦暁は、台場鎮守府への着任を志願いたします!」

 

 

そう宣言する暁の目には、一点の曇りもない決意の色が浮かんでいた。




戦艦レシピを回す。



「帰国子女の金剛デース!」



「高速戦艦榛名着任しました!」


…違う、君たちじゃないんだ。

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