艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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カスガダマ沖海戦ですが、大破撤退が続いております。

一歩目のル級flagshipの攻撃で蒼龍が大破で撤退、ほぼダメージなしで来たのに三歩目のヲ級flagshipの空撃で三日月が大破し撤退…など。

特に蒼龍は一度大破になると鋼材が三桁吹き飛ぶので勘弁願いたい所。


第136話「大演習祭16」

「まさか正規空母を2体も戦闘不能にするなんてね、それも白兵戦で、あなたたちを少し見くびってたわ」

 

 

「そう言ってもらえると嬉しいのですよ」

 

 

翔鶴とグラーフが戦闘不能になり、篝と戦っていた陸奥は若干の焦りを感じていた、こちらの航空戦力が全滅してしまったのはかなりの痛手だ、対して台場の装甲空母は未だ健在、先程から艦戦しか発艦させていないのを見ると攻撃機は積んでいないようだが、それだけで攻撃機が無いと決めつけるのは早い。

 

 

「…あの装甲空母も早いうちに倒した方がいいわね」

 

「行かせると思いますか?大鳳さんを倒すなら、先に私の相手を頼むのですよ」

 

 

早々にターゲットを大鳳に切り替えようと思ったが、目の前では篝が行く手を阻んでいる。

 

 

「悪いけど、さっさと倒させてもらうわよ!」

 

 

「こちらもさっさと倒れるつもりはありません!」

 

 

陸奥は篝に主砲を向けて容赦ない一撃を撃ち出す、しかし篝は駆逐艦の持ち味であるスピードを生かしてかわす、そしてクレイモアを取り出すと一直線に突進してきた。

 

 

「やば…!」

 

 

陸奥は慌てて次砲を撃とうとするが、今撃った砲撃の反動がまだ残っているので無理だった、戦艦の砲撃は威力こそ高いものの撃ったときの反動が大きいので連射が出来ない、駆逐艦の主砲をピストルとするなら戦艦の主砲はバズーカだ、反動が大きい分外した時の隙も大きい。

 

 

陸奥はあっという間に距離を詰められ、クレイモアによる袈裟斬りを食らう。

 

 

「くっ…!」

 

 

鋭い痛みとともに陸奥の耐久値が大きく減る、そのダメージは駆逐艦の主砲を大きく上回るものであった。

 

 

続けて攻撃を行おうとした篝だが、反動から解放された陸奥が篝に砲口を向ける。

 

 

篝は一瞬面食らった顔をしたが、すぐに現状打破のために行動に移った、パイルバンカーの深海棲器…フレイム・スピアーを左腕に装着すると、スパイクを砲身に対して斜めに当たるように射出する。

 

 

「っ!?」

 

 

ものすごい勢いでスパイクをぶつけられた砲身は篝への軌道からズレる。

 

 

その瞬間砲撃が行われるが、弾丸は篝を掠めて何もない方向へと飛んでいく、おまけに篝自身も砲身を撃った反動で勢い良く後ろに移動し、緊急回避も同時にやってのけた。

 

 

「なんて戦法…!」

 

 

陸奥が目を丸くして驚く、あの一瞬でこんな方法を思いつくなんて、まるで鍛えられた戦士のようだ。

 

 

しかし篝はただかわすだけでは終わらなかった、右手に鎖鎌を持つとそれを陸奥に飛ばして胴体に巻き付ける、鎌の部分は取り外しているので攻撃力は無いに等しい状態だが、篝の目的は別にあった。

 

 

「何これ…!?」

 

 

いきなり鎖を巻かれた陸奥は当然困惑するが、篝はそれを無視して鎖を手繰り寄せて陸奥に接近、身体が密着しそうなほど近付いた。

 

 

(何をするつもりなの!?)

 

 

引き離したいが鎖で繋がれているので無理、砲撃しようにも砲身よりも手前にいるので無理、出来たとしてもこう距離が近くては自分も巻き添えでダメージを受けてしまう。

 

 

篝はフレイム・スピアーの発熱装置を起動させ、温度をMAXの1000℃まで上げる、以前は上限が700℃だったが、明石に改良してもらったのだ。

 

 

超高熱になったフレイム・スピアーを陸奥に向けると、その鳩尾に向けて容赦なく撃ち出す。

 

 

「がぎゃあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

陸奥の身体に灼熱のスパイクが超高速で突き刺さり、陸奥の肋骨が粉々になる、しかも鎖で繋がれているので吹き飛ぶこともなく、その場でスパイクが骨を砕き肌を焼き続けながら陸奥の耐久値をガリガリ削っていく。

 

 

「あ……!が……!?ぎ……!!」

 

 

艤装の加護のおかげで身体を貫く事は無かったが、徐々に加護がスパイクのダメージに耐えられなくなってきており、陸奥の皮膚が焼け爛れはじめる。

 

 

その時、陸奥の戦闘不能を警告するアラートが艤装から鳴り響く、それを聞いた篝はフレイム・スピアーを陸奥から離して鎖を解くと、そのまま腹を蹴飛ばして仰向けに倒す。

 

 

陸奥の肋骨はほとんどが粉々になって肺や内臓に食い込んでいた、幸い心臓は傷ついていなかったが、胸には目に見える程のへこみが出来上がっている、皮膚は火傷で爛れ一部が壊死していた。

 

 

「…ば………け……も…………の」

 

 

まともに呼吸も出来ない陸奥がようやく口にしたのは、その4文字だった。

 

 

「…ごめんなさい、本当はこんな残酷な事はしたくないんです」

 

 

篝は陸奥のもとへ駆け寄ると優しく語りかけるように言う。

 

 

「でも、この試合に負けると私たちは雷撃処分で殺されてしまうんです、だからどんな手を使ってでも勝たなくてはいけない、分かってください…」

 

 

篝の言葉を聞いた陸奥は何かを言おうとしたが、そのまま意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正規空母を倒した暁と三日月が次に標的にしたのはビスマルクと神忌だ、この調子で相手の戦力を封じていこうと考えていた暁たちだったが…

 

 

「魚雷発射!」

 

ビスマルクが魚雷を扇状に発射、ビスマルクが雷撃可能な戦艦だという事を忘れていたので暁と三日月は慌てて主砲で魚雷を狙い撃ち、当たる前に誘爆させる。

 

 

爆発と同時に水柱が上がるが、暁たちはそれを無視して突っ切る。

 

 

「かかったわね」

 

 

するとそこには、主砲をこちらに向けて構えているビスマルクと神忌の姿があった。

 

 

刹那、凄まじい衝撃が2体を襲い、暁たちは勢い良く後ろに飛んでいく。

 

 

「調子に乗ったツケよ、たっぷりと身体で味わいなさい」

 

 

ビスマルクと神忌はこれでもかと言うほどのドヤ顔で暁たちの耐久値を見るが…

 

 

 

「えっ…!?」

 

 

「嘘…!?」

 

 

暁と三日月の耐久値は、戦闘不能になるギリギリ寸前の所で持ちこたえていた。

 

 

「痛たたたた…やっぱり戦艦の砲撃は効くわね、三日月さん、大丈夫?」

 

 

「はい、左肩の骨が砕けた程度で済みました、暁さんこそ大丈夫なんですか?」

 

 

「当たり前じゃない、右腕の骨が折れたくらいよ」

 

 

おおよそ軽傷とは思えない内容の会話をしながら暁たちはフラフラと立ち上がる。

 

 

「何で戦艦の砲撃を食らって耐えられるのよ…!」

 

 

 

「っ!!それは…!?」

 

 

ビスマルクは目を剥いて驚いていたが、神忌が暁たちの服を見てその理由に気付いた、2体の着ていた服は砲撃により焼け落ちてしまったのだが、その服の下には深海棲艦のような黒色の甲冑のようなモノを着ていたのだ。

 

 

「深海棲器“防御装甲(プロテクトアーマー)”、明石さんの深海棲器製造技術を結集させた特注品の鎧のおかげよ…!」

 

 

そう言いながら口の端から血を流してニタリと嗤う暁たちに、ビスマルクと神忌はただただ戦慄していた。




次回「狂イ乱レル乙女」

台場が押してますが、そう長くは続きません。

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