艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

143 / 231
今回の話はいつも以上にご都合主義が強くなっていますので、少し描写や設定がおかしな事になっているかもしれませんが許してください。

イベントに彩雲が二つ以上必要だと運営Twitterに書いてあったのですが、ゲーム始めたばかりの頃に出たひとつしか持っていないのでピンチです。


第138話「大演習祭18」

もう何度目になるか分からない虚像天体(プラネタリウム)の世界、その中で吹雪と裏吹雪は戦っていた、今日こそは決着をつける、その一心で吹雪は得物を裏吹雪に向ける。

 

 

『そんな攻撃じゃ私には勝てないわよ!』

 

 

裏吹雪がナギナタを使って果敢に攻めてくる、それに対して吹雪は太刀を使って裏吹雪の攻撃を受け流しつつ攻めに転じる。

 

 

『…へぇ、随分と腕を上げたじゃない、この前は迷いまくっている目をしていたけど、今は何かが吹っ切れたような目になってる、そんなに私を消したいみたいね』

 

 

裏吹雪はどこか自嘲めいたように嗤うと、攻めをさらに激しくする。

 

 

「違うよ、確かに前はこの戦いに勝ってあなたを消そうとしたけど、今は違う」

 

 

 

「だって私、あなたの気持ちが分かったから」

 

 

『っ!?』

 

 

吹雪がそう言った瞬間、裏吹雪は目を見開いて一瞬だが硬直する、その隙を吹雪は見逃さなかった。

 

 

「そりゃ!」

 

 

吹雪は足掛けを使って裏吹雪を転ばせ、仰向けの体勢にさせる、そこへさらに裏吹雪の腰元に乗っかり、馬乗りの体勢になる。

 

 

『ぐほっ!!』

 

 

思い切り背中を打ち付けた裏吹雪は肺の中の空気をしこたま吐き出し、目を回しそうになる、反撃に移ろうと上半身を上げようとしたが…

 

 

「チェックメイトだよ」

 

 

吹雪がナギナタを裏吹雪の首筋に突きつけていた。

 

 

『…参ったわ、降参よ』

 

 

裏吹雪は自らの敗北を認め、得物を手放した。

 

『それで吹雪、今のは…』

 

 

「うん、あなたのこと…思い出した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は轟沈したときに深海棲艦によって深海棲艦として蘇生させられた、あなたはその時に生まれた深海棲艦としての別人格…だよね」

 

 

 

 

 

 

「海原さん!吹雪が…!」

 

 

瑞鶴があわてた様子で海原に言う、吹雪が武蔵の砲撃で吹き飛ばされて気絶してしまった、これには瑞鶴たちも驚きを隠せない。

 

 

「…確かに少しヤバいかもな、でもまだ試合は終わっちゃいない、演習は吹雪の負けを認めてないんだ、最後の最後まで信じて構えてる事しか俺には出来ない」

 

 

海原はそう言って余裕そうにしているが、それはただの虚勢だ、本当はこのまま負けてしまうのでは、また部下を失ってしまうのではと不安で仕方がない、しかし自分は吹雪たちの提督だ、部下の勝利を信じて見守るのが自分の仕事であり使命である。

 

 

「でも、ちょっとくらいは行動を起こさないとな」

 

 

海原はそう言っておもむろに立ち上がると、観客席の壁まで進んで手すりを掴む。

 

 

「海原さん…?」

 

 

首を傾げる瑞鶴たちの視線など意に介さず、海原は大きく息を吸い込むと…

 

 

「吹雪いいいいいいぃぃぃぃ!!!!!負けんじゃねええええぇぇぇぞおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 

海原の叫びが、演習場に響き渡る。

 

 

 

 

 

『思い出してくれたのね、私のこと』

 

 

裏吹雪はどこか嬉しそうな顔をして言う。

 

 

「うん、でも最初はそれを認めるのが怖かった、認めたら、今度こそ私は深海棲艦になっちゃうんじゃないかって考えたら恐ろしかった…」

 

 

『だから、私を消して艦娘に戻ろうとしたのね』

 

 

裏吹雪がそう言うと、吹雪は頷いてそれを肯定する。

 

 

『私は深海棲艦の手によって生み出され、気がついたときにはあなたの中にいた、目的も何も与えられなかった私はあなたと共に生きていこうとしたけど、あなたの心はずっと頑なに私を拒絶して、私の存在を認めてくれなかった、あなたと戦って勝てば、強さを証明すれば受け入れてもらえるかと思ったけど、結局勝てなかった』

 

 

裏吹雪は諦めたような表情で吹雪に言う。

 

 

『さぁ、トドメをさしなさい、それで私は消滅するわ、あなたが深海棲艦であることは変えられないけど、私に怯えることなく生きていけるわよ』

 

 

裏吹雪は両手を広げて降参の姿勢をとるが、吹雪は構えたナギナタを下げ、裏吹雪からどく。

 

 

『…何のつもり?』

 

 

「言ったでしょ、あなたの気持ちが分かるって、人格は別でもあなたは私の一部なんだから、あなたは本当は消えたくないんでしょ?」

 

 

『………』

 

 

吹雪の問い掛けに、裏吹雪は何も言わずに視線を逸らす。

 

 

『…知った風な口を利かないで、確かに消えるのは嫌よ、いくら人格だけの存在でも消えるのは…死ぬのは怖い、でも私には行くところも帰るところも生きる目的も理由も何もない、私の中はがらんどうなのよ、それにあなたは私を拒絶した、そんな私に居場所なんてない』

 

 

裏吹雪は目尻に涙を溜めながら絞り出すような声で言う。

 

 

「じゃあさ、このまま私と一緒に生きるっていうのはどう?」

 

 

 

『…えっ?』

 

 

吹雪のその言葉に、裏吹雪は息をするのも忘れて呆けた顔をする。

 

 

『あなた、いったい何を…』

 

 

「確かに私はあなたが怖かったからずっと拒絶してきた、でもこれまであなたと話してようやく分かったんだ、あなたのことも、この深海棲艦の身体のことも、全部ひっくるめて私の一部で、これからも否定しようが無いって」

 

 

『吹雪…』

 

 

「だから私はあなたを受け入れる、だってあなたは吹雪(わたし)だもん」

 

 

吹雪は笑いながらそう裏吹雪に言った。

 

 

『…うぐ…ひっぐ…』

 

 

裏吹雪は嗚咽を漏らして泣きじゃくりながら吹雪に抱き付いた、ようやく認めてもらえた、ようやく受け入れてもらえた、何もない自分にようやく居場所をもらえた、それだけで嬉しくてたまらなかった。

 

 

 

『ありがとう、吹雪』

 

 

するとその時、裏吹雪の身体に変化が訪れた、さっきまで吹雪と全く同じ姿をしていた裏吹雪だが、その皮膚が、服が、髪が、まるでメッキが剥がれていくように消えていき、その内側から別の姿の裏吹雪が現れる。

 

 

白い髪に黒い肌、そして青と金のオッドアイ…あの日吹雪が反転したときと同じ姿になっていた

 

 

『これが私の本当の姿なの、吹雪と話しやすいように姿を変えてたんだ』

 

 

「ずいぶんと器用なこと出来るんだね…」

 

 

その様子に驚いた様子の吹雪だったが、すぐに別の驚きがやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『吹雪いいいいいいぃぃぃぃ!!!!!負けんじゃねええええぇぇぇぞおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

虚像天体(プラネタリウム)の夜空の果てから、海原の声が聞こえてきたのだ。

 

 

『…呼ばれてるね』

 

 

「そうだね、早く戻って決着をつけないと」

 

 

そう言って吹雪が立ち上がると、裏吹雪に向けて手を差し出す。

 

 

『?』

 

 

その行動の意図が分からずに裏吹雪は首を傾げる。

 

 

「言ったでしょ、あなたを受け入れるって、一緒に生きるって、だから一緒に戻ろう?」

 

 

吹雪のその言葉で全てを察した裏吹雪は、少し照れくさそうに吹雪の手を取って立ち上がる。

 

 

『…ねぇ吹雪、戻る前に一つお願いがあるんだ』

 

 

「お願い?」

 

 

『私に…名前を付けてほしいの』

 

 

「名前を…?」

 

 

裏吹雪の予想外の内容のお願いに吹雪は思わずキョトンとしてしまう。

 

 

『どっちも吹雪じゃややこしいでしょ、それと私は吹雪の別人格だから吹雪なんだけど、私もちゃんとした意思と人格を持ったひとつの存在なんだっていう証がほしいの、だからお願い、私に名前を付けて』

 

 

「…うん、分かった」

 

 

吹雪は少しの間考えた後、裏吹雪にその名前を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“リーザ”、それがあなたの名前だよ」

 

 

『リーザ…リーザ…うん!気に入ったよ、ありがとう!』

 

 

裏吹雪…リーザは嬉しそうに笑うと、おもむろに吹雪の手を握る。

 

 

『私の名前はリーザ、これからは吹雪と共に生きて、吹雪を守っていくよ、これからよろしくね』

 

 

「うん、こちらこそよろしく、リーザ」

 

 

吹雪もリーザの手を握り返す、その会話を最後に、吹雪とリーザは虚像天体(プラネタリウム)の世界から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした大鳳、それで終わりか?」

 

 

大鳳は息を弾ませて眼前の武蔵を睨む、気絶してしまった吹雪を庇いながら戦いを続けているが、駆逐艦よりもスピードが出ない大鳳では白兵戦には向いておらず、結果掠り傷を積み重ねて中破になっている。

 

 

さてどうしたものかと大鳳が考えていると…

 

 

 

「な、何だ!?」

 

 

今まで気絶していた吹雪が突然黒いオーラに包まれ、髪と肌の色が変わっていく。

 

 

「まさか、反転…!?」

 

 

他の台場メンバーから話だけで聞いていた反転だが、まさかここで起きるとは思っていなかった。

 

 

それだけでは終わらず、反転と同時に無くなりかけていた吹雪の耐久値のゲージが一気にMAXまで回復する。

 

 

「ど、どうなっているんだ…!?」

 

 

困惑する武蔵をよそに吹雪はゆっくりと立ち上がり、目の前の敵…武蔵を見据える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪型駆逐艦1番艦“吹雪”…」

 

 

 

 

『吹雪級駆逐棲艦1番艦“リーザ”…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『抜錨します!!』」

 

 

 

 

 

 

 

反撃はまだ終わらない、終わらせない。




次回「鉄翼の鳳凰」

吹雪とリーザのシーンは色々悩みまくってこの形になりました、もうちょっと上手く書きたかったなぁ…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。