艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
レ級のいるBマスは敵が輪形陣なので致命傷を食らう事はあまりないんですが、フラッグマスの手前にいるル級flagship×2体の攻撃で鳥海と赤城が大破祭りで撤退するハメになります(泣
海原が大声で叫んだことにより周囲が静まり返る、いったい何事だと野次馬や海軍警察隊員、曙でさえも海原の方を見ていた。
「さっきから黙って聞いてりゃ曙ばっか悪者にして、おかしいだろ!」
「何がおかしいんだ?コイツはすでにふたりの人間を殺している、殺人罪は免れないぞ」
「そんな事は理解してる!俺が言いたいのは、そもそも新潟駐屯基地の司令官が曙を民間人に密売しなけりゃ曙が殺人をするような状況にもならなかったってことだ!元凶である駐屯基地の司令官にだって曙同等の、それ以上の罪があるはずだぞ!」
海原の言うことには一理ある、確かに曙の罪は決して軽くはない、しかし曙がそんな行動をとってしまったのは新潟駐屯基地の司令官が曙と茜を民間人に密売したことがそもそもの原因であり元凶だ、その罪は重いと言わざるをえない、早い話が曙は加害者であると同時に被害者なのだ。
「それに曙は仲間である茜を人質に捕られてオマケに爆弾で脅迫されてた、つまり曙は自分と茜の命を守るために不本意に殺人を犯したってことだ、情状酌量の余地だってあるだろ!」
海原の発言に榊原や吹雪たちがその通りだと頷く、海原の言うとおり曙が殺人を犯した背景を鑑みれば曙にも同情出来る点は存在し、情状酌量の余地は十分にある。
「情状酌量だ?人間でもない艦娘のどこに情をかける必要がある?」
「…は?」
隊長の発言に海原は言葉を失ってしまった、こいつは今何て言った?。
「艦娘は人間とは認められていないし人権なんてモノもない、深海棲艦と戦うためだけの兵器だ、そんな下等の存在に情だの何だの…バカバカしい」
「何だとテメェ!!もういっぺん言ってみろ!」
海原は激昂したように叫ぶと隊長の胸ぐらを掴む。
「何をそんなに怒る必要がある?俺は何か間違ったことを言ったか?」
「あぁ間違ってるよ!確かに艦娘は人間じゃないし人権も無い、深海棲艦と戦うための兵器だってその考えも別に否定はしない!」
意外にも海原が隊長の発言のほとんどの部分を肯定したため、隊長や周りの隊員や野次馬が呆けた顔をする、しかし海原はその後に“でもな”、と付け加えると…
「こいつら艦娘にだって人間と同じように意思があって、人格があって、心があるんだ!嬉しいときは笑って、悲しいときには泣く、それが人間じゃないから、人権が無いからってだけでそれらが全部無視されていいわけねぇだろ!」
海原はここにいるほぼ全員に聞こえるほどの声量で隊長に向かって言う、人間の死体から作られた艦娘にも人間的感情は存在する、それらは当然尊重されるべきモノであり、人間の都合で蔑ろにされるべきではない。
「それは違うな、そもそも人間でもない化け物が人間らしい感情を持っている方がおかしいんだよ、感情というモノは人間が持っているからこそ価値がある、化け物が感情を持っても邪魔なだけだ」
「そんなに人間であることが偉いのかよ?その人間を深海棲艦の脅威から守ってるのは艦娘なんだぞ!あいつらが普段どんな気持ちで戦ってるのか考えたことがあるのか!?常に死線を彷徨いながら傷つき悲しんでるんだぞ!」
「それが艦娘の作られた目的であり役目だろう?艦娘なんて所詮は人間を守るために死んでいく兵器、そんな使い捨ての化け物に心があるだのなんだの…くだらないんだよ!」
「っ!」
海原は隊長の顔面を殴りつけようと拳を振り上げたが、すんでのところで吹雪が止めに入る。
「ダメですよ司令官、ここで殴ってしまっては司令官の負けです」
『それにこんな奴殴る価値も無いわ、司令官の手が無駄に汚れるだけよ』
吹雪とリーザに諭された海原は隊長を掴んでいた手を離し、少し乱暴に突き飛ばす。
「とんだ青二才だな、俺は忙しいから行かせてもらうぞ、こんな深海棲艦と戦うための化け物に情を移すような狂人と話しても時間の無駄だ」
海原の言葉など全く心に響いていない隊長は一方的に話を打ち切るとどこかへ行ってしまった。
「…クソが…!」
海原の腹のムカムカは茜が到着するまで治まることはなかった。
◇
「茜!無事だった!?怪我はない!?」
「大丈夫だよ、首輪付けられて縛られてた事以外は特に何もされてないし」
それから5分後、茜を乗せた海軍警察の車が到着した、茜が下りて来るなり曙は茜のもとへ駆け寄り、無事であった事を喜んでいた、発見されたときの茜は
「おい化け者共、無駄話はいいからさっさと車に乗れ、変な真似したら叩き潰すからな」
そんな感動の再会の余韻にひたる暇もなく、隊長の鼻につく一言で2体は車に乗せられる。
「…ねぇ」
車に乗る直前、曙は海原の方をチラリと見て…
「ありがとう」
目尻に涙を浮かべた笑顔で、確かにそう言った。
曙と茜は車に乗ると、そのまま海軍警察署に連行されていった。
「俺は、何も出来なかったよ」
とてもやりきれないといった感情を持ちながら、海原はそう呟いた。
◇
海軍警察が撤収作業を終えた後、そこにはいつも通りの有楽町駅の光景が広がっていた、曙に心無い言葉や石を投げた野次馬たちも雑踏の中に消えていき、ついさっきまでの騒動など初めから無かったかのように人々が歩いていく。
「じゃあ海原くん、俺も造船所に戻るよ、もしかしたら取り調べに付き合わなきゃいけないかもだけどね」
「見苦しい所を見せてしまってすみませんでした」
海原は榊原に頭を下げて謝罪する。
「気にしなくていい、俺も海原くんと同じ気持ちだったからね、むしろよく言ってくれたと思ったよ」
そう言って榊原は笑うと、あの隊長の事について少しだけ聞くことが出来た、どうやらあの隊長の男は艦娘に対しては“深海棲艦と闘うためのただの兵器”としか考えておらず、艦娘のもつ人格や感情に関しては否定的な考えの持ち主のようだ。
「曙と茜の処分が少しでも軽くなるように俺の方でも努力してみるよ、こんな理由で艦娘を解体したくはないからね」
「ありがとうございます、どうか曙たちをよろしくお願いします」
そう言って海原は榊原と別れると、吹雪たちを引き連れて台場鎮守府へと帰って行く。
次回「嘘つき」
この話を書いてるとき、どこぞのラビット