艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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冬イベントクリアできませんでした…ボスを最終形態にしたあとは全て夜戦で双子棲姫を引っ張り出せず、そのままイベントを終えてしまいました…。

ちなみにイベント終わりにキス島行ったらあっさりクリア出来ました、今は北方海域艦隊決戦の攻略に取りかかっています。


第150話「夕月の場合9」

夕月は主砲を構えて駆逐戦車に向かって突撃する、陸上での戦闘経験は皆無なので、そこはぶっつけ本番だ。

 

 

先に攻撃したのは夕月、射出された弾丸が駆逐戦車に命中するが、ほとんどダメージは入っていない。

 

 

『こいつ、既存の駆逐棲艦より強いぞ…!』

 

 

最初の一撃で格の違いを理解した夕月は一度距離を取り、反撃を食らわないようにしながら砲撃を行う。

 

 

駆逐戦車が次弾装填を終えて弾丸を射出する、夕月はそれを軽い身のこなしでかわしていくが…

 

 

「うおっ!?」

 

 

そのうちの一発が倒れている海原の近くに着弾、海原はとっさに転がって事なきをえたが、背中の傷が刺激されたようで苦悶の表情を浮かべる。

 

 

『このままじゃ司令殿が危険だな…』

 

 

夕月は主砲を駆逐戦車に向けて撃ちつつ、グラウンドの方へと少しずつ移動していく。

 

 

『ほらどうした!?そんな豆鉄砲じゃ私は倒せないぞ!貴様も存外たいしたことないんだな!』

 

 

夕月の安い挑発文句に見事に乗った駆逐戦車は先ほどよりも速いスピードで夕月に迫ってくる。

 

 

『よし、これで司令殿と大鯨はとりあえず安全だな』

 

 

グラウンドの中心まで移動すると、夕月は駆逐戦車と向かい合って戦闘を再開、一応攻撃自体は当たっているがダメージは相変わらず小破未満(カスダメ)だ。

 

 

『このまま持久戦に持ち込むのは愚策だな…』

 

 

あいにく夕月の残弾も無限ではない、それは敵も同様だろうが、攻撃頻度は相手の方が少ないため弾切れを起こすとすれば間違いなくこちら側だろう。

 

 

『ならばこれなら…!』

 

 

夕月は発射管から魚雷を抜くとダーツの要領で駆逐戦車に向かってぶん投げる、主砲撃よりダメージは通っているが、それでも足りない。

 

 

『動きは鈍くなっているが、それでも足りないな…』

 

 

ひたすら攻撃するしかないな、と夕月はめげずに攻撃を再開するが、ここで予想外の事態になった。

 

 

『なっ…!?』

 

 

駆逐戦車が4本の足を器用に使い、大ジャンプを噛まして夕月と一気に距離を縮めてきた、以前川内に使ったのとほぼ同じ動きである。

 

 

『その巨体でその跳躍力は反則だろ…!』

 

 

距離を取ろうとした夕月だったが、そのまま駆逐戦車の前足から繰り出されるパンチに殴り飛ばされる。

 

 

『ごほぉ!』

 

 

夕月は大きく吹き飛ばされ、海原の近くに着地する。

 

 

「ゆ、夕月…!」

 

 

『大丈夫だ!私はまだやれる!必ず貴方を護ってみせる!』

 

 

聞こえないと分かっていても、夕月は海原の方を向いてそう言ってみせる、するとここで夕月は海原の腰元に護身用として持っていた脇差があるのに気付く。

 

 

『すまない司令殿、借りるぞ!』

 

 

夕月は脇差を腰元から抜き取ると、抜刀して駆逐戦車に向かっていく。

 

 

砲撃で駆逐戦車を牽制しつつ、夕月は駆逐戦車の攻撃をかわして距離を詰める。

 

 

『はあっ!』

 

 

夕月は駆逐戦車の左前足を脇差で思い切り斬りつける、駆逐戦車は悲痛なうめき声を上げて動きを止める、夕月は白兵戦をやったこともなければ刀すら持ったこともない、ましてや陸上での砲雷撃戦も初めてなので攻撃動作の全てが覚束ないが、それでも何とか戦えている。

 

 

『せいっ!せいっ!やあっ!とおっ!』

 

 

夕月は砲撃に剣撃を織り交ぜながら駆逐戦車を攻撃する、その甲斐あって駆逐戦車の体力をだいぶ削いだが、それでもまだ小破相当だろう。

 

 

『やはり練度(レベル)が足りないのか…!』

 

 

夕月の練度(レベル)は轟沈したときからずっと止まったまま、つまり改装練度(レベル)にも達していないのだ、既存の駆逐棲艦よりも性能が上がっている戦車と1対1(サシ)で殺り合っても夕月が不利なのは目に見えている。

 

 

『っ!?しまっ…!』

 

 

そして慣れない戦闘による疲労のせいなのか、夕月は足を取られて転んでしまった、それを見逃さなかった駆逐戦車は全ての主砲を夕月に向け、撃った。

 

 

『ぐああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!!』

 

 

至近距離から砲撃された夕月は大きく吹き飛ばされ地面を3バウンド、一気に大破相当のダメージを負う。

 

 

『ぐっ…!あぁ…!』

 

 

夕月は立ち上がろうとしたが、左足の骨が砕けて動くことが出来なかった。

 

 

ならばと刀を杖代わりにして生きている右足で立ち上がり、艤装の出力最大で砲撃をする、しかし大破していて艤装の能力がダウンしており、夕月自身の練度(レベル)も低いのでダメージはほぼゼロに近い。

 

 

そんな状態の夕月に脅威を感じなくなったのか、駆逐戦車は夕月の砲撃をものともせずに接近し、動けない夕月を前足で掴む。

 

 

『くそっ…!は、離せ…!』

 

 

そう言われて普通に離すわけもなく、夕月は思い切り駆逐戦車に投げ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

 

『があああああぁぁっ!!!!!』

 

 

全身を激しく打ち付けた夕月はさらに右腕と胸骨を骨折、完全に動けなくなってしまった。

 

 

『こ…このぉ…!』

 

 

夕月は殺意に満ちた目で駆逐戦車を睨み付けるが、当の駆逐戦車は全く気にしていない様子で夕月に砲を向ける。

 

 

『…ここまでか』

 

 

夕月が諦めかけたその時、小さな小石が駆逐戦車に投げつけられ、装甲に当たって弾かれる。

 

 

「おい駆逐戦車ァ!さっきから俺を無視してんじゃねぇ!こっちに来やがれってんだ!」

 

 

海原が痛む身体に鞭打って立ち上がり、駆逐戦車に石を投げていたのだ、もちろん夕月を守るための行動である。

 

 

海原の狙い通り駆逐戦車は狙いを夕月から海原に切り替えて近付いていく。

 

 

『お、おい待て!貴様の相手は私だぞ!私と戦え!』

 

 

夕月は必死に駆逐戦車に呼び掛けるが、駆逐戦車は戦闘不能の夕月など目もくれず海原に向かっていく。

 

 

『…護れないのか…?私じゃ司令殿を護れないのか…!?』

 

 

夕月は唇を噛み指先が手のひらに食い込むほど拳を握る、唇が切れて口の中で鉄の味がしたが、夕月はさらに噛む力を強める。

 

 

『止めろ…!止めてくれ!司令殿を、司令殿を殺さないでくれ!私はまだ何も司令殿に伝えていないんだ!自分の答えも、これからの自分の“道”も!何も!』

 

 

夕月は慟哭しながら駆逐戦車に訴えかけるが、それを無視して海原に砲を向けた、海原がダッシュで逃げたとしてもかわすのは難しいだろう。

 

 

『誰か…助けてくれ…!誰か助けてくれええええええぇぇ!!!!!!』

 

 

自身のプライドも何もかなぐり捨て、夕月は助けを求めた、ここは自分以外誰もいない、助けに来る者は誰もいない、それが分かっていても、夕月は叫んだ。

 

 

いよいよ駆逐戦車が砲撃を放とうとした時、その背後から何者かが砲撃を撃ち込んでそれを中断させた。

 

 

一体誰が、と夕月が砲撃が放たれた方へ首を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね、あんたのその“助けて”って言葉、しっかりと聞き届けたわよ」

 

 

そこには、海上戦闘を終えた暁たちと、駆逐戦車を片付けて暁たちと合流した吹雪たちがいた。




次回「道」

これが私の答えだ。

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