艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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chapter12「蛍編」連載開始、活動報告にて蛍の深海棲器も募集します。

第4艦隊解放で遠征艦隊雪月花【花組】が組めるようになり、雪月花隊の正式結成です。



○こぼれ話
夕月のイメージはブラック・ブレットの壬生朝霞。

和服ロリは至高なり。


第152話「蛍の場合1」

「は?艦娘の進呈?」

 

 

夕月が台場鎮守府に所属してから一週間がたった頃、大本営の鹿沼元帥補佐から“艦娘を台場鎮守府に送る”という内容の電話がかかってきた。

 

 

『演習で素晴らしい勝利を収めた台場へのささやかな褒美だ、戦力増強の足しにするがいい』

 

 

「…お前らが素直に褒めるなんて何か企んでるんじゃないのか?」

 

 

『お前は本当に失礼な奴だな、いくら演習とは言え上げた戦果に対する当然の賞与だ、大人しく受け取れ』

 

 

鹿沼が言うとちっともありがたみを感じないのだが、それはあえて言わないでおく。

 

 

「そういうことならありがたく受け取ろう、それでその艦娘はいつうちにやってくるんだ?」

 

 

『今日の昼頃だ、今からせいぜい歓迎の準備でもしておくんだな』

 

 

「は!?今日の昼!?」

 

 

海原は慌てて時計を見る、現在午前10時30分、昼頃に来るのであれば最短であと1時間半くらいしか無い。

 

 

「お前いつもいつも連絡が急なんだよ!もっと余裕を持って連絡よこせ!」

 

 

『ふん、台場がそんな事言える立場かよ、とにかく今日の昼頃に艦娘を1体台場に送る、確かに伝えたからな』

 

 

鹿沼はそれだけ言うとさっさと電話を切ってしまった。

 

 

「ったくあの野郎…しょうがない、吹雪たち集めて歓迎の準備しとくか」

 

 

海原は館内放送でDeep Sea Fleetのメンバー全員を呼び出して艦娘が来る旨を伝える。

 

 

「なるほど、大本営もようやく私たちの実力を認めたということですね」

 

 

「どうだろうな、あの大本営の事だ、何かろくでもないことを企んでいるかもしれない」

 

 

夕月が吹雪の発言を否定してそう言った。

 

 

「まぁ何にせよ、艦娘が来るなら迎える準備をしておかなきゃいけない、頼めるか?」

 

 

「お任せください!新任があっと驚くような歓迎会にしてみせます!」

 

 

吹雪たちは海原の頼みを快諾する。

 

 

「…といっても、明石さんの時もそうだったけどあまりやることって無いよね」

 

 

「そういえばそうだったわね、せいぜい垂れ幕作るくらいだったし…」

 

 

「おまけに艦娘化(ドロップ)艦娘に至っては軽い打ち上げ程度のモノで済ませちゃってたしね」

 

 

「全員で隠し芸とかでもやる?」

 

 

「そもそもあんた隠し芸持ってるの?」

 

 

「コマ回しで綱渡りが出来るよ」

 

 

「何に使うのよそれ…」

 

 

Deep Sea Fleet全員があーだこーだやっているのを眺めつつ海原はテレビを点ける、ちょうど午前のワイドショーをやっていた。

 

 

(…他に何か面白そうな番組は…)

 

 

海原はチャンネルを変えようとリモコンを手に取ったが…

 

 

『…それでは次の話題です、先日起きた艦娘が人を殺害するという事件の続報です』

 

 

「っ!?」

 

 

司会者の発言に驚いた海原はそのままリモコンを置く。

 

 

『事件を受け、世間一般では艦娘は危険極まりない存在だという認識が強くなり、海軍に対して艦娘の運用を止めるよう訴えるデモ活動が一部で行われています』

 

 

司会者のMCの後に、実際にデモ活動をしている人々の映像が流れた、そこには鎮守府や駐屯基地の門の前で“艦娘反対!”や“我々の安全を返せ!”などと書かれているプラカードを掲げて何やら騒いでいるようだ。

 

 

「…クソッタレが」

 

 

胸糞の悪くなる光景だと海原は思う、しかしチャンネルを変えようとは思わなかった、艦隊の指揮を預かる司令官として、こういった世情は知っておかなければいけない、世間で艦娘がどう思われているのか、どういう目で見られているのか、それを知った上で人々に艦娘への理解を広めていく必要がある、ただ頭ごなしに言ったところで人の心には何も響かないのだ。

 

 

気付けば映像はデモの様子からスタジオでのやりとりに切り替わっていた、そこには有名な政党の政治家や各方面の専門家、なぜか有名アイドルなどが自分の意見や見解などを言い合っている。

 

 

『艦娘というのは銃よりも簡単に人を殺せる非常に危険な兵器です、即刻使用を取りやめるべきだと思います』

 

 

『私もそれに賛成です、今こそ日本政府と海軍が一丸となって、艦娘よりも安全で人々が安心出来るような防衛策を考えなきゃいけない』

 

 

『皆さん論点がズレてきてませんか?さっきから人を殺せるだの危険だの言ってますけど、艦娘は本来深海棲艦と戦うための兵器ですよ?人殺しの道具じゃないんですからね』

 

 

『そもそも艦娘じゃないと深海棲艦に勝てないというのは本当なのか?既存の武器だけで倒せるんじゃないのか?』

 

 

『それが出来ないから艦娘が使われるようになったんでしょう』

 

 

『そもそもこんな事件が起きたのは件の艦娘がその力を悪用して殺人を犯したから起きたことだ、その艦娘だけを処分してしまえば済む話だろ?』

 

 

『悪用じゃないでしょ、仲間の艦娘を人質にとられて不本意に殺人を強要された、と聞いてますよ?』

 

 

『どうだか、その艦娘にもそんな目に遭うだけの落ち度があったんじゃないのか?自業自得ってとこだろ』

 

 

 

 

「…本当、好き勝手言ってくれるぜ」

 

 

画面の向こうにいる連中を眺めながら海原はそうぽつりと言う。

 

 

「何が艦娘よりも安全で安心な防衛策だ、艦娘が戦ってるのは殺るか殺られるかの戦場だぞ、そんな命の奪い合いに安心も安全も無いんだよ」

 

 

好き勝手な事を言っている出演者をある程度見て海原は確信した、この連中は艦娘のことを何も知らずに発言している。

 

 

「あんたらが政治活動出来るのも、アイドルとしてテレビで歌えるのも、こんなところでくだらない議論が出来るのも、艦娘たちがその裏で命を削って戦ってるからなんだけどな…」

 

 

その海原の言葉がテレビの出演者に届くことはもちろん無く、ただの独り言として虚空に消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時刻は昼過ぎ、台場鎮守府に届けられる艦娘を乗せた造船所の車がやってきた。

 

 

「お久しぶりです海原さん、艦娘のお届けに来ました、突然ですみません…」

 

 

「ありがとうございます、こちらも届くことをつい90分くらい前に聞かされてかなりドタバタしてましたよ~」

 

 

海原と風音はそう言って互いに笑うと、風音が車の荷台のドアを開ける。

 

 

「こちらが今回台場鎮守府に所属する艦娘です」

 

 

風音の言葉と共にその艦娘が下りてきた。

 

 

「っ!!お前は…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、クソ提督」

 

 

車から下りてきた艦娘は、綾波型駆逐艦8番艦の艦娘…曙だった。




次回「仲間は(カタキ)

沈む方が悪い。

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