艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
ブラウザー版は現在南方海域の珊瑚諸島沖海戦(5-2)を攻略中です、ゲージのシルエットが装甲空母姫…またお前か、カスガダマの再来ですね。
曙を受け取った海原は提督室で待っている吹雪たちに紹介すべく、曙を提督室に案内する。
「まさか進呈される艦娘がお前だったとはな」
「何よ、不満だっての?」
曙は不服そうにブスッとした態度で言う。
「そうじゃねぇよ、あの後お前がどうなったかが気になってたんだ、ひょっとしたら解体されたんじゃないかって思ってたけど、生きててくれて嬉しいよ」
「…いっそのこと解体された方がまだ楽だったわよ」
曙はどこかうんざりした様子で呟いた、あの後連行された曙と茜は海軍警察で取り調べを受けた、その後の海軍警察と軍上層部を交えた軍法会議での結果、茜はただの被害者ということで他の鎮守府への異動という判断が下された。
一方曙の処分については解体するか否かで意見が割れて相当もめたらしい、曙は殺人を犯した加害者であるが、それと同時に艦娘密売の被害者でもあるからだ。
何度も議論を重ねた結果、解体するのも始末が悪いからこの台場鎮守府に異動させて“島流し”扱いにする…という結果に落ち着いたのだそうだ。
当然曙と茜を民間人に密売した新潟駐屯基地司令官の
書いてしまえばこの程度で済んでしまうのだが、本当に大変だったのはこの後である、大本営での軍法会議が終わった後、曙と茜は身体検査のために造船所に送られることになったのだが、どこから聞きつけたのかマスコミや報道メディアの関係者が曙たちを出待ちしており、2体を質問責めにした。
人を殺したのは本当なのか、いくら友人が人質にされていたとはいえ殺人を犯すのはどうなのか、何か他に平和的解決方法があったのではないか、被害者遺族に対して何か言うことはないか…などと矢継ぎ早に質問を投げかける、ただでさえ心傷ついている曙たちにとって、傷口に塩を塗る行為以外の何物でもなかった。
そして何よりも曙を傷つけたのは、曙の“密売の被害者”である部分を無視し、完全な“黒”として曙を扱っている報道メディアの態度だった。
「どいつもこいつも根掘り葉掘り無神経に聞いてきて、本っ当にウザいったらありゃしない!」
「あいつらはそれが仕事だからな、でもお前の気持ちは分かるぞ、俺もああいう奴は嫌いだ」
「安い同情はやめてくれる?正直言って嬉しくない」
「安いって…俺はこれでも親身になってるつもりだぜ?」
「どうだか」
さっきからやたらと厳しい態度の曙に戸惑いを隠せない海原、もとからこういう性格なのだろうか?。
「まぁ取りあえず、うちの鎮守府に来たからにはお前も俺の大切な仲間だ、マスコミ連中に絡まれそうになったら俺が守ってやるから安心しとけ」
そう言って海原は曙をなだめるために頭を撫でようとする。
「っ!?いやぁっ!」
海原の手が曙の髪に触れようとした瞬間、曙の様子が一変した、海原の手に驚いたように身を震わせたかと思えば、急に短い叫び声をあげ、海原の手を思い切りはたいたのだ。
「っ!?曙…?」
そのあまりの変わりように海原は目を丸くするが、当の曙はそれどころではないようだった、視線はあちこちに泳ぎまくり、まるで目の前の海原に怯えるように身体を小刻みに震わせる。
「ど、どうしたんだ?撫でられるの、そんなに嫌だったか…?」
思い切り叩かれて少し痛む右手をさすりながら海原が聞く。
「そうよ!あんまり馴れ馴れしく触んないでよ!このクソ提督!」
曙は大声で怒鳴って海原の問いに答えた。
「…そうだよな、すまなかった」
海原は曙に謝罪する、普段吹雪たちとコミュニケーションを取るときは頭を撫でるの事は普通にあったが、そういうことを好まない艦娘もいるという事だ、今後は気をつけなければいけない。
「…怒ら…ないの…?私、今あんたの手はたいちゃったんだけど…」
「別にそんなことで怒んねえよ、それに今のは俺も悪かったしな」
そう言って海原は笑う、それを見た曙は驚いた顔をしていたが、何も言わずに海原について行く。
「…ごめんなさい」
曙の消え入りそうな声で呟いたが、それが海原に届くことは無かった。
◇
「…と言うわけで、今日から台場鎮守府に所属する事になった曙だ、仲良くしてやってくれ」
提督室に着いた海原は早速吹雪たちに曙を紹介する、その後に曙にも自己紹介をするよう促す。
「駆逐艦曙です、これからよろしくお願いします」
曙はそう言って敬礼をする。
「それじゃクソ提督、私はいつ戦闘に出られるのかしら?」
挨拶が終わるなり、曙は海原にそう聞いてきた。
「戦闘か?しばらくは出撃の予定は無いぞ、戦うことが好きなのか?」
「当然よ、だって私の目的は…」
「私の親友の艦娘…蛍を殺した深海棲艦への復讐なんだから」
次回「拒絶」
どっちつかずの半端モノのクセに!