艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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最近のゲームの解説書は電子タイプになっているモノが多いですが、解説書片手に操作を確認するタイプの自分にとっては弊害でしかなかったりします、特に携帯機(Vitaとか)だと一々ゲームを一時停止して解説書を開かなければいけないのでめんどくさかったり…

遠征用の駆逐艦にキラキラを付けるために最近は1-1によく出撃するのですが、初風と長波の大破率がぶっちぎりで高い、もうちょっと頑張ろうよ…。


第154話「蛍の場合3」

「復讐…?」

 

 

「そうよ、私の親友とも言える艦娘…蛍は深海棲艦に殺されたの、それを奪った深海棲艦が私は憎い!だから私はあいつらを根絶やしにする!深海棲艦に復讐するんだ!」

 

 

曙は激情したように声を荒げる。

 

 

「復讐…ね、それだけで突っ走ったら自分が死ぬぜ」

 

 

「望むところよ、深海棲艦に復讐出来るなら命だって惜しくないわ」

 

 

曙は依然強気な態度を崩さず、そう言ってのける。

 

 

「…そうか、吹雪、曙に鎮守府を案内してやれ」

 

 

「は、はい!分かりました!」

 

 

曙の態度には何も触れず話を終わらせた海原は、吹雪に鎮守府の案内を命令する。

 

 

「それじゃ曙、鎮守府を案内するから付いて来て」

 

 

「分かったわ」

 

 

吹雪と曙は先に提督室を後にする、それに続いて他の艦娘たちもぞろぞろと出て行った。

 

 

「…それで司令殿、曙に何も言わなかったのはどういうお考えがあってのことなんだ?」

 

 

「んー?何の話だ?」

 

 

ただ1体提督室に残った夕月の問いかけに海原はどこかおちゃらけたような口調で返す。

 

 

「とぼけなくてもいい、復讐心で身を縛る事がどれだけ危険で無謀で愚かな事だというのは司令殿が一番知っているはずだ、なのに曙には何も言わずにいた、司令殿の事だ、何かお考えがあっての事なのだろう?」

 

 

夕月はフッ…と笑いながら海原に言った、その察しの良さは流石旧室蘭組と言ったところか。

 

 

「確かに復讐心だけで自分を突き動かすのは危険だ、だがかつて俺がそうだったように、そういうのは周りが何を言っても本人は聞く耳を持たない、だから実際に経験で思い知らせた方がよく伝わるんだよ」

 

 

「なるほど、つまり曙をわざと危険にさらして身体に教え込むという訳だな、司令殿にこんなスパルタな一面があるとは驚きだ」

 

 

夕月は茶化すように海原に言った、それを受けた海原は気まずそうに苦笑する。

 

 

「人聞きの悪い言い方するなよ、それにこれは仮に曙が危険な目に遭うような事態になってもお前らが守ってくれるだろうという期待も込みなんだぜ?」

 

 

「モノは言いようとはよく言ったものだな、しかしそこまで信頼されていると考えれば悪い気はしないか」

 

 

「頼めるか?」

 

 

「何を当たり前のことを言っている、曙は何があろうと私たちが守る、司令殿は安心していてくれ」

 

 

「…ありがとう」

 

 

自信満々に宣言する夕月の頭を海原は優しく撫でる、それを夕月は心地良さそうに受け入れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、とりあえず主要な鎮守府の施設を案内していくよ、まずはここ」

 

 

一方こちらは吹雪と曙、吹雪が最初に案内したのは食堂だった。

 

 

「基本的にはここでご飯を食べるよ、ご飯はいつも大鯨さんが作ってるけど、他の艦娘が作ることもある」

 

 

「ふーん」

 

 

次に吹雪が案内したのは大浴場だ、入渠ドックも併設されており、それなりの広さを持っている。

 

 

「お湯は定期的に入れ替えてるけど、基本的にはいつでも入れるから好きなときに使っていいよ」

 

 

「ふーん、それで次は?」

 

 

「あとは曙の部屋だよ、こっちこっち」

 

 

最後に案内したのは曙の自室だ、位置で言えば夕月の隣になる。

 

 

「ここが曙の部屋だよ、レイアウトなんかは好きに弄っても構わないから、小物なんかのインテリアなんかは好きに買って置いていいけど、家具を新調したいときは一応司令官と相談してね」

 

 

「ふーん、分かったわ」

 

 

「ここまでで何か質問ある?」

 

 

「別に」

 

 

吹雪の問いに曙は素っ気ない態度で答える。

 

 

「それじゃあ曙の今後の予定は司令官と相談してこれから決めるから、それまでは好きに過ごしてていいよ、といってもここは基本的に暇なんだけど…」

 

 

吹雪は苦笑しながらそう言うと、再び提督室の方へと歩いていく。

 

 

「…お風呂、行こうかな」

 

 

残された曙は大浴場の方へと歩みを進めた。

 

 

 

 

「ふぅ…中々良い湯加減じゃない」

 

 

湯船に浸かりながら曙はそう呟くと、よく漫画などで見る片足を水面から出して伸ばすセレブっぽい仕草を真似する。

 

 

「…今日からこの鎮守府でやっていくのか、上手くいくかな…」

 

 

すでに不安でしかない曙はこれからの鎮守府生活を想像して表情を曇らせる、自分は殺人の罪でここに追いやられた艦娘だ、いくら茜を守る為であったとはいえ、曙自身にも罪の意識は多かれ少なかれ存在する、そんな自分を台場の艦娘は受け入れてくれるのだろうか…?。

 

 

「…まぁ、深海棲艦に復讐するのに、艦娘との友好関係なんて必要ないんだけどね」

 

 

どこか自虐的な笑みを浮かべると、曙は身体を洗おうと湯船から上がり洗い場へ移動する。

 

 

「あれ?曙さんもお風呂だったんですね」

 

 

すると、三日月、夕月、ハチ、篝が大浴場に入ってきた、そうよ…と普通に返そうとしたが、この時曙は信じられないモノを見てしまった。

 

 

「…へ」

 

 

それは、三日月たちの身体にある深海痕だった。

 

 

「あ、あんたたち…それ…!」

 

 

曙は目を剥いて三日月たちの深海痕を指差す。

 

 

「あ、すみません!言ってなかったですね、実は私たち、深海棲艦と艦娘の混血艦(ハーフ)なんです」

 

 

「は…混血艦(ハーフ)…?」

 

 

「はい、私たちは一度轟沈して深海棲艦になりました、そして深海棲艦の混血艦(ハーフ)としてまた艦娘に戻ってきたんです」

 

 

「な、何よそれ…!何なのよそれ!」

 

 

曙は激しく狼狽しながら後ずさる、その時に足を滑らせて尻餅をついてしまった。

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

夕月が曙に駆け寄って手を差しだそうとする。

 

 

「さ、触らないで!」

 

 

しかし曙は差し出された夕月の手を払いのけた、手を叩かれた夕月は驚いたような顔で曙を見る。

 

 

「だ、大丈夫だ曙、私たちは深海棲艦の名残を残しているが、ちゃんと艦娘だ…」

 

 

夕月は曙を落ち着かせようとゆっくりと近付くが…

 

 

「く、来るな!深海棲艦!」

 

 

曙は決定的な一言を夕月に浴びせかける、目の前にいる夕月たちは自分が最も憎んでいる深海棲艦と混ざっている、つまり…自分の敵だ。

 

 

「…ちょっとそれは無いんじゃないんですか?」

 

 

それに気を悪くした篝が曙に睨みを利かせるが、それに気付いた三日月が慌てて止める。

 

 

「う、うるさいわね!半端モノのクセに!」

 

 

そう言うと、曙は夕月たちを突き飛ばして大浴場を出て行ってしまった。

 

 

残された艦娘たちは、曙の出て行った扉をただ見つめるだけだった。

 




次回「姫宮朱里」

覚えていない、それでも確かに残ってる。

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