艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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蛍編の折り返し地点です、というかここからが本番です。

南方海域ステージ3「第一次サーモン沖海戦」に出撃したところ、2歩目の夜戦マスで戦艦タ級の連撃により金剛が大破、あえなく撤退になりました、心臓に悪すぎるステージです。

てか、夜戦マスかどうかって戦闘開始前に分かる仕様になってるんですね、あれ。


第161話「蛍の場合10」

「お、おい曙…!?」

 

 

曙のあられもない姿に絶句する海原、曙はそんな海原の事など完全無視で素早くズボンのチャックを開けると、何の躊躇いもなく中に手を入れて海原の一物を取り出す。

 

 

「何してんだ曙!!今すぐやめろ!」

 

 

海原の一物を咥えようとする曙を引きはがそうとするが、曙は断固として離れようとはしなかった。

 

 

「おい止めろって!どうしちまったんだよ本当に!?」

 

 

海原は本気で焦りながら曙を離そうとする、なぜこんな事になっているのか、それを必死に考えていると、不意に曙が海原から離れる、ようやく考え直してくれたか、などと思ったが、すぐに自分が甘かったと思い知らされる。

 

 

「あぁ、そっかぁ…提督はこっち方がいいのね…」

 

 

そう言うと、曙は海原の腰元にまたがり、海原の一物を自身の陰部へとに入れようとする、言ってしまえばセックス3秒前な状況だ。

 

 

「止めろ!それはマジでシャレにならない!」

 

 

今度こそ身の危険を感じた海原は死ぬ気で曙をはがしにかかる、しかし曙も艤装を簡易展開させているらしく、小さな体躯に似合わぬ怪力で抵抗する、何が何でも海原とセックスするつもりのようだ。

 

 

「大丈夫よぉ…ちゃんと気持ち良くしてあげるから、だから…」

 

 

「私のこと…解体しないでぐだざい…!」

 

 

「っ!?」

 

 

そう縋るように懇願する曙の濁りきった目からは、大粒の涙が流れていた。

 

 

「お、おい、今のどういうことだよ…解体って何の話だよ!?」

 

 

突然曙の口から飛び出した解体という単語に狼狽する海原、曙を解体する予定などもちろん無いし、海原自身もそんな気は毛頭無い、なのになぜ曙は自分が解体されるなどと思っているのだろうか…?。

 

 

「お願いじまず…何でもじまずがら…提督の望む事ならセックスでも何でもじまずから…だから解体だけは…!解体だけはしないでくだざい!」

 

 

涙と鼻水で顔をグチャグチャにした曙が海原の上着の襟を掴んで懇願する、幸いそのお陰でまだ海原の一物は入れられずに済んでいるが、曙は入れるつもりだろう。

 

 

「…おい曙、何があったんだ?何がお前をそこまで追い詰めてるんだ?」

 

 

「どぼけないでよ!私の前世が原因で解体するんでしょ!?提督の文書読んだんだからね!?」

 

 

「っ!?お前…あれを…!?」

 

 

「えぇそうよ!私の今の性格は前世の姫宮朱里が影響してるから、然るべき対応をする必要があるって書いてたでしょう!?それってそんなめんどくさい艦娘は使い物にならないからゴメンだって事で解体するって意味じゃないの!?」

 

 

曙はそう一息でまくし立てる、それを聞いた海原はますます過去の自分に殺意が湧いた、そして今の自分にも言ってやりたい、俺は馬鹿だと。

 

 

「だから私はクソ提督とセックスする!私の気持ちよさから離れられなくなれば解体なんて出来ないでしょ!?」

 

 

もはや自暴自棄(ヤケクソ)といった感じで曙は今度こそ海原の一物を自身の陰部に入れようとする。

 

 

しかし、それは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ごめん、曙」

 

 

海原が、曙の身体を抱き締めたからだ。

 

 

「ふぇっ…?」

 

 

「俺のせいでお前がこんなに追い詰められてたなんて、提督失格だな…」

 

 

「は、離してよ!私はまだ解体されたくないんだから!」

 

 

「曙、聞いてくれ」

 

 

「お願いだから解体しないでよ!性格が気に入らないなら心壊してでも直すから!性玩具(ラブドール)がいいなら私の身体が壊れるまでヤリ捨てていいから!ク…提督の言うことなら何だって聞くから!だから、だから…!」

 

 

「俺は!」

 

 

曙の縋りつくような言葉を全て斬り捨てるように海原が声を荒げ、曙は怯えるように身を震わせる、そして海原は曙の肩を掴んで自分の目の前まで引き離すと、確かにこう言った。

 

 

「俺はお前のことを解体するつもりなんて、毛頭無いよ」

 

 

そう優しく言うと、海原は曙のサラサラの髪を撫でる。

 

 

「…へ…?解体…しない…の…?」

 

 

「当たり前だ、誰が家族を売るようなまねするか」

 

 

「だ、だって…!文書には然るべき対応をするって…!」

 

 

「確かに書いたよ、でもそれは解体なんかじゃない、俺が考えた然るべき対応、それはな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の全てを認めて、受け入れることだ」

 

 

「…えっ?」

 

 

海原の言っている事の意味が分からず、曙は首を傾げる。

 

 

「確かにお前は性格キツいし、言葉も態度も良いとは言えない、でもそれがお前が“曙”として持って産まれてきた自我だ、たとえ前世の影響で付いて来たモノだとしても変える事なんてできねぇよ」

 

 

「クソ提督…」

 

 

「だったら話は簡単だ、それがお前の性格なんだと、それが曙なんだと認めて受け入れてやればいい、無理に変えさせるよりも、それを受け入れてやる方が良いことだってあるんだよ」

 

 

「…じゃあ…本当に…」

 

 

「あぁ、解体なんてしない、お前は何も怖がらずにありのままのお前でいろ、俺は…俺たちはそれを受け入れてやる」

 

 

海原はそう言って、再び曙の髪を撫でた。

 

 

「………ぅう……うぅぅ…」

 

 

それを聞いた曙は嗚咽を漏らしながら泣いていた、その涙は先程のような悲しい涙ではなく、心の底から溢れんばかりの嬉しさに満ちた涙だった。

 

 

 

「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

 

曙は喉が潰れんばかりの声で泣き叫び、海原に抱きついてひたすらに涙を流していた、まるで今までため込んできた不安や恐怖、悲しみを全て吐き出すように…。

 

 

「ごめんな、お前の事苦しめちまって、これからは何も我慢せずに何でも言えよ、お前はもう…ここの一員なんだからな」

 

 

海原は曙が泣きやむまで、ずっと背中を撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やれやれ、一時は本当にどうなるかと思いましたけど、解決したようで良かったわね」

 

 

「曙さんがそんな風に考えてたとは…私たちも気付いてあげれば良かったですね」

 

 

「そうですね、提督と交わりそうになったことは、大目に見るとしましょう」

 

 

…ちなみにこの一部始終はコートを羽織って廊下を歩く曙を不審に思ってつけてきた吹雪たちにも見られていたのだが、満場一致で見なかったことにする事にした。

 

 

 

 

 

『おいガキぃ!お前自分が何したか分かってんのか!?』

 

 

『あんたのせいでご近所に悪い噂がたっちゃったじゃない!この疫病神!』

 

 

勝己と花李亜はいつものように朱里に殴る蹴るの暴行を加えていた、原因は朱里が近所の住民に虐待を受けていることをほのめかしたからだ。

 

 

『ご…ごめんなさい…!ごめんなさい!』

 

 

身体中にアザや傷を作った朱里は泣きながら謝るが、依然両親からは激しく暴行されていた。

 

 

(誰か…!誰か助けて!)

 

 

朱里はそう心の中で叫んだ、そうしたところで何かが変わるわけではない、そんな事は分かっていた、でも叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

大丈夫だよ、俺がお前の事を認めてやるから

 

 

 

 

『っ!!』

 

 

その時、頭の中で誰かの声が聞こえてきた、どこかで聞いたような、とても懐かしい…

 

 

『あぁ…そっか…』

 

 

そこで朱里はやっと思い出した、その声の主を、そして自分が誰なのかを…

 

 

『提督…!』

 

 

朱里は両親の手を掴むと、それを突き飛ばすように振り払った。

 

 

『きゃあっ!』

 

 

『痛っ!このガキ…!』

 

 

勝己は朱里につかみかかろうと起き上がるが、その直後に絶句して固まってしまう。

 

 

何故ならそこには、見たことのない武器を身に纏い、大砲のようなモノをこちらに向けている朱里の姿があったからだ。

 

 

『おいガキ…なんだそりゃ…』

 

 

『…朱里…?』

 

 

『今の私は姫宮朱里じゃないわ!綾波型駆逐艦“曙”よ!』

 

 

朱里…曙がそう言うと、曙の姿が変化していく、ショートカットの黒髪は葵色のロングヘアーに、黒のジャージは白を基調としたセーラー服に変わっていった。

 

 

『朱里…今まで辛かったよね、痛くて、苦しくて、でもこれからは…』

 

 

『これからは私が、曙が朱里の分まで生きるから、だからあなたは、ゆっくり休んでね…』

 

 

曙はそう言って自分の胸元をさすると、主砲を両親に向ける。

 

 

『もうあんたたちなんか怖くわ!あんたたちは私を、いや、朱里を苦しめ続ける忌々しい記憶でしかない!だから私が朱里を解放する!この悪夢から!永遠に!』

 

 

曙は何の躊躇いもなく主砲を撃ち出し、勝己と花李亜を撃ち抜く、撃たれた両親は黒い影のような塊となり、そのまま虚空へと霧散していく。

 

 

『…終わったよ、朱里』

 

 

そう言って曙は後ろを振り向く、そこにはかつての自分…朱里が立っていた。

 

 

『…ありがとう曙、私を助けてくれて』

 

 

朱里は曙の前まで歩いてくると、にこりと笑ってお礼を言う。

 

 

『…全然助けてないよ、ここにいるあなたも、今撃った両親も、全部はあなたの記憶でしかない、両親を撃ったからってあなたが死んだ事実は変わらないし、この世界だって夢の中みたいなもの、実際は何も変わってない、ただ夢の内容を書き換えただけだもの…』

 

 

曙は悲しそうな顔で目を伏せる、この世界は曙と朱里の記憶の奥底…つまりは夢と変わらない、そこで曙が何かをしたところで過去の事実は何も変わらないのだ。

 

 

『それでも、曙は私の中にある辛い記憶を撃ち消してくれた、それだけでも嬉しいよ』

 

 

朱里はそう言って曙に抱き付いた。

 

 

『…ありがとう、朱里』

 

 

それを聞いた曙はなんだか嬉しい気持ちになり、朱里に抱きつき返す。

 

 

『…それじゃあ私はもう行くね』

 

 

『…行っちゃうの?』

 

 

『あなたからいなくなる訳じゃないよ、だってあなたは私だもん』

 

 

『…そっか、そうだよね、ありがとう(朱里)

 

 

『こちらこそ、ありがとう()

 

 

その言葉を最後に、朱里は空間に溶けるように光の粒子となり、曙の中へと入っていく、何か暖かいモノが身体に入っていくのを、曙は確かに感じていた。

 

 

それと同時に、それまでいた部屋が音を立てて崩壊していく、まるでその役目を終えたかのように…。

 

 

『…見ててね、朱里』

 

 

 

 

 

「…うぅ?」

 

 

目を覚ますと、曙は自室のベッドで眠っていた。

 

 

「…そっか、あの後泣き疲れて寝ちゃったのか」

 

 

多分自分を運んだのは海原だろう、昨日は彼に対してとんでもない事をしてしまった、後で死ぬ気で土下座をして謝るしかない。

 

 

「…朱里」

 

 

曙は胸元に手を当てる、昨夜の夢のことはしっかりと覚えている、確かに自分の中に朱里を感じる。

 

 

「…よし!まずは提督の所に行かないとね」

 

 

 

頬をパン!と叩いて気合いを入れ直すと、海原に全力土下座をするために提督室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

『頑張って、曙』

 

 

 

 

 

 

 

ふと、部屋を出るときに朱里の声が聞こえたような気がしたが、後ろを振り向いても誰もいなかった。

 

 

「うん、頑張るよ、朱里」

 

 

そのいない誰かに応えるようにそう返すと、曙は扉を閉めて歩き出した。




次回「艦娘VS艦娘」

たとえ敵対してでも、助けてみせる。

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