艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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この小説の下書きに使ってるメモ帳アプリのデータ漁ってたら、以前感想欄で書かれていた「絆☆創☆膏だ!のマックス」の短編の書きかけデータを発見、自分で書いてたの忘れてただけにパンドラの箱見つけた気分になった。


第163話「蛍の場合12」

この艦娘たちはいったい何なのだろうか。

 

 

敵深海棲艦の前に立ちはだかる吹雪たちを見て、静岡駐屯基地所属の艦娘…桜花型重巡洋艦1番艦の“桜花(おうか)”は素直にそう思った。

 

 

「何なのですかあなたたちは、突然戦闘の邪魔をしたと思えば敵を庇うような真似を」

 

 

桜花は落ち着いた、それでいて威圧するような声色で吹雪に問い掛けた。

 

 

「いやー、ちょっとこの深海棲艦とは因縁がありましてね、悪いんですけど、この獲物はこちらに譲って貰えません?」

 

 

吹雪は桜花に交渉の体を保ちながら言う、ここで桜花たちが下がってくれれば御の字なのだが…

 

 

「何でそんな事しなきゃいけないのよ、それにこれは任務でやってることなの、敵を見逃すなんて出来ないわ、分かったら早くその深海棲艦を渡しなさい」

 

 

桜花は主砲を向けながら吹雪に警告する、おそらく従わなければ自分たちごと撃つということなのだろう。

 

 

(さてと、ここからどうしたものかな…)

 

 

 

互いに膠着状態になりながら吹雪は頭をフル回転させる、こうなったらこのまま蛍を艦娘化(ドロップ)させてしまった方がいいだろう。

 

 

「…曙、私たちが応戦して時間を稼ぐから、その間に蛍を艦娘化(ドロップ)させて、でも長くは保たないと思うから手短に」

 

 

「…了解」

 

 

曙は吹雪の耳打ちに頷くと、身体を後ろに向けて蛍に向き直る、通訳には篝が同席した。

 

 

「…蛍」

 

 

『ひいっ!?』

 

 

曙に声をかけられた蛍は一瞬にして恐怖という感情に呑まれ、一目散に逃げ出そうとする。

 

 

「待って蛍!私…あなたに謝りたいの!」

 

 

曙は逃げようとする蛍の腕を掴んで引き止める、前の自分なら深海棲艦の身体など穢らわしくて触れなかったが、今は違う、手から感じる深海棲艦特有の冷たさと、わずかに感じる温かさ、それが蛍だと思うと全てが愛おしく思えた。

 

 

『…えっ?』

 

 

蛍は不安げな顔で曙の方を見る、逃げられる可能性を懸念していたが、幸いにもそうはならなかった。

 

 

「…あなたさっきから何してるの?深海棲艦と話してるようだけど、もしかしてそいつの仲間なの?」

 

 

すると膠着状態だった静岡組の艦娘…桜花型重巡洋艦3番艦“幻花(げんか)”は曙たちの方へと視線を向ける、これ以上の時間稼ぎは厳しいだろう。

 

 

「…その問いにあえて答えるならYESですね」

 

 

幻花の問いに吹雪は正直に答えた、誤魔化して時間を稼ぐという手段もあったが、現在進行形で曙と蛍が会話中のため、それは無理があった。

 

 

「そうですか、なら残念ですが…」

 

 

 

「現時刻をもって、あなたたちを深海棲艦の増援と認識、排除させてもらいます!」

 

 

言うなり桜花、幻花、そして桜花型重巡洋艦2番艦の“氷花(ひょうか)”は一斉に砲撃を開始、軽空母の祥鳳も艦載機を発艦させる。

 

 

「大鳳さん!」

 

 

「はい!震電改…発艦!」

 

 

大鳳も艦上戦闘機…震電改を発艦させる、祥鳳の放った艦載機が吹雪たち目掛けて急降下してくるが、大鳳の艦戦がそれを全て撃ち落とす。

 

 

「うそっ!?」

 

 

「私の艦載機を全て撃ち落とすなんて…」

 

 

艦載機同士の戦い(ドッグファイト)で私の右に出る者はいませんよ?」

 

 

大鳳はボウガンを構えて得意げな顔でポージングをする、それに触発された祥鳳は続けざまに艦載機を発艦させるが、これも大鳳にほとんど落とされてしまう、震電改も何機か撃墜されてしまったが、まだ戦闘には影響はない。

 

 

桜花、氷花、幻花の3体も吹雪たちに砲撃を浴びせるが、吹雪たちも正確無比な射撃で弾丸を撃ち落としていく、撃ち合っているのはどちらも3体ずつだが、駆逐艦である吹雪たちの方が連射性能は上なのでより落としやすい。

 

 

「な、何よあの子たち!?装備から察するに駆逐艦みたいだけど、あれが駆逐艦の能力なの!?」

 

 

「相当な練度(レベル)みたいね」

 

 

氷花と幻花は驚きを隠せずにいるようで、実力未知数の吹雪たちを警戒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曙たちは戦闘中の吹雪たちから少し離れたところで会話を続行していた、篝による通訳で割とスムーズに進んでいる。

 

 

「蛍、本当にごめんね、あなたはあの時私を庇って轟沈した、それなのに私はあなたにひどいことを言った、申し開きのしようもないよ…」

 

 

『そんな…曙が謝るような事じゃないわ』

 

 

泣きそうな顔で落ち込む曙に蛍は優しい言葉をかけたが、曙はそれを否定する。

 

 

「本当は吹雪から艦娘化(ドロップ)の話を聞いた時に蛍を取り戻せるかもしれないって事に気付くべきだったのよ、でも私は蛍を殺した深海棲艦への復讐心でそれが見えなかった、それどころか一番会いたかった親友をひどい言葉と行動で心傷つけた、本当にごめん…ごめんなさい…!」

 

 

曙は今自分が一番蛍に伝えたかった事を伝える、元々曙はその性格が原因で新潟駐屯基地の司令官含むメンバー連中からも煙たがられていた、でもそんな中でルームメイトの蛍だけは自分の事を受け入れてくれた、曙にとって蛍は掛け替えのない唯一無二の親友だった。

 

 

しかし、その親友の蛍は出撃中に轟沈してしまった、大破状態になった曙を敵の攻撃から庇って…

 

 

「蛍…あんな事を言った私が言うのも虫が良すぎる話かもだけど、また私と…親友になってくれる?」

 

 

曙は縋るような気持ちで蛍に問うた、もしかしたら否定されるかもしれない、そう考えたら怖くもあったが、この想いだけはどうしても伝えなければいけないのだ。

 

 

『もちろんだよ、曙は私にとっても大切な親友だもん、私も曙があの後無事だったかが気になってたから、こうしてまた会えて嬉しいよ』

 

 

しかし蛍はそんな曙のことを許してくれた、自分のことを親友だと言ってくれた、それだけで嬉し涙が溢れてくる。

 

 

「ありがとう蛍…大好き」

 

 

『私も大好きだよ、曙」

 

 

 

その直後、蛍の艦娘化(ドロップ)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「な、何あれ!?」

 

 

桜花たちは蛍の艦娘化(ドロップ)現象に目を剥いていた、何せ深海棲艦の身体の内側から艦娘が姿を現したのだから…。

 

 

「どうやらこの勝負、私たちの勝ちみたいですね」

 

 

吹雪は勝ち誇ったような顔で桜花に向かって言う。

 

 

「…いったいどういうことなの?どうして深海棲艦から艦娘が…!?」

 

 

「篝と夕月は蛍をお願い、私とマックスが時間を稼ぐから…」

 

 

吹雪は動揺する桜花たちの事を完全に無視して撤退指示を出す。

 

 

「待ちなさい!あなたたちには静岡駐屯基地まで同行してもらいます!」

 

 

しかしその途中で桜花が割り込み、吹雪たちにそう告げた。

 

 

「…理由を聞いても?」

 

 

「あなたたちの素性と目的、そしてその現象の詳細を吐いてもらいます」

 

 

桜花は主砲を構えながら氷花と幻花に封錨錠(アンカーバインド)をかけるように指示する。

 

 

「残念ですが、それは拒否させてもらいます!」

 

 

吹雪は主砲の弾丸カートリッジを素早く別の物に入れ替えると、海面に向けて撃つ。

 

 

「っ!?」

 

 

「んな…!?」

 

 

刹那、着弾した弾丸が眩いほどの光を放ち、桜花たちの視界を塞ぐ、明石が作成した試作装備…閃光弾(フラッシュ)だ、夜戦などでつかう照明弾とは違い、こちらは主に敵の目眩ましを目的として作られたモノである。

 

 

「猪口才な手口を…!」

 

 

光が弱くなったところを狙って桜花は吹雪たちの方へと向かう。

 

 

「…逃げられましたね」

 

 

しかしそこに、吹雪たちの姿はどこにも無かった。




次回「新たな姫」

いざ、開戦の時。
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