艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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蛍編終了です。

ペルソナ5のイゴールの声がペルソナ4(アニメ版)と全然違ってて最初驚いた。


第164話「蛍の場合13」

「…うぅん…?」

 

 

目を覚ました蛍が最初に見たのは見知らぬ天井だった。

 

 

「…あれ…私…確か曙を庇って…」

 

 

ぼーっとする頭を動かして蛍は記憶の糸を手繰り寄せる、自分が覚えているのはあの時曙を庇って轟沈した所まで、そこから先は何だか長い夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。

 

 

「ここ…どこだろう…?」

 

 

起き上がって周りを見渡してみるが、やはり自分の記憶にないベッドで眠っており、自分の記憶にない部屋の中にいた。

 

 

「…鎮守府…なのかな…」

 

 

現状を確認するため、蛍はベッドから下りると部屋のドアを開けて外に出る。

 

 

「…やっぱりどこかの鎮守府みたいね」

 

 

部屋の建物の内装を見て蛍はそう判断する、鎮守府毎に多少の違いはあるものの、大方の内装は共通しているため、そう判断できた。

 

 

「あれ?蛍目を覚ましたの?」

 

 

ふと、誰かに自分の名前を呼ばれたので蛍は声のする方を向く、そこには見知らぬ艦娘が立っていた。

 

 

「初めまして、私は吹雪型駆逐艦1番艦の吹雪、ここ台場鎮守府で秘書艦をやってるの、よろしく!」

 

 

その艦娘…吹雪はニコッと笑って蛍に挨拶する。

 

 

「…暁型駆逐艦8番艦の蛍…です」

 

 

吹雪の明るい様子に若干気圧されながら、蛍も自己紹介をする。

 

 

「身体の方は大丈夫?どこか変な所は無い?」

 

 

「はい、特には…」

 

 

無いです…と言おうとしたが、ここで蛍はあることに気付いた。

 

 

「…何…これ…」

 

 

蛍が服の袖を捲ったとき、右手首から下が真っ黒に染まっている事に気付いた、それはまるで深海棲艦の装甲のように…。

 

 

「…やっぱり深海痕はあるか」

 

 

吹雪は蛍の深海痕を確認しながら言う、蛍の深海痕は右手首下から腕を伝い、下腹部にかけて広がっていた。

 

 

「これ…なんなの…?」

 

 

「あなたが深海棲艦だったときの名残だよ、深海痕って私たちは呼んでるけど」

 

 

「し、深海棲艦…!?」

 

 

蛍はひどく動揺した様子で狼狽える、いきなりこんな物を見てしまえば当然の反応だろう。

 

 

「詳しくは提督室で話すよ、曙もまだいるはずだし、とにかく来て」

 

 

「っ!!曙!?曙がここにいるの!?」

 

 

蛍は聞き捨てならない言葉を聞いてさらに驚いていた。

 

 

「うん、いるよ、深海棲艦になったあなたを救うために、いっぱい頑張ってくれた、だから早く行こう」

 

 

そう言って吹雪は蛍の手を取って歩き出す、蛍もそれに従い歩みを進め、その足を確実に速くしていく。

 

 

 

 

 

「司令官、蛍を連れてきました」

 

 

吹雪と蛍が提督室に入ると、中にいた海原と曙がこちらを見る。

 

 

「おう、ご苦労さん、ほれ曙、待ちわびた親友とのご対面だぜ?」

 

 

海原にそう言われた曙はどこか緊張した面持ちで立ち上がると、ぎこちない動きで蛍の前まで歩く。

 

 

「…曙…曙…何だよね…?」

 

 

蛍が震える唇でそう言うと、曙はゆっくりと頷く。

 

 

「そうだよ、お帰り、蛍」

 

 

曙が笑って両手を広げると、蛍はたまらず曙に飛び込んだ。

 

 

「…ただいまぁ…!」

 

 

嬉しさのあまり号泣する蛍を、曙も涙を流しながら抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

「そう…ですか、私にそんな事が…」

 

 

感動の再開を喜び合った後、蛍は吹雪と海原から今回の事の顛末を聞かされた、それを聞いた蛍は何と言っていいか分からない複雑な表情をしていた。

 

 

「それで、曙は今この台場鎮守府に所属しているんですね」

 

 

「そうだ、最初はお前を沈めた深海棲艦に復讐しようと心を弱らせていた時もあったが、蛍を助けるために一番頑張ってくれたんだぞ」

 

 

海原はそう言って曙の頭を撫でる、曙は嬉しそうにそれを受け入れていた。

 

 

「そうだったんですね、本当にありがとう、曙」

 

 

「お礼なんていいよ、だって私たち親友でしょ?」

 

 

そう言って笑う曙を見て、蛍は何かを決心したような表情をすると海原に向き直る。

 

 

「…海原提督、お願いしたいことがあります」

 

 

「何だ?」

 

 

「私を…台場鎮守府に入れて下さい」

 

 

蛍は丁寧に腰を折り、海原にそう進言した。

 

 

「私は曙やこの台場鎮守府の皆さんに助けられました、だから今度は私がここの鎮守府で皆さんを助けていきたいです、どうでしょう…?」

 

 

「もちろん大歓迎だ、もとよりこっちは初めからお前を勧誘するつもりだったしな」

 

 

海原はそう言うと、蛍に向かって右手を伸ばす。

 

 

「これからよろしくな、蛍」

 

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

蛍は笑って海原の手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

蛍は改めてDeep Sea Fleetの前で挨拶をした後、蛍の深海棲器を選ぶ作業に入っていた、今回選んだのは3種類。

 

 

1つ目は『大太刀』

 

吹雪が使っている太刀よりも大型の刀だ。

 

 

 

 

2つ目は『ハープーンガン』

 

素潜り漁などで使われる一本銛を射出する銃だ、これは明石が趣味で作成した深海棲器で、コードネームは『ダッシュ・ランサー』。

 

 

3つ目は『アサシンブレード』

 

籠手に短剣(ダガー)が仕込まれている暗器で、出し入れが自在に出来るので奇襲や不意打ちに適している、これも明石の作成した深海棲器で、コードネームは『疑心暗器』。

 

 

 

「明石さんも結構バラエティ豊かなモノ作るのね、恐れ入ったわ」

 

 

曙は疑心暗器を見て感心するように言う。

 

 

「曙も何か作ってもらえば?これ結構面白いよ」

 

 

蛍は疑心暗器の短剣(ダガー)部分を出し入れしながら楽しそうに言う。

 

 

「…そうね、ちょっと考えてみようかしら」

 

 

目の前にあったナイフを弄りながら、曙はぼそりと呟いた。

 

 

 

 

「お呼びでしょうか?」

 

 

少女に呼ばれたベアトリスは跪き、少女の次の言葉を待つ。

 

 

「長期任務を終えたメアリーとマーガレットが戻ってきたんですって?」

 

 

少女はベアトリスにそう問い掛ける。

 

 

「はい、もうじきこちらに来るかと…」

 

 

ベアトリスが言い終わるか終わらないかというタイミングで2体の深海棲艦が現れた。

 

 

「お待たせしました、メアリーならびにマーガレット、只今戻りました」

 

 

1体の名はメアリー、漆黒のロングヘアーに黒いショートワンピを身にまとった深海棲艦だ、ショートワンピの上からは簡素な鎧を付けており、頭にも簡素な兜を被っている。

 

 

「今回の任務の報告をさせていただきます」

 

 

もう1体の名はマーガレット、ややくせっ毛のある黒髪のサイドテールに明治時代の西洋かぶれ(ハイカラ)文化を思わせるような黒い服を着ている。

 

 

「…分かったわ、報告ご苦労様、戻ってきて早々で悪いけど、メアリーとマーガレットも今回の作戦に参加してもらうから、あとでベアトリスから詳細を聞いてね」

 

 

「「了解しました」」

 

 

メアリーたちはお辞儀をすると、そのまま部屋を後にした。

 

 

「それじゃあベアトリス、作戦を開始しましょう、人間を滅ぼす作戦…その余興を…」

 

 

「はい、かしこまりました、七海(ななみ)様」

 

 

ベアトリスは少女…七海に跪くと、作戦開始の最終準備に取りかかる。

 

 

 

七海はベアトリスを見送ると、机の上の写真立てを手に取る、そこには七海と男性がツーショットで写っている写真が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…もうすぐあなたの願いが叶いそうです、だからそれまで待っていてくださいね、博士」

 

 

そう呟くと、七海は写真の男性を指で撫でる。




次回「東京湾沖海戦」

蛍の深海棲器のアイデアを送ってくださった皆様、ありがとうございました!

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