艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー   作:きいこ

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レーベを獲得出来る遠征を出現させるために任務を消化していたのですが、伊号潜水艦を3体編成するという任務にぶち当たりました。

…イムヤとゴーヤしかいないのでハチかイクを建造しよう。


第169話「東京湾沖海戦5」

古鷹を旗艦(リーダー)とした出撃艦隊は鎮守府を出発したが、その雰囲気はお世辞にも良いものとは言えなかった。

 

 

「言っておくけど、私たちの足を引っ張るような真似だけはしないでね、ただでさえ駆逐艦は弱くてお荷物なのに…」

 

 

特に雲龍は前任である佐瀬辺の火力主義がまだ残っているようで、吹雪たちをかなり格下に見ている、古鷹とポーラも雲龍ほどではないが、やはり戦力としてはあまり期待していないようだ。

 

 

『あの提督といいここの艦娘たちといい、何でこうも腹の立つ連中ばかりなのかしらね』

 

 

「(しょうがないよ、駆逐艦の火力が空母や重巡に劣るのは事実だし)」

 

 

今まで空気を読んで何も言わなかったリーザだが、先ほどからの言われように我慢できなくなったのか初めて口を開いて苦言を呈す、それに吹雪は小声で答えるが、リーザはいまいち納得しきれていないようだ。

 

 

「そういえば、大鯨さんって潜水母艦なんですよね?そんな戦力外もいいところな非戦闘艦が何か役に立つんですかぁ?」

 

 

航行中にポーラがしゃくに障る言い方で大鯨に聞いてくる、さすがに一言言ってやろうと思った吹雪だが、大鯨はそれを片手で制す。

 

 

「大丈夫ですよぉ、私だってちゃんと戦闘でお役に立てますからぁ」

 

 

大鯨は朗らかに笑ってそうポーラに返した、その様子を見れば空気を悪くしないために気を使ったのだと思われるだろう、まぁ実際そうなのだが。

 

 

「うーん…おかしいわね…」

 

 

「どうしたんですか?古鷹さん」

 

 

先ほどから古鷹が首を傾げながら電探のモニターを軽く叩いているので、疑問に思ったポーラが聞く。

 

 

「さっきから電探の調子が悪いのよ、画面に時々ノイズみたいなのが走って、うまく表示されないのよね」

 

 

そう言って古鷹は電探の画面をボーラに見せる、確かに電波がうまく受信できていないテレビのようにノイズが時々走っているようだ。

 

 

「帰ったら明石さんに見てもらった方がいいかもしれませんよ」

 

 

「そうね、そうするわ」

 

 

古鷹はそう言うと引き続きノイズの走る電探の画面を見ながら周囲を警戒する。

 

 

「…電探に敵艦隊の反応あり、会敵までおよそ2分です」

 

 

古鷹の電探が敵艦隊の気配を察知する、そしてそれはすぐに肉眼で確認できる距離になる。

 

 

編成は重巡棲艦、軽巡棲艦、軽巡棲艦、雷巡棲艦の巡洋艦隊だ。

 

 

 

「雲龍さんは艦載機の発艦を、ポーラと台場は私と砲撃準備!」

 

 

「分かったわ」

 

 

「了解です!」

 

 

雲龍は艦載機を発艦させるために腰元のケースから人型の紙葉(しよう)を取り出す、この紙葉(しよう)は雲龍の艦載機の媒体で、これを飛行甲板に通すことで艦載機を発艦させる、この紙葉(しよう)の媒体を使うモノは陰陽道タイプと呼ばれる艤装で、弓道タイプの後に開発された艤装だ、媒体が紙であるため大量に持ち運べる利点があるが、媒体が紙であるが故に艦載機の耐久性が弱くとても撃ち落とされやすいという欠点も合わせ持つ。

 

 

弓道タイプが量より質であるのなら、陰陽道タイプはその逆だ、艦載機の弱さを数で補う、やや癖のある戦闘スタイルを特徴とする艤装なのである。

 

 

「艦載機…発艦!」

 

 

雲龍が紙葉(しよう)を巻物のような飛行甲板に通す、この巻物型の飛行甲板もコンパクト性を重視したモノで、弓道タイプの飛行甲板に組み込まれている電子回路を紙に張り付けているのである、この飛行甲板も敵の攻撃に弱く、当たりどころが悪ければ即刻艦載機発艦不能となってしまうのがたまに傷だ。

 

 

ポーラと吹雪たちも主砲発射の準備をする、正直台場としては白兵戦で戦った方が早いのだが、今の自分たちは期間限定ではあるが横須賀鎮守府の艦娘で、この艦隊の旗艦(リーダー)は古鷹だ、郷に入っては郷に従え…である。

 

 

雲龍の艦爆が敵艦隊に投下され、重巡棲艦以外の敵を全て撃沈させる、その攻撃力と艦載機の練度(レベル)はさすが横須賀と言ったところだろう。

 

 

「主砲発射!撃てえええええええええぇぇぇぇ!!!!!!!」

 

 

古鷹の合図でポーラ、吹雪、マックスが一斉に砲撃を開始、4体の砲撃と雲龍の艦攻による雷撃が重巡棲艦に襲い掛かる。

 

 

すでに小破相当のダメージを受けていた重巡棲艦はこの攻撃に耐えられず撃沈、部隊長(エリート)以上の個体がいなかったのが幸いした。

 

 

「…提督、戦闘終了です」

 

 

古鷹がインカムで戦闘終了を木村に報告する。

 

 

『被害状況は?』

 

 

「ダメージを受けた者はゼロ、完全勝利です」

 

 

古鷹がそう伝えると、木村はインカム越しでも分かるほど安堵の息を吐く。

 

 

『了解した、これで任務完了だ、気をつけて帰投してくれ』

 

 

「了解しまし…」

 

 

古鷹がそう言おうとした直後…

 

 

「きゃあああああぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

 

突然どこからか砲撃が行われ、それが雲龍に直撃する。

 

 

「雲龍!?」

 

 

まともに食らった雲龍は中破相当のダメージを負った、飛行甲板は完全に破壊されており、艦載機の発艦は不可能である。

 

 

「いったいどこから…!?」

 

古鷹たちは辺りを見渡し、砲撃元を探す。

 

 

 

「居た…って嘘!?」

 

 

 

雲龍を砲撃した敵艦隊は古鷹たちの真後ろから接近中だった、構成は戦艦棲艦3体、空母棲艦2体、重巡棲艦1体の強力な面子だ。

 

 

「どうして!?電探には何も…!」

 

 

古鷹は電探のモニターを見るが、接近中の敵艦隊はそこには映っていない、それ以前に画面を走るノイズがさっきよりも酷くなっており、最早まともに状況確認も出来ない。

 

 

「あぁもう!何でこんな時に故障するのよ!」

 

 

古鷹がイライラしながら頭を掻き毟るが、吹雪とリーザはここで敵艦隊の旗艦(リーダー)と思われる戦艦棲艦に不自然な部分があることに気づく。

 

 

『あれって、アンテナ?』

 

 

「そう…見えるね…」

 

 

戦艦棲艦の肩の部分の艤装にアンテナが取り付けられているのだ、大きさは家の屋根などに取り付けられているテレビアンテナを幾分か小さくしたような見た目で、それを取り付けられた戦艦棲艦が近づくたびに古鷹の電探のノイズが酷くなっていく。

 

 

「…古鷹さん」

 

 

「何よ!今忙しいんだから話しかけないで!」

 

 

吹雪に話し掛けられた古鷹はかなりイラついた様子で返すが、それを吹雪は無視して古鷹に進言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの敵艦隊…妨害電波を出している可能性があります」




次回「ウォーリア・モンク・スナイパー」

最強の足止め。

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