艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
でも拠点型じゃなくて本当に良かった(三式弾持ってない)。
「よし、揃ったようだな」
午後9時、これから各々の部屋で雑談やら恋バナやらテレビ鑑賞やら裸枕殴りやらが始まろうという時間に主力艦娘が提督室に集められていた。
「今回の目的は東京湾沖遠海に接近中の敵艦隊を退ける事だ、敵の数は軽く見積もっても100体はいるだろう」
「100体…ですか」
「簡単に相手できる数ではないな」
大和と武蔵が顔をしかめる、今まで様々な海戦に参加してきた2体だが、この敵の数を…しかも夜戦で相手取るのは流石に経験がない。
「艦隊編成は2艦隊による殲滅戦とし、第1艦隊は大和を
「「了解!」」
総勢12体の艦娘が一斉に敬礼をする、今回は出撃場所と鎮守府が近いので控えの艦娘を出しやすいのが幸いした。
◇
「久しぶりの夜戦ね、気を引き締めていかないと…!」
出撃ドックで最終調整をしながら大和は両手で頬をパチンと叩いて気合いを入れ直す、一応今回参加する艦娘は全員夜戦経験者であるが、油断は出来ない。
「あとはなるようにしかならないさ、今から気負っても仕方がない」
武蔵はそう言って大和の不安を軽減しようとするが、彼女も夜戦は久しぶりの事なので若干の不安を抱えている。
そんな事をしているうちに艦隊全員の準備が完了したようなので、大和が号令をかける。
「殲滅戦闘連合艦隊、出撃します!」
大和たちが、夜の闇へと身を溶かしていく。
◇
「…前方に大量の敵艦隊の反応あり、かなりの数です」
出撃してから数十分後、大和の電探が捉えた敵艦隊が各々の電探のディスプレイに表示される、その数はかなり多く、見えているだけでも50…実際はその倍はいるだろう。
「武蔵、そろそろあれをやるわよ」
それを確認した大和はインカム越しに武蔵に呼び掛ける。
『了解した、合図は大和に任せる』
「OK、それじゃあ行くわよ!」
武蔵からスタンバイOKの合図を受けると、第1、第2艦隊の全員が主砲を上向きに構える。
「用意…撃てええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
大和が大声を張り上げて号令を出すと、それに合わせて主砲から弾丸を2連射、合計24発の弾丸が上空に向かって撃ち出される。
撃ち出された弾丸は上空で一斉に眩い光を発して空を明るく照らす、大和たちが撃ちだしたのは照明弾だ、空中を照らして視界を確保するための弾だ。
「…武蔵、そっちはどう?」
『大丈夫だ、流石に昼間同然とまではいかないが、敵艦隊の輪郭が見えるくらいの視界は保っているぞ』
武蔵の答えを聞いた大和は一安心し、敵艦隊を見据える、艦種は重巡棲艦や軽巡棲艦、雷巡棲艦がほとんどで、戦艦棲艦や空母棲艦はいなかった。
「…閃光弾とは、艦娘も中々小賢しい真似をしてくれますね」
「闇討ちは失敗って所ね」
「だが、私達の作戦にはさして影響はない」
その後方にいるメアリー、マーガレット、ベアトリスを除けばだが…
◇
「あれが空母棲姫…実際に見たのは初めてだけど、禍々しいわね…」
大和は空母棲姫を見据えて冷や汗を流す、
その手前にいる2体の姫級は
「『総員…戦闘開始!』」
大和と武蔵の声に呼応するようにそれぞれの艦隊の艦娘たちが駆け出す、まずは先手必勝と言わんばかりに蒼龍と赤城がそれぞれ艦載機を発艦させ、航空戦を有利に運ぼうとする。
2体の発艦させた攻撃機は爆撃と雷撃を軽巡棲艦と雷巡棲艦に撃ち込み、その数をみるみるうちに減らしていく。
「すごい命中率だな、流石は夜偵だ」
その鮮やかな空撃を見た武蔵は感心するように言う、夜偵というのは夜間戦闘でも空母が戦いやすいよう改良を施した艦載機の事だ、暗い場所でも視界を確保出来るように暗視装置が内蔵されており、命中率の上昇と
他の空母以外の艦娘たちも砲撃で重巡棲艦などの敵僚艦の数を減らしていくが、重巡棲艦は中途半端に装甲が堅い深海棲艦として知られており、半端な攻撃では撃沈せずに生き残ってしまうことがよくある、そんな特徴もあってか艦娘たちの間では重巡棲艦は深海棲艦の壁…もしくは砦役と言われている。
「…変ね」
戦闘が始まってから10分が経とうとしていた頃、大和は敵の行動に違和感を感じていた。
僚艦の後方で控えている姫級3体が目立った攻撃をしてこないのだ、といってもベアトリスは謎の白い艦載機を発艦させてこちらの航空戦を妨害してくるが、その数はせいぜい数十機程度、一度に200近い艦載機を飛ばしてくるという大本営の発表とは大きく行動が食い違っている、それに発艦させる数もこちらの艦載機よりもやや少なめになるように調整しているようにも見える。
それに新種の姫級2体の行動も妙だ、時折砲撃や雷撃を行ってくるが、あくまで牽制用の攻撃といった感じでこちらを潰しに来ている様子はまるで感じられない、まるで初めから勝つ気が無いような、そんな感じだ。
段々と嫌な予感を大きくしていく大和だが、それが的中する事にはこの時気付けなかった。
◇
「さてと、そろそろ仕掛けるタイミングかしらね」
盾として使っている
「メアリー、マーガレット、そろそろ攻めるわよ」
「了解したしました、ベアトリス先輩」
「久しぶりにひと暴れしちゃおっかな~」
メアリーとマーガレットは水を得た魚のように生き生きとした目をして眼前の大和たちを見据える。
「それと分かってるとは思うけど…」
「心得ていますよ、艦娘は殺さない、あくまでもダメージを与えるだけ…ですよね」
「任せてください、きっちりやってみせます!」
自信満々に言ってみせる2体を見てベアトリスは安心すると、艦載機を発艦させる準備に入る。
「敵の
「「了解!!」」
マーガレットとメアリーが艦娘たちに向かって突撃し、ベアトリスはエリザベートから借りた影夜叉を発艦させる。
◇
「うわっ!」
「敵姫級、強襲開始!迎撃態勢に入れ!」
僚艦が残りわずかといった所で姫級3体の攻撃が激化、ベアトリスは100はあろうかという数の艦載機を発艦させ、新種の姫級は瀕死の重巡棲艦を踏みつけてこちらへ猛スピードで向かってくる。
「早い…!!」
「駆逐艦…もしくは軽巡洋艦といったところですね…」
大和と扶桑はそう当たりをつけると、蒼龍と赤城に全力航空戦を指示、他の僚艦にも全力攻撃を言い渡す。
「相手がスピードアタッカーなら…!」
「僕たちの出番だね!」
照月、時雨、五月雨がメアリーとマーガレットの前に立ちふさがり砲撃を行うが、2体はそれを容易くかわしてしまう。
「くらいなさい!」
「てやああぁっ!」
照月たちの砲撃をかわしたメアリーとマーガレットは主砲で照月たちを正確に狙撃していく。
砲撃は3体に直撃したが、致命傷にはならず中破寸前の小破で留まった。
「攻撃力は私たち駆逐艦とそれほど変わらないみたいですね」
「でもあの黒鎧の方が攻撃力は高いみたいだ、あっちが軽巡棲艦と見た方がいいかもね」
五月雨と時雨はそんな事を言い合いながらメアリーとマーガレットを睨む、攻撃力こそ戦艦棲艦には劣るが、スピードや攻撃の精密性は抜きん出ており、流石は姫級といったところだろうか。
「きゃあああっ!」
「くうっ!」
赤城と蒼龍がベアトリスの空撃で大破になる、赤城は飛行甲板が生きているので艦載機の発艦は可能だが、蒼龍は飛行甲板の読みとり部分がやられてしまったので発艦不可能だ。
「駆逐艦と大淀は対空射撃に専念!戦艦は空母棲姫と新種姫級に攻撃!」
大和が照月たちにそう指示を出す、空母組が戦闘不能になった今、対空に専念出来るのは機銃を持っている駆逐と軽巡の連中のみだ。
「ぐあっ!」
「くっ…!」
しかし機銃程度でベアトリスの操る影夜叉を対処出来るわけもなく、戦艦組もダメージを蓄積させていく。
新種姫級も抜群のコンビネーションでこちらのダメージを蓄積させていく、こちら側の攻撃は敵の機動力によってことごとくかわされ、かつ向こう側からの攻撃は大和たちの鈍足ぶりが災いしてほとんど命中してしまう、戦艦と駆逐艦は昔から相性の悪い艦種なのだ。
「メアリー!マーガレット!潮時よ!」
ベアトリスがメアリーたちに指示を出すと、2体は足止め用の雷撃を撃つと、踵を返してベアトリスの方へ戻っていく。
「っ!!待て!」
撤退していくベアトリスたちを逃すものかと武蔵は砲撃を撃ち込もうとするが…
「メアリー!マーガレット!」
メアリーとマーガレットが撃った
「…明日また来る、精々準備をしておくんだな」
そんな捨て台詞を残し、ベアトリスたちは姿を消した。