艦隊これくしょんーDeep Sea Fleetー 作:きいこ
「雷撃が利かない艤装…!?」
「そんなのアリかよ!」
水雷戦隊の雷撃を無効化したエリザベートの艤装にレオ隊の面々は動揺を隠せない。
「だったら砲撃で仕留めるのみ!」
ローマが砲撃をエリザベートに浴びせるが、リコリスによってそれを防いでしまう。
「くっ…!雷撃は無効化されるし砲撃は防御兵装でダメージ軽減…こちらの攻撃手段を徹底的に潰してくるわね」
「ムカつく奴だな!」
「ムカつく?最っ高のほめ言葉ね!」
摩耶の苦言にエリザベートは顔をニタつかせると、けん玉を前衛艦隊に向けて力一杯振るう。
「うわあ!」
「きゃあっ!」
けん玉は前衛艦隊の艦娘たちを次々と巻き込みながら横なぎに飛んでいき、打撃ダメージを与えていく。
「てやああぁっ!」
それをかわした吹雪が
「ぐあっ!」
そして艤装の四隅に取り付けられている砲台からの砲撃で吹き飛ばされる、戦艦の主砲ほどの威力は無いが、艤装の主を守るためにあるそれは要塞砲といったところか。
「このっ…!」
吹雪はヤケクソ気味に魚雷を発射するが、やはり艤装がダメージを負っているようには見えない。
「だから魚雷は無駄だって言ってるでしょ!!」
エリザベートは防御していた方の手に主砲を持つと、吹雪に照準を合わせる。
「やば…!」
吹雪はとっさの判断で魚雷を一本エリザベートの足元に向かって投げる、爆発の衝撃で足元をふらつかせて照準をズラそう、そう考えての魚雷投擲だったのだが、艤装の効果でダメージが入らない可能性の方が高いだろうと内心思っていた。
「きゃっ!」
「…えっ?」
しかし、吹雪の予想と反して魚雷は艤装の上でもしっかりと爆発し、その爆炎と衝撃波がエリザベートをふらつかせて砲撃を妨げる。
(どういうこと…?エリザベートの言うことが本当なら魚雷は無効化されるはずじゃ…?)
一度エリザベートから距離を取って頭をフル回転させる吹雪、するとある可能性が頭に浮かぶ。
「…ローマさん」
「どうしたの吹雪?」
「あのエリザベートの艤装なんですけど…」
◇
「…中々しぶといわね」
後方で戦況を観察していた七海は若干イラついた様子で呟いた、開戦からすでに30分以上が経っているが、いまだにこちらの部隊が艦娘の三重バリケードを突破できる様子がない。
「…メアリー、マーガレット」
「はい」
「何でしょうか七海様?」
自身の護衛に付いていたメアリーたちを呼ぶと、七海は最後のカードをオープンする。
「
「「了解しました」」
メアリーたちは声を揃えて返事をすると、七海陣営の最後の切り札…キメラこと
「強力なヒュースなのに使い捨てなのが惜しいけど、きっとそれに見合うだけの戦果を上げてくれるでしょう、期待してるわよ、元艦娘さん」
七海は不気味な笑いを浮かべると、
「…グルル…グルギャ…!」
地獄の使者が目を覚ます。
◇
『海原提督、リブラ隊とスコーピオン隊で大破艦娘が出ました』
「護衛艦娘を付けて即座に撤退させろ!回復済みの艦娘を出撃させて穴を埋める!」
『了解、指示を送ります』
「海原さん!金剛、長門、赤城の高速修復終わりました!」
「了解!すぐに出撃できるように桟橋で待機!」
「了解!」
中央司令部では海原と伊刈がひっきりなしに送られてくる状況報告に対して的確な指示を送り続けていた、開戦直後からこのような状況が続いているため、ふたりの頭は常にフル回転である。
「海原くん、忙しい所悪いが失礼するよ」
そんなとき、開けっ放しのドアから榊原が何の前触れもなく入ってきた。
「所長!?どうしてこんな所に?」
「早瀬の艤装に異常がないかを見に来たんだ」
そう言って榊原はノートパソコンを取り出すと、起動中の早瀬の艤装とケーブルで接続する。
「君たちの邪魔にならないようすぐに済ませるから少しだけここにいさせてほしい、早瀬の艤装は他の艦娘の艤装と違って作りが結構複雑だから細かなメンテナンスが必要なんだよ」
「いえいえとんでもないです!不測の事態になる方が大変なのでむしろありがたいですよ!」
「念入りにお願いしますね」
「了解、バッチリ仕上げてみせよう」
榊原はパチパチと音を立ててキーボードを指で叩く。
「艤装システムに異常なし、ディスプレイにも異常は…」
榊原はカメラの映像を映す12のモニターを順番に見ていく。
「っ!?」
すると、その内のひとつに視線が移ったとき、榊原は雷に打たれたように固まってしまった。
「…嘘…だろ…?」
「…所長?」
その様子に海原は首を傾げたが、榊原にそれを気にするほどの余裕は無かった。